扇子と手拭い

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「タダ」と分かりニコッリ

2015-02-22 21:38:12 | 落語
▼出前寄席は真剣勝負
 あたしの旅の目的は温泉だ。あと一つは宿での出前寄席。2泊3日の道後温泉の旅では初日、2日目と通して落語会を開いた。出前寄席は、あたしにとっての“武者修行”。見ず知らずの方に、あたしの落語が通用するかどうか。毎回が真剣勝負である。

 ホテル椿館で旅の荷支度を解き、ひとっ風呂浴びた後、出前寄席について宿の責任者に説明。最初はどこでも警戒する。後でカネでも請求されるのでは、と用心する。が、「タダ」と分かると途端に、先方の表情が緩む。みんな「タダ」が大好きだ。

▼即座にポスター作成
 今回、椿館の担当者Nさんには大変世話になった。開演時間の館内放送を依頼したところ、出来ないといわれた。以前、放送をして泊り客から「ウルサイ」とクレームが出たそうだ。それ以来、地震など緊急時以外はやらないという。

 代わりに「お知らせ」を掲示してくれた。Nさんは仕事が早い。趣旨を説明したらパソコンで即座にポスターを作成。30分後には館内のエレベーターと大浴場の入り口に貼ってくれた。

▼めくりがないとクレーム
 1階ロビーの座席も並べ替え、高座にふかふかの座布団も用意。CDの出囃子担当も彼にお願いした。1日目は「時そば」と「明烏」を披露。2日目は「粗忽長屋」と「宮戸川」「蛙茶番」を高座にかけた。初日の客は43人、2日目は29人が聴きに来た。

 夕食の際、初日に来た客が「めくりがなかった」と言った。そばにいた仲居さんが、慌ててメモ用紙とボールペンを持ってきて、「お名前を書いてください」とあたしに言った。

 Nさんが急きょ、めくりを作ってくれ、そのあとの落語会に間に合わせた。ところが、夕食の席で「めくりがない」と言った婆さんの姿はなかった。注文付けたことを、すっかり忘れたようだ。

隠れた名所、内子町

2015-02-22 21:36:59 | 落語
▼得難い癒しの里
 古民家探訪が好きな私は今回、初めて訪ねた内子町の魅力に取りつかれた。松山からJRで1時間の町には明治、大正、昭和初期の家並みがそっくり保存されていた。戦災を免れたのが幸いしたという。とにかく、白黒の切り絵を見ているようで心が躍る。得難い癒しの里である。

 四国・松山はこれまで5、6回訪ねたことがあり、その都度、木造三層桜の道後温泉本館にも浸かった。この本館は夏目漱石の小説「坊ちゃん」にも登場する。日本最古の歴史を誇る温泉だ。だが、内子は知らなかった。隠れた名所を探索したくなった。

▼そんなバス便はない
 道後温泉広場近くの観光案内所の話だと、徒歩6、7分で宇和島観光のバス停。そこから内子行のバスが出るというので行った。「そんなバス便はない」と言う。「JRがいい」と教えてくれたので、チンチン電車で松山駅に行くことにした。

 東京と違い交通の便がそれほど良くはない。1時間に1本というのはざらだ。戸惑っていたら、市電に乗り合わせた30代の女性がスマホで内子行の電車時刻を調べてくれた。「8時42分ですから急がないと」と女性。

▼乗った瞬間、発車
 「市電が着いたら、地下道をくぐると駅に出ます」と彼女。旅行者と分かり親切に教えてくれた。腕時計が40分を指した。お礼を言い、市電が着くと旅の友と2人して急いで駅に駈け出した。

 料金表など見る暇がない。手にした小銭を自販機に放り込み、切符を手にホームに駆け込んだ。乗った瞬間、電車のドアが閉まった。ギリギリで間に合った。

▼心が和む眺め
 乗客は私たち2人を含め5人。広くてきれいな車両の座席は、沿道の菜の花をイメージしたのか、黄色と鶯色で統一してあった。暖かな春の日差しをいっぱいに浴びて、車内は暖房がいらないくらいだ。

