わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

朝鮮の青磁2(象嵌青磁)

2011-08-20 22:23:30 | 各種の釉(鉄、銅、その他)
象嵌技術は、10世紀頃に出現し、11世紀後半より、盛んに製作される様になります。

更に、12~13世紀に、絶頂期を迎えます。

 初期の象嵌青磁は、皿の一部に、写実的な象嵌模様が描かれ、陰刻や陽刻で表されている部分に、

 施されていました。

 象嵌最盛期には、器の全体又は、内側にも施され、写実的文様から、図式的に様式化していきます。

1) 象嵌(ぞうがん)とは

 成形した作品の表面に、凹みを作り、異なった色土を詰め、凹み通りの模様を付ける方法です。

 ① 作品はやや厚めに作ります。文様を深く彫る為と、表面を一皮削る為です。

 ② 切れる刃物や、鋭く尖った釘などを使い、深く線彫します。(溝が浅いと、綺麗な文様がでません。)

   特に、切り口が丸くならない様に、エッジを立てる様にすると、文様が綺麗に仕上がります。

 ③ この溝に、やや硬めの白泥や色泥を、埋めます。

  ) 泥の収縮率は、胎土と同じように調整します。収縮率に違いがあると、乾燥時や焼成時に、

     文様との間に、「ひび」が入ります。

  ) 文様を引き立てる為には、素地の色と、泥の色の対比が大切です。

     なるべく、差を大きくして、鮮明差をだします。

  ) 泥はスポイトなどを使い、搾り出す様にして、塗り込みます。溝から「はみ出す」様にします。

     しばらくすると、泥が固まり、溝が現れますので、再度泥を塗り込め、盛り上がる様にします。

    場合によっては、この行為を数度繰り返す事も、稀ではありません。

 ④ 水気が引いたならば、竹へらで摺りこむ様にします。圧を掛ける事により、溝の中まで、隙間無く

   泥で埋める為と、文様自体に「ひび」が入らない様にする為です。

 ⑤ 表面をカンナで削り、文様を出します。

   文様の彫に、逆らわずに、丁寧に削らないと、文様が崩れます。

   轆轤では、綺麗に削れない場合も有りますので、その際には手作業で削ります。

2) 雲鶴(うんかく)青磁

  象嵌青磁の中でも、雲鶴文様は、好んで用いられていました。

  鶴は鳥類の長として、長寿の象徴であると供に、栄耀栄華と富貴を願う、図でもあります。

 ① 初期には、雲と鶴が斑(まだら)に配置され、余白を多く残していましたが、次第に一定の図案に

  成っていきます。

  即ち、上昇(飛翔)する鶴、水平飛行する鶴、下降する鶴が適宜配置され、その間に雲が描かれて

  います。

 ② 雲鶴青磁では、白泥と黒泥が使われています。

   即ち、雲と鶴の本体(頭、頸、翼)は白泥を使い、嘴(くちばし)と脚は黒泥を使っています。

   又、丸い円内に鶴が描かれている場合には、白い丸の内側に黒い線の丸が、描かれています。

 ③ 作品としては、梅瓶(めいぴん)が、有名で、年号など、銘文が記された物も多いです。

   この為、製作年代が判明し、技術史など、大いに参考になっています。

  (口縁が短く細く、その真下より大きく膨らみ、球形になり、下部に行くに従い細く、更に裾が

   やや広く成た形をしています。)

3) 青磁釉の調合は、長石系の釉で、暗緑色、緑色、黄褐色、緑褐色など、色の数は多いですが、

   釉薬に、3%程度の鉄分と、少量のマンガンとチタンを、添加しています。

   翡青磁は、マンガン>チタンの時、現れ易いとの事で、緑青磁では、マンガン<チタンと

   成るそうです。

4) その他の青磁

  ① 象嵌青磁は、雲鶴文様以外にも、色々な文様があります。

    牡丹(ぼたん)文、鳳凰文、唐草文、葡萄文、柳文、柳蓮文、柳蓮花文その他です。

  ② 青磁瓦(屋根瓦): 窯址から発掘される瓦片は、完成期の翡色釉よりも、明るくなっていました。

  ③ 金彩青磁:13世紀後半に成ると、作品は大型化し、図案も複雑化して、派手に成ってきます。

    金彩青磁は、象嵌文の外郭線を、鋭利に彫り込み、そこに金を挿入した物と、思われています。

以下次回に続きます。
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