おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「架」「道」(百年文庫)ポプラ社

2012-02-19 20:59:23 | 読書無限
 墨田区内の図書館。横川のコミュニティ会館(児童館なども併設)にあるので、それほど大きくはありません。その代わり、訪れる方も多くなくて新着図書なども借りやすいところです。久々に行くと新着図書のコーナーに並んでいたのが、これでした。古今東西の(といっても日本が主で、それも現在活躍している作家ではないのですが)短編のアンソロジー。100冊の予定? 一つひとつ、それぞれ3人の作家の作品が掲載されています。特に明治大正のものが充実している感じ、それに昭和の作品が加わったというものですか。
 「百年文庫」というネーミングからは、近代の短編小説の秀作を集めた。それぞれに「架」とか「道」とか漢字一字で収録作品を束ねています。何冊か読んだ感じでは、そのうちの一つくらいは確実に当てはまりますが、ちょっと無理筋もないわけでなさそう。それでも、明治の作家(今まで名を聞くばかりで読んだことのない作家・作品)のものに接することができるのは、なかなかの企画物です。
 今回の「架」には、火野葦平、ルゴーネス(アルゼンチン)、吉村昭の作品が載せられています。特に吉村昭の「少女架刑」は16歳で死んだ少女が解剖され、すべての「人間」的なものを奪われて火葬されて骨と化するそれまでを透徹な視線で描いた作品。独特な死生観が描かれています。吉村作品(「戦艦武蔵」など綿密な取材に基づく作品につながる)の特徴を表していました。読者によってはちょっと引くかもしれませんが。火野葦平さんのも河童の話、異空間異次元の、それでいて人間的なにおいのする。
 また、「道」には、今東光、北村透谷、田宮虎彦が取り上げられています。北村透谷のは「道」という括りからはちょっと異質な趣ですが、一筋の恋の道を貫くということでは、可かもしれません。
 辛酸をなめつつ生きた人生を淡々と描いた作品が今東光、田宮虎彦。特に田宮虎彦の「霧の中」は、幕末から明治という激動の時代、戊辰戦争に敗れた会津藩士の子の壮絶な一生を描いています。
 通勤の行き帰り、電車の中などで読むのには手頃な読み物集ですが、中身はけっこう重たい内容です。朝の通勤時間で読むことはあまりおすすめできませんね。
 あと92冊を読む予定ですが(図書館に行く機会を工夫して)。
コメント
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