旅する小林亜星

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罰金

2009-05-25 16:51:55 | 青春生き残りゲーム
南島旅行中13日め。

旅行中何度かけんかになった仏蘭人Mとも
今日でお別れ。

明日彼女はインドネシアに飛ぶ予定で
あたしは最後にもう一度NZを南下する。

1週間の旅で台湾人女子が2日間飛び入り参加したほかは
ずっと二人きりだった。

クライストチャーチに向かう途中で
Arthur's Passに立ち寄って軽く歩く予定だった。

未婚のあたしたちにもってこいだろうと
あたしが選んだBridal Veilというトラックで事件は起こった。

この一週間彼女の文句にうんざりしてたところに
そのトラックが彼女の期待以下だったことを受けて

「がっかりだわ。
 何も特別なものはなかったし、普通の小道!」と

あたしのNZで最後になるトランピングを台無しにする彼女のつぶやき。

あまりにも長く続くので

「わかった。
 もうおなかいっぱい。
 そこらへんで文句はやめといて」と言ってみたけれど

「やめないわ」と彼女が言ったので

初日にライトをつけっぱなしでバッテリー切れにしたのにも
今日15キロスピード違反で切符を切られたのにも
山道であわやのガス切れにも

きれなかったけれど

今度ばかりはちょっときれて

「帰りは別々に歩こう」と言ったら彼女は

「ただの冗談じゃない。
 ばかげてるわ。
 あなた、いくつなの?10歳じゃない」と言っていなくなった。

頭を冷やしたかったあたしは10分ほど遅れて
駐車場への道をのんびり歩いた。

今日いっしょに旅する最後の日なのに
クライストチャーチでは別々の宿に泊まることになるかもしれないと思いつつ

車に戻って

「ごめん」と言うと

彼女は何も言わずに急発進した。

面倒くさいのでほうっておくと
先ほど罰金をとられたばかりだというのに

曲がりくねった山道を感情に任せて
すごいスピードで運転してるので

このレンタカー、保険に入ってないんだったと思い出して

大事故になる前に事態を収束させようと
ちょっとわき道に停車してもらった。

「ごめん。
 あれはあたしの過ちだったわ。
 ただ頭を冷やしたかったの」と謝ると

彼女は怒りで取り付く島もない状態だった。

「いやでも、あまり速いスピードで運転するとよくないと思うよ」と

付け加えたのが更なる過ちだった。
彼女は再び怒りで車を急発進させた。

「アキ男。はフェアじゃないわ。
 あたしが20分前どんな気持ちだったかわかる?」と彼女は言った。

彼女のほうを見ると
彼女はちょうどひと粒の涙をほほに垂らしたところだった。

!!!

この子供のけんかはどっちもどっちだと思っていたので
彼女の言い分をとりあえず聞き流すことにした。

「今度誰かがあなたに不愉快な冗談を言ったら聞き流すべきだわ。
 ま、あなたはあたしのアドバイスなんてどうでもいいだろうけれど。
 で、アキ男。はそれについてどう思うの???」

と彼女の話の最後に質問され

感情的になって
その感情が心の中にいっぱいになって
思わず泣いちゃうところ、まるであたしみたいと思ったあたしは

嬉しくなって思わず笑ってしまった。

「いや、あなたのアドバイスは覚えておくよ。
 あなた、あたしみたいだなと思って」と言ったら

彼女は

「それ、最悪だわ」と笑った。

けんかをしてもやはり彼女のことが好きで
おもしろいところも文句が多いところもひっくるめて

1週間の旅を通じて
彼女とはほんとうの友達になれた嬉しさに

今度はあたしの涙が止まらなくなって
わんわん泣き始めたら

彼女が

「この会話、ばかげてるわ
 まったくばかげてるわ」と言って

また路肩に停車させた。

二人で泣きながら大笑いして
チョコレートを食べてから

クライストチャーチに向かった。

そんな二人旅。
コメント
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