▼後世に名遺す噺家
立川談志が亡くなって20日以上経つというのに今なお、メディアが取上げる。異端児。無鉄砲。風雲児。いろんな冠が付いた噺家だ。談志落語については「好き」「嫌い」がはっきりしているが、のちの世に名を遺す噺家であることは間違いない。(敬称略)
朝日新聞はきょう(16日)の夕刊で、5段抜きで談志の人となりを伝えている。昨夜(15日)のNHKの人気番組「クローズアップ現代」は、談志の特集を組んだ。その中で番組は古典落語の名作「芝浜」に触れ、談志落語を語った。4年前に演じた「芝浜」は落語通から「落語の金字塔」と絶賛された。
▼輝く談志の「芝浜」
飲んだくれの亭主に意見する恋女房。この時、談志はむき出しの感情を激しくぶつける女房を演じて見せた。これまで聴いたことも、見たこともない「芝浜」。観客は型破りの演出に驚嘆。すぐに割れんばかりの拍手を談志に返した。
「芝浜」と言えば、三代目桂三木助のおはこだが、談志はこの噺を反芻し、談志の「芝浜」をこしらえた。落語に出て来るような人生を送りたいと、弟子たちに言っていたぐらいだから、四六時中、それこそ落語漬けの毎日だった。「芝浜」も高座にかけるたびに輝きを増した。
▼何も隠さないと談志
だが、談志は自分の出来に不満を持つ。十八番となった「芝浜」を毎年のように噺を変え、そこに工夫を重ねた。それでもなお満足しない談志に、立川流顧問のイラストレーター、山藤章二は「常に向上心を忘れない人だった」。
「己を語れ。オレは何も隠さないから、ONもOFFもない」と山藤に語った。談志が著した「現代落語論」は“落語のバイブル”、と言われている。落語に係わる者としては、一度は目を通しておきたい書籍だ。
▼落語に危機感の談志
彼の偉才は早くから衆人の知るところだったが、20代後半ごろ、既に落語の現状に危機感を抱いていたという。そんなこともあってか、談志は落語協会を脱退、新たに落語立川流を創設。定席からも排除された中で、志の輔を筆頭に談春、志らくなど多くの逸材を世に送り出した。
後進の育成はどの世界でも重要な務めだが、平成の時代に談志ほど、落語界で人を育てた者は他には見当たらない。噺家のニューリーダーが次々と巣立っていった。野球に例えるなら名監督である。この一点だけみても、談志の落語界への貢献度が分かろうというものだ。
▼違った芝浜やれた談志
噺家志望とは別に、ビートたけしや放送作家の高田文夫、ロカビリー歌手だったミッキー・カーチス、漫画家の内田春菊、映画監督の山本晋也らが弟子入り。ほかに元警視庁幹部や元参院議員、一足先に亡くなった人気漫画家の赤塚不二夫らもおり、弟子は多士済々。
談志は鳴り止まない拍手の中、「また違った芝浜がやれました。よかったと思う」とにっこり。テレビカメラがアップでとらえた。一呼吸おいて「こんなにできる芸人を殺しちゃあもったいないよ」といって笑わせた後、観客に向かって「一期一会。有難うございました」と深々と頭を下げた。
立川談志が亡くなって20日以上経つというのに今なお、メディアが取上げる。異端児。無鉄砲。風雲児。いろんな冠が付いた噺家だ。談志落語については「好き」「嫌い」がはっきりしているが、のちの世に名を遺す噺家であることは間違いない。(敬称略)
朝日新聞はきょう(16日)の夕刊で、5段抜きで談志の人となりを伝えている。昨夜(15日)のNHKの人気番組「クローズアップ現代」は、談志の特集を組んだ。その中で番組は古典落語の名作「芝浜」に触れ、談志落語を語った。4年前に演じた「芝浜」は落語通から「落語の金字塔」と絶賛された。
▼輝く談志の「芝浜」
飲んだくれの亭主に意見する恋女房。この時、談志はむき出しの感情を激しくぶつける女房を演じて見せた。これまで聴いたことも、見たこともない「芝浜」。観客は型破りの演出に驚嘆。すぐに割れんばかりの拍手を談志に返した。
「芝浜」と言えば、三代目桂三木助のおはこだが、談志はこの噺を反芻し、談志の「芝浜」をこしらえた。落語に出て来るような人生を送りたいと、弟子たちに言っていたぐらいだから、四六時中、それこそ落語漬けの毎日だった。「芝浜」も高座にかけるたびに輝きを増した。
▼何も隠さないと談志
だが、談志は自分の出来に不満を持つ。十八番となった「芝浜」を毎年のように噺を変え、そこに工夫を重ねた。それでもなお満足しない談志に、立川流顧問のイラストレーター、山藤章二は「常に向上心を忘れない人だった」。
「己を語れ。オレは何も隠さないから、ONもOFFもない」と山藤に語った。談志が著した「現代落語論」は“落語のバイブル”、と言われている。落語に係わる者としては、一度は目を通しておきたい書籍だ。
▼落語に危機感の談志
彼の偉才は早くから衆人の知るところだったが、20代後半ごろ、既に落語の現状に危機感を抱いていたという。そんなこともあってか、談志は落語協会を脱退、新たに落語立川流を創設。定席からも排除された中で、志の輔を筆頭に談春、志らくなど多くの逸材を世に送り出した。
後進の育成はどの世界でも重要な務めだが、平成の時代に談志ほど、落語界で人を育てた者は他には見当たらない。噺家のニューリーダーが次々と巣立っていった。野球に例えるなら名監督である。この一点だけみても、談志の落語界への貢献度が分かろうというものだ。
▼違った芝浜やれた談志
噺家志望とは別に、ビートたけしや放送作家の高田文夫、ロカビリー歌手だったミッキー・カーチス、漫画家の内田春菊、映画監督の山本晋也らが弟子入り。ほかに元警視庁幹部や元参院議員、一足先に亡くなった人気漫画家の赤塚不二夫らもおり、弟子は多士済々。
談志は鳴り止まない拍手の中、「また違った芝浜がやれました。よかったと思う」とにっこり。テレビカメラがアップでとらえた。一呼吸おいて「こんなにできる芸人を殺しちゃあもったいないよ」といって笑わせた後、観客に向かって「一期一会。有難うございました」と深々と頭を下げた。