わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問24 1100度で溶けるマット釉の調合

2016-06-05 16:17:45 | 質問、問い合わせ、相談事
上杉様より以下のご質問をお受けしました。

マット釉についての質問です。

1100度で溶けるマット釉薬はどのように調合したらいいのでしょうか? 教えてください。

 ◎ 明窓窯より

基本的には1100℃で熔ける基礎釉(透明釉)を作り、マット化させる為に別の材料を添加します。

もしも、上杉様が1100℃で熔ける基礎釉を、すでにお持ちの場合には、上記と同じになります。

基礎釉は、ご自分で調合する方法と、市販又はお持ちの1100℃で熔ける釉を、使う方法があります。

当然後者の方が、容易で簡単に調合できます。

1) 市販の釉を使う場合。(又は1100℃で熔ける基礎釉をお持ちの場合)

 陶器用の一般の釉は、1180~1250℃程度で使用する事が多いのですが、メーカーによっては

 1000~1150℃で使用できる石灰系透明釉が市販されています。これを使うと便利です。

 ① マット釉には、添加材によって以下の釉などがあります。(概ね、白い釉になります。)

  ) カオリンマット釉

   基礎釉:カオリン = 100:15 (単位はgです。以下同じ。外割り)

    カオリンが増えると、よりマット性が増しますが、粘土質に近づきますので、固い感じの

    釉となります。カオリンの種類によって風合いも変化します。

    カオリンを熔かす為に、合成土灰を入れる場合もあります。

  ) 白マット釉

   基礎釉:マグネサイト = 100:15

    マグネサイトを増やし過ぎると熔け切らずに、結晶を起こし白い斑点と成って現れます。

    マット性を増す為に、天草陶石を添加する場合もあります。

  )チタンマット釉

   基礎釉:酸化チタン = 100:10

    酸化チタンは強力な結晶剤です。白濁してパール状に輝く独特の結晶ですが、表面は艶消し

   (マット)状になります。

   以下の釉を作るには、基礎釉に対しどの程度添加するかは、ご自分で試して下さい。

  ) ジルコンマット釉 

    珪酸ジルコンは強力な乳濁材です。僅かな量で十分です。光沢を無くす為、他の材料を添加

    する必要がある場合が多いです。

  ) スズ(錫)マット釉

  ) タルクマット釉

  ) その他。鳳凰マット釉など   

 ② 白以外のマット釉を作りたい場合には、更に鉄や銅、コバルトなどの金属を数%添加します。

  ) 黒マット釉

   基礎釉:マグネサイト:ベンガラ = 100:20:10 

  ) 緑マット釉

   基礎釉:マグネサイト:酸化銅  = 100:20:7

  ) 青系マット釉には、1%以下の酸化コバルトを添加します。

2) ご自分で基礎釉を作る場合。

 ゼーゲル式から導き出します。かなり難しい計算になりますので、十分覚悟して取り組んで下さい。

 ① 1100℃はゼーゲルコーン(錐)番号で1aに相当します。

   (注:ゼーゲルコーンは、窯中の温度を測定する用具です。一度しか使えません。)

  これは、コーンが軟化した状態を表しますので、釉として使用する為には、更に100℃程度下の

  番号で調合する必要があります。即ち1000℃と成りますで、錐番号では05aに相当する釉と

  しなければ成りません。

 ② 05aの化学組成は以下の様に成ります。

    MgO:CaO:Na2O:K2O:B2O:Al2O3:SiO2

  = 0.257 :0.428 : 0.229 : 0.086 : 0.457 : 0.571 : 3.467(モル=分子量)

   重量換算すると次の様になります。

  = 10.36 : 24.00 : 14.19 : 8.10 : 70.05 : 58.22 : 208.33 (g)

   注: MgO(マグネシウム): 1モルは40.31 (g)

      CaO(カルシウム) : 1モルは56.08 (g)

      Na2O(ナトリウム) :  1モルは61.98 (g)

      K2O(カリウム)   : 1モルは94.20 (g)

      B2O(バリウム=ホウ酸): 1モルは153.3 (g)

      Al2O3(アルミナ)   : 1モルは101.96 (g)

      SiO2(シリカ、珪酸) : 1モルは60.09 (g)

  ③ 釉を作る主な材料。

   ) 福島長石:基礎釉の中心的な素材です。「シリカ成分」を多く含み、主にガラス質を

    形成します。「シリカ成分」を多く含む素材には、天草陶石や、合成藁灰などがあります。

   ) カオリン及びその仲間達(蛙目粘土など):「アルミナ成分」を多く含み、釉に粘りを

    与え、素地との相性を良くします。

   ) 各種灰類及び炭酸バリウム、マグネサイト等: 釉を熔かす「アルカリ成分」を多く

    含む素材です。尚、酸化亜鉛(華)も同じ働きをします。

   以上の素材を使い1100℃の基礎釉を作ります。

尚、福島長石やカオリン、各種灰の成分は単体で構成されている訳では無く混合物ですので、構成

 成分が判っていなければ、計算できません。その為の資料が必要になります。

 この件をここで述べると長くて、膨大に成りますので、上杉様でお探し下さい。必ず見つかるはず

 です。

最後に、以上述べてきた事柄を元に釉を作る場合、実験(試し焼き)を繰り返す必要があります。

以上、、マット釉を完成させて下さい。
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質問 23 水漏れに付いて。

2016-04-01 17:02:43 | 質問、問い合わせ、相談事
勝田様より以下の質問をお受けしましたので、お答えいたします。

◎ 「水漏れ 」に付いて。

教えてください。磁器土で花器を作ったところ、底の部分から水がにじんできてしまいます。

水が漏れているようです。釉薬をかけずに1260度で焼きました。

よくギャラリーとかで、無釉の白い器等あるのですが、なぜ釉薬をかけなくてももれないのですか?

あと一つ質問があります。

窯から作品を出したときは、ひびは入っていないのですが、何時間かして見ると、割れていたりする

ことがあるのですが、何が原因なのですか?


