▼立川志の輔という噺家
先日、念願だった立川志の輔の落語を初めてナマで聴いた。場所は東京・駿河台の明治大学アカデミーホール。会場は1200人を超える観客でギッシリ。志の輔は満員の客席に向かって自然に語りかける。気負いも、力みもない。ごく普通に話しているのだが、聴いているうちに、いつの間にか噺に引き込まれていく。磨きこんだ芸の波紋が客席に広がった。噂通りの噺家だ。彼はNHKの「ためしてガッテン」の司会をやっているから人気があるのではないことがよく分かる。
志の輔は古典から新作まで幅広く落語をこなす。その上、自ら創作落語を書き上げ、演じてみせるが、どれも専門家の評価が高い。志の輔落語を聴いた後の充実感は得難いものだった。東京・渋谷PARCO劇場で毎年1月、「志の輔らくご in パルコ」を約1カ月にわたって開催しているが、チケットは発売と同時に売り切れとなる。
▼定席寄席と独演会
立川談志一門だから、末広亭など都内の定席からは締め出されている。だから高座は毎回が真剣勝負。手など抜けば次の出演はかなわない。その真剣さに落語ファンは引き付けられるのである。私の知り合いは、都内ではチケットが取れないので、わざわざ新幹線に乗って富山まで志の輔落語を聴きに行った、という。
私もじっくり落語を聴きたいので、近ごろはお目当ての噺家が出演するホール落語や独演会に行くことが多い。このままでは、定席の寄席はますます廃れ、落語ファンは独演会に流れていくことだろう。この二極化の流れを食い止めるためには定席は、原点に立ち返ることだ。いつまでもふんぞり返っていては、そのうち都内から定席が消えよう。「お客様に来ていただくためには何をなすべきか」、を考え直すべきだ。
▼必要な穴をふさぐ努力
早急に改善すべきは、恒常的な「落語家の休演」対策。もとより噺家は個人営業だから、いい仕事が来たらそれを優先するのはよく分かる。しかし、のべつにこれをやられたら、お目当ての落語家の噺を楽しみにやって来る客はたまらない。
定席の席亭は、落語家のスケジュールを事前に聞き取り、可能な限り穴をあけないような出番表を作るべきではないか。頻繁に休演を繰り返す落語家には何らかのペナルティーを検討することも必要だ。自分たちの都合だけで勝手に“選手交代”を繰り返すようなことは、いい加減に改めなければならない。時代錯誤も甚だしい。
繰り返す。客は、あの噺家の落語が聴きたいから、時間をかけて、遠くからでもバスと電車を乗り継ぎ、やって来て、木戸銭を払うのである。いつまでも客を無視した、「サービス精神 ゼロ」を続けていると、客は本当に定席から逃げてしまうだろう。落語ファンとしてはそうならないことを願っている。
先日、念願だった立川志の輔の落語を初めてナマで聴いた。場所は東京・駿河台の明治大学アカデミーホール。会場は1200人を超える観客でギッシリ。志の輔は満員の客席に向かって自然に語りかける。気負いも、力みもない。ごく普通に話しているのだが、聴いているうちに、いつの間にか噺に引き込まれていく。磨きこんだ芸の波紋が客席に広がった。噂通りの噺家だ。彼はNHKの「ためしてガッテン」の司会をやっているから人気があるのではないことがよく分かる。
志の輔は古典から新作まで幅広く落語をこなす。その上、自ら創作落語を書き上げ、演じてみせるが、どれも専門家の評価が高い。志の輔落語を聴いた後の充実感は得難いものだった。東京・渋谷PARCO劇場で毎年1月、「志の輔らくご in パルコ」を約1カ月にわたって開催しているが、チケットは発売と同時に売り切れとなる。
▼定席寄席と独演会
立川談志一門だから、末広亭など都内の定席からは締め出されている。だから高座は毎回が真剣勝負。手など抜けば次の出演はかなわない。その真剣さに落語ファンは引き付けられるのである。私の知り合いは、都内ではチケットが取れないので、わざわざ新幹線に乗って富山まで志の輔落語を聴きに行った、という。
私もじっくり落語を聴きたいので、近ごろはお目当ての噺家が出演するホール落語や独演会に行くことが多い。このままでは、定席の寄席はますます廃れ、落語ファンは独演会に流れていくことだろう。この二極化の流れを食い止めるためには定席は、原点に立ち返ることだ。いつまでもふんぞり返っていては、そのうち都内から定席が消えよう。「お客様に来ていただくためには何をなすべきか」、を考え直すべきだ。
▼必要な穴をふさぐ努力
早急に改善すべきは、恒常的な「落語家の休演」対策。もとより噺家は個人営業だから、いい仕事が来たらそれを優先するのはよく分かる。しかし、のべつにこれをやられたら、お目当ての落語家の噺を楽しみにやって来る客はたまらない。
定席の席亭は、落語家のスケジュールを事前に聞き取り、可能な限り穴をあけないような出番表を作るべきではないか。頻繁に休演を繰り返す落語家には何らかのペナルティーを検討することも必要だ。自分たちの都合だけで勝手に“選手交代”を繰り返すようなことは、いい加減に改めなければならない。時代錯誤も甚だしい。
繰り返す。客は、あの噺家の落語が聴きたいから、時間をかけて、遠くからでもバスと電車を乗り継ぎ、やって来て、木戸銭を払うのである。いつまでも客を無視した、「サービス精神 ゼロ」を続けていると、客は本当に定席から逃げてしまうだろう。落語ファンとしてはそうならないことを願っている。