わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 245 釉薬同士に相性はあるのか2?

2016-06-30 21:29:06 | 素朴な疑問
3) 相性が問題になるのはどうゆう場面か?

 釉は単体で施釉する事を前提にして調合されています。その為、異なる釉同士を重ね合わせると、

 思わぬ結果を招く事もあります。又、基本的には、釉同士を混ぜ合わせて施釉する事はしません。

 ① 厚掛けによる相性の良し悪し。 以上までが前回の話です。

 ② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。

  基本的には同じ温度で焼成する釉(ある温度範囲内の釉)を使います。しかし実際には、焼成

  温度にかなりの差がある釉を使う事もあります。

  例えば、1180℃の釉と1230℃の釉を重ね掛けし、1230℃で焼成する場合などです。

  この場合には、1180℃の釉は熔け過ぎる感があり、成分によっては流れ落ちる可能性もあります

  但し、どちらを先に掛けるかによって効果が変わります。即ち、1180℃の釉を下(先)に塗ると

  早く熔ける為、上(後)に塗った釉は素地との密着度が弱くなりますので、釉全体が下に引き

  ずられる事もあります。逆の場合には、下の釉の焼成温度が高い為、表面のみが流れる状態に

  なります。

 ③ 流れ易い釉を重ね掛けする場合、流れ易い釉と流れ難い釉との相性。

  ⅰ) 流れ易い釉同士を重ね掛けすると、両方の釉が混じり合いながら、下に流れ落ち易くなり

   ます。一般には筋状又は波状に流れる場合が多い様ですが、混ざり合った模様は予想不可能な

   模様に成る事もあります。この組み合わせでは、棚板まで釉が流れる恐れがありますので、

   底周辺の施釉は出来るだけ避けるか、底との隙間を多く取っておく必要があります。他の方法

   として、片方又は両方の釉を若干薄く掛ける事です。厚く掛けると流れる量も増えます。

   更に、混じりあった釉の色も単体の場合とは異なります。特に白っぽい釉と他の色の付いた釉

   を重ねる場合、濃い釉の色が本来の色より薄くなり勝ちです。例えば、器の下部に白マット釉

   を上部に黒マット釉を掛けた場合、上部が黒で下部が白になり、両方が掛かった(二重掛け)

   部分はグレーに発色します。又、黄色釉に青磁釉を掛けると、二重にかかった部分が若草色に

   発色する事もあります。

  ⅱ) 流れ易い釉と流れ難い釉の組み合わせでは、流れ難い釉を下に塗り、流れ易い釉を上に

   塗ると安全ですが、逆にすると全体に流れ落ちます。

   流れ難い釉の代表的な物の一つに志野釉があります。この釉は他の釉に対し相性はすこぶる

   悪い様です。下記⑦で述べる様な、色々なトラブルの原因に成りますのでなるべく単体で使う

   事をお勧めします。

  ⅲ) 流動性のある釉には、焼成温度を若干下げるか、寝らし時間を短くして、流れ落ちるのを

   防止すると良いでしょう。

 ④ 色釉の上に透明釉を掛けた場合。

  色釉の一部をマスキングし、その部分に下絵付けを施す事は良く行われています。下絵付けの

  部分には、透明系の釉を掛ける必要がありますので、色釉の一部は二重掛けになります。

  二重掛けした部分と、単色の色釉の部分では焼成で色の変化は余り見られません。場合によって

  は色釉の全体に透明釉を施す方が、施釉の行為が簡単かも知れません。

 ⑤ 光沢のある釉と光沢の無い釉との相性。

  どちらを下に掛けても、二重に掛かった部分には光沢が発生し易いです。即ち、光沢の釉の方が

  優勢になる事が多い様です。

 ⑥ 結晶釉と結晶釉でない釉の二重掛け。

  二重に掛かった部分では、結晶が起きない可能性が大きいです。

 ⑦ 重ね掛けで起こり易い事柄。

  釉の剥がれ、釉の流れ、釉の色の変化等に付いて述べて来ましたが、その他に、釉に「あばた」

  や「気泡」の発生、釉の「煮え」が発生する場合もあります。

  主な発生原因は、釉が均一に熔けず一部の熔け過ぎ(煮え)、熔ける温度に差がある(あばた)

  二重掛けのタイミングの悪さ(気泡)などがあります。

4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 244 釉薬同士に相性はあるのか1?

2016-06-28 17:43:14 | 素朴な疑問
釉を単一で使用する際には、適正に熔け、滑らかで艶やかな表情を呈する釉であり、何ら問題に成ら

ない場合でも、複数の釉を重ね合わせて使うと、問題に成る事が多いです。即ち、釉同士には相性が

存在します。

作品全体を一色で色付けする事もありますが、多くの場合2~3色を使う事で、見た目にも変化が

あり、より華やいだ感じに仕上げる事も多く見られる装飾方法の一つです。

その際、釉同士に相性の良し悪しがある事に気が付く事があるはずです。即ち、釉に関して何らかの

トラブルが発生する事も有りますし、逆に思わぬ効果を生み出す事も起こりえます。

但し、市販の同じメーカー同士の釉を使う場合には、ある程度相性が考慮されている釉が多いのです

しかし同じ名前の釉であっても、メーカーによって成分が多少異なりますので、メーカーが異なる

場合には、同じ様に重ね掛けを行っても、以前の様にはならず、相性が良くない結果を招く事も

あります。

更に、ご自分で調合した釉同士の相性が、良いと言う保障はありません。実際には試して焼成して

確認する事になります。相性の良し悪しには色々なパターンが想定されますので、順次述べたいと

思います。尚、釉と素地との相性の良し悪しもありますが、この件はここでは取り上げません。

1) 釉薬の相性が良いとはどうゆう事か?

