扇子と手拭い

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自らにプレッシャーを

2012-11-30 23:50:56 | 日記
▼今年最後の落語会
 私たち文七迷人会の定席である東京・浅草の「茶や あさくさ文七」で29日、今年最後の落語会を開いた。開口一番には「時そば」が登場したが、予想にたがわず上手かった。私もこの演目を時々やるが、とても歯が立たない。

 29日夕の浅草は、今にも降り出しそうな雲行きに加えて厳しい寒さ。ご贔屓さまに声掛けしたものの、果たして何人来ていただけるか心もとなかった。ところが有難いことに、開演直前にはほぼ満席状態になった。

▼開口一番は腕っこき
 いつものご贔屓さまのほかに、今夏の山陰の旅の道中で偶然、知り合った旅行好きの旦那や、三味線の師匠も顔を見せてくださった。外の寒さと裏腹に、会場は熱気に包まれた。

 文七迷人会は腕っこきが開口一番を務めることになっている。素人の落語会は最初が肝心で、ここで客が「つまらない」と思ったら、帰ってしまう。落語が好きで、木戸銭を払って噺を聴きに行く寄席の客との違いがここにある。

▼音を見事に使い分け
 この日のトップバッターは期待に応えてくれた。そばをすする音とダシを吸う音の違いを見事に使い分けて表現している。丼を持つ左手も固定。「間」もいい。もうすこし声が大きければ、さらに良かったが、私の「時そば」とは雲泥の差。悔しいけど完敗だ。

 この人は小学校4年生の時から落語と係っていた、という落語好きの女性だから、力の入れようも半端ではない。地元では学校寄席から各種の地域寄席まで様々な落語会を数多くこなしており、玄人裸足の実力派。落語を習って4年目の私など所詮、かなうはずがない。

▼基準は常に高めに
 力のあるメンバーと落語会をやると、いろいろ勉強になる。いつの日か「追いつき追い越せ」と、励みにもなる。私が、文七迷人会のメンバーには、自分よりレベルの高い人を基準に人選するのはこのためである。「時そば」は一度ぜひ、稽古を付けてもらいたいと考えている。

 「茶や あさくさ文七」での落語会は、回を重ねて今回で8回目。この会が大変なのは以前、自分が高座にかけた演目は、基本的に再演しづらいことである。常連のご贔屓さまが多いので、前にやった噺を再登場させると、「この落語、前に聴いたことがある」と指摘される。

▼ゴールを設定し稽古
 私は「蛙茶番」をかけた。当初は「手紙無筆」を予定していたが、調べたところ以前に演じたことがあるため、変更した次第。「蛙茶番」は他では何度も上演しているが、浅草ではかけたことがなかった。とはいえ、そんなに次から次へと新ネタを覚えられない。物覚えが悪い私などは、1つのネタを習得するのに3、4カ月かかる。

 第9回公演は、早ければ新春2月を予定している。あすから師走。高座に上がるまで3カ月前後。その間に、ネタを仕込まないといけない。大変だが目標、ゴールを設定するとダラダラ覚えず、シャッキと締っていいかも知れない。

 どなたも楽しめる愉快な噺として「雑俳」と、艶笑落語の「宮戸川」を稽古しようと思っている。アー、言ってしまった。公言した限りは、後へは引けない。前言を翻せば永田町の連中と同類になるからだ。

体全部でつくるご馳走

2012-11-04 18:01:53 | 日記
▼体全部でつくるご馳走
 審査委員長の神津友好は、「落語はしゃべり、顔(の表情)、体の全部でつくるご馳走」と言った。桂宮治の落語を聴けば、誰もが神津の言葉にうなずくだろう。4日放送の「NHK新人演芸大賞~落語部門~」は、宮治を際立たせた決勝大会だった。

 宮治受賞は既報の通りだがこの日、NHKが決勝の模様を録画放映するというので、テレビの前に陣取った。演目は出演順に、春風亭ぴっかり(女性)が「反対俥」、桂二乗が「癪の合薬」。そして桂宮治「元犬」、春風亭昇吉「たがや」、春風亭喬若「長短」と続いた。

▼演技力、タレント性、将来性
 大賞の選考基準は、演技力、タレント性、将来性と司会のアナウンサーが解説。ぴっかり、二乗、宮治と聴いたところで、「大賞はぴっかりか宮治」と感じさせた。最初5人そろって登場したが、残る3人は顔がこわばり緊張している。これで落語をやるのは無理だ。第一、聴き手がつらくなる。

 ぴっかりは、「反対俥」を座布団から飛び上がって威勢よく演じ、会場を沸かせた。「すごーい。噺に絵が出て来る」と司会者の女性タレント。落語を聴いているだけで場面が想像出来る、と言いたかったようだ。後の二乗はやりづらかったのか、話に勢いがなく笑いが少なかった。

▼犬に見えたと高い評価
 3番手の宮治は出囃子とともに笑顔で登場。テンポも軽やかに「元犬」を一席うかがった。審査員は「驚いた。出て来る時からニコニコ顔で、二つ目に上がりたてとは思えない」と、堂々と落ち着いた様子に驚きを見せた。

 後半に入り昇吉が登場。髪型を見てびっくり。ライオンのたてがみのようないつもの髪をばさりとカット。七三に分け、ポマードをテカテカにつけた出立で登壇した。だが、顔が笑っていない。ピリピリした感情が客席に伝わる。当然ながら笑いはほとんど起きなかった。

▼緊張で実力発揮できず
 最後の喬若も二乗と同じ上方からの選抜だったが、この人も緊張気味で話にゆとりがなかった。「長短」はもともと愉快な噺だが、気負い過ぎたのか怒鳴り声ばかりが印象に残った。