◎ 明窓窯より

 磁器土であっても、陶土であっても、花瓶など長期に水を貯めておく容器では、多少にかかわらず

 水漏れを起こし易いです。水漏れを起こす理由は以下の事が考えられます。

1) 磁器土や陶土が、十分に焼き締まっていない為です。

  十分焼き締まるには、焼き締まる温度まで上昇させる事と、焼く時間を十分長くする事です。

  勝田様の場合、磁器土を1260℃で焼成の事ですが、焼き締まるには少々低い温度と思われます。

  一般には1280~1300℃程度で焼成します。又焼成時間が記されていませんが出来るだけ長くする

  事です。

2) 磁器土でも陶土であっても、釉を掛けて焼くのが一般的です。

  一見無釉の如く見える場合でも、透明釉が掛かっている事が多いです。又どうしても無釉に

  したい場合でも、見えない内部や高台内に施釉する事を薦めます。

3) 水漏れ防止剤を使う。

  現在のままでも、水漏れ防止剤を使う事で、水漏れを防ぐ事ができます。

  陶芸材料店で各種の水漏れ防止剤が市販され、容易に入手可能です。無臭の食器用の物で十分

  です。但し、器全体に使用すると、水を弾いてしまい、表面からの水の吸収が無く、風情に

  欠けてしまいますので、器の内部のみ、又は外側底面に使う事をお勧めします。

4) 窯から作品を出したときは、ひびは入っていないのですが、何時間かして見ると、割れていた

  りする件。

 ① 一般に釉を掛けた場合、釉にひび(貫入)が入る事があります。磁器の場合貫入が入る事は

  望ましくありません。釉と素地の収縮率に差がある為に起こる現象ですので、釉の改良が必要

  です。

 ② 無釉の素地に、後日「ひび」が入る場合。

  原因は素地に何らかのストレス(歪み)が溜まっていたものが、時間と共に開放されて「ひび」

  が入るものと思われます。ストレスの原因は色々ありますが、以下の事が考えらえます。

  ) 制作時間のストレス。制作方法(鋳込み、電動轆轤、手捻りなど)によってストレスの

    掛かり方が異なります。素地の調合(調整)、素地の練り斑(むら)等も関係します。

    又、磁器の場合、削り加工によって肉薄にする事が多いです。

    その際、片削り等で、肉厚に差が出ると、弱い処と強い処が発生しこれがストレスとなる

    場合があります。更に、作品が大きく成るに従い、各部分に掛かるストレスは一様では

    有りません。特に、左右均等でない場合にストレスが溜まり易いです。

  ) 無釉での焼成ですと、素焼きをする必要はありません。但し、本焼きで素焼きの工程を

    経る必要があります。即ち、水分の除去や550℃付近での素地の膨張時などでは、時間を掛け

    なければなりません。本焼きの調子で焼成すると、ストレスが溜まる原因になります。

  ) 冷却スピードが速い場合のストレス。

    窯の大きさや窯の壁の厚み、更に作品の多さによって窯の冷えるスピードは異なります。

    「ゆっくり」冷やす事でストレスを少なくする事ができます。小さい窯の場合徐冷する必要

    があるかも知れません。

  ) 「窯出し」が速すぎる場合。上記と関連する事ですが、速めに窯を開けると冷たい外気に

    触れ、器の表面と内部に温度差が生じ易くなります。これもストレスと成ります。

    出来るだけ冷やす時間を取って下さい。出来れば100℃以下に成ってから窯の扉を開ける事

    です。

  その他、ストレス原因は多種多様です。その為、勝田様の原因が何処にあるのか、当方で判断

  する事ができません。心当たりがあれば、出来るだけその原因を除去する事です。

以上参考に成れば有り難いです。

尚、更に質問が有ればお問い合わせ下さい。

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質問 22-1 700~750度で溶ける無鉛の透明釉に付いて。

2016-03-08 22:17:54 | 質問、問い合わせ、相談事
西田まり様より、以下のコメントと追加の質問をお受けしました。

1) 本焼成後、金箔を貼り、その上に透明釉をかけたいと思っています。

  市販の楽焼釉だと、どうしても貫入が入ってしまうのでお聞きしました。

2) 自分で作って試してみたのですが、どうしてもひび割れが入ってしまいます。

  もし、ひび割れを防げる良い方法がありましたら教えて頂けますでしょうか?


◎ 明窓窯より

1) 金箔の上に釉を掛ける技法を、釉裏金彩(ゆうり、きんさい)と言います。

  (西田様が目指しているのは、この技法(又は類似)の事と思われます。)

  釉裏金彩は、九谷焼と金箔の技術を融合して出来た、加賀地方ならではの、独特の技法です。

  この技法で人間国宝の人に、石川県小松市高堂町の、錦山窯の三代目、吉田美統(みのり)氏

  がいます。平成13年に無形文化財(人間国宝)に指定されました。

  ① 当ブログでも以下の項目で取り上げていますので、参考にして下さい。

   ◎ 陶磁器の絵付け (釉裏金彩) 2010-01-15 : 作品の装飾と陶磁器の絵付け

    以下その抜粋を掲載します。

  ② 吉田氏の、釉裏金彩の、作業工程の概要

   ) 作品(磁器)を成形し、素焼、本焼の2回焼くと、真っ白な磁器が出来上がります。

   ) 白い磁器全面に上絵の具を掛けます。吉田氏の作品にはグレー、紫、黄、緑、赤等の

     背景の色によって、金箔の雰囲気が、異なって表現されます。

   ) 3回目の窯入れで、背景色を器に焼き付けます。(上絵付け)

