わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

手捻り(ひねり)13 細工物2

2018-10-30 20:46:29 | 手捻り陶芸
手捻り陶芸の中に、細工物と呼ばれる分野があります。

主に人形や動物等の造形物が多いのですが、銅像などを造る際に粘土で原型を作る彫塑

(ちょうそ)もあります。

前回の続きです。

6)細工物として著名な作品として、江戸時代の野々村仁清の国宝「色絵雉香炉」」(雄)と

  重要文化財の「色絵雉香炉」(雌)一対の香炉があります。その他「色絵宝船置物」や兎

  鴨、糸巻、小槌、琴型等の香合、人形型の水滴などがあります。

  更に明治から昭和にかけて活躍した、備前焼の人間国宝の金重陶陽の獅子や鶏、みみずく

  牛、寅などの動物の香炉などがあります。又、信楽焼きの型を使った狸の置物も有名です

7) 作りたい物によって作り方も変わります。又作る数も問題になってきます。

  即ち、一個作りか型を使って複数個作るかです。いずれにしても、最初の一個は手作りに

  なります。

  掌に載る程度の小物であれば、一握りの粘土で事足ります。十分柔らかい粘土であれば

  手指を使い捻り出して形造る事も容易です。

 ① 香合の歴史

  小さな作品で代表的な作品に香合があります。香合を「こう合わせ」と呼べばお香の優劣

  を競う遊びですが、ここではお香を入れる蓋つきの器、即ち合子(ごうす)を指します

  合子は中国の戦国時代の遺跡からも銀製の物が発掘されており、化粧道具である白粉や紅

  油等が入れられていました。古い時代から漆を塗った木製も発見されていますが、焼き物

  として登場するのは、中国の唐の頃からと言われています。この頃では薬(仙薬)が収め

  られている物が多く、蓋の裏側には薬名や量などが墨書されていた様です。唐の時代の

  合子は我が国でも出土しています。

  京都の仁和寺は、904年宇多天皇が建立されました。寺内の円堂の跡地から純金、銀

  白磁、青磁製の小さな合子が出土しました。これは地鎮具地鎮として基壇の地下に埋納さ

  れた物と思われ、中国から輸入されています。

  我が国でも平安、鎌倉時代になると経塚から数多くの国産の合子が見つかります。

  上面に草花や鳥、七宝文、小花文などが施されています。

  室町時代になると、座敷飾りとして香炉や香合、花瓶が用いられる様になります。

  この頃の香合は薬器として用いられていた様で、ほとんどが漆ぬりでした。

  更に、侘茶(わびちゃ)が隆盛を極めると、香を入れる為の陶磁器製の香合が作られる様
 
  になります。安土桃山時代以降、東南アジア産の小さな蓋つきの器も香合として使われる

  様になります。江戸時代になると数多くの香合が作られ、手の中に納まる世界の中に自由

  と創意を活かした作品が、各地の窯元でおびただしい程の数が作られます。

 ② 香合を造る。

  ⅰ) 中に入れる香料は貴重な物ですので、蓋がピッタリ納まる様に、丁寧に作ら無けれ

   ばなりません。勿論、轆轤で器と蓋を別々に作り合わせる方法もありますが、多くの場

   合、一体物として作り上下に二分し、内側をくり抜く方法をとる事が多いです。

   轆轤作りよりも手捻りの作品の方が、温もりと変化があり、香合として暖かみもで易

   いです。

  ⅱ) 全体の形を造る。

   香合の形に決まりはありませんが、予め作りたい形を決めて置く必要があります。

   更に平面上に安定して置きますので、底面は平である必要があります。

   縦、横高さとも8cm下が多い様です。一般的には4~5cm程度が多いです。

   作品によっては蓋を取り除く為の摘み部を設ける場合もあり、摘みの無い蓋は蓋の側面

   を持って開閉します。

  ⅲ) 土の塊から一部を捻り出し、好みの形にします。多くの場合土を足すよりも、不必

   要部分を削り取る事が多いです。動物を模しの香合では、それらしく見える様に作り

   ます。細かい作業が必要な時には、竹ひごや独自の工具を用意する場合もあります。

   表面を綺麗に仕上げます。

  ⅳ) 上下に二分します。

   切り糸で切断します。蓋受けは内部をくり抜いてから設ける方法と、蓋受けを先に

   作ってから作る方法があります。但し実際の高さは、蓋受けを設ける事で若干低くなり

   ます。不定形の作品では内部をくり抜くのに苦労するかもしれません。

  ⅴ) 型に取る場合は、石膏を使う事が多いです。

