扇子と手拭い

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桂宮治がNHK大賞受賞

2012-10-26 00:48:16 | 日記
▼宮治が新人大賞を受賞
 朗報、朗報ですよこれは。何がって、パソコンを開けた途端、「桂宮治がNHK新人演芸大賞を受賞した」、とメール。「獲れたらいいな」と思ってはいたが、こればかりは蓋を開けるまではわからない。やったね宮治、おめでとう。これからも贔屓にするよ。(敬称略)

 たった今、湯島天神から帰って来たばかり。当代の人気落語家、春風亭一之輔
の独演会を聴きに行った。2時間、3席たっぷり聴かせてもらって、いい心持ちで家路についた。

▼宮治の高座はお試し価格
 宮治受賞の知らせは、彼の落語会を主催しているサンケイリビング新聞社からだった。今月20日、宮治がNHK新人演芸大賞を獲ったとあった。今まで知らなかった。11月4日が本選とばかり思っていた。

 そして「今まさに、ノリノリの“旬のひと”。桂宮治の高座をお試し価格でご覧になれる最後のチャンスかも!?」と、チケットの先行予約をPR。当然、聴きに行きますよ。大丈夫。

▼受賞者は噺家エリート
 ところで、このNHK新人演芸大賞は、プロ野球の新人賞と同じで、一度しか受賞できない若手噺家たちにとっては極めて大事な登竜門。これまでの受賞者をみると、柳家喬太郎、林家彦いち、古今亭菊之丞、古今亭菊六、春風亭一之輔と、そうそうたる顔ぶれが揃っている。

 受賞者たちは、いずれ落語界の大看板となる可能性を秘めた面々。先が楽しみである。十一代桂文治を襲名した平治もかつて受賞した。

▼犬になり切っての噺
 今回の最終選考に臨んだのは宮治のほか、春風亭昇吉、春風亭ぴっかり、笑福亭喬若、それに桂二乗の江戸、上方両落語会から選りすぐりの若手5人。

 宮治は「元犬」で決戦に挑んだ。口入れ屋の上総屋が“只四郎”を犬と知っているという設定。ふだん通りに話したが、犬になり切っての巧みな噺の構成に高い評価が下ったという。

 そういえば宮治は、寄席で「強情灸」をかけた時も、江戸っ子が熱い風呂に入る場面で、登場人物になり切って熱演。観て(聴いて)いる側が、「よく我慢してあんな風呂に入るな」と、思わず声を挙げそうになるほど、噺に客を引き込んだ。

▼ネタに欲しい季節感
 落語界初の東大出身の噺家である昇吉は、早くからこの賞に賭けていた。ネタも、はなから「たがや」1本に絞り、繰り返し稽古を重ねるなど意欲十分だった。明るい高座は楽しいが、ただ、演目選びがチョイトまずかった。

 この話はご案内の通り夏のネタで、両国の川開きが舞台。真夏の夜を彩る花火を見ようと見物人が押し掛けごった返している橋の上での騒動が筋である。やはり、晩秋のネタとして「たがや」はいただけない。季節感を考慮して欲しかった。

▼よくやった宮治
 もう一人の有力候補はぴっかり。紅一点の彼女が受賞していたら、NHKはあの、人気落語ドラマ「ちりとてちん」の続編を作るのではと言われるほど期待されていた。宮治はそうした強豪を退けて受賞したのだから凄い、と言わざるを得ない。よくやった。

愉快で面白かった初体験

2012-10-14 23:01:27 | 日記

▼芸協のファン感謝デー
 東京・西新宿で14日、開かれた「らくごまつり」に行った。落語芸術協会が主催するファン感謝デーで、今回で6回目。生憎の曇り空だったが無料寄席あり、落語体験教室ありで、終日賑わった。午前7時前から並んで開門を待っていたファンがいたと聞き、驚いた。(敬称略)

 おでんや熱燗、焼きそば、ホットドッグ、被災地の物産などの屋台が軒を連ねる中、会場に着いて早々、胸に「staff」の名札をぶら下げた若手の落語仲間と出くわせた。ボランティアでの参加だが、普段にも増して、生き生きとしていた。無料落語会はどの会場も立ち見が出るほどの盛況で、「staff」たちはうれしい悲鳴。

▼寄席文字に初めて挑戦
 寄席文字に初めて挑戦した。めくりに書く独特の文字である。客でいっぱいになるように、との思いを込めた橘流の文字。見ただけで「落語だ」とすぐ分かる、あの字である。われわれにはなくてはならない”備品”だ。寄席文字教室は人数限定、と聞いていたので早めに行って並んだ。

