扇子と手拭い

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子どもの実力に脱帽

2013-05-22 00:57:08 | 日記
▼特級品の上手さ
 子どもたちの間で落語が人気だそうだ。小学校の4年生の教科書に落語「だくだく」が載っている。あたくしも校長先生から声がかかり、学校寄席をやったことがあるが、21日夜のテレビで見た2人は特級品の上手さだ。彼らの落語の巧みなのには脱帽だ。カミシモが決まって、間がいいと来ている。表情も豊かだ。これではかなわない。

 午後11時から始まる番組を楽しみに、ブランデーをちびりちびりとやりながら待った。この酒は、20年以上も前に3万円で買い、仕舞い込んだまま、すっかり忘れて放置していたものだ。画面は、軽妙な司会の三宅裕司が若い出演者を紹介。開口一番は香川県の中学3年生、「日向家ひかる」。演目は上方落語の「手水(ちょうず)廻し」。彼女は8歳の時見たNHKのテレビ番組「ちりとてちん」で落語の虜になり、地元の落語教室に通った。好きこそものの上手なりで、グングン頭角を現し、年間45回も高座に上がるというから半端ではない。

▼見事な扇子の使い方
 表情が豊かなうえ、何人もの登場人物を見事なまでに使い分ける。カミ、シモが決まっている。落ち着いて間もいい。審査員の古今亭菊之丞は「目の使い方がいい」と褒めていた。2人目の落語小僧は、山梨県の高校1年生、「ちび柿家まんごりら」。この変わった名前はマンゴーとゴリラが好きだという彼に、師匠の林家彦いちが名付けた。彼は子どもの時から「人を笑わせるのが好きだった」という。

 この日の演目は動きの激しい「反対俥」。威勢はいいが、そそっかしい車屋をアクションを交えてたっぷりと披露。車屋は前の川を車を引いて渡ろうとする。「何をするんだ。やめろ!」という客を尻目に川に飛び込む。ブクブク。小さい魚を、扇子を小さく広げて表現。この大胆な扇子の使い方に笑いが起きた。三宅裕司、ゲストの菊之丞も思わず絶賛する出来だった。 

とても彼らにはかなわない。やあー、勉強になった。

粋な街で粋な落語

2013-05-18 22:19:33 | 日記
▼江戸が似合う町
 地下鉄茅場町の次が人形町で、その次が小伝馬町。路線は違うが、すぐ脇には浜町があり、日本橋がある。いずれも時代劇や古典落語によく登場する地名である。「人形町」と聞いただけで、十手を手にした“目明しのだんな”が飛んできそうな、江戸の町が目に浮かぶ。そんな町で17日、開かれた落語会は、落語好きのための噺家の会だった。

 落語会は桂三木男の「看板のピン」で幕を開けた。彼のおじいさんは、有名な桂三木助である。あたくしは三木男の落語を聴くのは初めてだが、「稽古が足らない」と感じた。少し線が細いようで、いいものを持っているのに表に出ていない気がする。

▼格の違いみせた文治
 二番手からは真打登場で、瀧川鯉橋が「粗忽の釘」で登壇。次いで、橘家蔵之助が「蛇含草」をかけた。三番手は、古今亭文菊の「あくび指南」。3人3様で互いにいい味を出し、客を飽きさせない。特に文菊の「あくび指南」は噺事態が愉快だが、ばかばかしい役を生真面目にやる「指南役」の役どころを巧みに表現するなど、非凡なものを感じさせた。

 仲入りを挟んで桂文治が得意の「擬宝珠」を披露。あたくしはこの噺を4、5回聴いており、最初、目録を見た途端、「またか」と少しがっかりした。が、始まると、思わず身を乗り出して聴き入った。それまで聴いた文治の「擬宝珠」の中で、最高の出来だった。「上手いね。ほかの若手とは格が違う」と隣席の落語仲間がうなった。

▼参考になった「百川」
 立川生志が、春風亭昇太から直接、教えてもらったという昇太作の新作落語「マサコ」を好演した。一瞬、ヒヤッとしながらその後、ドッと笑う噺。初めて聴いた落語だが、昇太の才能の豊かさを感じさせた。

