扇子と手拭い

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ノミニケーションが一番

2015-06-30 15:03:22 | 落語
▼難しい落語の表現
 6月27日の当ブログ「ユーモア心得たお譲さん」の続きです。

 落語の学校「文治塾」は前回紹介した2人のほか、4人が高座に上がった。19歳の男子学生は「今日は見学に来た」と言いながら、自己紹介では笑いを取るなどやる気満々だった。あたしは前回、途中で沈没した「藪医者」を披露。師匠から貴重な助言をもらった。

 注意1はネタ。「藪医者」だが、50年以上も前に柳家小さんのが高座にかけた噺。それをそっくりマネても今の時代にそぐわない。あたしもそう思ったので「病家」は「病人」と言い換えた。「約束を反故にする」ことを「ションベン」と小さんが言った。これも現代では理解できないと思って、この部分をそっくりカットした。

▼言い換えるなど工夫が
 「ついでにチンピも削ったら」と師匠。噺では「薬の名前だ」と言うだけ。自分で話していてもピンと来ない。多分、漢方薬の「陳皮」かな、と推測するくらいだから思い切ってカットした。

 いくら名人とは言え、小さんが活躍した時代と現在では時代が違う。言葉も当時のままでは今の人に通じない。言い換えるなど工夫が必要だ。へっつい、と言って理解できる人がどのくらいいるか? かまど、のことである。かまど、も分からない?

▼恥ずかしがらないで
 話す時は「正面を切る」ことが大事、と忠告を受けた。目線が下だと声が遠くまで届かない。「恥ずかしがらないで」やらないと、と師匠。あたしの悪いクセが治っていないようだ。6年前に落語を初めて習った時も、同じ注意を受けた。

 もう一つ。上下(ジョウゲではなく、カミシモという)。登場人物の立ち位置、顔の向きだ。飯炊きの久三と藪医者。左を向いて話していた久三が時々、正面に向きを変えるがよくない。聞き手は「今、誰が話しているか」分からなくなる、と注意された。

▼ノミニケーションが一番
 プロの噺家は時々、正面を向き、後で元の形に戻すのでそうするのがいいと思っていた。これは腕が上がってやることで、まずは基本をきっちりたたき込め、というわけだ。落語仲間だけの稽古では、こうした細かな点は気付かない。やはりプロの目は違う。

 2時間半の稽古は、中味が濃かった。あたしが師匠に「軽く一杯やりませんか」と声がけし、時間に余裕のある5人が師匠を囲み、近くの居酒屋で“反省会”を開いた。この時間が楽しみで稽古に通う人もいる。仲間意識を深めるにはノミニケーションが一番だ。楽しい会だった。

別の女を連れて行く

2015-06-29 23:59:24 | 落語
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▼雨の中・・・ただ感謝
 雨の落語会。客の入りが気になった。が、足元の悪い中、たくさんの方がいつも通り顔を見せてくれた。早く浅草に着いたのでなじみの呉服店に寄った。鶸萌黄(ひわもえぎ)の細い縦縞が気に入り羽織ってみた。ピッタリの寸法。

 買った。あれこれ迷った末に買った品は案外よくない。楽屋で着替えようとして雪駄を忘れたことに気付く。着物にスニーカーは不釣り合い。雨の中、雪駄を買いに駆けた。浅草はすぐ手に入るからいい。

▼会場は熱気でムンムン
 旅先で知り合った客が何人も来てくれた。気が付くと会場は満席。大変な熱気だ。席亭に頼んでエアコンの温度を下げてもらった。落語会は「のっぺらぼう」で幕を開けた。次いで「幇間腹」、あたくしが「手紙無筆」。前半の最後は「金明竹」で締めた。

 仲入りの後は、「桃太郎」に続いて手話落語で「犬の目」。最後はあたくしが艶笑落語の「宮戸川」を披露。2時間30分の落語会は盛会のうちにお開きとなった。

▼別の女を連れて行く
 今回は“番外編”がある。朝方、携帯電話が鳴った。「旅先の山形でご一緒したYです。別の女を連れて行きますので、旅行の話は一切しないでください」。面食らったがすぐ「承知いたしました」とあたし。

 このダンナは旅の道中、バスの中でずっと彼女と手を握り合うなどラブラブ状態。サクランボ畑では実を獲って彼女に食べさせていた。若い恋人もびっくりのアツアツぶり。見たところダンナは70代半ば。女性はどう見ても50代そこそこ。20歳以上は歳が離れている感じだ。

 電話をもらうまでは「旅の女性を同伴する」と思っていた。ところが、落語会に来た女性は旦那と歳がつり合う女性だったから多分、女房だろう。それにしても達者なものだ。 (2013年6月21日記)

暖かい長屋の住人

2015-06-28 17:38:48 | 落語
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▼落語塾スタートから遅刻
 当ブログの落語シリーズも100回を迎えた。落語塾「花伝舎」の門をたたいたのは2009年5月28日。午後2時から講座開始というので30分前に地下鉄西新宿駅に着いた。花伝舎までは徒歩6、7分だから十分間に合うと計算していた。

 ところが、地上に上がってビックリ。私の記憶にある景色とは全く違う風景だ。高層ビルが林立していた。道路の幅も広くなり、人間臭さが消えた不気味な街に変わっていた。コピーした地図がいい加減。教室にたどり着いた時は午後2時を過ぎており、スタートから遅刻となった。

