仏蘭

マレーシアン女子２人の後釜として
あたしたちの農場にやってきたのがフランス人３人。

初のヨーロピアン登場に
農場がざわざわする。

洋風滝川クリステルCは23歳でペチャパイ。
彼女のカレシTは21歳なのに若禿げ、潔く坊主。

お付き合い期間：ひと月

オークランドのバーで働いてたMは26歳で
仕事を探しに来た二人と意気投合したらしく

いっしょに、この街にやってきた。

CとTは一日に50回くらい公衆の面前チューしてる。

そんな彼らは社長のもうひとつの持ち家に住んでいて
BBQに招待されたので行ってみた。

家賃週20ドル安いその物件は
あたしたちの家ほどきれいじゃないけれど

フランス人たちがフランス人風に使ってるせいか
古びた椅子ひとつとっても

なんだかおしゃれに見えた。

BBQには同居人の、
あたしの人生ではじめて出会うチリアン女子２人も同席。

Mの、カントリーな音楽のセンスも
そのぼろ屋を古風なカフェに見せる。

Mといっしょに働いてみて
このひと、スマートだと直感した。

あたしが２ヶ月かかって習得した、
ほかでは全く通用しない、

この農場で生きてく術、

この仕事の流れだと次は何が必要になるとか、
誰々のお冠は聞き流すとか、

をMは２日で心得てた。

そんなMは食べることや生活することを
うまく肩の力を抜きつつ、楽しんでるようで

誕生日だったCのために
ちゃちゃっとチョコレートケーキを焼いていたので

バレンタインには
青い眼をした、かわいいかわいいカレシに何か手作りをと思ってたあたしは

早速作り方を聞いてみた。

材料は
カカオ高めのチョコレート　200グラム　
バター　50グラム
小麦粉　100グラム
卵　４個
砂糖　100グラム

といたってシンプル。

仕事あとで疲れてるだろうに
買い物にもつきあってくれ、

あたしが家に帰って
ケーキを作成してるとき

「ていうか量りなしで材料の目方をどうやって量ったの？目分量？」とか

「小麦粉っていつ入れるの？
　溶き卵に入れたら、ダマになっちゃったよ」とか

「緊急、オーブンに入れたケーキの真ん中だけ膨らんで
　休火山みたいになっちゃった！」とか

いちいちメールしても

お菓子の神はちゃんと質問に答えてくれた。

逆立ちしたって彼女たちの食や音楽のセンスには
太刀打ちできないのだけれど

休火山ケーキはなんとか食べられそうだ。