   ) トレーシングペーパーにつけた、デザインを、ペーパーの上からなぞり器に移します。

     器に付けた下絵に合わせて、金箔を、鋏(はさみ)で一枚ずつ、切り取ります。
   

     細かいデザインでは、100枚以上の金箔を、用いる事もあります。

   ) 金箔の型が、全て切り揃ったら、一枚づつ、のりで貼り付けます。

     下絵の上に、金箔をピンセットで、置いていきます。

     薄い金箔に皺がよったり、重なったりし無い様にします。

   ) 金箔を載せた後、軽く真綿で叩いて、金箔を器の面にぴったり合う様に、伸ばします。

   ) 金箔を貼り終えると、低温で金箔を焼き付けます。

     この4度目の窯入れで、器の表面にある、不純物を取り除く、効果もあります。

   ) 最後に、透明釉を掛けます。筆で丁寧に金箔の上から、器全体に掛けます。

     この透明釉がどの様に配合されているかは、企業秘密です。

   ) 5回目の焼成で、完成です。

     薄箔、厚箔が、はっきりと現れ、作品自体に、金箔によるコントラストが、できます。

  尚、釉裏金彩の技法は、手間隙の掛かる、手作業です。 現在この技法を使い、活躍している

  方に、佐賀県嬉野町の小野次郎氏がいます。

 ・ 吉田美統氏や、小野次郎氏の作品は、インターネット上でも、見る事が出来ます。

   興味の有る方は、吉田美統、又は、小野次郎、釉裏金彩で検索して下さい。

2) 「ひび割れ」がどの程度なのか不明ですが、貫入程度ならば、対応が可能とも思えますが、

 大きな亀裂の場合には、難しいと思われます。

 即ち、磁器の本焼きでは、1300℃程度まで温度を上げる事も、珍しくは有りません。その為、

 素地は十分焼き締まっています。磁器には磁器用の釉を使い高温で焼成する為、貫入は入りません

 又、低い温度で熔ける釉を施釉し焼成すると、釉は必ず収縮します。その為、「ひび割れ」が

 発生する物です。それ故、出来るだけ釉の収縮を抑える事と、釉に弾力性を持たせる必要があり

 ます。貫入を予防するには、釉の収縮(熱膨張係数)を少なくする事が基本です。

 ① 貫入を無くす一般的な方法は、珪石(珪酸)を増やし、熔融剤を減らす事です。

  但し、この場合低い温度で釉を熔かす為には、熔融剤を減らす事はできません。

  釉に珪石(珪酸)を加える事に成ります。

  石灰を取り除き、石英を少なくし、カリウム(Ka2O)とナトルウム(Na2O)を多くし、

  アルミナ(Al2O3)を少なくする方法もあります。

 ② 釉の弾力性を増す方法。

  収縮とは、お互いに引っ張り合いながら縮む事で、釉がゴムの様に弾力性があれば、釉が

  引き伸ばされても、「ひび」が入らない事に成ります。

  その様な材料として、錫(スズ、SnO2)、ジルコン(ZrO2、4%以上)、チタン

  (Ti2、2%以上)が 有ります。但しこれらは、乳濁釉にもなりますので、添加量に注意

  が必要です。

 ③ 素地と釉の間を中間層といいます。即ち、釉が素地の表面に食い込んでいる層で、この層が

  厚い程、素地と釉の緩衝材として働き、貫入を防ぐ事に成ります。

  貫入のある釉に、硼酸を5~10%加えると、貫入を解消する事が出来ます。

  これは、硼酸と水の混合物が素地に吸込まれ、素地を熔かす為、中間層が発達すると考え

  られています。

 ・ 又、焼成温度を若干上げたり、焼成時間を長くする(ならし時間を長くする)と、中間層が

   発達するとも言われています。

 ④ 釉掛けの厚みに左右される。

  釉には、薄く掛けた方が発色や光沢が良い場合と、厚く掛けた方が良い場合があります。

  厚く掛ける程、貫入が多く出ます。これは、素地に密着した釉は自由に動けませんが、素地より

  やや離れた釉には移動の自由が生じ、強く引っ張れ易くなる為です。


当方から回答は、以上です。但し、かなりの困難と努力が必要と思われますが、釉裏金彩を作られて

いる作家さんもいますので、不可能では無いと思われます。

以上、お役に立てば幸いです。(明窓窯より)
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質問 22 700~750度で溶ける無鉛の透明釉に付いて。

2016-03-04 21:47:35 | 質問、問い合わせ、相談事
「西田まり様」より以下の質問をお受けしました。

 ◎ 低温釉につきまして

 700~750度で溶ける無鉛の透明釉薬を作りたいのですが、可能でしょうか?

 本焼き焼成した磁器に施釉したいと思っています。


 ◎ 明窓窯より

1) 低い温度で熔ける釉として、無鉛の「楽焼」の釉があります。

  一般には800~900℃が多いです。市販品の中には、750℃程度から熔ける透明釉もあり

  ます。ネットで検索すれば、メーカーや値段なども知る事ができます。

  但し、700℃程度で熔ける無鉛の釉は有りませんので、作る事は困難と思われます。

 ① 西田様は、ご自分で調合を希望しておられるようですので、調合例をお知らせします。

   以前は唐の土(とうのつち)と呼ばれる鉛白(えんぱく)を主原料に、白玉と呼ばれるフリット

   (炭酸鉛や鉛丹が主原料のガラス))と、珪石を混合した物が用いられていましたが、近年

   鉛の害が大きく報道され、無鉛の釉が推奨されています。

   注: フリットとは、水に溶けるソーダ(ナトリウム)、カリ、硼酸などは、高温で溶解させ

    水に投入してガラス化させてます。これをフリットと呼びます。比較的低温で焼成する場合

    に使われる事が多いです。

  ) 白玉のみ(100%)

  ) 白玉:70 長石:30

  ) 白玉に亜鉛華を数%添加、又は硼酸(硼砂)を添加

   釉の温度を下げる為に、亜鉛華や硼酸を入れる場合があります。

   更にCMC(化学のり)を添加し、水と一緒に攪拌します。

 ② 白玉は、ご自分で作るのは、大変ですので、市販の物を使うと良いでしょう。

   硼酸や硼砂を主原料にした、無鉛の物が市販されていますので、便利に使う事です 。

  ) ご自分で無鉛白玉を少量作る場合。

   石灰石:13.5%、長石:10.5%、炭酸カリ:4.5%、硼砂:2.5%、硼酸:36.5%、石英:32.4%

   坩堝(るつぼ)や匣鉢(さや)を用い内側に珪砂を塗る。混合物を入れ、800℃位で焼

  (かしょう)し、わずかに溶けた状態で冷却して取り出し、これを粉砕する。

 ③ 無鉛釉の欠点。現在では大きく改善されてきていますが、以下の欠点があると言われています。

  ) 釉の流動性が乏しく、平滑面にするのに時間が掛かる。その為、気泡が外に逃げ難い。

  ) 焼成温度範囲が、有鉛釉より狭い。

  ) 顔料の発色がやや劣る。

  ) 素地との密着度が劣る。などです。

 以上が、質問に対する答えですが、質問の中に気になる点がありましたので、一言述べます。 

2) 当方には、質問者の趣旨が良く理解されません。

 ① 本焼きした磁器に、低温の釉を施釉する理由とは、どうゆう事でしょうか?

  本来磁器の本焼きの際には、磁器用の透明釉(白釉)が施すのが一般的です。

  本焼き時には無釉で焼成したのでしょうか?

 ② 低温で焼成する目的は何でしょうか?