 ① 釉がお互いに干渉する事が少なく、自分の個性のみを主張している場合には、相性が良いと

  思われます。この様な事例は少ないです。何故ならば、重ね掛けするのは、何らかの効果を期待

  して行う行為だからです。お互いに干渉させたくないならば、重ね塗りする事なく施釉すれば

  良い事になります。

 ② 釉同士が熔融し、その中間色を発生させる場合や、好ましい新たな色が出現する現象も相性が

  良い事になります。但し、重ねる順序によっては、良い結果に成ったり、悪い結果になったり

  する場合がありますので、重ねる順序も重要になります。例えば、銅を添加した釉では、焼成中

  に銅が揮発する現象が起こります。それを抑える為、他の釉を重ね掛け、銅の発色を良くする

  方法があります。これを逆に重ねでは効果がありません。

 ③ 焼成温度の異なる釉であっても、一方が他の釉の熔ける温度を下げる現象も相性が良いと見て

  良いでしょう。熔け難い釉薬でも、下に焼成温度の低い釉を掛けると、上の熔け難い釉を溶かす

  事もあります。但し、逆の場合余り効果は期待できません。又、マット系の釉に光沢のある釉を

  掛けると、下地のマット釉も光沢を持つ様になる事もあります。

 ④ 結晶釉の結晶を促進させる釉も相性が良い釉になります。

   同様に還元焼成を促進させる釉も、相性の良い釉と言えます。

 ⑤ 釉同士では有りませんが、下絵と釉との相性の良し悪しもあります。下絵が「ぼやける」たり

   「絵柄の流れ」を引き起こす釉は、絵と相性が悪い釉となります。

2) 相性の悪い釉同士を二重掛けすると、思わぬ効果を生み出す場合もあります。

  一般的には、釉剥げなどの悪い結果を引き起す事が多いですが、大胆な亀裂模様に成ったり、

  釉の表面を荒し、従来には無い「ゴツゴツ」した釉肌を作り出す等、見る人によって良し悪しの

  判断の分かれる釉となる事もあります。一般に失敗から新たな発見を導き出すのは知られた事

  ですが、釉に付いても言える事です。それ故、相性の良い方向に改良するのも大切ですが、

  逆にどんどん相性を悪くする事で、新たな発見が得られるかも知れません。

3) 相性が問題になるのはどうゆう場面か?

 ① 厚掛けによる相性の良し悪し。

  釉を重ねて施釉する事は、釉が厚く掛かる事になります。一般に釉を厚く掛け過ぎると、釉剥げ

  や、釉の流れ易さと言う欠点になります。しかし厚く掛けても、釉同士の剥がれや、亀裂、

  表面の釉の荒れや気泡の発生などが起きない状態であれば、一応相性が良い事になります。

  勿論、釉の濃度と焼成温度にも関係しますので、一度の失敗で相性が悪いと決め付けるのも

  問題です。

 ② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。

以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 243 サイン(銘)は何処にどの様に入れれば良いか2?

