わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 34-2 大物の蓋物の「ヒビ、割れ」について2

2018-05-22 20:09:32 | 質問、問い合わせ、相談事
よし様より追加の質問をお受けしましたので、当方の見解を述べます。


私は円柱形で上下同じ高さ位のものを合わせています。上下合わせて20センチ弱程の

高さです。上部は本焼き後の沈みを防ぐために、少し丸みをつけています。半磁器の理由は

白磁が好きなのと個人の窯ではないのでSK7での本焼き温度に合わせているためです。

轆轤のあと、完全に乾燥させてから、もしくは素焼き後に再度調合した化粧土のようなもの

を高く塗り重ねて彫刻し、再度素焼き、本焼きというものをつくっています。

蓋の方の轆轤の時、本焼き後の沈みを防ぐために底を浅くカーブさせて作っているのですが

その厚さが、ご指摘の底の肉厚の問題だとは思うのですが、カーブをつけているため、中央

と側面側の底の厚さが2倍以上違うこともあります。その後、ある程度乾燥させたあと上下

合わせた状態で削るため中央から側面側に向かっての厚さのむらが解消されてないまま削り

を終え(蓋を何度も外したり合わせたりすることで、合わせ目が欠けたりするのが怖いため

一応指で叩いて確認しているつもりですが滅多に外してません。)、乾燥させていってること

に原因があると思うのですが、カーブはどの程度つけていれば沈みを防げるでしょうか?

作品としては外観をなるべく平らにしておきたいというので外側の削りが足らず厚いままと

いう状況になってしまっています。

また、上下それぞれ7キロ強の土を使っているので、一人ではサンドイッチでひっくり返す

のが難しく、元々土が柔らかい事もあり翌日でも、触れば指の跡がつくほどだったりするので

私の先生の提案で、天日干しさせて手で持上げて外せるほど乾燥させてたりしたのが、縦割れ

の原因かと20個近く作って今更ながら室内で(サンドイッチでひっくり返せないので)手で持

上げて歪まない固さまで風通しの悪く直射日光の当たらない部屋で数日乾燥させているのです

がやはりそれでは遅いでしょうか?

糸切りは、轆轤が終わったあと、その後、1日に朝夜確認のためやってます。

あと、削り後の乾燥のさせ方なのですが、上下合わせた状態でない場合、蓋の方はどちらを上

にし、乾燥させるべきでしょうか?蓋をひっくり返した状態だと、底がカーブつけて削ってあ

るため亀板との接地面が小さく、乾燥の際歪みがないでしょうか?スポンジ等で支えすれば大

丈夫でしょうか?

蓋を合わせ目を下に亀板に置くと蓋をして乾燥させているのと変わらないような気がするの

ですが、亀板と蓋の間に細い板かなにか挟んで隙間を作るといった風にするのでしょうか?

