わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

青磁9(砧、天竜寺、七官青磁)

2011-08-18 22:01:37 | 各種の釉(鉄、銅、その他)
隆盛を極めた宋の時代には、皇帝、貴族、文人等がお茶を飲む為の、最高の茶器として、青磁が

珍重されます。更に龍泉窯から、多くの作品が、我が国にも輸出されました。

⑧ 「砧青磁」「天竜寺青磁」「七官青磁」その他

 ) 砧(きぬた)青磁

   我が国で一番有名なのが、龍泉窯で焼かれた、国宝の「青磁鳳凰耳花生」銘萬声の、砧青磁です。

   その他、鎌倉円覚寺伝来の、重文の「袴腰(はかまこし)香炉」が著名です。

   砧とは、布や衣を叩く為の道具で、手に持つ部分が細く、途中から太い円柱形をしています。

   この形に似ている事からとか、千利休が「ひび」の入った、青磁を見て、謡曲「砧」の砧を打つ

   響きに掛けて、名付けたとも、言われています。

 a) 胎土はかなり白く、たっぷり掛けられた釉は、半透明感のある、澄んだ青緑色をしています。

   釉は柔和な光沢を持ち、明るい光の下では、一段と華やぎ、器形も均整が取れ、ゆったりした

   おおらかさを、感じさせます。無文を基本にしますが、彫刻を施したものも在ります。

   花瓶や香炉のみに、使われる名前です。

 b) 砧青磁は、我が国に多く運ばれ、日本各地の遺跡から、大量の破片が出土しています。

 c) 我が国では、青磁と言えば、砧青磁の色を理想として、この色を目指している方も多いです。

   (故板谷波山は、青磁の制作で、文化勲章を受けられています。その他、宇野仁松、諏訪蘇山、

   川瀬忍、塚本快司など、多くの人々が、青磁を手がけて、独自の綺麗な青磁を、作ています。)

 ) 天竜寺(てんりゅうじ)青磁

  a) 濃い黄緑色の青磁で、浮き牡丹文などの刻文や、貼り付け文のある物も多く、装飾に主眼を

    置いた、新しい作品とも言えます。

  b) 元代後期から、龍泉窯で焼かれた青磁で、厚手に作られ、大皿(大盤)、花瓶、香炉など

    大型作品も多いです。東南アジアなどに、大量に輸出されています。

  c) 名前の由来は、室町時代、足利尊氏が始めた、貿易船の「天竜寺船」や、京都の天竜寺に伝わる、

    青磁の香炉に、由来するとの説があります。

 ) 七官(しちかん)青磁

  濁った青緑色(又は、黒みがかったで透明な緑色)の青磁で、侘茶(わびちゃ)の席で、珍重され、

  古渡(こわたり)、中渡(ちゅうわたり)、新渡(しんと)と、作品に、時代の差があります。

  a) 明中期頃より、龍泉窯は衰退して行き、地方の日用雑器を焼く、窯に成ってしまいます。

   これらは、龍泉窯青磁の最終段階で、退廃的な雰囲気が、漂っている作品です。

  b) 珠光(じゅこう)青磁は、茶人の村田珠光(足利義正に仕える)が好んだ青磁の茶碗で、

    くすんだ鶯色をしており、櫛で彫った文様があります。

    どちらかと言えば、下手の部類に属す青磁とも言われています。

    又、人形手と呼ばれる、黄色っぽく、人形の文様のある青磁もあります。
    
 ) 飛(とび)青磁

   元時代、龍泉寺窯で焼かれたと思われる、鉄分を含んだ顔料を、散らした斑文のある青磁です。

   斑文の位置は、一見バラバラの様ですが、計算されているのは、確実です。

   鴻池伝来の、国宝「飛青磁花生」や、福岡藩黒田家伝来の、重文の「飛青磁花生」が有名です。

   茶人によって、花生として、大変珍重されている物です。


中国の青磁の話は、ここで終わりにし、次回より朝鮮の青磁について、お話します。
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