扇子と手拭い

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現代に古典落語をどう伝えるか

2015-12-23 21:48:50 | 落語
 今はどこのうちも炊飯器だから「かまど」と言っても分からない。ましてや「へっつい」などと言おうものなら目を丸くする。落語をやっていていつも悩むのはこの点だ。

 あたしは基本的に新作落語はやらない。古典落語を軸にして覚えているが困るのは言葉。今月、小学校の出前寄席。予定では「饅頭こわい」をやるつもりだった。この噺には「ヘビが嫌いだ。とにかく細くて長いものはみんな嫌いだから、うどんもそばも食わねえ。ふんどしもしていない」というくだりがある。

 「ふんどし」の登場で客の笑いを誘うのだが、先生に聞くと4年生にはわからないという。パンツや下着と言い換えては落語にならない。下帯などと言えばなおわからない。先生が「お相撲さんが締めているマワシと言えばわかると思いますが」と言った。

 それ、いただき。落語を始める前に、ボードに「ふんどし=お相撲さんが締めているマワシのようなもの」と説明を書いた。最初に「時そば」を披露したが、早々に「振り分けの行灯という荷を担いで」というセリフが出てくる。

 「荷を担いで」と言っても、児童には天秤棒が理解できないだろう思い、身振り手振りで説明。同様に「行灯」も解説した。しかし、あまりこれをやり過ぎると落語のリズムが狂ってくる。落語は「間」と同様に「流れ」が大事だ。この「流れ」が滞ると笑いが起きない。

 時代とともに日常の生活が変化する。銭湯などもドンドン姿を消している。「番台」を知らない世代が増えている。そのうち落語の「湯屋番」もできなくなるかも知れない。

 この噺は、道楽息子が親父に勘当されて居候の身となる。「若旦那、あなたもそろそろ働いたらどうです」と催促されて向かったのが銭湯。うまくすれば女湯がのぞけると番台に上がった若旦那の愉快な物語。残したい噺である。

「腕を上げた」に噴き出した

2015-12-23 10:55:21 | 落語
▼前回の客と出会った
 落語は気分が乗らないと人前でできるわけがない。頼りないバスの運転手に「ひょっとすると、ひょっとするのではないか」と肝をつぶした。とても落語をやる気分ではない。ということで一夜明けて気分を一新。21日午後1時から落語会を開いた。

 客は宿の泊まり客。その中に前回、この宿で披露したあたしの落語を聴いたという人がいた。まさか。信じられなかった。この夏、ここの温泉に初めて泊まった。その時、落語を披露した。その際の眼鏡をかけたおばちゃんにまた、会ったのである。あたしの友人が覚えていて声をかけたところ、向こうも記憶が蘇ったらしい。事実は小説より奇なり、なんと言うが不思議なことがあるものだ。

 夏の時は日帰り客の休憩所だったが今回は、宴会場を提供してくれた。手書きの落語会の「お知らせ」を一番目立つエレベーターの正面に掲示。宿からラジカセを借りた。ところが、いざ、CDをかけようとしたところ、音が出ない。会場の前を通りかかった2人組の若者に見てもらったところ「このラジカセ、壊れているようです」。道理でかからないはずだ。

 仕方がない。出囃子なしでやることにした。落語を聴いたことがないという若者たちも席に座った。午後1時の開演には10分ばかり早いががやりますか、と言ったら、客席から「とっくに1時を過ぎています」と声がかかった。あたしの腕時計をよく見たら止まっていた。

 はなから「しくじり」続きだったが、始めることにした。開口一番は「時そば」。落語を始めて聴く人には、食べる仕草がある噺が喜ばれる。次いで若者向けに艶笑噺の「明烏」を披露した。

 終わったところで最前列の若者2人組に感想を聴いたところ、「聴いていて情景が頭に浮かんだ」と言ってくれた。嬉しい限りだ。ただ、「ハバカリ」という言葉が分からなかったと若者。ハバカリとは「おトイレ、便所」のことだと補足説明をすると、うなずいた。

 予定ではこれでお開きだったが、気分が良かったのでもう一席、やることにした。「宿屋の富」。千両富が当たる噺なので、あたしは暮れから新年にかけて毎年、高座にかけている。

 拍手をいただいた後で、「腕を上げましたね」と声がかかった。見ると、例の眼鏡をかけたおばちゃんだ。3か月前に立った一席聴いただけなのに、常連客のようなことを言うので思わず噴き出した。

「雪道は恐い」とバス運転手

2015-12-22 22:39:12 | 落語
 これは落語ではない。ホントの話。今月20日に実際に体験した話だ。この夜、宿の客に向けて無料落語会を開こうと思っていたが、明日にした。

▼標高1,200mの温泉地
 福島の野地温泉を訪ねた。磐梯朝日国立公園内の標高1,200mの高所にある温泉地だ。8月末に初めて訪ね、泉質がすっかり気に入り再びやって来た。元は秘湯の宿だったが部屋数が増え、秘湯の枠から外されたという一軒宿。