▼高齢者に「想像しろ」は無理
 落語塾の先輩に誘われて見学に行ったのが有料老人ホーム。様子を見た途端、「私には出来ない」と直感した。大半が目を閉じたまま眠っているような状態。こんな中でとても落語は無理だ。

 「年が明けたらお前のそばに、きっと行きます断りに」は、落語の「三枚起請」に登場する。年季奉公を終えたら所帯を持つと約束した女郎が、金の切れ目は縁の切れ目と、馴染み客に縁切りに行くというくだりだ。

 古典落語には、こんな粋な文句が随所に出てくる。落語は想像芸だ。これを高齢者に「想像しろ」と言う方が無理な話。だから私はこうした場所ではやらないことにしている。落語を話している私まで気が落ち込むからである。

▼スーパー銭湯は大失敗
 首都圏のスーパー銭湯で落語会を開いたが失敗した。「湯屋番」なんぞという落語があるのでイケルと思った。だが、家族連れが飲み食いする。皿にナイフやフォークがカチカチ当たる。周囲が騒がしくて落語をやる雰囲気ではなかった。
 
 だが、落語は楽しい。テレビで一部のお笑い芸人がやるような、頭を小突いたり、水をぶっかけたりの、いじめの類は皆無だ。落語にも頭のネジが1本足りない与太郎が登場する。


▼暖かい長屋の住人
 与太郎のシクジリは熊さん、八っつあん、大家さんたち長屋の住人がみんなで助け、暖かく見守ってやる。登場人物がみんな温かいのが落語だ。だから聴いていると心がホンワカしてくる。

 落語は楽しい。愉快だ。そんな落語との出会いに感謝している。(2010年10月7日記)

おもてなしの宿で落語 1

2015-06-28 10:28:38 | 落語
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▼扉を開けてびっくり仰天
 すっかり定着した千葉・「サンライズ九十九里」での落語会。ホテル側の協力にはいつも頭が下がる思いだが、今回は会場の扉を開いてびっくり仰天した。余りに気配りが行き届いていたからである。

 目の前に太平洋の水平線がくっきりと見える房総のホテル。ここで開く「つくも寄席」は3回目。その前に、春に「菜の花寄席」と称して1回やったので落語会としては都合4回ということになる。

▼フカフカの落語座布団
 東京駅前から直通バスで90分。ホテルに到着したのが午後2時過ぎ。まずは落語会場の下見。ロビーを通り抜け外庭に面した立派な会議室が会場だ。大きな木の扉を開くと準備万端整っている。高座の前に何列もイスが並ぶ。

「すごい」の声でみんなが高座を見た。真新しい落語用のフカフカの特性の座布団がどっかと構えていた。支配人は言った。「みなさんには毎回、宿泊料をいただいた上に、無料で落語をやっていただいております。この座布団は私たちの気持ちです」。

▼座布団に負けない落語を
 さらに高座の脇には太い文字で出演者の名前を書いた「めくり」まであった。「めくり」を掛ける台まで作ってくれた。素人の私たちにこんなにしていただいて、ただただ感激である。

 「座布団に負けない落語を」と一同、気持ちを引き締めた。開演直前に、「つくも寄席」のお知らせを館内放送してもらった。今回も午後4時から夕席、8時から夜席の二部構成。

▼伊勢海老の姿造り
 夕食は午後6時からレストラン。案内された席は二面ガラス張りの角の席。太平洋を望む眺めが素晴らしい。大皿に乗った伊勢海老の姿造りが各人の前に運ばれた。次いでサザエの壺焼き、二分割した伊勢海老の中華風料理、マグロの造りなどが次から次へと出て来た。

 われわれの席は「ほんのお礼の気持ちです」と支配人が1品追加してくれた。が、とにかくここの料理は、伊豆の宿など比較にならないほど新鮮で中身がいい。その上、国民宿舎だから安い。だから常連客が多い。。(2010年10月3日記) 以下次号に続く。

おもてなしの宿で落語 2

2015-06-28 10:23:43 | 落語
▼心を込めたサービス
 私たちは年に数回、1泊2日で泊まりに行く。そのたびに「つくも寄席」で食博客に落語を披露。武者修行の場なのだ。有難いことには館内ポスター作成から掲示、会場のセッティング、空調の調節、イスなど後片付けに至るまで毎回、大変な協力をいただいている。

 以前、支配人はこんなことも話していた。「うちは海のほかに、これと言って見るべきところがありません。温泉もない。ですから料理とサービスだけは常に心を込めて努めたいと考えております」。

▼客と演者が響きあう
 温泉宿、ホテルの中には人気にあぐらをかき、高額をとりながら料理とは名ばかりの、鮮度が今ひとつの品を平気で出すところが少なくない。東京に近いとして、あぐらをかく伊豆箱根は特にひどいホテルや宿が多い。私は年末年始に宿泊し、嫌な思いをした経験が何度もある。「サンライズ九十九里」が好きなのは「おもてなし」の心があるからだ。 


 太平洋の海原を眼下に展望風呂に浸かった後、宿泊客が浴衣姿で次々に会場に姿を見せた。当初は緊張気味に聴いていたみなさんも、聴きなれたのか徐々に笑い声が大きくなってきた。笑ってくれると、こっちも乗ってくる。互いに響きあうのである。

▼落語のような笑い話
 こんなことがあった。初回参加のメンバーの1人が帰宅して体調を崩した。医師に診てもらったところ、「食べ過ぎが原因」と言われた。「出てくる料理がウマイので、つい食い過ぎちゃった」と本人。落語を地で行く話にみんなで大笑い。(2010年10月3日記) 以下次号に続く。

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