色々、長々と、まとまりのない文章で申し訳ありません。

どうしても途中で諦められず、しつこく質問させていただきました。

またお時間がある時で結構ですので、よろしくお願いいたします。


◎ 明窓窯より

質問の内容から判断し、電動轆轤を始めてから数年の方と見受けられます。

その為、電動轆轤がどの様な物(特徴)なのかの理解が不足している様にも思えて成りません。

失礼ですが、貴方様には荷の重い作品を作ろうとしている様に思われます。

何が問題かを具体的に述べると以下の様になります。

1) 上下それぞれ7キロ強の土を使っている事。

 電動轆轤は、綺麗な形で薄く、速く作る道具です。逆に薄く挽ける事がその人の実力とも

 言われています。それ故、直径35cm(生で)高さ20cm程度の作品を作るのにどう

 してこれ程の土を使うのか理解できません。彫刻を施す為とも思われますが。この量では

 かなりの肉厚になり、ひっくり返すのも一苦労します。その為、乾燥時に問題が発生する

 のは、当然とも言えます。

 実際問題として、作品が重過ぎて実用性はほとんど感じられません。但し、展示会などに

 出品する場合には、あえて実用性を無視する事も有りますが・・・

 勿論、実用性がなくても良いのですが、制作時や持ち運び時、使用時には重過ぎて取り扱い

 が困難になります。もし私が電動轆轤で作るとすあれば、上下各々2~2.5Kgも有れば

 十分です。

2) 明窓窯からの提案です。

 上記作品を電動轆轤で水挽するのではなく、くりぬき(刳り貫き)方式で作る事です。

 この方法であれば、水挽きを行いませんので、乾燥のトラブルを防ぐ事ができます。

 実際に陶芸作家の方には、この方式で箱物を作っている方もいます。

 その手順は以下の様になります。

 ① 素地を必要な外形にする。

  良く練った素地を必要な形にし、素地を強く叩き締めます。出来れば亀板上に据えます

  叩き棒や板が締めれば更に良くなります。実際には本体側の円盤と蓋側の円盤の二枚に

  した方が均等に乾燥し易いです。当然この段階では、空洞は無く無垢(むく)の状態です

  この状態で削れる程度まで乾燥させます。ちなみに今回の例ですと、直径35cmとし、

  高さは蓋の合わせ目を削る事を考慮して、2~3cm高くし、11~12cmにします。

 ② 削りは電動轆轤上で行います。

  ⅰ) 轆轤上にセットし、轆轤を回転させながら、カンナ等を用いて外形を大まかに削り

   ます。

  ⅱ) 本体(器)側、蓋側と別々に内部を刳り貫きます。

   勿論、内側を先に削っても問題ありません。

   今回は円形ですので、轆轤を回転させながら削る事ができます。当然蓋側はひっくり返

   して削ります。蓋の内側は緩やかなアーチ(鍋底)にします。当然ですが、アーチが急

   な程底は落ちません。但し、彫刻を施す部分は、若干肉を厚くします。その際底の肉厚

   を測定して置きます。簡単な方法は針を中央に突き刺せば測定できます。尚乾燥が甘い

   場合には、削っては乾かし削っては乾かすを繰り返します。問題は肉厚です、成るべく

   偏肉に成らない様にします

  ⅲ) 合わせ目を削り出す。

   蓋物の合わせ方には色々な方法があります。基本的には本体と蓋がぴったり合わさる事

   ですが、焼成時の歪みや、施釉の事も考慮して、若干のガタ(隙間)が必要です。

   実際に合わせ、ガタを確認します。

  ⅳ)上下合わせた状態で全体の外形を削り出します。

   特に蓋の肩の部分が偏肉に成らない様にします。その為には、本体より取り外し実際に

   厚みを指で確認します。(蓋を何度も外したり合わせたりすることで、合わせ目が欠け

   たりするのが怖いため一応指で叩いて確認しているつもりですが滅多に外してま

   せん。)とありますが肉厚が厚い場合には、この様な方法では、確認は取れません。

   合わせ目の欠けが怖いと言う事は縁が極端に肉薄なのでしょうか?。それとも重たい

   為でしょうか?一般には壊れる恐れはほとんど有りませんので、何度でも取り外す事が

   可能なはずです。

  ⅳ) 蓋の乾燥は、内側を上にして行います。

   回転が掛かったり、天井部分に全重量が掛かる場合には、ドーナツ状にしたタオル等で

   周囲を支えて下さい。又は布を敷いたボール等の丸い器の内側に置くとより安全です。

   但し、乾燥が進んでいる事や、軽量に作る事で、そのまま逆さにしても。変形の恐れは

   少ないです。

3) 最も重要な問題点は、「轆轤のあと、完全に乾燥させてから、もしくは素焼き後に再度

  調合した化粧土のようなものを高く塗り重ねて彫刻し、再度素焼き、本焼きというものを

  つくっています。」の部分です。失礼ですが、化粧土に付いての認識(知識)を余り持ち

  合わせていない感じがします。化粧掛けを高く(厚く)塗る事は、大きな失敗に繋がり

  ます。更にその上から彫刻を施したいとのご希望ですが、ほとんど不可能な事に挑戦して

  いる様にみえます。なぜなら、素地と化粧土との相性(施すタイミング)、素焼き前と後

  での化粧土の調合の違い、施す(塗る)方法等を理解していないと、化粧土はどんどん剥

  がれてしまいます。当然厚く塗れば厚くなる程、剥がれや表面と素地自体の割れ(崩壊)

  を招きます。

  彫刻後に化粧土を、薄く施すならば、可能性は増えますが、厚く塗った化粧土に彫刻を施

  す事はほとんどまず無理と思われます。化粧掛けはある意味、作品の形作りより難しい

  作業と言えます。試作品は化粧掛けや彫刻まで進んでいるのでしょうか?

