わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

手捻り(てびねり) 3(紐つくり2) 紐を巻き上げる。

2018-06-21 14:38:02 | 手捻り陶芸
作品の土台(底部)を作り、その周囲に紐を巻いて高さを出して形作るのが一般的な方法です

この土台部分を作った紐で作る場合も有りますが、一般には板状(タタラ)の物を使うか、

玉作の粘土等を拳(こぶし)で叩き締めて底を作り、その周囲を盛り上げて作ります。

叩き締めるのは底割れを防ぐ為です。当然ですが、土台の形や大きさは作品の形を考慮して

決めなければ成りません。

例えば、箱型の作品であれば、角状態にし、楕円形ならば楕円状にし、その他不定形など

色々あります。底の肉厚も削りで高台を作るのであれば、削り量(高台の高さ)を考慮して

決めます。特に下部(底部)が狭い場合でも、細くし過ぎない事です。紐を巻き上げる時に

不安定になるからです。もし底が狭い作品を作りたいのであれば、腰(底)の部分を肉厚にし

成形後に削って薄くするか、上下逆さににして作る事に成ります。

1) 紐を巻き(積み)上げる。(この件に付いては、以前お話しましたが再度記します。)

 紐を積み上げる方法には、より丁寧な輪積みの方法と、やや「ラフ」な巻き上げ方式が

 あります。

 ① 輪積み方式とは、紐を一段分づつ輪にし、順次積み上げる方法です。

 この利点は、輪の厚みが一定になる事と、輪の繋ぎ目を任意な位置に移動できる事です。

  即ち、長い紐ではいくら均一の太さにしても若干の太い細いが出易いです。輪にすれば

  積み上げる前に確認でき、補修も可能です。又下段の紐の繋ぎ目と異なる位置に繋ぎ目

  を設ける事で、強度的に弱い処を無くす事も可能です。但し、手間暇は掛ます。

 ② 巻き上げ方式とは、蛇が「トグロを巻く」様に一本の紐を巻きつける方法です。

  一段目と二段目の境は、はっきり段差を設ける必要があります。一本の紐が使い終わった

  ら別の一本を繋げて使います。繋げる際の注意点は、繋ぎ目に空気を閉じ込めない事です

  紐の両端に水を着け、両方から圧縮する方法と、紐の両端を逆方向に斜めに切り、向かい

  合わせて水を着けて圧着する方法があります。当然接着面積が大きいのは後者です。

  尚、粘土が十分軟らかい場合には、水を着ける必要はありません。繋ぎ目は指でならし

  平滑にします。

2) 作品に取り掛かる。

 土台の周囲に一段目の紐を巻き付けます。その際、土台部分としっかり接着させる為、

 できるだけ太めの紐を使う事です。

 ① 巻き付け面に、針や櫛等を用いてアヤメ状の傷を着けます。その他の方法として歯

  ブラシで擦る方法があります。要するに表面を荒し、表面積を増やすのが目的です。

  傷を着けた部分に筆などを用いて水を挽きます。勿論、「ドベ」等を接着剤として

  使用する事も出来ます。

  尚、手回し轆轤などがあれば、作業が捗り(はかどり)ます。

 ② 巻く方向に決りはありません。一般に右利きの場合は、紐を右回転(時計回転)方向

  が作業がし易いです。(轆轤は逆回転になります。)紐の一端を土台の縁に押し当て

  固定し、紐を巻き付けます。紐を親指と中指挟み、人差し指で真上から力を加え、土台

  に押し付けます。その際土台部分が紐より若干外側になる様にします。

  一段巻き終わったら次の一段を積みます。最初に積む段数は3段程度に抑えます。

  段数が多くなると、深さが深くなり、次の作業がし難くなります。

 ③ 紐と土台を密着させる。

  ⅰ) 最下段の紐の内側を密着させる。紐の内側の端を崩しながら、中指又は人差し指を

   用いて下に滑り降ろし、なすり着ける様にします。注意点は紐の断面は円形で、土台

   部分は平ですので、隙間が生じ空気が閉じ込め易くなります。その為慎重にゆっくり

   作業します。接着部分は指跡で凸凹していますので、指で平滑にしてから「なめし皮」

   で滑らかにします。

  ⅱ) 最下段の紐の外側を土台に密着させる。

   紐の外側にあるはみ出した土台部分の土を、竹へら等を用いて上(紐の方向)擦り着け

   ます。竹へらを使う場合には、水に濡らすと滑り易くなります。

 ④ 一段目が巻き終えたら、更に紐を巻いて積み上げます。その際3段程度に留めると、

  次の紐同士の接着がし易くなります。積み上げる際、人によっては、紐を内側に拠る様に

  する方法もあります。これは、外側に開かない(直径が広がらない)様にする狙いもあり

  ます。勿論そのまま紐を積み上げても、ほとんど問題ありません。尚、下段の紐よりも

  やや内側に積み上げ、直径が広がらない様に積むやり方があります。どの方法を取るかは

  人によって違いますがこれが正解と言うやり方はありません。ご自分に合ったやり方で

  行いますが、何か問題が発生した場合に他の方法を試して下さい。

 ⑤ 紐同士を密着させる。

以下次回に続きます。
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手捻(てびねり) 2(紐つくり1) 紐を作る。

