扇子と手拭い

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ほんの、チョットしたこと(落語2-21)

2010-11-26 12:26:38 | 日記
▼チョットしたこと
 自分では結構、真剣にやっているつもりでも、他から見るといろいろアラが目立つ。この日の稽古で、講師の小文治さんから貴重な指摘を受けた。ほんの、チョットしたことだが、そのチョットに気が付かない。プロとアマの差である。

 持ち時間の関係で「宿屋の富」の半ばから始めた。私の噺が終わると「志ん朝さんの噺ですね。プンプンしてますよ」と小文治さん。「真似るのはいい、手本にするのは結構。しかし、ぺん太さん、自分が千両当たったら、どんな感じで喜ぶか。それを想像しながらやるといい」。

▼独りノロケは陽気に
 小文治さんの指摘は続いた。富の会場、湯島天神の境内に集まった人を指差し、「お前さんも千両当てたいんだろう?」と念押しする場面で、常に同じ方向を指している。並んでいるのではない。少しずつ指差す方向をずらすと、大勢いる中で「お前さんも」「そっちは、どうだい」の問いかけが生きてくる。

 そして、まだ当たってもいないのに、当たったつもりで懐手で鼻歌を歌いだす場面。「ここは独りノロケだから、(演者は)笑顔で陽気にやらないといけない」「真面目な顔をして演じると、観ている者はつまらなくなる」とアドバイス。小文治さんの的を得た指摘に、ただ、「なるほど」と言うだけである。

▼位置関係を考えて
 他の演目をやった受講生にも次々と的確な指摘。「たらちね」に登場する大家さんが嫁を紹介する。目の前にいる長屋の若い衆に語りかけるのに、高っ調子で大声を張り上げるのはヘン。位置関係を考えて話さないといけない。それだと、遠くにいる人に話しかけているように聞こえる。第一、大家さんが若過ぎる。

 噺に登場する人物像をハッキリさせることが大事。そうでないと、聴く側の頭の中に“絵”が出てこない。大家さんの年まわりを考えると、もっと低い声で静かにやった方がいい。ここに登場する若い衆はがさつ者。細かいところまで気が回るような男ではない。そんなところも考慮して描きたい。

▼落語は愉快な頭の体操
 落語は想像芸である、とよく言う。話し手が投げた言葉のボールを聴き手が受ける。頭の中で噺の場面を描く、という塩梅だ。だから、ボーとして聴いていたら、話し手が今、何をしゃべっているのか見当がつかなくなる。頭の体操としては、これほど愉快なものはない。

楽しい1日のスタート(落語2-20)

2010-11-24 01:30:04 | 日記
▼夕、夜席で80人近い観客
 ホテル5階の部屋から見下ろす海岸に、白波が音を立てて激しく打ち寄せる。近くでサーファーが波乗りの支度をしている。このホテルでの「つくも寄席」も恒例となり、夕席、夜席と合わせて客席を埋めた数は80人近くに上った。

 祝日(勤労感謝の日)の前日だったせいか、子ども連れの客が多かった。小学生の低学年に落語が分かるだろうか、と思ったが子どもたちはよく笑ってくれた。「落語の中身が分かって笑うのではなく、どうやら仕草が面白くて喜んでいるようだ」とぼて助さん。

▼1年半ぶりに「牛ほめ」
 午後4時開演の夕席に34人、午後8時からの夜席に43人の泊り客が足を運んでくれた。花伝亭の出演は3人。落語8席、いろ物2席の計10席を高座にかけた。このうち、ぼて助さんが「転失気」「居酒屋」を、笑龍さんが「長短」「短命」と、いろ物2席を熱演。私は「牛ほめ」「手紙無筆」「宿屋の富」と「蛙茶番」を受け持った。

 「牛ほめ」は落語の学校で最初に習った落語だが1年半以上、ご無沙汰していたので、改めて稽古し直した。この日も、電車内で小声で噺をさらっていた。すると4人掛けボックスシートの残る3人が、楽しそうに聴いてくれた。

▼奄美大島に出前寄席?
 出前寄席をやっていると言ったら、「ウチの方でもやってくれますか」。場所はどこかと聞くと、鹿児島。しかも奄美大島だという。どこでも行きますとは言ったが、これは遠すぎる。せめて関東周辺なら話は早いが・・・。

