旅する小林亜星

小林亜星情報満載

2006-12-04 20:57:08 | 俺のすべて
神保町駅で都営新宿線に乗り込むと
入り口の一番近くに座ってた男性が
対面に座ってた彼の友人の隣の席が空いたらしく席を移った。

あたしが彼が座ってた席に座ろうとした瞬間、
椅子の端っこにお茶目な携帯ストラップが忘れられてるのを発見した。

一瞬彼のものかなと思ったものの
そのまま席に落ち着いて本を読み始めた。

本を読んでいると
徐々にストラップのことが気になり始めて
のA恵さんの一日一善の話を思い出した。

彼女はある駅で痴漢がパンチラ写真を撮ってるのを目撃し
駅員に突き出すタイミングを逃してしまったので
パンチラ写真を撮られてたのを気づかなかった女子高生にそのことを教え
痴漢の顔をこっそり写メし警察に届けたという。

もしかしたらそのストラップは彼が大切なひとからもらったものかもしれないし
実は何らかの思い入れがあるのかもしれないと思い始めた。

自分が彼だったら
忘れたことを教えてくれればよかったのにと思っただろうとも思った。

けれど彼の前に座ってたひとが忘れていったものかもしれないと思い
その場合のあたしの恥ずかしさも同時に予測した。

本の延長線上にいる彼をチラチラと見て様子を伺う。
どうやら日本人ではないようだ。

もし彼があたしより早く降りるなら
そのときあたしの隣の扉を出ていくなら声をかけよう、

いやもし向こう側の扉から出てしまったらどうしよう、

あたしが先に降りることになったら
彼のところまで話しかけにいこう、

などと読んでる本はそっちのけで
あたしの思考は何通りもの組み合わせに右往左往。

ええい、日本人だって東京人だって親切なひとはいるんだということを体現しよう、
と自分に暗示をかけたころ

あたしの降りるひとつ前の駅で彼は降りる素振りを見せた。
どうやらこちらにやってきたので

彼の腕に触れて
あたしのお尻の先にあるストラップを指差すと
彼は首を振って微笑んだ。

ほっとしてあたしの心配は杞憂に終わったけれど
もしあのとき声をかけないことを選択してたら
それはずっとこころにひっかかっていただろう。

A恵さんは一日一善は自分のためにするんだと言っていた。
まさにその通りだと思った。
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