  磁器の場合絵付けは上絵付け(又は下絵と上絵の共用)で行います。即ち透明釉を施し、本焼き

  した作品に上絵の具で模様を描き、800℃程度で焼き付ける方法を取ります。

  上絵付けの上に施釉する事はしません。施釉するのは、下絵付けの場合のみです。

 ③ 上絵付けは使用と共に、絵が剥がれ易くなる欠点があります。

  その為、取り扱いや洗う(洗浄)場合は、細心の注意が必要に成ります。特に表面を強く擦ると

  模様が剥がれてしまいます。

  質問者はこの事を心配して、絵の上に釉を掛ける下絵付けの技法で、行たいと思っているので

  しょうか? 下絵付けならば、下絵付け用の絵の具を使う事になります。その際問題に成るのが

  本焼き後の絵付けです。一般には絵の具の載りの良い、素地の吸水性がある素焼き後に行うから

  です。

 ④ 上絵付けの絵の具の上に釉を施する事は、余り薦められません。(やらない方が良いでしょう)

  その理由は、以下の事が有るからです。

  )上絵の具は塗ったままの状態で、焼成する事で、綺麗に発色する様に調節されています。

   上絵の具の上に施釉すると、発色が悪くなります。即ち彩度が悪くなります。

  )本焼き後の施釉では、素地は収縮せず、釉のみが収縮する事になりますので、釉の剥がれや

   ひび割れ(貫入)が発生する恐れがあります。

私の意見は以上ですが、疑問や不明な点がありましたら、再度質問して下さい。
  
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質問 20 皿の高台の位置について。

2016-01-26 21:59:09 | 質問、問い合わせ、相談事
平垣内様より、以下の質問をお受けしましたので、お答え致します。

  [ 皿の高台の位置について ]

趣味で陶芸をやってる63歳です。小皿の径と高台の径の位置関係について教えて頂けませんか。

特に平ったい皿の場合に、高台を内側にしたいのですが、どうしても高台の際がヘタリ、綺麗な

曲線に焼き上がりません。理想としては皿の底は平に、そこから綺麗な曲線で。

未だ一度も出来ません。 ついでに、削る時のポイントもお願いします。


 ◎ 明窓窯より

皿類は平たい程難しくなります。特に高台を付ける時は要注意です。

 (尚、高台が無ければ、ほとんど問題は発生しません。)

皿類は、成形時(特に轆轤挽き)にも困難は伴いますが、巧く成形と素焼きが完了しても、本焼きで

問題を起こし易いです。理由は、本焼きでの高い温度で、素地自体が軟らかくなる為です。

特に空中に浮いた状態の部分は、ヘタリ易くなります。この場合は高台よりはみ出した縁の部分です。

支点(この場合は高台の端)から遠くなれば成るほど、ヘタリ易くなります。

尚、皿の外径に対し、高台径は1/2~1/3とするのが一般的な割合です。


 ◎ 解決方法

1) 高台が小さくし、出来るだけ平たい皿にするのは、基本的には無理な構造です。

  それ故、高台を出来るだけ大きく取る必要がります。即ち、平らな底径より若干小さい程度が

  限界と思われます。どうしても径を小さくしたい場合には、縁周辺をなんらかの方法で下から

  支える必要があります。この件に付いては後で述べます。

2) 質問の中で気になる点は、「高台の際がヘタル」事です。

 ① 皿の縁周辺がヘタル事があっても、高台の際がヘタル事は稀です。多分高台脇を削り過ぎて

  肉厚が薄過ぎたのが原因と思われます。特に高台脇を直角に削る事は、危険が大きいです。

  高台の外側の付け根はに丸み(R)を付け、高台脇は厚めに削り、縁に行く程、肉厚を薄く

  事です。但し、丸みが大きいと、施釉の際、高台が持ち難くなる欠点もあります。

 ② 最初から平たい形状の皿では、ヘタリ易いですので、ある程度の深みのある皿を作り、焼成で

  平らに成る様にするのも、一つの方法です。但しどの程度深くすれば良いかは、試行錯誤する

  必要があります。

3) 耐火度のある素地を使う事です。

  高温で柔らかくなる素地と、高温に耐える素地があります。一般に赤土の様に鉄分の多い素地は

  耐火度が低く、白っぽい土には、耐火度の高い物が多いです。それ故、素地を変更するか、

  耐火度の高い素地を混ぜて(ミックスして)使用する事です。又、シャモット(焼き粉)を素地

  に混入する方法もあります。

4) 焼成温度を下げる。

  素地が軟らかくなるのは、最高温度と寝らし時間の長さによっても関係します。当然高い温度程

  時間が長い程、軟らかくなります。尚、焼成温度を下げる事はご自分の窯であれば出来ますが、

  焼いて貰っている方は、困難かと思われます。但し、窯の大きさにもよりますが、窯の中では、

  温度の高い場所と、低い場所がある物ですので、比較的温度が低く、窯の温度が比較的早く冷える

  下の方に窯詰めして貰うのも一つの方法です。 

5) 窯詰めでの対応。

 皿の縁周辺を下から支え、ヘタリを予防する。支えは道具土を三角錐にした「目土」を、皿の周囲

 に適度の間隔を開けて配置します。又、蜆(しじみ)やアサリ等の二枚貝の片割れに、土を詰め

 縁の周辺に置く方法もあります。「目土」が器に張り付くかも知れませんが、容易に取り除く事が

 できます。貝殻の場合は、作品に貝殻の跡が付きますが、貝殻自体は粉々に成ってしまい取り除く

 事は容易です。

6) 相談者の小皿が轆轤挽きなのか、手捻りによる角皿であるかは判読できません。もし手捻り

 による角皿であれば、高台脇から三角形の梁(はり)状の物を縁に向かって取り付ければ、下に

 落ちる事は予防できます。

以上、参考にして頂ければ有りがたいです。
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質問 19 カオリンマット釉の改良 付いて。

2016-01-13 21:08:31 | 質問、問い合わせ、相談事
HON様より以下の質問をお受けしましたので、当方の考えをお伝えします。

韓国カオリン(商品名)を多く含んだ釉薬を自作しました。それを焼成したところ釉が縮れて素地が

かなり露出してしまいました。この釉薬は、元々は韓国カオリンではなくて朝鮮カオリン(陶芸.

comから入手)を配合していて、問題なかったのですが、新たに調合するときに、これらの原料の

違いを気にせず切り替えてしまったのです。

その後、カオリンは縮み易い性質があることや、その短所を補うため韓国カオリンには仮焼きしたもの

もあることを知りました。

さて、この釉薬が40L近くあるので今から改良できないものかと思案しています。そこで、この釉を

いったん乾かし、粉にして、素焼きしてから又水で溶いたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか?

