扇子と手拭い

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ツボ心得た児童たち(落語2―71)

2011-12-06 23:30:49 | 日記
▼ツボ心得た児童たち
 小学校で落語を披露した。「子供たちにナマの落語を聴かせてやって欲しい」。校長先生から出前寄席のリクエストが届いた。児童対象の落語はやったことがないので戸惑った。が、こちらの心配をよそに、児童はよく笑う。大人以上に感受性が強い子どもたちは笑いのツボを心得ていて、そこに来ると一斉に声をあげて笑った。45分が短く感じた。

 話は半年ほど前にさかのぼる。突然、校長から電話があった。なんでも、4年生の教科書に落語「ぞろぞろ」が登場するそうで、「子供たちは、本物の落語がどういうものか知らない。児童の目の前で演じてもらえないか」と校長先生から注文。「ああ、ようがす」と二つ返事で引き受けた。落語に対する子どもの反応を見たかったからである。

▼与太郎が心配でやめ
 この小学校での落語会開催が、「時そば」を習い始めた一因でもある。私の持ちネタに「寿限無」や「饅頭怖い」といった子供向けの噺がない。「宿屋の富」「百川」「蔵前駕籠」などなど大人向けのネタばかり。「蛙茶番」に至っては艶笑落語で、児童に聴かせる噺ではない。

 「時そば」ともう一席は最初、「牛ほめ」をやろうかと考えていた。だが、これは与太郎噺。大勢の中には、与太郎に似たちょっと、おっとりした子もいるのではないか。後でその子が「やーい、お前は与太郎だ」などと、からかわれはしないかと心配になり、「牛ほめ」はやめた。

▼そば食べる仕草にゲラゲラ
 持ちネタの中では比較的、子供に分かり易い噺として「粗忽長屋」と「手紙無筆」が浮かんだ。このうち、どっちにしようか迷った末、「粗忽長屋」に決めた。授業の一環だから持ち時間は午後1時35分から45分間。噺に集中していると、時間の経過が分からない。残り時間2、3分前になったら合図をしてもらうよう校長先生に頼んでおいた。

 4年生百数十人を前に、江戸時代の蕎麦屋と二八蕎麦のいわれについて説明した後、「時そば」を高座にかけた。児童の後ろに校長先生ほか、4年担任の先生がずらりと並ぶ。そばを食べる仕草に、児童はゲラゲラ笑った。振り分けの行燈を担いでやって来た蕎麦屋を呼ぶところは、AKB48風に大げさな振りで手招きしたら大喜び。子供は、動きに即座に反応する。

▼ネタを子供用に改める
 元ネタでは「いよ、当り矢、いいね、何がってオメエ、オラ、これからチョイト脇行って、サイコロで悪さしようと思ってんだ」という客の「サイコロで悪さ」は、「3億円のジャンボ宝くじを買いに」と子供用に改めた。児童の前で「ガラッポン」とサイコロ賭博の真似は出来ない。手直しした個所を間違わないかと心配したが、どうにか乗り切ることが出来、子供たちも楽しんでくれた。

 続いて「粗忽長屋」を披露。これはマクラでは笑ったが、本題に入ると4年生には少々難しかったのか、笑いが途切れた。噺そのものは、慌て者が「行き倒れ」を親友の熊公と勘違い。とんでもないシクジリをやらかす愉快な話。しかし、子供たちには「行き倒れ」という言葉自体がよく理解できなかったようだ。

▼子供向けは難しい
 途中から足を投げ出し、退屈する子もちらほらで、演じながら「ネタ選びを間違えた」と焦った。子供向けの落語は難しい。もし機会があれば、この次は「饅頭怖い」を覚え、高座にかけたい。

 もっと時間があれば手拭いと扇子で、いろんなものを表現する仕草を見せてやりたかった。そのあたりが少し心残りだったが、次の授業が待っていた。最後に4年生の代表からシクラメンの鉢植えをいただいた。ありがとう。いい勉強になった。楽しかった。

コメントを投稿