   上下割の簡単な型から、数個に分ける割型の場合もあります。割型の場合どの様に分け

   るかも考える必要があります。取り扱いが簡単な事が大切です。

以下次回続きます。
  
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手捻(ひねり)12 細工物1

2018-10-05 10:46:14 | 手捻り陶芸
手捻り陶芸の中に、細工物と呼ばれる分野があります。

主に人形や動物等の造形物が多いのですが、銅像などを造る際に粘土で原型を作る彫塑

(ちょうそ)もあります。

我が国では天平、平安の時代に多くの仏像が粘土で作られ、重文級として現存している物も

多いです。焼成される事もなく、自然乾燥された物で、これらは塑像と呼ばれています。

ここでは大きくても高さが30cm以下の作品で、小さな物では5cm程度の小振りな作品

に付いてが述べます。尚、縄文時代の土偶や埴輪等も細工物と同等で、作り方も同様です。

一時期、人形や動物等の精巧な置物の作品が持てはやされましたが、現在では余り需要が

ありません。他の焼き物と異なり、実用的ではありませんが美的要素が必要になります。

子供達の粘土遊びもこの分野に入ります。但し本物の粘土を使う事は少なく、油や紙、小麦

粘土など多種多様な粘土が市販されています。勿論これらは焼成できません。

又、作品を焼成する場合が多いですが、原型として使用する場合には焼成しない事が多いです

原型から複数の石膏型に置き換えたり、銅像などは原型を拡大して鋳型を作り、銅などを流

し込み大物を作る場合もあります。

原型はいずれも、手や(竹)箆(へら)等を用いて、細部を仕上げる事になります。

1)小物の細工に適した粘土は粒子の細かい土です。

  彫塑用の専用の粘土も市販されていますが、ここでは焼成する事を前提に、普段使用

  しいている粘土を使用します。又、大きな作品では、木や針金を用いて心棒を用いる事

  も多いのですが、焼成を前提にしていますので、これらの材料は使わずに話を進めます

  細かい線や文様を彫り込むので、肌理(きめ)細かい粘土が適します。

  但し、肌理の細かい粘土は収縮率が大きく、「ヒビや割れ」が発生する事が多いです

  ので大きな作品では、メッキの様に表面のみを細かい土を使用する場合もあります。

2) 細工物には一品物と、型を使って複数個を作る場合(型起こし)があります。

  要するに、作った作品から型を作り量産化するのですが、いずれにしても、最初の一個は

  丁寧に作る事になります。後者の例として信楽焼きの狸などが有名です。

  型には簡単な物から複数個の型を使う割型があります。

3) 塑造(モデリング)と彫造(カービング)、捻り出し方

 ① 塑造(モデリング)とは中心から外側に粘土を肉盛り(土を加える)して形造る方法

  とです。時間を掛けて比較的大きな作品を造る時に用いる方法です。

  欠点は土台に土を加えますので、両方の乾燥具合が一致しないと剥がれ易くなり、更に

  空気を閉じ込め易くなりがちです。

 ② 彫造(カービング)とは固まりから、表面を削り取りながら形造る方法です。

  粘土で作る小さな作品の場合や、石や木を用いる場合(彫刻)の方法です。

  ある程度粘土を乾燥させて置かないと作業がし難い事と、乾燥し過ぎると作業が出来

  なくなりますので、乾燥具合に注意が必要です。用具類として刃物類が必要です。

  勿論、両方(①と②)の良い所を取り入れた方法もあります。

 ③ 捻り出し方とは一塊の粘土から手や用具を用いて引っ張り出し、形を造る方法です。

  片手に載る程度の大きさに適します。土を加えたり削り取る事も少なく、容易に形造り

  が可能です。空気を閉じ込めたり接着部分も無く、剥がれる事もほとんどありません。

  大まかな形にするには、特別の道具は必要ありません。大まかな形にしてから仕上げを

  行います。

4) 焼き物としての細工物を作る場合、空気を閉じ込めない事が大切です。

  大きな作品では、中空にする必要があり、更に中の空気が外に逃げる構造にします。

  小さな作品であっても、中空にするとより安全に焼成できます。

5) 使用する道具類として、竹又は木箆(へら)や、竹ヒゴ、コテ類、叩き棒、なめし

  皮などが必要です。作品によっては、手回し轆轤があると更に便利です。

以下次回に続きます。  
  
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