大阪で私の面倒を見てくれた男がいた。親友のAである。ブラタモリの神戸に行く。ついでに飛田も見てみたい。高野山も訪ねたい。そう電話で言ったら彼は「俺に任せろ」と言った。
22日、夕方、新大阪に着くとAが迎えに来てくれた。「近くに魚のうまい店がある」と案内。生ビールで乾杯し、旧交を温めた。ホテルはどこだ、と彼。あべのハルカスの近くだと私。ハルカスは高さ日本一を誇る複合ビルである。
それでは「ご希望の飛田に行こうか」となった。飛田新地は大正時代に作られた遊郭。今も当時の雰囲気を留めるというので、一度は行ってみたかった。
どうしてかと言うと、私は落語をやっている。吉原や花魁の噺をよくかける。ところが、浅草の吉原はとっくの昔に跡形もなく消え、今は名前も「千束」となり、ソープランドの花園となった。これでは遊郭の雰囲気など学べない。
上方なら「ある」というので是非にも見学したかった。JR新今宮駅を降りてしばらく歩いて行くと、何やら隠微な雰囲気が漂ってきた。
棟続きの長屋のような軒先に、どこも「飛田新地料理組合」と書いた提灯がぶら下がる。「春」を売るのが商売だが、建前は「料亭」で、女の子は「仲居」。
間口一間ばかりの狭い玄関口に座布団の上で若い女の子がちょこんと座っている。脇にやり手ババアと呼ばれる年配の女性が、「上がっていって」と声をかける。女の子は笑顔を振りまくだけだ。
話がまとまれば客と2人で二階に上がり「自由恋愛」という寸法だ。恋の相場は15分で1万1000円。10分単位で加算されるというから3万―4万円は覚悟した方がよさそうだ。
店の数は100軒や150軒ではきかない。縦も、横も、通りと言う通りはどこもこの種の店ばかり。しかも、びっくりしたのは若くてきれいな子が多いことだ。
8割がたがかわいい子で占めていた。セーラー服姿や漫画の主人公のよう格好。中には浴衣姿で男心をくすぐろうとした子もいた。
見たところ、現役の女子大生ではないかと思える子が何人もいた。生活費を稼ぐためか?それとも別の目的があるのか?
「気にいったのがいたら上がってみるかい」とA。私はご辞退した。時間の経過とともに若者たちが3人、5人と連れ添ってやって来た。中年の男性もいる。
さっきまでいたかわいい子がいなくなった。そこには座布団だけが残っていた。きっと客がついたのだろう。
後日タクシーの運転手に尋ねた。「おばはんがびっくりしてまっせ。ほんまに可愛い子がぎょうさん勤めに来ている、なんでやろ、て言ってましたで」
飛田探訪記は大変有意義だった。現場を知るということはいいことだ。本を読むだけでは絶対に分からない。艶笑落語に磨きがかかるかな。
22日、夕方、新大阪に着くとAが迎えに来てくれた。「近くに魚のうまい店がある」と案内。生ビールで乾杯し、旧交を温めた。ホテルはどこだ、と彼。あべのハルカスの近くだと私。ハルカスは高さ日本一を誇る複合ビルである。
それでは「ご希望の飛田に行こうか」となった。飛田新地は大正時代に作られた遊郭。今も当時の雰囲気を留めるというので、一度は行ってみたかった。
どうしてかと言うと、私は落語をやっている。吉原や花魁の噺をよくかける。ところが、浅草の吉原はとっくの昔に跡形もなく消え、今は名前も「千束」となり、ソープランドの花園となった。これでは遊郭の雰囲気など学べない。
上方なら「ある」というので是非にも見学したかった。JR新今宮駅を降りてしばらく歩いて行くと、何やら隠微な雰囲気が漂ってきた。
棟続きの長屋のような軒先に、どこも「飛田新地料理組合」と書いた提灯がぶら下がる。「春」を売るのが商売だが、建前は「料亭」で、女の子は「仲居」。
間口一間ばかりの狭い玄関口に座布団の上で若い女の子がちょこんと座っている。脇にやり手ババアと呼ばれる年配の女性が、「上がっていって」と声をかける。女の子は笑顔を振りまくだけだ。
話がまとまれば客と2人で二階に上がり「自由恋愛」という寸法だ。恋の相場は15分で1万1000円。10分単位で加算されるというから3万―4万円は覚悟した方がよさそうだ。
店の数は100軒や150軒ではきかない。縦も、横も、通りと言う通りはどこもこの種の店ばかり。しかも、びっくりしたのは若くてきれいな子が多いことだ。
8割がたがかわいい子で占めていた。セーラー服姿や漫画の主人公のよう格好。中には浴衣姿で男心をくすぐろうとした子もいた。
見たところ、現役の女子大生ではないかと思える子が何人もいた。生活費を稼ぐためか?それとも別の目的があるのか?
「気にいったのがいたら上がってみるかい」とA。私はご辞退した。時間の経過とともに若者たちが3人、5人と連れ添ってやって来た。中年の男性もいる。
さっきまでいたかわいい子がいなくなった。そこには座布団だけが残っていた。きっと客がついたのだろう。
後日タクシーの運転手に尋ねた。「おばはんがびっくりしてまっせ。ほんまに可愛い子がぎょうさん勤めに来ている、なんでやろ、て言ってましたで」
飛田探訪記は大変有意義だった。現場を知るということはいいことだ。本を読むだけでは絶対に分からない。艶笑落語に磨きがかかるかな。