 今年は雪不足で近くのスキー場はいまだにオープンできない状態だ。それでもあたりは真っ白の白銀の世界。しばしの雪国を堪能した。

 宿と言っても3階建てのホテルである。東日本大震災で手痛い被害を被り改築。屋根から落ちた雪は1メートルほどの高さだったが、思ったほど寒くはなかった。

▼「日陰の道路は恐い」
 ツアーバスは新宿から上野を経由して福島へ向かった。渋滞もなくスイスイ走った。が、岳温泉から山道に差し掛かると雪道に一変。道路は凍結。急に運転手がつぶやいた。「日陰の道路は凍っているので恐い。スタッドレスタイヤをはいているから大丈夫ですが、ゆっくり行きます」。

 途端ににぎやかだった車内がシーンとなった。当然だ。プロのバスの運転手がコワイなどと言えば、乗客は穏やかではない。「あの峠の向こうが野地温泉です」と運転手が余計なことを言う。

▼相次ぎ事故に遭遇
 「遠い先の説明はいいから、ちゃんと目の前を見て運転しておくれ」と私。続けて「慌てないでゆっくりでいいから安全運転で頼むよ。急ぐことはない。宿には今晩中に着けばいい。場合によったら、あしたの朝でも構わない」と言ってやった。緊張した車内と運転手の気持ちをほぐそうと思った。一瞬、空気が和んだ。

 ところが、峠に差し掛かった途端、山道で相次いで事故に遭遇した。しかも3件もである。いずれもスリップ事故らしく、破損した乗用車を乗せたレッカー車が道路中央に止まっていた。若い警官が手招きをして、脇を「通れ」と言っているが狭そうだ。「通れないよ。落っこちる」と運転手。

▼ホッとした表情
 午後3時半をとっくに過ぎている。このままでは埒(らち)が明かない。私がバスから降りて現場責任者とみられる警官と交渉し、レッカー車に道を開けてもらうよう頼んだ。

 しばらくしてレッカー車が走り出した。若い警官が慌てて警察車両に乗り込もうとして駆け出し、車の直前ですッ転んだ。続いてバスも走り出し、無事宿についた。みんなホッとした表情だ。

 旅の身支度を解くとさっそく、温泉に向かった。白濁の湯に首まで使った友人は「極楽気分だ」と満足げだった。

落語より面白い話

2015-12-16 18:46:48 | 落語
 毎月1回、落語仲間が集まって稽古会を開いている公共施設で地域落語会を開いた。無料とあって、前回同様に盛況だった。

 遅れて客が1人、やって来た。席はほとんど埋まった状態なので、演者が交代する時期を見計らって後部座席に案内しようとした。すると、前方から高齢の女性客が私のところまで来て言った。「前の席が一つ空いていますよ」。

 「それはよかった」と遅れてきた客を誘導して前の方に向かった。確かに前から3列目にひとつ、空席がある。「あそこが空いています」と私が指さしたとたん、その席になんと、先ほど空いていると教えてくれた女性がちょこんと腰かけた。

 なんてこったー。狐につままれた気がした。自分が立ち上がった席とも気付かずに、「空席がある」と勘違いしたらしい。改めて顔を拝見したら、何事もなかったような表情をして腰かけていた。

 仕方がない。私が「申し訳ありません」と謝って、誘導してきた客に元の後部席に座ってもらった。いろんな客がいるから大変だ。後でこの話を落語仲間にしたら、「落語より面白い」とからかわれた。

スタッフからも「次はいつ」

2015-12-15 15:37:11 | 落語
▼なんとも嬉しいメール
「先日はお忙しい中の一席、ありがとうございました。仕事中に落語が聴ける贅沢なひとときでした。スタッフからも次はいつと早速せがまれております」-。なんとも嬉しいメールが11日の日曜に、落語会を開いたカフェラウンジの支配人から届いた。

 こちらでの落語会は初めてなので、楽しんでいただけただろうかと案じていました。ところが、早々にこのような有りがたい言葉を頂戴し、恐縮している次第。

 閑静なこの地での落語会だけに、「継続して開催できれば」と考えていたので次回の日程を早急に決めたいと思っている。初春寄席となると、年明けの1月、できれば早々に、と考えている。

 1月の日曜は3日と10日。それに17、24,31日。3日はラウンジがまだ正月休み。となると10日が最も早い日曜日。この線で交渉してみよう。

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届いたメールは以下の通り。

「先日はお忙しい中の一席、ありがとうございました。
初心者とは言え落語が好きな私としても、仕事中に落語が聴ける贅沢なひとときでした。スタッフもとても楽しかったようで、次はいつ次はいつと早速せがまれております。

 残念ながら当日は雨天であること、常連さんの学園町自治会員の方々が遠足に行ってしまったことなど重なり、30名に届かずではございましたが、ご都合がよろしければまたお願いさせて頂きたいと心より思っております。

 ポスターを作成した彼も、落語は初めてだったがすごく面白かった、今度寄席に連れて行ってくれ、と私に申しておりました。(私も)落語ファンとして、たくさんのお客様に落語の魅力を伝えるお手伝いをさせて頂ければと考えております。