 すっかりいい気持になり、ウトウトしているうちに目的地の内子に着いた。駅の待合室には25センチ四方の手作り座布団が敷いてあった。思わず心が和む。

▼「素晴らしい」、の一語
 駅の周りは今風の建物が多いが、しばらく歩くと重要文化財に指定された商家や住宅が姿を見せた。印象に残ったのは内子座だ。約100年前に商家のだんな方が資金を出し合って建てた劇場だ。老朽化が進み、一時は取り壊しの話もあった。が、町民の力で昭和60年にもとの形に復元した。

 とにかく「素晴らしい」、の一語に尽きる。舞台中央の回り舞台から花道のスッポン、お囃子方の黒簾に至るまで本格的な歌舞伎舞台を備えた劇場だ。

 観客席はというと、これまた大変。正方形に仕切った枡席は舞台から遠ざかるに従い傾斜が大きくなっている。これだと前の人の頭にさえぎられて舞台が見えないということはない。二階席はコの字型に見物席がしつらえてある。

▼ここで落語会が夢
 劇場再開のこけら落としでは、故中村勘三郎が舞台を務めたそうだ。こんな場所で落語がやれたら最高だ、などと考えていたら、案内してくれた方が私を舞台のそでまで連れて行った。「ここに金屏風があります。赤い毛氈も用意してありますよ」と言った。

 近郷近在の皆さんを無料招待して昼、夜席を2日2晩通しでやれたら言うことなしだ。そんな、夢みたいなことを空想しながら、内子座を後にした。

実り多い落語会

2015-02-22 21:35:45 | 落語
▼2週続きの落語会
 先週に続き今日も同じ場所に出前寄席をした。この団体はA班、B班と2週に分けて落語を聴いてくれた。今回も10分の中入りを挟み、3席通しで公演。途中、足がしびれる場面もあったが、みなさんが大層喜んでくれ、疲れも半減。大事にしたい落語会だ。

 6階にホールを設けたビルの地下に食堂街がある。毎回ここで昼食をとるが、どこも味が今一つの店ばかり。先週食べた店も期待外れだった。で、今回は駅前のコンビニで弁当でも買って楽屋で食べようと考えていた。

▼予想外に美味いソバ
 そんな時、電車を降りて改札口に向かう中、立ち食いソバの店が目に留まった。「そうだ、冷たい弁当より温いソバの方がいいか」と考え直して店に入った。420円のかき揚げソバを注文。

 予想に反し結構いける。なかなかの味だ。立ち食いだからと期待していなかったが驚きだ。この種の店で、これだけのソバを食わせるところは、そうざらにない。野菜のかき揚げもカラッとして食感がいい。なんだか得した気持になった。

▼実りの多い落語会
 いい心持で楽屋入り。ホールの広い舞台の上には赤い毛氈を敷いた高座がしつらえてあり、その前にマイクがセットしてある。この会はすべて係りの皆さんが段取りよく整えてくれるのでありがたい。持参しためくりと出囃子のCDを預けて着物に着替えた。この日の観客は約190人。

先週、今週と2回続いたホールでの“独演会”。実りの多い会だった。

ラジオ寄席に当たった

2015-02-22 21:33:31 | 落語
▼公開録音に当選
 当たりくじにはとんと縁がないあたしが初めて当たった。ラジオ寄席の公開録音に当選。その上、後の抽選会では酒缶まで当たった。この次は、外に出た途端、車に当たって跳ね飛ばされるのではないか、と心配しながら 会場を後にした?!?

 TBS主催のラジオ寄席。瀧川鯉昇、五街道雲助の2人が出るので応募した。あたしは抽選と名の付くものに当たったためしがない。今回もダメモトで葉書を出した。

▼130席は満席状態
 ラジオ寄席から封書が届いた。多分また、「残念ですが・・・」との返事だろうと思いながら封を切った。「ご招待」とあるではないか。驚いた。「マジかよ」である。

 15日は日曜とあって赤坂の店はほとんどがお休みだ。道ゆく人もまばらで、どの通りも閑散としている。開演30分前に会場に着いた。すでに130席は満席状態。空いている席は壁際に並べた席しかない。

▼開演前に拍手の練習
 2回分の収録で前半のトリが鯉昇の「茶の湯」。後半は雲助が「厩火事」を高座にかけた。ほかに漫才や漫談など4組が出演。例によって開演前に、番組ディレクターの指導の下、拍手の練習があった。みんな慣れたもので1回で合格。