2016-06-27 21:34:18 | 素朴な疑問
前回からの続きです。

3) サインは釉の種類や釉の色や、釉を厚く掛ける事で、消えてしまう場合もあります。

  サインの上に釉が厚く掛かった場合、字が「ぼやけた」り、釉に埋もれてしまう場合があります

  その為、サイン周辺の釉を薄くしたり、サイン上の釉を軽く拭き取る事です。釉を部分的に薄く

  するには、予め水を含んだ筆などでサイン周辺を濡らす事で達成できます。但し流れ易い釉

  (結晶釉などに多い)を使うと、流れ落ちた釉がサインに掛かる場合もありますので、釉を掛け

  る際、塗る範囲に注意が必要です。

4) サインの天地を逆にしない事、及び左右のバランスも考慮する事。

 ① サインを手書きする場合にはほとんど問題に成りませんが、方向性のある作品に、印などを

  捺す場合、天地を逆さに捺す事も決して稀ではありません。印面は反転していますので、特に

  間違い易い印鑑もあります。

 ② 一般的には、上部(天方向)のスペースを多く取り、下部(地)のスペースを少なくします。

  なるべく左右の隙間を同じにしたいです。

 ③ 釘彫り等のサインでは、縦書きと横書きがあります。更に縦書きでも垂直でなく若干斜め方向

  に書く(傾斜を付ける)事もあります。手書きし彫り込む際に、サインの周囲が毛羽立つ事が

  あります(バリとも言います)。このバリは、手書き直後ではなく、ある程度土が乾燥した時

  に削り取るか、素焼き後に紙やすり等で削り取ります。そのまま放置しておくと、バリの先端が

  尖り(とがり)手や指を傷付ける事にもなります。

 ④ 一般的な作品では、サインまで見る人は少ないです。

  但し、芸術(美術)的にまで高められた作品では、サインが重要な働きをします。勿論贋作の

  疑いを晴らす役目もしますが、著名な作家であれば、サイン一つでその価値も飛躍的に高める

  効果があるからです。

5) 取っ手や耳、注ぎ口などを有する作品の場合、作品に方向性が出ますので、サインを入れる際

  入れる方法に注意が必要に成ります。

  ① 取っ手(持ち手)のある作品の高台内にサインを入れる場合、特に片手で持つコーヒーカップ

   の様な器では、持った状態で口縁を向こう側に倒してサインを入れます。

   高台脇に入れる場合には、取っ手の根元近辺に入れます。但し取っ手の手前側に入れる方法と

   向こう側に入れる方法があります。

  ② 徳利や片口など注ぎ口を有する器では、底にサインを入れる際には、注ぎ口が真下に向けて

   反転した位置でサインを入れます。又、高台脇に入れる場合には、注ぎ口と反対側、又は真横

   に入れると、良いでしょう。

6) 蓋物の作品では、本体側にサインを入れ、蓋側には入れないのが一般的です。

  焼成する際、蓋をした状態で行いますので、蓋が行方不明に成る事は少ない様です。

7) サインを強調する場合には、掘り込まれた部分に、呉須などの下絵絵の具で絵付けを施す場合

  もあります。一般にはサインは目立たない状態で施しますが、あえて目立たせる為に行う事も

  あります。サインが模様の一部と成っている場合などです。

8) サインは一個とは限りません。(基本的には一個ですが・・)

 ① 作品に応じてサイン自体を変えたり、書体を変えたりする場合もあります。又、作者の年代と

  共にサインを変える事もあり、心境の変化で変える事もます。特に手書きのサインであれば容易

  です。ご自分で作った印であれば、容易に作り変える事も可能です。印面が摩滅した場合や、

  欠損した場合には作り換えた方が無難です。

 ② 大小の印を使い分ける。作品の大きさに対し、サンイが大き過ぎる場合には、小さな印を使い

  大きな作品には、大きめの印を捺すなどの方法です。

9) サインはフルネイム(姓名)で入れる事は少ない様です。

  伝統ある窯元では、代々名前を引き継いでいる所も多く、同じ名前のサインもあります。

  しかし、一般的には名前の一文字や、屋号などのマークを使う事が多いです。

  近年では、アルファベットのサインさえ見受けられます。

最後に、ご自分だけの窯であれば、サインを入れるかどうかは自由ですが、共同で使う場合には必要

になります。又サインに対する決まりもありません。民藝と呼ばれる作品群には無銘の作品が多いの

ですが、近年ではほとんどの作品に銘(サイン)が入っている物が多い様です。

以上にて銘(サイン)の話を終わります。
 
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素朴な疑問 242 サイン(銘)は何処にどの様に入れれば良いか1?

2016-06-19 20:23:04 | 素朴な疑問
作品に自分の名前やマーク、窯元の名前などを入れる事は、現在では当然の行為と思われています。

サイン(銘)には作者の印、染付けや上絵付けで記した書銘、釘や籤(ひご)などで掘り込む刻銘、

その他に印章を捺した物があります。又その書体も千差万別です。

江戸時代の野々村仁清が自分の作品に、最初に銘(サイン)を入れたと言われています。真偽の程は

不明です。それ以前では、「窯印」があっても個人を指すサインは無く、今は著名な作品であっても

無名の人の作った作品となっています。但し、作られた時代や作られた土地などはある程度確定で

きます。

現在は多くの人が共同で使う窯や陶芸教室などでは、サインが無ければその人の作品として特定

できませんからサインを入れる事は、必須条件です。

勿論サインでなく、マークであっても作り手が特定できれば、どの様な印でも問題は無いのですが、

完成した作品とし、場合によっては、後世に残る作品であれば有るほど、「キッチリ」したサインが

必要になります。勿論作品のどの位置に入れるかは、作者の自由ですが、出来れば読み易いサインで

読み易い位置に入れる事です。更に、真似され易いサインではなく、特徴のあるサインの方が当然

良い訳です。但し、だからと言って、目立つ処に入れるのも善し悪しですし、出来れば避けたい場所

もあります。尚、当然ですが、外から容易に見る事の出来ない器の内側などは、サインの役目があり

ません。

1) 出来るなら避けたい場所。

 ① 作品には正面とみなす部分が有るのが一般的です。正面にサインを入れるのは、なるべく避け

  る事です。目立ち過ぎるサインは、出しゃばり感があります。但し、サインは作品が生乾きの

  時に行う事が多く、施釉し焼成するまで正面が決定できない場合が、生じる可能性もありま

  すが、なるべく生の状態の時に正面を決める事も大切です。

 ② サインは表立って表す事は少ないです。

  表立った場所とは、皿類や丼状の器の内側などで、無意識でも自然に目に入る場所です。

  但し飾り皿として使う場合には、内(表)側に入れる事もあります。又、大きな目のサインや

  強調された目立つ形のサインも出来るだけ避けたい事項です。当然ですが、サインは作者を特定

  する物ですので、他人と似通った物も敬遠したいです。

 ③ 陶や石、木製の印鑑を使う場合には、印を押す際に力が入り、その結果作品が変形する場所は

  避けたいです。具体的には、壷や花瓶類の袋物と呼ばれる器の底や高台内です。

  捺印は、素地が完全に固まる前に行う必要があります。その為、この様な位置に捺印すると、

  底が変形したりします。但し、針や竹ひご等を用いて掘り込みサインを入れる分には問題あり

  ません。底や高台内にサインを入れたい場合、施釉時に呉須等の下絵付けの要領で、筆書き

  する事もあります。書銘といいます。

2) 一般的にサインを入れる場所。

  正面を避ける為、作品の横方向(正面に対し略直角)に入れると無難です。特に耳の付いた器や

  花器の場合、耳の下側に入れる事が多いです。

 ① 高台脇に入れる。抹茶々碗や袋物と呼ばれる作品などに多い例です。

  印を押してサインを入れる場合、高台脇は比較的肉厚に成っており、近くに底がありますので、

  作品が変形する事は少ないです。又作品を引っ繰り返す事なく、サインが確認できます。

 ② 裏底に入れる。平皿の様な場合には、裏底の中央又は右下に入れる事が多いです。

   角皿は、タタラ状の粘土板の周囲を持ち上げて、縁を作る方法が一般的です。サインは縁作り

   の前に入れる事です。平皿に脚(高台)が付いている場合には、高台内に入れます。

 ③ 高台内に入れる。作品を伏せた状態で初めて、サインが確認できます。書銘が適します。

   作品によっては、高台内が狭い為、多くの字数が入りません。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 241 窯を自分で築く事は可能か?