2018-06-19 11:24:33 | 手捻り陶芸
手捻り陶芸の中でも、「紐つくり」は一番基本的な作り方です。更にいかなる形や大きさにの

作品に対しても、対応可能で、ある意味万能の方法とも言えます。但し、同じ大きさの作品

よりも制作時間が長くなり易いのが難点とも言えます。粘土の紐は作品作り以外にも、割れの

補修や、カップ類の執って部分などにも利用する事がります。これらに付いては別の機会に

述べる予定です。

1) 粘土で紐を作る。

 紐状にした粘土を数多く作り、形に応じて一段一段積み上げて高さを出し、更に肉厚を薄く

 伸ばし形を整えます。それ故、紐を上手に作る事が肝要になります。上手な紐とは、断面が

 真円に近く太さも一定で、適度の長さ(役30cm以上)になっている紐の事です。

 紐の作り方には以下の方法が有ります。尚粘土の軟らかさも重要で、若干軟らかい方が

 作業し易いです。ベタベタ手に着く様では軟らか過ぎ、紐に「ひび」が入るのは乾燥し

 過ぎです。

 ① 胸の近くで両手の掌(てのひら)で土を挟み、両手を向かい合わせて前後させ、揉む

  様にする方法です。この方法では、掌の真横方向の二倍程度の長さまでの、短い紐には

  有効ですが、長い紐では途中で千切れる恐れがあります。手に水を付ける必要はあり

  ません。時間を掛けて揉む程、又挟む力が強い程、紐は細くなります。紐は一回転以上

  回転させないと、紐の断面は扁平(楕円状)に成ってしまいます。紐の太さは作品の

  大きさや肉厚の差によって異なります。

  小物の場合には細め(1~1.5cm程度)にし、肉厚の厚い物や大物の場合には太く

  (2~3cm程度)します。上部半分を細くしたら、上下逆にして反対側を細くします。

  紐作りに慣れた方では、太めの紐の下部から細くし、真下に落とし込みながら、上部を

  少しづつ細くして行く方法で作る事も可能です。但しこの方法はかなりの練習が必要です

 ② 板の上に転がして紐を作る方法。

  この方法では1m程度の長さの紐を作る事もできます。又途中で切れた紐も痕跡無く消し

  て繋げる事も可能です。やり方は以下の様になります。

  ⅰ) 板を水で濡らす。

   板は1m以上の長さで、幅が20~30cm以上が理想的です。但し、水分を吸収

   し易い板で、塗装された板や化粧版などは、土離れるが悪く不向きです。水で濡らす

   のは、板が粘土の水分を吸収し硬くなるのを防ぐ為です。予め板を濡らせておけば、

   水分の吸収が押さえられます。

  ⅱ) 適量の粘土を上記①の方法で太い紐を作り、板の上に真横に置き、両手の掌を紐の

   上に置き、板に押し付け前後に回転させながら、中央から外側にゆっくり移動させます

   尚、細い紐の場合には、両手の指の部分のみを使い、太い紐の場合には、掌全体を

   使います。回転させる事で紐は徐々に細くなります。この際一回転以上回転しないと

   扁平(楕円状)になります。又不慣れな方は、長手方向に線が入り易いです。

   線が入るのはその部分が回転してない為で、板に押し付けられていない証拠です。

  ⅲ) 一様の太さの紐を作るには、途中で太さを調整する必要があります。

   基本的には、一様の力で転がしますが、どうしても強弱が出てしまいます。それ故

   最初から同じ太さの紐を難しいです。周りより太い処と細い処が出るのが普通です。

   その際太い部分は板に押し付ける様にし、両手が左右に開く様に回転させます。

   細い部分は、両手を近づける様にすると、紐は太く成ります。特に中央部が細くなり

   易く、両端が太くなり易いです。細い部分太い部分のみを回転させます。注意点は、

   紐の両端が凹ませない事です。これは、力不足で表面の土のみが横に伸び、紐の中心

   部が伸びていない為に起こる現象です。

  ⅳ) 切れた紐を繋ぐには、両方の切れ端数cmを重ね、最初は弱い力で回転させた後、

   やや強い力で板に押し付けながら両手を左右に開きながら回転させます。

  ⅴ) 紐は必要量よりも多く作って置く事です。

   径の大きな作品では、思った以上の長さが必要になります。制作途中で不足すると、

   新たに紐を作らなければ成りません。途中で制作が中断すると、集中力が途切れたり、

   構想が変わる事すら起こり得ます。  

 ③ 紐状の土は乾燥が速くなりましので、長めの板に濡れた布でサンドイッチ状にします。

  その際長い紐は「Uの字」に曲げて下さい。

尚、ここでは円形の紐の作り方を述べましたが、作品によっては断面が正方形や長方形に

した紐を使う事もあります。

以下次回に続きます。
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手捻(てびねり)1(特徴)