 「茶の湯」は鯉昇のセンスが光った。笑いが少ない噺を、知らぬ間に鯉昇ワールドに導き、愉快な物語に仕上げていた。雲助も古典落語の大御所らしく長講の「厩火事」を20分きっかりにまとめて聴かせた。さすが当代落語界をリードするご両人である。

▼「当たり」は嬉しい
 番組終了後にお楽しみ抽選会があった。スポンサーの酒造会社からのプレゼント。3等が10人。いきなり「105」番。当たった。といっても、小さな缶入りの日本酒1本。だが、「当たり」は嬉しいものだ。日本酒はあまり飲まないので、抽選にはずれた落語仲間に手渡した。

200人の観客前に

2015-02-22 21:32:07 | 落語
▼1時間45分、1人で担当
 ご贔屓さまというものは誠に有難いものだ。今年もイベントに呼んでくださった。午後の部を一手に任された。約200人の観客を前に、落語3席を披露した。聴き終わった客が異口同音に「楽しかった」「面白かった」と言ってくれた。お世辞にしてもうれしい言葉である。

 駅前のビル6階にあるホール。午後の部の開演は午後1時15分。席はすでに埋まっている。これから3時までがあたくしの受け持ち時間である。1時間45分、1人で担当するには、正直言ってチョイトきつい。

▼あたくしの独演会
 4年前の1回目と次の年は落語仲間と2人で行った。ところがその後、主催者からあたくしだけでいいと言われ、昨年からはあたくし1人となった。今年も1人でお邪魔し、3席話した。独演会である。

 お客さまは会社勤めを終え、今は悠々自適の時を過ごす方たちだ。4対6で女性が多い。ナマで落語を聴くのは初めてだろうから、落語の歴史を簡単に説明しようか、それとも、楽屋話がいいか、とあれこれ事前に準備した。

▼聴いていただくのが一番
 半月ほどかかってまとめた資料を持参したが、結局使わなかった。講演会でもあるまい、と考え直し、「落語を聴いていただくのが一番」と決めた。

 その日朝のニュースで「この冬一番の寒さ」とやっていたので、この話題を拝借。「寒いですね。けさ、家を出てくる時、公園の芝生に霜柱が立っていましてね」と客席に語り掛け、冬の演目である「時そば」に入っていった。

▼それ、かけそば専用です
 まるで打ち合わせたかのように、ココ、というところで笑ってくれる。いい客だ。こう来なくちゃあ。客に引き寄せられ話が流れに乗った。ホール落語なのでしぐさも普段より大きめに演じた。

 「おやじ、このどんぶりダメ。ここ、欠けてる」とどんぶりを指さす。そば屋のおやじが「それ、かけそば専用です」と応じると、客席がドッと沸いた。いい流れになって来た。

▼出囃子で再び登場
 不思議なもので、乗っている時は時間が過ぎるのが早く感じる。1席終えたところでひとまず退場。楽屋で「おーい、お茶」でのどを潤した後、出囃子に乗って再び登場。

 直前まで稽古してきた「宮戸川」をやろうと思っていたが、笑いの多い「粗忽長屋」に切り替えた。この噺なら初心者でも知っていると考えたからだ。思ったところで笑いが入る。本当にいい客だ。

▼「唐山の着物」に着替え
 15分の中入り。トイレ休憩だ。この間に、急いで衣装を着替えた。次は粋な郭噺なので、それに合わせて「唐山の着物」に着替えた。手拭いも、えんじから紺に持ち替えた。堅物の若旦那、時次郎が初めて吉原でオコモリ(女郎買い)をする噺である。

 この落語「明烏」は登場人物が多い。大旦那に若旦那。町内の遊び人の源兵衛と太助。それに茶屋のおかみ、若い花魁。これをどう使い分けるかがポイントだ。聴いている側が、はっきり違いが分かるように演じなければならない。

▼不思議なくらい順調に
 散々、稽古を重ねてきたのでそれなりの自信はあったが、本番は別ものだ。ところが、この日の高座は不思議なくらい順調に話せた。3席とも淀みなく演じることが出来た。こんなことは珍しい。

 余程、体調? がよかったのかも知れない。事前にたっぷり稽古したのがよかったようだ。「明烏」を終えたのが午後3時5分前だった。その後、主催者の閉会の挨拶があり、3時過ぎにイベントはすべての幕を閉じた。