 そのあたりの事情を話し、無理だと返答したところ、「交通費はこっちで持つ」と旦那。これにはまた、ビックリ。冗談でしょう、と受け流していたら、旦那が「連絡先を教えてほしい」ときた。次の浅草で降りるというので、取りあえず一緒に降りた。

▼黒糖菓子を「食べてくれ」
 何でも、娘さんの顔を見に両親が上京、東京見物に行くところだという。私はこれから房総の出前寄席に行くと言ったら、カバンから土産用の黒糖菓子を取出し、「食べてくれ」と手渡した。突然の親切に恐縮しながら、落語の名刺を差し出し、次の電車に乗り込んだ。

 それにしても楽しい1日のスタートだった。

あった3時間半の価値(落語2-19)

2010-11-20 23:54:05 | 日記
▼練り上げ、噺を捏ねる
 「練る」と題した落語会を開いている師匠がいる。チラシに大書した「練る」に思わず見入った。おはこ(十八番)のネタであっても、現状に満足せずさらに練り上げ、噺を捏(こ)ねる。きょう、「ずぼら」さんの落語「初天神」を聴いて、そんなことを思い出した。

 「もみじ寄席」は、「ずぼら」さんが地元の落語仲間と開いている定例落語会。参加依頼があったので扇子に手拭い、着物に雪駄など、ひと揃え積み込んで車を走らせた。開演10分前だが観客はまばら。景気付けに出囃子のCDでもかけたらと促し、CDコンポが玄関先に運ばれた。

▼客席に地元町長と議長
 「うちのお客さんはいつも、始まるギリギリにドッと来る」と、「ずぼら」さんは安心しきった表情。なるほど、開演直前になって客が次々にやって来た。町長と議長がそろって顔を見せていたのにはびっくりした。

 3番手のぺん太は「宿屋の富」を引っ提げて高座に上がった。きょうは時間を気にせずに出来るので、タップリ25分、噺を続けた。けっこうな客席で、笑いが絶えない。トリは「ずぼら」さん。すでに客席は満席。後ろでは立ち見が出るほどの大入りだった。暖房は切ったままだが、会場は熱気でムンムン。

▼思わず引き込まれる
 「初天神」はこの季節の定番で、どこの寄席でもプロの噺家が高座にかけている。私は春風亭昇々の「初天神」が好きでよく聴いた。前座だがこの人の「初天神」は聴きごたえがある。と思っていたら、「ずぼら」さんの「初天神」がそれをしのいだ。

 「あれ買って、これ買ってと言わないから、初天神につれてって」と、きん坊がおとっつあんに哀願。ところが、きん坊はあめ玉買って、串団子買ってとダダをこねる。そんな親子のユーモラスなやり取りが絶妙で、間合い、仕草に引き込まれ見入った。情景が浮かぶ。

▼出た稽古の成果
 特に後半の凧揚げの場面。風に乗って舞い上がる凧。風向きと相談しながら巧みに糸を手繰り寄せる手つき。見事と言うほかない。稽古の成果が表れている。自分自身がこの噺を面白がり、入れ込んでいるフシが、聴き手にビシビシ伝わってくる。

 この人、われら花伝亭一門の落語仲間の間でも、「噺の上手さでは5本の指に入る」と聞いていたが、今日の「初天神」は面白かった。十分に練った、感じが伝わった。わが家から車で往復94㌔、3時間半かけて行っただけの価値は十分あった、と納得している。

人間業では考えられない(落語2-18)

2010-11-16 19:38:43 | 日記
▼出そろった出演者の「横顔」
 初春寄席の出演者のプロフィールが整った。「ちょいと、聞かせておくんねえ」と言ったら、「ホイ来た、お安い御用」と話してくれた。それぞれ個性があって面白い。主催者の話では、この「横顔」をチラシにして、会場で配るそうだ。

▼花伝亭 ぼて助
 今年1月、ひょんなことから「落語入門講座」を知った。ずっと昔、中学生のころ、よく落語を聴いた。三代目・三遊亭金馬がお気に入り。あれから半世紀、まさか高座に上がるとは・・・。前座の前座で本来なら人前で演じるなんて10年早い。ですが、これもご愛嬌とご容赦を。お気に入りの演目は金馬の「お化け屋敷」。特技はどこでもすぐ寝られること。60代もあと2年で卒業というのに、やたらパソコンに詳しい。

