粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

武田教授煽り算「子供がガンで25.5万人死亡」

2012-06-21 09:51:09 | 煽りの達人

どうしてもこの人は叩けば叩くほどほこりが出る。ブログもつい「苦しい時の武田頼み」になってしまう。

被曝による子どものがん死・・・の責任だから理論武装(武田邦彦中部大学教授ブログ6月17日

「理論武装?」なんぞや、よくわからない。教授の核心部分はこうだ。


小児ガンによる死亡数は10万人あたり3人程度です(人口動態統計から。年齢は0才から14才まで)。これに対して「1年100ミリで発ガン率は100人に0.5人だから大丈夫」という事との比較をします.


1年100ミリの被曝によってガンになる人は「100人に0.5人」と言うことは「10万人あたり500人」です。医療関係の疾病数などは常に10万人あたりで表示するのが普通です.


子どもは大人に比べて3倍の危険性があります。つまり子どもの場合、10万人あたり1500人です。つまり1年100ミリの被曝は子どもがガンで死ぬ可能性を通常の状態の500倍にするということを意味しています(普通は3人で、1年100ミリなら500倍になる)


小児ガン死は10万人で3人ですから、日本の小児人口が約1700万人(2011年)なので、全部で510人です。それが山下医師の「1年100ミリで100人に0.5人」という数値では小児25万5000人という膨大なガン死が予想される事になります。


いつのまにか510人の小児ガン死亡者数が放射能被曝で25.5万人にふくらんだ。これは、御用学者と武田教授が呼ぶ山下俊一福島県立医科大学副学長の安全説に異議をとなえるものだ。

一見理屈にかなっていそうだが、次の大事な2点を武田教授は見落としている。

1、25.5万人のガン死は子供時代の死ではなく生涯を通じての総数であり、1700万×30%=510万人(ガンで死亡する総数)と比較すべきだ。

2、そもそも100ミリシーベルト被曝した子供はどれ位いるか。皆無に近い。

まず1を考える前に武田教授の前提として子供全部が100ミリシーベルト被曝したとして計算している。これは2の検証で見当違いも甚だしいのだが、百歩譲って武田説を前提で計算してみる。

小児ガンはその名のごとく子供のころ(0歳~14歳ごろ)に発症する病気だ。そのうち死者数は武田教授の資料を信じるとすると10万人当たり3人になる。なんと全死亡者数の0.003%。したがって日本人のガン死のなかでもほんの微々たる数字だ。日本人の毎年の死者のうち3割がガン死であるから、ガン死のなかでも小児ガンはほんのわずか0.01%ということになる。

武田説によれば子供の被曝がない場合、1700万人の子供が小児ガンで死亡する数は510人だ。ただこのうちのガン死総数は3割の510万人だ。教授にいわせると被曝で25.5万人ガン死が増えるという。しかしこれは決して「子供の死」ではない。1700万人の全生涯でのガン死増加数である。平成20年の統計をみると20歳以下での死亡は6442人で全体の0.56%にすぎない。99.44%が「大人の死」である。武田教授はもしかして「これは平常時の統計であって原発事故という惨事があったのだから、これまでの統計は通用しない」と反論するかもしれない。しかしかつての原爆被爆やチェルノブイリ事故を見る限り死亡要因の目立った変化は認められない。

したがって25.5万人を小児ガンの通常の死者数と比較するのは意味がない。510万人の全体のガン死者数と比較すべきだ。するとガン死の5%になるが、(25.5万人の)内訳はほとんどは胃ガン、肺ガンなどの成人病になるはずだ。5%というのも武田教授の「危険理論」(子供の放射能の影響は大人の3倍)に基づいている。実際はもっと少ないとする意見も多い。

武田教授は「小児25万5000人という膨大のガン死が予想される」と書いている。現在子供のガン死とは小児ガンが大半だ。「『小児ガン』による膨大な死」と書かなかったのがミソだ。自分なりにその後の反論を予想して防衛線をはったのかもしれない。しかし教授の論調は「小児ガン」が500倍になって25.5万人の犠牲者が出る、といっているのと同じ意味といってよい。これが絵空事であることは以上の説明で分かるだろう。

次に2の件だが、事故の実態を見る限り、全国北海道から沖縄まで1700万人の子供が100ミリシーベルト以上被曝したとは全く考えられない。原発作業員を除く一般の人で100ミリを超えた人はいないというのが専門家一般の定説になっている。これも百歩譲って危険のグレーゾーンとされる20ミリ以上を基準にしても子供の被曝はなかったと福島県の最近の調査で報告されている。「1700万人の子供100ミリシーベルト総被曝」などというかつての週刊現代が煽ったようなカルトまがいの数字をいまだ使う神経が理解できない。

要するに「原発事故の影響による子供のガン死の増加はまずあり得ない」というのが私の結論だ。まして小児ガンの増加などさらに考えられない話だ。

武田教授の反論を待ちたいが、無理だろう。武田教授のブログは今も50万人に閲覧されているという。自分の「しょぼい」ブログからすれば、月とスッポンだ。しかしこの教授はこんな煽り記事ばかり書いていて楽しいのだろうかとつくづく思う。人を脅したり、傷つけたりして何が面白いのだろうか。つまらない人生だなと、半分やっかみ気分で思う今日この頃です。