2018-06-16 22:05:34 | 手捻り陶芸
皆様方には既にご存知と思われますが、作品を作る方法には、大きく分けて次の方法があり

ます。

1) 手捻りによる方法。

2) 轆轤(ろくろ)を使用して作る方法。

3) 鋳込みによる方法。

 歴史的には、手捻りが一番古く(我が国の縄文弥生土器類など)、次いで轆轤、鋳込みの

 順です。近年電動轆轤が使用される事が多くなりましたが、作る方法の違いによって、

 作品にも作り方の特徴が現れ易いです。

 特に一度に同じような形の作品を、効率良く多く作る場合には、電動轆轤や鋳込みの方法を

 取る場合が多いです。

 尚、電動轆轤などを扱う為には、それなりの練習や道具が必要になります。

 それに対し手捻りは、陶芸の初心者は勿論、小さな幼児でさえ自由に好みの作品を作る事が

 可能な方法です。 作り手の意思(癖や指跡などの特徴)がしっかり出るのも手捻り陶芸です

 但し、同じ物を複数個作るのは苦手です。時間が掛り過ぎる以外に、全く同じ形に成り難い

 です。

 手捻りは轆轤よりも一段低く見られがちですが、手捻りは轆轤と同等又はそれ以上の作品を

 作る事が可能です。轆轤が薄く速く作れる方法なのに対し、手間隙が掛り、若干重く感じに

 成り易い欠点が出易いです。但し、仕上げとしての削り作業がしっかり施して有れば、電動

 轆轤と同程度に薄くて軽い作品を作る事は可能です。

1) 手捻りとは?

 電動轆轤や鋳込み等の方法以外で、主に手や指を使って作品を作る方法です。それ故、

 粘土の他に簡単な用具(例えば、竹へら、剣先、切糸など)と少しの作業する処さえ

 あれば有れば、直ぐにでも、作品作りに取り掛かる事ができます。

 尚、手捻りの技術が轆轤の技術と重なる部分は少なく、手捻りの技術が電動轆轤に

 役立つ事は少ないです。同様に電動轆轤に精通したからと言って、手捻りに役立つ

 事は少ないです。それ故一般的には、手捻りから入り、電動轆轤に進む事が多いですが

 これはあくまで教える側の都合でしかありません。どちらから入っても何ら問題ありま

 せん。手捻りの特徴を記せば次の様になります。

 ① 手捻りで作れる作品の種類は無限にありまし。

  電動轆轤は主に円筒又は円錐などの丸い形の物が、基本形に成っています。勿論それらの

  組み合わせや、丸以外に変形する事は可能ですが、基本は丸(円形)です。手捻りの場合

  丸は勿論角形や不定形(いびつ形)等、どの様な形の物も作る事ができます。

 ② 作品の大きさもほとんど限定されません。勿論窯で焼く事を前提にしますので、窯に

  入る程度の大きさになります。陶壁の様な巨大な面積を有する作品でも、窯に入る

  程度の大きさに分割し焼成後に組み立てる事で、大きな作品に仕上げる事が可能です。

 ③ 電動轆轤の様に多量の水を使う事も無ない為、素地のヘタリも少なく、時間的な制限も

  少なくなります。それ故、一気に作り上げる必要も無く、時間を掛けて積み上げる事で

  電動轆轤作業時よりも、大きな作品が作れます。但し、土を継ぎ足す為には、それなりの

  知識が必要です。

  電動轆轤が一発勝負なのに対し、制作途中で変更や修正が割合容易なのも、手捻りの

  特徴です。

 ④ 作り方も色々な方法があります。

  ⅰ)玉作り。 ⅱ)紐作り。 ⅲ)タタラ(板)作り。 ⅳ)刳り貫き作り。ⅴ)彫刻方式。

  ⅵ) 彫塑方式。ⅶ)その他、上記技法を組合わせて作品を作る事もあります。

  その後の各種装飾加工等も、轆轤作業よりも無限に広がります。

 次回より、これらの方法に付いて、順次述べたいと思います。
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