2016-05-25 13:50:14 | 素朴な疑問
結論から先に言うと、窯を自作する事は可能です。勿論窯を築くには、それなりの準備(場所等)と

費用や時間が必要です。窯の規模(大きさ)にもよりますが、数ヶ月の歳月と数十万円~数百万円の

費用が掛かる事もあります。また、ガスや電気を使用する場合には、資格のある専門家の助けが必要

な事柄も発生しますので、最後まで完全に自分一人で築く事が出来ない場合が多いです。

尚、街中で薪(まき)で火を焚く事は消防法で禁じられている処もありますし、煙などの環境悪化で

不都合な事が起こる恐れがある場合には、そのような場所では、必然的に薪窯(登窯や窖窯等)を

築く事はできません。尚、灯油窯の様に若干黒煙が発生する程度ならOKの事が多いです。


陶芸(焼き物)をやる以上、作品を焼く行為は必須条件です。勿論焼かないで作品を作る事が出来

ますが、実用的な作品にするには是非とも焼く事です。焼成する事でより強固で耐久性のある作品に

仕上げる事ができます。但し、単に焼くだけでなく高温(少なくとも1000℃以上)でなけれならず、

それなりの設備の整った窯でなければ成りません。

一般に陶芸の窯は、メーカー各社から大小様々の物で、焼成方法の異なる窯が市販されており、

それらの中から選び購入し、設置するだけで直ぐに使用するのが普通です。その為わざわざ自分で

窯を築く事は少ないのが現状です。更に、山の中など既存の窯を設置するのに不都合な場所では、

専門家が窯を築いてくれるサービスもあります。

その他、何らかの理由で、どうしても御自分で窯を築きたいと思っている方もいます。

1) 自分で築く事の利点。

 ① 自分で作った窯であれば、如何様にも作り変えて改良する事が可能です。

  窯を焚いていると、どうしても不満な事が起こり勝ちです。例えば、酸化や還元の程度を変え

  たい、部分的な酸化又は還元を窯の一部又は全体で行いたい。又温度を早く上昇させたい、

  窯の中の温度差を少なくしたい。釉の熔け不足を解消する為に、最高温度をもっと上げたい、

  特定の釉の発色を良くしたい等の欲が出てきます。この望みを適えるには、必ずしも窯を改造

  する事なく対処する事も可能ですが、それでも自分の考え通り窯の改造をしたい場合には、

  既存の窯では難しくなります。勿論この様な事柄が起こるのは、何度も窯焚きを続けた結果です

  ので、窯を改造するのは、それなりのベテランの人とも言えます。

 ② 窯の壁を厚くし、良い結晶を作り出したい。 窯の容積を大きくしたい等にも対処出来るのは

   自分が設計した自作の窯である必要があります。

 ③ 初めて窯を持つ人でも、窯を自作したいと思っている方もいます。

  特に楽焼専用の窯であれば、温度が比較的低く、容積も小さくてすむ為自作可能と思われるから

  です。但し、コストを抑える為に自作する事を考えているのであれば、余り期待できません。

  耐火煉瓦を積み上げたり、バーナー類を揃えたり、電熱線を張り巡らせたりする行為には結構

  費用が掛かる物です。最終的には、購入する価格と同じ程度になる事も稀ではありません。

 ④ 本焼きが可能な本格的窯の場合、ある程度の専門的な知識が必要になります。

  一般に市販されている窯には、カタログ上で窯の構造が描かれている事が多いです。

  これを見ておおよその構造を把握する事が出来ます。又各種の調整装置を設ける必要も発生し

  ますので、どの様な調整が必要か、予め考えておく必要があります。

  更に、窯をガッチリ組み立てる為には、鉄製のフレームを溶接する知識があればもっと良くなり

  ます。但し、フレームはネジ止めでも処理が可能です。又、耐火煉瓦や耐火モルタル、断熱材

  (グラスウール等)などは、陶芸材料店で入手可能ですが、詳しい事は、近くのメーカーに出向

  き教えを請う事も可能です。


当方も20数年前に耐火煉瓦を積み上げ、プロパンガスの本焼用の窯を自作し、現在も使用してい

ます。その経験を基に、次回より窯の築く手順や方法などをお話したいと思います。
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素朴な疑問 240 自前の電動轆轤は何時購入するのが良いか2?