また、別の方法があれば教えいただきたく、よろしくお願いします。ちなみに、元々の配合は以下の

とおりです。

福島長石10%・合成土灰50%・朝鮮カオリン40%・焼成タルク10%・珪酸ジルコニウム3%


明窓窯より。

1) カオリンは白色粘土とも言われ、磁器などの素地や釉としても使われている鉱物です。

  質問では、カオリン本体では無く、すでに釉として調合してしまった物が40Lあるとの事です。

  それ故、この釉を如何に改良し活用するかが問題になります。

2) 釉にカオリンを多量に添加する場合には、焼(かしょう=仮焼)カオリンを使った方が良いと

  いわれています。 理由として以下の事があげられます。

  ① カオリンを焼する事で、塊を粉砕し易くなる。

   手元の資料では、焼する温度は1000℃以上が良いと記されています。

   一般の粘土質の鉱物は、焼温度は900℃程度でも十分粉砕可能との事ですが、カオリンでは

   やや高めの1000℃以上になっています。

  ② 焼する事で、カオリンの収縮率を抑える事が出来る。

   カオリンは加熱と共に膨張し、その後次第に収縮します。即ち、600℃程度までは膨張し、

   その後は収縮します。600℃付近で結晶構造が崩れメタカオリンと言う状態になり、一番膨張し

   (但し1%以下)、その後次第に収縮しますが、その割合は、1000℃程度で約1%程度です。

    1000℃を超える頃から、急激に収縮し始め、1100℃で約2%、1200℃で約7.5%になります。

    1230~1250℃程度ですと9~9.5%程度になります。

    カオリンを焼する事で、釉の縮み率を少なくする事が出来る訳です。

3) 質問の件では、素焼きして釉の中のカオリンを焼したいとの事ですが、700~800℃程度では

   焼縮む効果は期待できません。即ち、効果を期待するならば、1000~1100℃が必要です。

   一般の釉では7%程度の縮みですので、調合した釉では、2~3%程度多く縮む事になります。

  ① 釉は950℃程度から、熔け始めガラス化すると言われています。

   その為、1000℃以上で焼すると、ガラス化が進み、粉砕する事が困難になると思われます。

  ② 御提案の素焼きの方法では、カオリンが十分縮まらず、目的通りには行かないと思われます。

   但し、少量を試験的に素焼きで試し、当否を確認する事を試みるのも良いでしょう。

4) 釉を改良する方法。

  基本的には、現在の釉に何か別の物質を添加する事しか出来ません。即ち取り除く事が出来ない

  からです。改良の方法として以下の事が考えられます。

  ① 問題に成っているのは、韓国カオリンの縮み率が大きい事で、その配合割合が多い事です。

   それ故、他の成分を多くして、相対的な割合を小さくする方法です。但し長石は縮みを増します

   ので、増やさない事です。他の成分は熔媒として働いていますので、多くする事で釉が熔け易く

   なります。そこで焼成温度を若干低くするする必要があるかも知れません。

  ② 釉の剥れの現象は、「貫入」を無くす方法に似ています。即ち、釉の縮みを少なくする対策と

   同じです。文献では、微粉珪酸を加える、又は酸化錫を少量加える方法があると記載されて

   いますが、当方で試した訳ではありませんので、試みる時は少量で行ってください。

  ③ 釉が素地に固着する方法をとる事です。

   a) 釉を薄く掛ける。 厚く掛けるとガラスカ化した釉が一塊に寄リ集まり易くなります。

    又ガラス質も厚くなり、その重みで表面より滑落する事もあります。

   b)後でも述べますが、素地との関係もあります。強く固着させるには、素地に石灰を添加すれ

    ば良いと言われています。

   c) 釉の熔ける温度で、「寝らし時間」を若干長くし、素地中の珪酸分と粘土の成分を少しでも

    多く釉に熔け込ませる事です。

5) 素地を変える方法。

  釉を変えて対応するのは、かなり難しい様に思えます。むしろ素地を変えた方が容易かも知れ

  ません。即ち縮み率の大きな素地を使う事です。

  ① 一般に粒子の細かい素地は縮み率も大きいと言われています。

  ② 赤土など鉄分を含む素地も縮み率が大きくなります。

  ③ 当ブログで取り上げた、素朴な疑問 212 「粘土が焼き締まるとは2?。」で記載してある

   器土も焼き締まる率の高い素地です。一部転載しますので、参考にして下さい。

主な器土の産地。

   常滑(白泥土、朱泥土)。万古焼粘土。信楽土(黄瀬土)。萩焼(大道粘土)。備前土(干寄)。

   岡山・伊部土。益子焼(北郷谷土)。相馬焼(大堀粘土、井出粘土)。笠間焼粘土。徳島大谷焼

  (萩原粘土、青石)などがあります。

  ④ 釉と素地との相性が悪い状態ですので、問題の釉を現在使用中の素地に練り込む。

   元々、長石やカオリンは磁土に含まれる物質です。問題に成るのは土灰の働きですが、素地を

   磁器化する(ガラス成分を増やす)と思われますので、1~2割を添加する事で、素地に

   悪影響を与える事は少ないと思われます。試してみる価値はあると思います。

6) その他の方法。

 「焼成したところ釉が縮れて、素地がかなり露出してしまいました。」の記事の検討が必要です。

  先ず、素地が露出した原因が、釉の縮みによるものかです。何故なら、それ以外でも、素地が

  露出する事が有るからです。

 ① 焼成の仕方でも釉の剥がれは起こります。即ち、焼成温度が高過ぎ、釉が熔け過ぎる場合です。

 ② 素地との密着度が弱い場合もあります。作品表面が埃(ほこり)などで汚れている場合も

   釉剥げが起こります。

 ③ 素地の表面が滑らか過ぎる場合にも、釉が剥がれる原因になります。それ故、素地の表面を

  荒したり、荒めの紙ヤスリなどで、擦り(こすり)釉が引っ掛かり易くする方法も考えられます。

以上、決定的な方法が見当たりませんが、参考にして頂ければ有りがたいです。
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質問 18 棚板の補修の方法に付いて。

