視姦

２ヶ月ぶりに美容師に会いにいく。

気怠い平日の午後に
あたしの伸びきった髪に触れながら
「どうする？」と美容師が言うので

「挑戦的な感じで」と答える。

髪を切り終わったあたしを見て
「鏡に映ってる自分を見ようとしないんだね」と美容師。

どこかしら実写版ではないほうのNANAに似てるよな
挑戦的な髪型をチラチラと見ながらも
自分の顔を正視できないのは今に始まったことではなく。

２年前美容師に出会ったときには
鏡越しに美容師と視線を合わせることもままならなかったのに
今じゃ微笑みかけられるよになった。

「自分を見なよ」と繰り返す美容師はここぞとばかりにサドで
未だに自分に自信が持てないあたしはそれができない。

鏡越しに自分に微笑みかけられるよになったときが
あたしが美容師を卒業するときかもしれない。