2016-05-20 16:34:54 | 素朴な疑問
5) 自前の轆轤を持つ事に捕われ過ぎるのでは無く、持つ事による色々な問題をクリアーする事が

 大切です。例え轆轤を持ったとしても、轆轤を長く使い続ける為には、前もって考えておく必要が

 ある事柄も多いです。

 ① 焼成場所の問題。

  自前の轆轤を持ったといっても、その作品を焼成してくれる処を見付ける必要があります。

  基本的には、従来焼いて貰っていた処にお願いするのが筋ですが、何らかの理由でお願い出来

  ない場合も多いです。自前の窯を持つのが理想ですが、電動轆轤と窯を同時に購入する事は、

  資金的にも大変です。 尚、電動轆轤はその能力、馬力(ワット数)によっても値段が異なり

  ます。一般的な物は十万円程度です。電動轆轤は一生使える(一生物)ですので、能力のある

  轆轤を慎重に選ぶ事です。 又、容積の小さな一般的な電気窯でも、数十万円します。

  将来自前の窯を持つとしても、当面は焼成してくれる処を見付けてから行動を起こさなければ

  成りません。焼成だけを頼める窯元や業者、陶芸教室などもありますが、焼いてもらう為には

  作品をそこに持ち込む必要があります。素焼きと本焼きの二回の場合が多いはずです。

  その為なるべく手近の場所が有れば理想的です。その他にも、釉を自分で施釉するにしても、

  何処で行うかによっても、かなりのスペースが必要になります。

  轆轤を持つ事は先々色々な問題が発生します。予め計画的に行動する必要があります。

 ② 電動轆轤を設置するには、専用の場所が必要です。

  数十kgもある電動轆轤は、なるべくコンクリートの土間などに設置した方が安全です。

  轆轤作業は力仕事ですので、轆轤がガタ付いたり、揺れが発生すると作業がやり難くなります。

  更に土(粘土)と水を使いますので、泥による汚れや目に見えない程度の細かい土埃(つち

  ぼこり)が発生します。その為掃除のし易い処で無ければ成りません。但し轆轤の天板さえ綺麗

  にしておけば、必ずしも毎回轆轤の掃除をする必要はありません。

 ③ 作品を置く場所も必要になります。

  轆轤挽きした作品は生乾きさせてから削り作業に入ります。その為乾燥させておく場所が必要に

  なります。轆轤作業が面白くなると、どんどん制作する様になり、作品も溜まります。

  素焼き前の作品は壊れ易く、安全な場所において置く必要があります。又、作業台(含練り台)や

  粘土や削りカス等や釉などの置き場所も必要になります。場所が広い事は何事にも便利です。

 ④ 置いた作品を、他の場所に移動させる必要に迫られる事も稀ではありません。その様な場面が

  一番危険です。乾燥した作品は粘りが少なく、脆い状態に成っていますので、一寸した不注意で

  作品を破損する事も度々あります。なるべく両手を添えて持ち上げ、運ぶ事です。

6) 結論

 勿論、自前の轆轤を持つのは自由です。傍からとやかく言われる事柄ではありません。

 但し、宝の持ち腐れに成らない為には、それなりの準備と覚悟が必要になります。

 折角入手した轆轤を活発に活用するには、それなりの環境が整っていなければ成りません。

 その為の準備や検討に十分時間を裂き、ある程度の目安が付いた段階で、購入する事を薦めます。

 轆轤はあくまでも一つの道具に過ぎません。道具に慣れる事も大切ですが、何を作るかが先に

 無ければ、道具を巧く使いこなす事は出来ません。更に、高度の轆轤技術を習得するには、常に

 新しい事柄(作品など)に挑戦し続ける必要があります。場合によっては従来に無い轆轤技術を

 開発発見する気概で臨んで下さい。

以上にて、「自前の電動轆轤は何時購入するのが良いか?」の話を終わります。
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素朴な疑問 239 自前の電動轆轤は何時購入するのが良いか1?

2016-05-10 11:07:54 | 素朴な疑問
本題に入る前に、これから述べる事は、当方(明窓窯)の考え方ですので、あくまで参考意見として

お読み下さい。

陶芸を楽しんでいる方の中には、電動轆轤の面白さに惹かれ、嵌まり込んでいる人も多いと思います

但し、多くの方はご自分で轆轤を持つ事なく、陶芸教室や公民館活動などで共同して使用する轆轤を

使う事が多い様です。その為、何時でも自由に使える自前の轆轤が有れば、更に早く上達すると

考えるのが普通です。実際に電動轆轤を購入した方も多く知っています。又購入したいと相談を受け

た事も多々あります。その様な相談の場合、多くは自前の轆轤を持つのは、「もう少し後にした方が

良いのではないか」と、助言する事が多いです。その理由は以下の事が言えるからです。

尚、地方の窯場などで、将来陶芸家を目指して、修行している方々は上記の事は当てはまりません。

自分専用の轆轤を持つ事は稀ではありません。但しあくまでも与えられた仕事を遂行する為に、

貸し与えられる場合が多いです。この場合には当然確実に技術がアップする事は間違いありません。

自前と窯場の違いは環境の差と言えます。

1) 轆轤が誰の助けも無くても、作品が作れる程度の技術が習得出来ている人では、問題無い

  のですが、(尚、一人で轆轤が挽ける様になる為には、実働500時間が一つの目安になります。)