2015-11-26 13:56:51 | 質問、問い合わせ、相談事
小川様より、以下の質問を頂戴しました。

私は六年ほど陶芸をしておりまして、普段は活動する場所が異なる陶芸仲間が数人いるのですが、

彼らと通っている教室などの棚板の補修方法の仕方が話題になったので、質問させていただきます。

1) 私の所属している団体では、棚板には薄くアルミナコーティング液を塗って使用しております

  釉薬が垂れた際にはタガネなどで剥がし、また薄くコーティング液を塗っています。そのため、

  棚板に多少の凸凹がある時も多いです。

2) 仲間の所属している教室では、アルミナコーティング液をある程度塗り重ね、電動ヤスリ等で

  綺麗に均して使用しているそうです。

3) また別の仲間の所属している団体では、殆どの棚板にアルミナを塗らず、一回の焼成で数枚

   だけ、垂れる可能性のある釉薬を使用した作品を、アルミナを薄くコーティングした棚板に

   乗せて使用しているそうです。

これらの方法には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

また、明窓窯様はどの方法が一番良いとお考えになるでしょうか。お聞かせいただければ幸いです。


◎ 明窓窯より

本焼きの際、釉の垂れや流れ、釉剥げ等の原因で、釉が棚板上に「こびり付く」事は珍しい事では

ありません。各々ご自分の方法で処理しているはずで、どれが良くどれが悪いという事もありません

当方の窯では、基本的には、上記1)の方法を採り、更に2)の方法も併用しています。

但し、作品と棚板が「くっついた」際には、直接鏨(たがね)で剥がすのでは無く、棚板の後ろから

木槌等で叩き剥がします。当然作品側にコーティング剤が残り、棚板上には剥がれた跡が残ります。

質問の趣旨は、この跡の処理の仕方を問うものと思われます。

① アルミナコーティングを塗布する目的は、二通りあります。一つは剥がれた跡を補修する事で、

  もう一つは、棚板自体を保護し、長持ちさせる事です。

② 粉末のコーティング剤を、水と少量のCMC(化学糊)を添加して溶き、刷毛塗りするのが普通

  です。濃すぎると盛り上がった状態になり、薄過ぎると「くっついた」場合、棚板から剥がし

  難くなります。薄いとは棚板の色が透けて見える状態です。

  尚参考までに、アルミナコーティングは、(水酸化)アルミナ等と、粘土の混合物との事です。

③ 補修の仕方は以下の通りです。

 ) 棚板が釉で汚れる場合と、コーティングが剥がれる場合があります。

   前者は、釉のみが棚板上に残る場合で、釉の剥がれや釉がなんらかの理由で飛び跳ねた時に

   起こります。後者は、作品と共に剥がされた状態です。

 ) 棚板が釉で汚れる場合には、鏨(たがね)等を用いて、剥ぎ取ります。小さな点状の場合

  (直径1cm以内)には、表面の汚れのみを取り除く事が出来ますが、やや広い範囲に

  「こびり付く」場合には、コーティング剤から取り除く事になります。

   多くの場合は、コーティング剤は棚板に残りますので、補修も容易です。薄くコーティング剤

   を剥がした跡に塗るだけでOKです。

 ) 作品と一緒に剥がれた跡は、完全に剥がれている事が多いですので、やや濃い目のコー

   ティング剤を塗る事になります。薄いと、周囲との高低さが出て表面が凸凹になります。

   更に、鏝(こて)や箆(へら)を使って平らに均します。但し、乾燥と共に凹みますので、

   再度、上から塗る必要が出る場合があります。それ故、やや厚めに塗り、どうしても高低差が

   出た場合には、「ダイヤモンドやすり」やグラインダー(電動やすり)を使って平坦にします。

   尚、この作業をする時は、防塵メガネやマスクを着用します。

④ 棚板保護の為に、コーティング剤を塗る。

 ) 高温と、酸化、還元の炎の中に長時間晒される棚板は、目には見えませんが、長い年月に

   は、劣化が進んでいます。劣化は棚板の表面の凸凹(特に補修を繰り返した場合)や、「ひび

   割」等と成って現れます。その為、定期的に棚板全体に、コーティング剤を塗る必要があり

   ます。但し、薄くして塗ります。上記3)の方法である殆どコーティングを塗らない事は、

   棚板の保護の観点からは、感心できません。

   更に、2)の場合、棚板の枚数が多い時は、毎回塗るのは、手間が掛過ぎですので適度の間隔

   を開けて行う様にすると、良いでしょう。

 ) 塗る範囲は棚板全体に成ります。即ち、表裏と側面です。

   尚、棚板は濡れていますので、焼成する数日前に終わらせ、乾燥させる事です。

   更に、塗った直後の本焼きでは、十分棚板本体に固着していませんので、作品本体と「くっ付

   く」事が多いですので、確実に作品の底にアルミナを塗っておく必要があります。同様な

   理由で、棚板の支柱がくっ付く事もあります。特に棚板の裏側にくっ付いた支柱が、窯出しの

   際に落下し、作品を壊す事もありますので、棚板を取り除く時は、注意が必要です。

⑤ 棚板は両面が使えます。

  一般に市販されている棚板は、表面に厚くコーティング剤が塗られ、裏面は薄く塗られています

  その為、もっぱら表面のみを使う事になります。表面が凸凹過ぎて使い難い場合には、裏面を

  使う事が出来ます。その際、コーティング剤をやや厚めに塗ります。

⑥ 注意事項。

  棚板は自然と「ひび割れ」を起こす事があります。その際、コーティング剤が接着効果の役目を

  果たす事もありますが、限定的です。棚板の「ひび割れ」の長さが1/3程度の場合は安全に使用

  出来ると言われています。それ以上の場合には、割れ目の下に支柱を立てて、完全に割れるのを

  防ぎながら使用します。

⑦  基本的には、棚板を汚さない様にして使う事です。

  その為、3)の流れ易い釉を掛けた作品を集めて焼く方法も、それなりに理のかなった方法と

  いえます。又、流れ易い釉を掛けた作品の下に煎餅(せんべい)を置く事も悪くはありません。

  耐火度のある道具土を使い、更に、表面にコーティング剤を塗って使います。

  尚、当然ですが、釉の種類によって流れる状態も異なりますので、流れ易い釉では、棚板に

  接する部分や、高台脇付近の施釉はできるだけ避け、釉は塗らない(又は剥がしておく)事です。

以上参考にして頂ければ幸いです。 
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質問 17 桑田卓郎さんの作品に付いて。

2015-11-08 17:19:14 | 質問、問い合わせ、相談事
「まさ」様より以下の質問を頂戴しました。

 桑田卓郎さんの作品のような釉の剥がれ方はどうやってると思われますか?

