▼締め出し食った2人
「雑俳」と合わせて初春の高座までに覚えたいと思っているのが「宮戸川」。この噺は大人向きの艶笑落語である。それだけに、一歩違えると猥褻な噺になりかねない。そこを、どうまとめ表現するか、が思案のしどころ。(敬称略)
噺は、将棋に夢中になった半七が、帰りが遅くなり、おとっつあんから締め出しを食う。いつものように叔父のウチに泊めてもらうことになったが、そこに歌かるたで遅くなり、おっかさんから締め出しを食ったお花が泊めて欲しいとやって来た。
▼「半ちゃん恐いわ」とお花
近所で「早合点で早とちり」として有名なおじさんは、「そーいうことか、分かった」と2人を二階へあげてはしごを外す。戸惑う2人。そのうちに、ポツリポツリと降ってきた雨が、やがて盆を返したようにザー。雷がピカッと光って近所に落ちた。
お花は「半ちゃん恐いわ」と、思わず半七の胸に飛び込む。とっさのことで、思わず知らずお花をグッと抱きかかえる半七。裾が乱れた着物の下からお花の雪のように白い足がスーと出ている。
▼半七とお花どう描く
さて、問題はこれから先である。古今亭志ん朝は、「裾が乱れた着物の下からお花の雪のように白い足がスーと出ている・・・」と言った後、「こっから先、本が破けちゃって読めなくなって、失礼いたしました」と下げている。
古今亭菊志んは「半七はお花さんの膝の上に手を乗せて、その手がだんだん上がってくる・・・。というところでお時間でございます」と志ん朝を手本に、少しだけ手を加えている。
▼難しい半七の手
これに対し、「半七が19で、お花が18・・・。2人はいま、誰もが一度は通らなければいけない青春の門に差しかかっている。知らず知らずのうちに半七の手が外腿から内腿へ・・・。というところで本が破けてまして」というのが春風亭小朝。
確かに、小朝の「宮戸川」は面白いが、自分が演じるとなると、考えてしまう。小朝の場合は「小朝の宮戸川」が聴きたいためにやって来る客が対象。ところが、あたくしの場合は落語を初めて聴く人がほとんどだから、いきなり「内腿」まで行くとエロ話が始まった、と錯覚される。
▼艶笑噺と下ネタとの違い
艶っぽい噺は、どこでも演じても人気が高い。が、「お色気」でとどめるべきで、「エロ」まで飛び込んでは、それこそ艶消し。落語は、ヘンなお笑い芸人がやる下ネタとは違う。下品になっては元も子もない。その辺りの線引きをキチンとしないといけない。落語は想像芸である。マイルドに包み込んだ言葉から「色や艶」を頭に浮かべていただければ、と思っている。
そこで、あたくしは、落語仲間ではない友人に、いろんな噺家のサゲの部分を比較して聴いてもらった。その結果、「知らず知らずのうちに半七の手が・・・というところでお時間でございます」で決着した。
「雑俳」と合わせて初春の高座までに覚えたいと思っているのが「宮戸川」。この噺は大人向きの艶笑落語である。それだけに、一歩違えると猥褻な噺になりかねない。そこを、どうまとめ表現するか、が思案のしどころ。(敬称略)
噺は、将棋に夢中になった半七が、帰りが遅くなり、おとっつあんから締め出しを食う。いつものように叔父のウチに泊めてもらうことになったが、そこに歌かるたで遅くなり、おっかさんから締め出しを食ったお花が泊めて欲しいとやって来た。
▼「半ちゃん恐いわ」とお花
近所で「早合点で早とちり」として有名なおじさんは、「そーいうことか、分かった」と2人を二階へあげてはしごを外す。戸惑う2人。そのうちに、ポツリポツリと降ってきた雨が、やがて盆を返したようにザー。雷がピカッと光って近所に落ちた。
お花は「半ちゃん恐いわ」と、思わず半七の胸に飛び込む。とっさのことで、思わず知らずお花をグッと抱きかかえる半七。裾が乱れた着物の下からお花の雪のように白い足がスーと出ている。
▼半七とお花どう描く
さて、問題はこれから先である。古今亭志ん朝は、「裾が乱れた着物の下からお花の雪のように白い足がスーと出ている・・・」と言った後、「こっから先、本が破けちゃって読めなくなって、失礼いたしました」と下げている。
古今亭菊志んは「半七はお花さんの膝の上に手を乗せて、その手がだんだん上がってくる・・・。というところでお時間でございます」と志ん朝を手本に、少しだけ手を加えている。
▼難しい半七の手
これに対し、「半七が19で、お花が18・・・。2人はいま、誰もが一度は通らなければいけない青春の門に差しかかっている。知らず知らずのうちに半七の手が外腿から内腿へ・・・。というところで本が破けてまして」というのが春風亭小朝。
確かに、小朝の「宮戸川」は面白いが、自分が演じるとなると、考えてしまう。小朝の場合は「小朝の宮戸川」が聴きたいためにやって来る客が対象。ところが、あたくしの場合は落語を初めて聴く人がほとんどだから、いきなり「内腿」まで行くとエロ話が始まった、と錯覚される。
▼艶笑噺と下ネタとの違い
艶っぽい噺は、どこでも演じても人気が高い。が、「お色気」でとどめるべきで、「エロ」まで飛び込んでは、それこそ艶消し。落語は、ヘンなお笑い芸人がやる下ネタとは違う。下品になっては元も子もない。その辺りの線引きをキチンとしないといけない。落語は想像芸である。マイルドに包み込んだ言葉から「色や艶」を頭に浮かべていただければ、と思っている。
そこで、あたくしは、落語仲間ではない友人に、いろんな噺家のサゲの部分を比較して聴いてもらった。その結果、「知らず知らずのうちに半七の手が・・・というところでお時間でございます」で決着した。