  技術をこれから磨こうと思っている程度の人には、自前の轆轤は「宝の持ち腐れ」となる可能性

  が多いです。即ち、自前の轆轤で更に上達を目指すには、何時でも見ていてくれ、悪い処を的確

  に指摘してくれる人や、質問や相談に載ってくれる人が、身近にいる事が必要だからです。

  轆轤は自己流でもそれなりの技術を習得できますが、轆轤技術をマスターしたいのであれば、

  しっかりした指導者(先生など)に付いて学ぶ事です。但し学ぶには、時間と費用が掛ます。

2) 自前の轆轤を買った人が、常に轆轤を使っているのは、むしろ珍しいとも言えます。

  何時でも使えるからと言って、場所的、時間的制約を受け易いからです。

  例え自宅に轆轤を据える工房(工房風)を設けたとしても、意外と使い難い場合が多いです。

  洗い場など無くても、轆轤を置くスペースがあれば良いのですが、重たい轆轤をしっかり固定

  するには、それなりの場所が必要になります。又、轆轤挽きした作品を置く場所なども必要です

3) 何時でも出来ると言う心の油断も大きく作用します。

  轆轤作業に取り掛かる前には準備が必要です。勿論、作りたい物を予め考えていたとしても、

  やる事は多いです。例えば、轆轤周りの整理や掃除などの他、粘土等の準備、土練なども必要に

  なりますので、この準備で時間が取られ、直ぐに轆轤作業に取り掛かれる訳では無い為、始める

  前から嫌気がさしてしまい勝ちです。轆轤挽きはその日の調子や、気分によって巧く行かない

  場合も多いですので、嫌な感情を抱いた状態では、轆轤挽きも巧く行きません。

  自由と言う事は自分に厳しくなければならない事でもあります。

  三日坊主と言う様に、最初は張り切っていても長続きしない場合も多いで様です。

  一方陶芸教室や公民館活動などでは、多くの仲間もいますし、決まった時間内での作業ですので

  それに対応する事で、楽しく轆轤を挽く事ができます。但し実技の短いのが欠点です。

4) 道具を持つ事が必ずしも、上手になる訳ではありません。

  道具はあくまでも、手段であり技術的に未熟であれば、思う様に使いこなす事はできません。

  轆轤挽きの基礎的技術と言えば、土を練る事もありますが、重要な事は、土殺しの作業です。

  即ち轆轤の中心に土を据える事ですが、この作業をマスターしない限り、先に進む事は出来ま

  せん。土殺しも数挽きの様に小物を作る場合と、大皿などを作る場合ではそのやり方は異なり

  ます。それ故、作品に応じてやり方を変える必要がありますので、それらのやり方をマスター

  しておく必要があります。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 238 スリップウェアとは5?

2016-05-04 21:44:34 | 素朴な疑問
6) 現代の「スリップウェア」と作家さん達。

 英国の民窯で作り続けられた「スリップウェア」は、20世紀初頭に姿を消します。

 しかし我が国では、古典的な「スリップウェア」を更に発展させて、精力的に作品を作り続けて

 いる作家さんや、「スリップウェア」を現に手掛けている幾つかの窯元もあります。

 ① 布志名(ふじな)焼きの窯元(島根県松江市)で作られています。

  バーナード・リーチと親交のあった、船木道忠(1900~ 1963年 島根県 指定重要無形文化財保持

  者)と、その長男の船木研兒 (1927~2015年)は、民藝運動に参加し、「スリップ ウェア」の

  復元に努力し、作品を作り続けていました。

  ◎ 注: 当ブログでも、現代陶芸78、79(船木道忠、研児1、2)で既に紹介していますので、

   興味のある方はご覧下さい。

  ) 船木道忠氏の作品。

   黄釉を生かした作品で、楕円皿、楕円鉢、角鉢などの平面的な作品の表面には、抽象的な

   文様が描かれ、花入、花瓶、壷、鶏冠壷(けいかんこ)等の立体的な作品には、化粧土の

   流し掛けや藁描などの技法を使い、文様を付けています。

  ) 船木研兒(けんじ) 氏の作品。

   鹿、鶏、兎、獅子、梟(ふくろう)などの動物が、スリップを用いて具象的に描かれた作品が

   多く、その他、スリップ技法による、鳥文や河童図の陶板なども手掛けています。

  ) 布志名焼きの湯町窯。

   江戸中期頃から続く布志名焼きの特徴は、来待石(きまちいし)と呼ばれる石の粉を用いた

   淡黄釉にあります。湯町窯二代目福間貴士氏(1909~1989年)は民藝運動に共感し、リーチ達

   の薦めに応じて洋食器を作り始めます。日曜雑貨の食器には、筒描きによるスリップが施され

   ます。リーチは7回も訪れ滞在し、スリップ技法を指導したそうです。

   現在は三代目が後を継ぎ、スリップウェアーの作品を作り続けています。

 ② スリップを用いた陶芸家達。

  ) 武内晴二郎氏(1921~79年) 岡山市生まれ。

   倉敷市西の高梁川の旧い堤の跡に、1960年登窯の「酒津堤窯」を築きます。戦争で左腕を失う

   も、型物を中心にスリップ、型押、象嵌などの技法を駆使した作品は、重厚で力強い作品を

   作ります。尚、晴二郎亡き後、息子の 真木(マキ)氏が継承します。真木氏は、栃木県益子町

   の浜田窯に入門し、その後「酒津堤窯」を「倉敷堤窯」と改名されました。

  ) 齊藤十郎氏(1969~)静岡県伊東市在住。

   齊藤氏のスリップ模様の付け方は、タタラ作りでこの表面全体を赤色などの色土で化粧掛けし

   その後、素地が乾燥する前に、白などの色違いの化粧土をスポイト掛けします。但し太めの

   縞模様とします。一筆書きの要領で折り返しながら全体に縞模様を付け、縞と直角方向に櫛状

   の用具で撫ぜる様に引っ張ります。(フエザーコームの技法です)化粧土がある程度乾燥し

   たら石膏型又は土型に合わせて形を作ります。焼成温度は高火度焼成します。

  ) 前野直史(まえのなおふみ)氏  (京都府南丹市日吉町生畑) 