 私の推測では釉薬がカリ長石を主成分としている可能性が高いと思います。そしてたっぷりと

 厚がけをする。化粧は蛙目粘土を添加してるのでしょうか?

 全くわかりません。

 宜しければご解答頂きたいです。


明窓窯より

小生勉強不足の為、桑田卓郎さんの名前を存じ上げていませんで、初めて知りました。

ネットで検索した所、ある程度の経歴や、作品を見る事ができました。要約すると次の如くです。

 注: 桑田卓郎(くわたたくろう)氏:1981年 広島県生まれ。岐阜県土岐市に工房を構えて制作中。

  経歴

  2001年:京都嵯峨芸術大学短期大学部を卒業。

  2002年:陶芸家の財満進氏に師事。

  2007年:多治見市陶磁器意匠研究所を修了。

  2006年:第6回益子陶芸展で濱田庄司賞を受賞。

  2015年:イサムノグチ制作の「天国」(東京赤坂の草月会館 1 階)でオブジェの作品展示。

  国内(金沢21世紀美術館)及び海外(ニューヨーク、ブリュッセル、ロンドン等)で、個展や

  グループ展を行なっています。

◎ 作品の特徴

  作品は、大胆にデフォルメされた形とポップな色彩が特徴です。

  長石釉(志野釉)の「梅華皮」(かいらぎ=釉のひび割れの一種)や、「石爆」(磁土に混ぜた

  石が、焼成によってはぜて表面に現れたもの)。大きく剥がれた釉の作品などがあります。 

  直接作品を拝見した訳では有りませんが、釉が大きく剥がれている作品が多い様に思われます。

 質問の意味も、この剥がれがどの様にして出来たかの原因を問うものと思われます。

 当方の考えを述べたいと思います。当然ですが、あくまでも推量ですので、真実とは異なる事が

 多いと思われますが、参考程度にして下さい。


 大きく釉剥げのある作品は、青や赤、黄色の地に、白やピンク、金色などの肉厚な釉が掛けられて

 います。下地には釉の剥げた跡もなく、上部の釉が大きく剥がれている作品です。一般の貫入と

 比べ格段に割れ目が幅広く、作品によっては、一部が剥げ落ちたり、蜜柑の皮をむいた様に、

 外側に反り返っている物も見受けられます。

1) 作品は施釉し本焼き後、再度別の釉(長石釉)を厚掛けした物と思われます。

 ① 釉が大きく「ひび割れ」たり、剥がれたりするのは、素地と釉の収縮率の差が大きい程、

  効果が増すからです。特別な場合を除き、素地と釉の収縮率に大きいな違いがある事は稀な事

  です。尚、特別な場合とは、備前焼の事です。備前の土は収縮率が20%とも言われ、釉の

  12~13%とは大きく異なり、釉が剥げ落ちる為、施釉が出来ないと言われています。

 ② 下地に成っている釉(赤、青、黄色など)を掛けて、一度高い温度で本焼きし下地の色を

  定着させます。当然、素地も収縮します。高い温度程大きく縮む事になります。

  次に前回以下の温度で焼成すれば、素地の収縮は0%ですので、上に掛けた釉の収縮がそのまま

   現れる事になり、一度の施釉と一度の本焼きよりも、釉は多く縮み割れ目も大きくなります。

2) 釉の厚みが極端に厚いのも特徴です。

 写真で見る限り1~3mm程度ある様に見えあます。(著作権の関係で写真は、表示できませんが)

 一般の釉の厚みは、ハガキ一枚分と言われていますので、極端な厚みですが、釉が流れている

 様子は見えません。既存の大きな貫入(割れ目)と言えば、鬼萩を思い出します。又蛇肌や、

 氷裂釉などもありますが、それ以上の割れ目に成っていますので、流れ難い釉(志野釉など)で

 ありながら、比較的低い温度で熔ける釉を厚く掛けていると思われます。更に白以外は着色されて

 いると思われます。ご指摘の「カリ長石」を多く含んでいるかは不明です。

 蛙目粘土を添加すれば、流動性を少なくし、釉を盛り上げ易くなりますが、熔け難くなります。

 それ故、蛙目粘土の使用状態も不明です。

3)二度目の施釉時に、何らかの細工が施されている可能性があります。

 一般に幾ら厚く施釉しても、上の釉のみが剥がれ落ちる事は少ないです。考えられる事は、釉が

 一部剥がれ易い様に、何らかの技法が取り入れられていると思われます。

 ご存知の様に、素焼きした作品に施釉する際、作品の表面の埃(ほこり)を取り除く為、「はたき」

 を掛けたり、水拭きしたり、場合によっては、水洗いをする事があります。その目的は、釉剥げを

 防止する事です。即ち埃は厳禁なのです。しかしこれを逆手にとって活用する事も可能です。

 一度本焼きした作品の表面に、埃に相当する物質を塗り付ける事です。但し、二度目の本焼で

 焼失してしまう有機物質でなければなりません。例えば「片栗粉」等が最有力になります。

 その他、身の回りに、これに類する物が見つかるはずです。これらを部分的に任意の場所に使用

 すれば、その部分のみに釉剥げを起こす事が可能に成ると思われます。勿論、何度かの試行錯誤の

 実験が必要であるのは当然です。


以上が私の見解です、参考に成れば幸いです。

尚、桑田卓郎さんの技術は未公開ですので、直ぐに真似が出来るとは思われません。別の秘密がある

のかも知れません。
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質問 16 素焼後の化粧土の調合に付いて。

2015-10-04 22:11:54 | 質問、問い合わせ、相談事
「あっちゃん」 様より以下の質問を頂戴しました。

  素焼後の化粧泥の作り方について

素焼き後の白化粧土の作り方ですが、白絵土:ロ‐セキ:蛙目粘土=3:1:1とありますが

ローセキを木節粘土でも良いと見聞しましたが、その場合でも3:1:1で良いですか?