▼花伝亭 笑龍
 定年まで運輸会社に勤務。この間、キューバ、タイ、シンガポールなど25か国に赴任。現地の人々にマジックを披露、交流を深めた。ボランティア歴40年以上のベテラン。桂文楽や古今亭圓生など昭和の名人の落語を好んで聴く。昨年6月、胃と食道のがんの手術。落語を支えに「笑いの配達」に励む日々だ。30年になるゴルフは、このところ、お休みをしている。特技の「帽子トリック」は現在、プロ、アマ通じてこの人しかいない。

▼花伝亭 ローリー
 平成8年から始めた手話ボランティア。その後、ろうあ者の方から手話落語を教わった。最初の手話落語は「味噌豆」、声も交えて取り組んだ。その後、落語の学校、花伝舎で本格的に落語を学ぶ。桂枝雀の大のファン。ニオイに敏感。「ガス臭い」。ところが、ガス探知機では異常なし。指差す地下を掘ったところ、ガス管の亀裂から漏れていた。「人間業では考えられない」とガス担当者が腰を抜かした。ローリーといっても、れっきとしたオトコ。職業はタンクローリーのドライバー。

▼のんき亭 万福
 こっちは女性。小学4年の時、民放ラジオの子供落語番組で「寿限無」を披露。その時の審査員だった柳家小さんに「弟子にしてください」と手紙を出すほど、根っからの落語好き。休み時間には、教室で机の上に座り、たった一人で落語の稽古。テレビ番組「笑点」の座布団運びに応募。面接まで行ったが、気が付いたらズートルビーの山田君に座布団を奪われていた。尊敬するのは女性噺家、桂右團治。

▼花伝亭 楽勝 落語との出会いは昨年春、NHK朝7時のニュース番組。そこで落語の学校を知り、入門。古典落語の「江戸の粋」に魅せられて、ただ今、落語の精進を重ねているところ。電車の中で、小声で稽古をしていると、いつの間にか隣の席が空いた。好きな噺家は古今亭志ん朝。趣味は旅。ひなびた温泉に首まで浸かり落語の稽古。興に乗れば、一席伺うこともしばしば。寄席で携帯電話を失くすなど、しくじりが多いのがご愛嬌。
  
 と、いった塩梅です。どうぞご贔屓に。

初春寄席への心意気(落語2-17)

2010-11-16 17:16:23 | 日記
▼気合十分の主催者
 出演者のプロフィールについて、問い合わせがあった。先日、「出前寄席を頼みます」と連絡があった方からだ。初春寄席である。そんなに急がれても、と思ったが、受話器の向こうから熱いものが伝わる。熱心さに負けて「横顔」の作成に取り掛かった。

 「こんな早くに書くのかい」とメンバーは一様に驚いた様子。出演者の調整がやっと終わったところだ。しかし、主催者は、すでにポスターを完成させ、近々に掲示するそうだ。やることが早い。プロフィールが届き次第、チラシの作成に取り掛かりたい、と話していた。気合が入っている。

▼「観客100人集めたい」
 初春寄席は、私たちにとって初めての本格的な「ホール落語」。会場は、最寄りの駅から徒歩1、2分の5階建てビルの2階にある。主催者は、ここに「観客100人集めたい」、と張り切っている。みんなで落語を楽しむ実行委員会のような仕組みが出来たという。

 客集めに奔走している主催者のためにも、みっともない落語は出来ない。あたくしも、自分がしゃべっている噺をICレコーダーに吹き込んで、「マクラは長くはないか、のんべんだらりと語ってはいないか、間合いは、滑舌はどうか」、と今一度、聴き直してみたいと思っている。

▼稽古100回、落語は正直
 遊雀師匠が言っていた。「稽古100回。すべて稽古次第。落語は正直だ。手抜きしている奴に、落語の上手いのはいない」。師匠の稽古は厳しいが、飛び出す言葉が的を得ているから納得だ。メリハリが効いていて心持がいい。