 日本中の寄席の文字は、すべて橘一門が書くのだという。新宿末広亭は誰それ、浅草は誰それと担当が決まっているそうだ。あたしがこの日、ご指導いただいたのは橘右佐喜(うさぎ)師匠。この日のために、わざわざ奈良からお越し願ったという女流書道家。大阪の定席「天満天神繁盛亭」の寄席文字を担当している師匠。人気落語家の笑福亭鶴瓶や桂文枝(前の三枝)らの文字も書いている。

▼ミミズのような縦棒
 基本は横棒と縦棒ということで、白い台紙に墨をたっぷり付けて練習。横は何とか形?になったが、縦は難しい。棒がスッと上から下に直線にならないで、ミミズがのたくったようになる。「気にしないでドンドン書いてください。棒がキチンと書けるようになるまでには3、4カ月かかります」と右佐喜師匠。

 最後に1人1人に好きな文字を一字ずつ書いてくれた。寄席文字は「壽」より、「心」のような簡単な文字の方が難しいのだという。この世界では、ちゃんと「小さん」が書けたら一人前だそうだ。

▼難しいが、面白かった挑戦
 あたしは「花伝亭」と書き、「どうも寄席文字になってない気がする」と言いながら見てもらった。「寄席文字の花は、形が全然違う」と右佐喜師匠は台紙の下段に、実際に「花」を書いてくれた。「せっかくですから伝亭もお願いします」と図々しくせがんだ。

 「そんなに書いてもらったらウン十万円はするぞ」、と落語仲間から半畳が飛んだが、右佐喜師匠は笑いながらリクエストに応えてくれた。ミミズ文字も記念の品、と考え持ち帰った。やってみると難しいが面白かった。

桂の頂点に立つ文治

2012-10-12 00:06:53 | 日記
▼十一代桂文治の襲名披露
 十一代桂文治襲名披露公演を聴きに浅草に行った。10日は浅草演芸ホールでの披露興行が楽日(千穐楽)とあって、開演前からファンが並んだ。(敬称略)

 昼席のもう一つの楽しみは桂宮治。前座に続いて登場した宮治は「元犬」を高座にかけた。これまで聴いた他の噺家の「元犬」とは全く違う。筋は同じだが設定を上手にアレンジして、楽しい物語に仕上げている。宮治は只者ではない。

▼騒がしい二階の団体客
 開演から1時間ばかり経過したところで団体客が二階席にあがっって行った。引率者らしき人物が、何やら説明している。ザワザワと騒がしくて、とても落語をやる雰囲気ではない。噺家も出るに出れない有様。駆け上がって行って「お静かに」と注意したくなった。

 やっと収まったところで、高座に登場した私たち花伝亭の師匠、小文治は、お得意の落語「不動坊」を短く切り上げ、「なすかぼ」を踊った。兄弟子の優しい心配りで、場内の空気は一気に和らいだ。

▼呼吸、息づかい、言葉の抑揚
 落語界の最長老、米丸の落語はよく聞き取れないところがあったが、披露口上では一転、メリハリの効いた口調で立派につとめた。大したものだと感心した。落語の中で「落語は話芸。間だけでなく、呼吸、息づかい、言葉の抑揚。このすべてがうまくいかないと、ちゃんとした落語にならない」と米丸は言った。よく分かる。

 いま、名人、志ん朝の「大工調べ」の冒頭部分を稽古しているが、これがなかなか難しい。
        A 留の野郎な、字が読めるんだってよ。
        B へー、本当かいオイ、嫌なヤツだね。

▼流れる噺ににじむ粋
 たったこれだけのことだが、この「本当かいオイ」から次の「嫌なヤツだね」への掛かり具合が、何度やっても上手くいかない。志ん朝がやると、実に江戸の職人らしさが出ている。粋なのだ。繰り返し聴きながら間を覚えようとするが、自分でやってみると、まったく違うのだ。志ん朝の落語は流れるような噺の中で、随所に職人気質がにじんでいる。

 ものの本によると、志ん朝は稽古の虫だったという。ご贔屓さまから接待を受けてどんなに遅くなっても、うちに帰って必ず稽古をしていたそうだ。稽古の量は半端じゃなかった、と誰もが口をそろえて言う。だから、あれだけの噺家になった。「間だけでなく、呼吸、息づかい、言葉の抑揚」・・・。難しい。

▼桂の頂点に立つ文治
 口上で笑福亭鶴光が言った。「桂文治という名跡はもともと上方のもので、桂を名乗る落語家の総元締めに当たる大きな名前だ」。桂の亭号がつく噺家には落語芸術協会会長の歌丸、前会長の米丸、“隣りの晩ごはん”で、協会理事の米助、さらには上方落語協会会長の文枝(前の三枝)、上方落語の名人、故枝雀ら、そうそうたるメンバーがいる。その頂点に立つのが文治。責任の重さはいかほどだろうか。