又、ローセキと木節粘土では結果どのように違ってきますか よろしくお願いします。


明窓窯より

1)化粧掛けは、本来生の状態の素地に施します。素焼き後に行うのは、生の状態で粉引(こひき)

 を行うと、素地が水分を吸収し、膨張し変形させたり、最悪作品を壊す事に成りますので、その

 危険性を取り除く為です。

 但し、素焼き後の化粧掛けには、生とは別の危険性を含んでいます。その危険性を除去する為に、

 特別な調合が必要になります。

2) 素焼き後では、素地はすでに収縮していますので、生に使用する化粧土では、化粧土が大きく

  縮みますので、化粧土に「ひび」が入ったり、剥がれを起こし易いです。又、生素地よりも

  接着性が悪くなり、離剥し易くなります。

3) 素焼後の化粧土は、収縮率の改善と、接着性をよくする必要があります。

 ① ローセキ(蝋石)と木節粘土。

  )蝋の様な光沢ある半透明な複合鉱物です。耐火物の原料や平滑剤などとして用いられます。

   又、滑石(タルク)などを含める事もあります。

   主成分は葉蝋石は、Al2O3・4SiO2・H2Oの化学組成です。その他に石英、カオリナイト、絹雲母、

   明礬(みょうばん)石等の鉱物が数種類混在した複合的な鉱石です。

   蝋石は酸やアルカリに反応せず化学的に安定な鉱物で、耐火性に非常に優れています。

  ) 木節粘土の主成分はカオリン(Al2O3:38%・SiO2:46.5%・H2O:14%)で葉蝋石と似ています。

   可塑性が大きく白色、又はやや青味を呈します。

 ② ローセキ(蝋石)と木節粘土の違い。

  小生は木節粘土での調合は行った事がありませんので、あくまでも予想ですので、実際には

  色々試す事をお薦めます。

  ) 蝋石と木節粘土の割合は同じで良いと思われます。

    即ち、白絵土:蝋石(又は木節粘土):蛙目粘土=3:1:1です。

    全体に対して2割の含有量ですので、さほど大差がないと思われます。

  ) 蝋石はやや透明感があり、木節粘土ではやや青味掛かるかも知れません。

    光沢は蝋石の方が有るかも知れません。但し、一般に透明釉を掛ける事になりますので、

    大差は無い模様です。更に、蝋石の方が、やや軟らかい(優しい)感じになると思われます

以上 確実な事は言えませんが、素地との関係や化粧土の濃度、焼成温度等も関係しますので、

試行錯誤の上、調合を決める事を薦めます。

参考にして下さい。

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質問15 マット釉の釉の剥がれとカオリンの焼 の関係

2015-08-16 17:25:41 | 質問、問い合わせ、相談事
H O N 様より以下の質問をお受けましたので、私なりにお答えしたいと思います。

 (便宜上質問を二つに分けて考えます。)

  ◎ マット釉のカオリンの焼

1) 朝鮮カオリンを29%含む自作のマット釉で、本焼きすると釉が縮れて素地が露出します。

  C M Cを5%足しても改善しないので、更にCMCを増やすか、もしくは朝鮮カオリンの何割かを

  焼にしてみようかと考えています。どちらが良いでしょうか?

2) 市販の焼カオリンは1200度で焼いて粉砕してあるとの謳っているのですが、高価なので、

  自分でやろうかと考えてます。しかし、これだけを1200度で焼くのももったいないので、素焼き

  の800度で焼いてもそれなりの効果はあるでしょうか?

  尚、焼くときはサヤに入れて焼く予定です。


明窓窯より

1) の質問

 ① CMC(化学のり)を釉に添加するのは、釉を素地に密着させる為です。

  但し、施釉後に素地から釉が剥がれるのを防ぐ事が主目的で、高温で焼成中では釉の剥がれを

  防ぐ事はほとんど効果が無いと思われます。 CMCは有機物質ですので、高温では焼失すると

  思われます。

 ② CMCの使用方法をメーカーのカタログで見ると、0.3~0.5%程度と表記されています。

  それ故5%の添加量は多過ぎると思われます。多く添加すると害があると云う記事もあります。

 ③ カオリンは磁土や粘土の素地に入れる事も多い素材です。即ち土の一種ですので、素地との

   相性は良く、CMCを入れなくても、良く密着すると言われています。

   それ故、カオリンを焼 して添加する方法が最良です。

2)の質問

 ① 焼成で釉が剥がれる(縮れる)主な原因は、素地と釉の収縮率の差で、釉の縮みが大きい為

   です。即ち、一般に市販されいてる素地の収縮率は、12~13%程度と言われています。

   一方カオリンの収縮率は1200度程度で12%程度と言われていますので、一見問題が

   無い様に見えます。しかし生掛けの際には問題がなくても、素焼き後の施釉では問題になり

   ます。即ち素焼きで素地は5~6%程度は縮んでいますので、本焼きでは7%程度しか縮み

   ません。それ故、カオリンとの収縮差が5%前後発生します。この差が釉剥がれの原因に

   なります。

 ② カオリンを29%添加するのは、一般的に20%以下とするのに対して、大量の割合になり

   ます。カオリンは土の一種ですので、他の釉の成分が高温になるとガラス化し液体にり、

   素地に張り付くのに対し、カオリンはほとんどガラス化せず液化もしません。更に大きく縮み

   ますので、張り付かずに剥がれる事になります。

 ③ カオリンを焼する事は、予め収縮させる事になり、素地との収縮差を無くす事になります。

   市販されている焼カオリンが1200℃の理由は、出来るだけ大きく収縮させる為です。

   当然それ以上の温度の方が大きく収縮するのですが、1200℃以上になるとカオリンの中に

   含まれる不純物と化学変化(不純物がガラス化して結合)を起こしますので、好ましくない

   からです。

 ④ 質問にある素焼き程度の温度(800℃)で焼したカオリンも有効か? との事ですが、

   十分有効に使う事が出来ます。但し1200℃に比べ収縮率が低いですので、多くの割合の

   量を添加する必要があります。場合によっては100%添加しても良いのではないかと思い

   ます。低い温度の焼 の方が砕き易い利点もあります。但し、カオリンを細かくし過ぎると

   収縮率も大きくなります。12%程度の物が、粗目のカオリンでは8%程度の収縮になると

   言うデータもあるとの事です。それ故、焼せずに粗目のカオリンを使う方法も有るかも

   知れません。尚、どの程度の粗目が良いかのデータはありません。

 ⑤ 今回の質問とは直接関係しませんが、釉が縮れたり、剥がれる原因に釉の厚掛けがあります。

   それ故、施釉時に若干薄く掛ける事で、縮れや剥がれを無くせる場合もあります。

以上、参考にして頂ければ幸いです。
  
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