     生畑皿山窯(きはたさらやまがま))

   スリップウェアとの出会いは、1989年に兵庫県近代美術館で開催された「セントアイヴィス

   展」だそうです。 彼の作品は、皿の表面に白化粧を施し、茶色のスリップを用い筒描きの

   要領で、螺旋状の「ぐるぐる模様」に特徴があります。近年はしばしば、個展グループ展を

   開催しています。

  ) 伊藤丈浩(いとうたけひろ)氏(1977年千葉県銚子市生) 栃木県益子町在住

   ・ 掛分(かけわけ)指描文: 二色の化粧土を掛け分け、その境界を指でなぞり、ジギザク

    模様を付ける方法です。

   ・ ヘリンボーン模様: 伊藤氏のトレードマーク的な文様と成っています。

    酸化第一鉄を加えた化粧土(茶色系)を、タタラの表面に流し掛けする。次にスポイト状の

    筒にやや薄めた白化粧土を入れ、左右折り返しながら縞模様を付ける。縞の間隔はやや広く

    取り、化粧土が平らに成る様にテーブルを叩く。細いスポイトを用いて上記縞模様と直角

    方向に、先端を模様に付けながら細い線を全面に引く。すると細かい「ジグザク」模様と

    なり、ヘリンボーン模様が完成します。」スリップウェア」制作の若手の一人です。

    伊藤氏も各種の販売方法で作品を販売しています。

 ◎ 以上の作家さん達の作品(写真)や展示会等の情報は、ネット上で見る事ができます。

   興味のある方は、名前を入力し検索して下さい。

 ③ 「スリップウェアー」の作品が展示されている美術館など。

  ) 大阪日本民藝館: 大阪府吹田市千里万博公園

  ) 鳥取民藝館:   鳥取県鳥取市栄町 651

  ) 倉敷民藝館:   岡山県倉敷市中央 1-4-11

以上で「スリップウェアー」の話を終わります。


参考資料: 「スリップウェア」(Slipware)

  副題: 英国から日本に受け継がれた民藝の器 その意匠と現代に伝わる制作技法

  編者、発行所: 誠文堂新光社    
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素朴な疑問 237 スリップウェアとは4?

2016-05-01 15:18:47 | 素朴な疑問
3) 英国の「スリップウェア」の制作方法。

 ① タタラ(粘土の板)状態の土を型に押し当てて形を作っています。

   以上までが前回までの話です。

 ② 施釉と焼成。

  ) 英国の「スリップウェア」は、1000℃程度の低温で焼成されています。それ故釉は鉛を

   含む透明釉と成っています。尚、現在では、食器類に鉛を含む釉は、健康を害しますので禁止

   されています。

  ) 施釉する範囲は、器の内側のみで、外側(底)は施釉されていません。又、鋸歯状の特徴

   ある器の縁も施釉されていません。これは、窯の中で重ね焼きをする為です。即ち上部の器を

   縁で受け止める形に成っている為、施釉されていません。

4) 変わった形の英国の「スリップウェア」。

  一般に「スリップウェア」の器は、日常使う皿類が多いのですが、特殊な皿や蓋物、「ポセット」

  (両手付きのミルクや蜂蜜等入れる容器)、酒瓶、壷、水差し(ピチャー)、置物などのより

  立体的な作品にも、「スリップウェア」で飾られた物があります。

 ① 特殊な皿の例として、水切り用の皿があります。

  これは皿の中央に複数個の孔(あな)が開けられた物です。丁度笊(ざる)の様に使われたと

  思われ、スリップの加飾後に、棒状又は筒状の物で孔を開けた物と思われます。

 ② 立体的な作品に「スリップウェア」を施すには、スリップ(化粧土)の濃度が大切です。

  適度の濃さでないと、流れ落ちたり、ひび割れしたります。

5) 英国の「スリップウェア」の技法は我が国を始め、アメリカ等でも継承され、新たな作品を

   作り上げています。20世紀に入ると、一時廃れた「スリップウェア」は我が国の民藝の担い手

   によって見直され新たな創造がなされる様に成ります。

 ① 我が国の「スリップウェア」の技法。

   当然ですが、英国から伝えられた技法を下敷きにして、我が国でも民藝作家などを中心に

   類似の焼き物が試作されたり、新たな技法も開発される様になります。

  ) 最初に試作を試みたのが、バーナードリーチ達です。

   「スリップウェア」の技法の情報が乏しく、手探り状態の中で試作を試みたのが、日本に

   留学中のリーチや、富本憲吉氏達で1920年代には盛んに作られる様になります。

   主に楽焼で、筒描きの技法で行われていました。その他、白化粧の掻き落しや線彫りなどの

   作品もあります。

   当時の作品類は濱田庄司記念益子参考館や日登美美術館などで展示されています。

   注: 日登美美術館 : 所在地  滋賀県東近江市 山上町2083

    主に民藝運動に関わる作家の作品が多く、特にバーナード・リーチの作品は300点を超え、

    国内外屈指のコレクションを誇る美術館です。

  ) 濱田庄司氏も益子の土と釉を使い、作品を作っています。

   1920~30年代益子の工房で、「スリップウェア」の作品を作ります。当然英国の作品よりも

   高温で焼成しています。施釉の技法は流し掛けで行っています。これらの経験が後の彼の

   代表的な技法と成って人間国宝まで上り詰める事になります。

  ) 河井寛次郎氏も「スリップウェア」に魅せられます。

   彼も1920~30年代に掛けて、試行錯誤の末化粧土の流し掛けによる表現方法に辿りつきます。

   作品は定番の皿の他、鉢、花瓶、蓋物(小筥、盒子=ごうす)などがあります。

   全体に飴釉が掛けられ、白い化粧土で流し掛けしたり、象嵌(ぞうがん)の作品も残して

   います。尚、彼の作品は河井寛次郎記念館(京都市東山氏五条坂)で見る事ができます。

 民藝の作品を集めた美術館では、日本民藝館(東京都目黒区駒場)が著名です。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 236 スリップウェアとは3?

