粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

複雑な思いの飯館村民

2012-06-06 07:08:33 | 福島への思い

村全体が計画的避難区域になっている福島県飯館村。村のある住民グループが避難先が分かっている村民たちにアンケートをしたら、約半数が「村には戻らない」と答えたという。しかし、その詳細をみると一概にこの結果を妥当とは思えない。

まず回収率が1539のうちの576件、37%にすぎない。そしてこのアンケートを行ったのが、「新天地を求める会」という名の市民グループだ。村長の方針に強く反発し帰村には反対する団体だ。だから、こうした意図が背後にあるアンケートには最初から拒絶反応をしめす人もいるはずだ。ただやはり態度を決め兼ねている人が圧倒的に多いということだろう。むしろ積極的に全体移住を考えている人は少ないのではないか。できれば帰りたい。でも本当に大丈夫なのだろうか。安全性ばかりでもなく仕事や日常の生活諸々に不安があるに違いない。

また確かに一斉の帰村にも問題がある。やはり村内は線量に相当差異があり、全員帰村というわけにはいかない。村が分断される心配がある。しかし全員新天地に移住することがよいかといえば必ずしもそうはいえない。問題は移住先の住民とのコミュニケーションの難しさであろう。

政府や東電の補償額の大小により、地元住民との軋轢もあり得るだろう。これは現在の一時避難にでも問題になっているようだ。全村移住を求めるグループは、村の除染にかかる約3200億円をかけるより、村の戸数1700戸に1億円分配し移住費用に当てた方が安上がりだと主張している。しかし、そんな単純に片付けられる問題ではない。「故郷の喪失」という苦しみは金銭だけで代償できる性質のものでない。また1億円をもらった新住民に地元民の気持ちは複雑だろう。

菅野村長は、あくまでも除染を尽くして理想として全村民帰村させる方針を固めているが、自分としては村長の意思を尊重したい。川内村の遠藤村長は「村に帰ることは理屈ではない。DNAにインプットされている。」とインタビューで答えていた。菅野村長も同じ心情と思われる。

除染の効果に懐疑的なジャーナリストやメディアがあるが、自分は決して思わない。家屋や公共・生活施設、学校の通学路の除染は充分成果を上げている。生活圏の除染をきめ細かく実施すればより安心が担保されると考えている。菅野村長は2年後の帰村を目指しているようだが、村長の希望が実現することを願っている。