 トリをとったのは三遊亭兼好の「百川」。この噺は、あたくしも持ちネタにしているのでしっかり聴いた。三遊亭の大師匠である圓生の噺をベースにしながら、長い噺をうまく刈り込んで、随所に兼好流の味付けを施しながら、威勢のいい河岸の若い衆の噺に仕立て上げていた。仕草に思い悩んでいたあたくしは、大いに参考になった。

▼落語漬けの7席
 午後6時30分に始まった落語会が終わったのは午後9時である。通常、寄席の場合は、落語が2席か3席続くと、「色もの」といって漫才やマジックなどが登場する。が、2時間半、タップリ落語漬けである。それでも、飽きさせないどころか、「まだ聴きたい」と客に思わせるところが、この日の落語会の凄いところだ。

 若手ながら、落語巧者をそろえていると会が盛り上がり、ファンが離れない。次回が待ち遠しい。

アマ落語で怖いのは

2013-05-07 23:52:49 | 日記
▼座布団もチラシも足りない
 今度の落語会ほど問合せがあったのは初めてだ。広報活動が効いたようで、多い日には7、8件。中には「そこで毎日、やっているのか」というのもあった。GW最後の5月6日の昼下がり。旧吉田家書院で開いた「にこにこ柏寄席」。用意した座布団もチラシも足りなくなった。

 開演は午後1時30分だが、会場設営などの準備があり、出演者は午前11時に集合。みんなで早めの昼食を済ませ、会場に向かった。旧吉田家は国の重要文化財に指定された歴史的建造物とあって、細かなところまで規則が決められている。当然、屋敷内での飲食は禁止。

▼古い切株で台を補強
 正面の長屋門の脇に、寄席文字で大書した「落語会開催」の案内を張ろうとしたが、直接ピンを指してはダメだと言われた。物置から高さ1㍍ぐらいの台を見つけてきて張った。風がきつくて吹き飛ばされそうなので、古い切株を運んできて補強した。

 いよいよ高座作りだが、旧吉田家の係りの方が「これでどうです」と指差した。広くてがっしりした台だが、やたら重い。4人がかりで担いで、書院に運んだ。余りの重さに手がしびれた。

▼一番乗りは午前9時
 そこに別の係りがやって来て「畳が傷むので、下に何か敷いてください」と言った。余った毛氈を敷き、基礎枠を置き、その上に長方形の台を乗せ、上に広いテーブル板を置いた。あとは赤い毛氈と座布団で高座が完成。

 開場時間の午後1時まで10分あまり。そろそろ客が来るころなので出演者は着替えを始めた。客の一番乗りはなんと「午前9時にやって来た」と、旧吉田家を案内するボランティア・ガイドが話した。屋敷の見学を兼ねて来たようだ。

▼蔵の脇で最後の稽古
 あたくしが開口一番を担った。「宮戸川」はネタおろしとあって、不安が残る。この日も午前2時まで稽古を繰り返したが、念のためと屋敷蔵の脇で「宮戸川」をさらった。「在ないので、どこに行ったのかと思った」と落語仲間。最後の稽古をしていたというと、別の出演者が「往生際が悪い」と茶化した。

 開口一番の責任は重い。何しろこれから始まる落語会の雰囲気つくりをしなくてはならない。会場が和み、後に続く者が演じやすいように、つまり、われわれの世界で言う「会場をあっためる」役である。開口一番の出来、不出来で、その日の落語会の全体の雰囲気が決まる。だから緊張する。いいお客ばかりで、何度も笑い声が起きたのでホッとした。

▼アマ落語で怖いのは
 「宮戸川」の次に「粗忽の使者」、そして「カラオケ医院」。仲入りの後、「犬の目」「大工調べ」と続いて、最後が「寄り合い酒」の計6席。「あの人が高座に出てきただけで楽しくなった」という客からの有難い声の反面、気になる声も一部、届いた。

 アマチュア落語で一番怖いのは「つまらない」との声である。プロ、アマの客の違いは、プロの場合はカネを払って聴きたいと、向うからやって来る者が相手。ところが、アマは、落語など特に聴きたいと思っていない人に来ていただくのだ。プロとは別の意味での苦労がそこにある。

▼大事な出演者の人選
 一度聴いて「つまらない。面白くない」と思ったら、二度と足を運んではくれない。だから、私は出演者の人選には、ことのほか気を使っている。「もう一度、聴きたい」と思っていただけるメンバーを集めたい、と考えている。客の声は大事にしたい。