2016-04-27 16:22:10 | 素朴な疑問
2) 英国の「スリップウェア」とはどんな焼き物なのでしょうか?

 ① 最初は飾り皿が多く作られていました。

 ② 18~19世紀になると、実用的な皿が作られる様なります。

  以上が前回までの話です。

 ③ 皿の鋸歯状の縁の形状も、見所の一つに成っています。

  皿は後で述べる型押しの技法で制作している事で、強度を持たせる為と、焼成では重ね焼きで

  行いますので、くっ付き防止の為、及び持ち運びの際、手指の滑り止めの働きもある形状に

  成っています。細かい鋸歯状の縁や太い細いを繰り返す縁や、深く切れ込んだ物、浅い物など

  多様な鋸歯状の縁があります。専用の用具を使用した様です。

  但し、鋸歯状の縁にはスリップは掛かっていません。

  又、皿の裏底も見所に成っています。裏底はベタ高台(高台が無い)に成っています。これは

  次で述べる方法に由来しています。

3) 英国の「スリップウェア」の制作方法。

 ① タタラ(粘土の板)状態の土を型に押し当てて形を作っています。

  ) 制作工程は、タタラを作る。スリップ加工を施す。型に合わせて成形する。仕上げ。

   乾燥。素焼き。施釉。本焼き。完成となります。

  ) タタラを作る。

   使う粘土は、スリップ効果が出る様に、赤土や黒く発色する色の付いた土を使います。

   又、黒く発色させる為に、弁柄(酸化第二鉄)などを用いた化粧土を、作品の表面に流し掛け

   して、土台を黒くする事もあります。

   タタラの厚みは作品の大きさに合わせ、5~8mm程度が多いです。

   粘土を掌(てのひら)や叩き、板を使い必要な大きさに延ばし、数cmの厚さにします。

   タタラ板を上記の粘土の両端に積み上げ、糸やワイヤーを用いてタタラ板に沿わせて粘土を

   スライスします。同様にして数枚のタタラ板を作ります。尚、切り出したタタラは乾燥しない

   様に、濡れた新聞紙や布の上に置きます。この新聞紙や布は後で役立ちます。

  ) スリップ加工を施す。

   スリップの色は白が多いですが、黄色、黒、赤色なども使われます。

   スリップで加飾する為には、それなりの用具が必要になります。主にスポイト状の用具が

   使われますが、多くは独自の形状の物を自作している様です。スリップの濃度の調整が大切

   に成ります。濃い場合には盛り上がりますが、薄い場合は横に広がってしまい綺麗な文様が

   出来なくなります。その他、一度描いた縞文様の直角方向に櫛を軽く当て(滑らす様にする)、

   鳥の羽の様な文様(フェーザコートと言う)を描き出す事もあります。

  ) 型に合わせて成形する。

   型は粘土で作り、素焼きした物を使います。素焼き型は被せたタタラの水分を吸収する働きが

   あり、型離れも良くなります。型には内型と外型があります。

   一般には型の外側に被せ、スリップ文様に傷に出ない方法(内型)を取りますが、型の内側を

   使う事(外型)もあります。  

   a) 内型に合わせる。

    スリップ文様が乾いた段階で、タタラの中心に型を置き、天地を引っ繰り返します。

    その際、タタラの下に敷いた新聞紙や布で、タタラを安定した形で引っ繰り返す事が出来

    ます。タタラを強く押し付くける必要があります。一般には直に両手の掌(てのひら)を

    使い、型の中心から外側に向かって押し込みます。特に縁周辺では波状の皺が発生し易い

    ですので、しっかり押さえ込みます。型から外にはみ出した粘土は、針やカッター等で

    切り取ります。タタラが乾燥するに従い、型から離し易くなります。又、型から離れ難い

    粘土の場合、予め型に「片栗粉」等を薄く掛ける方法もあります。「片栗粉」は何ら悪さは

    しません。

   b) 外型に合わせる。

    外型の利点は、タタラの乾燥収縮と共に型から自然と離れ易くなる事です。但し、スリップ

    文様側に力を加えて、型に沿わせる為、複雑な形の作品には向きません。

    尚、出来るだけ外型の形に近い形に変形させてから、内側に押し込む方法がベストです。

    スリップ面からは、砂袋(砂を布の袋に入れ口を輪ゴムや紐で閉じた物)で軽く叩き型に

    沿わせます。

    注意点は、どちらの方法でもタタラに「ひび割れ」を発生させない事です。特にスリップ面

    に「ひび」が入ると面倒です。その為にもスリップ面が圧縮する方向に力が働く、内型が

    適してると言えます。

  ) 仕上げ。 縁の形状を整えた後、鋸歯状の文様を付ける。

    型から外して一晩置いた程度の時、一番加工し易く成っています。鋸歯状の文様は、粘土で

    作った、丸や棒状の用具を使います。この縁も見所の一つですので、各自工夫が凝らされて

    います。

以下次回に続きます。
 
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