  半磁器土なのに、危険を冒してまで白化粧を施す理由がいまいち判りません。半磁器土と

  白化粧土との差は、それ程大きくは無いと思われるからです。

4) 結論 

 当方から見ると、失礼ですが、貴方様の技量(実力)では、かなり荷の重い作品です。

 設計段階から再度検討が必要と思われます。いきなり大物ではなく、段階的に進める事を

 薦めます。l

 先生がおられる様ですので、良く相談して設計、段取り、制作方法等を決めてください。

 以上、かなり厳しく述べましたが、轆轤技術だけでなくその他の分野でも、陶芸は奥の

 深い物です。 判ったつもりでも思うように行かない物です。一つ一つ技術の積み重ね

 が早道です。

 尚、困難に挑戦する事はとても大切な事ですので、チャレンジ精神を持ち続けて下さい。

 疑問、質問が有りましたら、随時コメントしてください。

以上
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質問 34 大物の蓋物の「ヒビと割れ」について

2018-05-14 14:45:07 | 質問、問い合わせ、相談事
(よし) 様より 以下の質問をお受けしましたので、当方なりの見解を述べたいと思います。

 大物の蓋物について。 はじめまして。

半磁器で35㎝程の蓋物を作っているのですが、乾燥時のひび、素焼き後の割れに悩まされて

います。水挽きの際底は拳で叩いています。水挽き後亀板から外せるまで3~4日そのまま乾燥

させ(上部にはラップしています)その後石膏の上に移し完全に乾燥する前に合わせ目、高台、

蓋の上部分を削り上下合わせた状態で完全に乾燥せるのですが、削りが終わった後蓋の上部に

円にそってひびが入ります。

乾燥のむら防止にシート被せてみたりするのですが、素焼き後縦に割れていたりします。

別々に完全に乾燥させてから削った方がいいのでしょうか?


 ◎ 明窓窯より

上記質問内容を整理すると、以下の様になります。

1) 直径35㎝程の蓋物を半磁器土で、轆轤挽きで作っているのが、乾燥時のひび、素焼き

  後の割れに悩まされています。(焼き上がりが直径30cm程度になります)

2) 亀板上で制作するが、底割れを防ぐ為に、底は拳で叩いている。

3) 轆轤挽き後、亀板上で3~4日そのまま乾燥させる。(上部にはラップしています)

4) 亀板から外せる程に乾燥したら、石膏の上に移し、合わせ目、高台、蓋の上部分を削る

 削りが終わった後、蓋をした状態で更に乾燥させると、蓋の上部に円に沿ってひびが入り

 ます。乾燥のむら防止にシート被せてみたりするのですが、素焼き後縦に割れていたり

 します。

5) 「割れやヒビ」は、蓋の上部に円に沿って入り、素焼き後縦に割れていたりします。

6) 別々に完全に乾燥させてから削った方がいいのでしょうか?


「ヒビや割れ」は、素地が縮む事が一番大きな原因です。当然大物の作品程縮む量は大きく

 なりますので、「ヒビや割れ」が発生する確立は高くなります。縮む事は粘土類の宿命で

 すので、止める事は出来ません。

 問題解決には、制作過程(轆轤作業が適正か?)、乾燥、削り(肉厚)、焼成過程に何ら

 かの原因が有ると思われます。その他、素地の選び方や、作品の形に付いても検討する

 必要があります。今回の相談から、蓋物の本体(器)側には、問題が無い様に思われます

 ① 制作過程(轆轤作業が適正か?)

  蓋は大皿と同様の方法で作るのが一般的です。亀板の中央に素地を載せ、拳固で強く

  叩き土を締めます。

  ⅰ) 底の肉厚はどの程度ですか?

   蓋物の場合、摘み(つまみ)が有る物と無い物に分かれます。即ち無い場合は、

   本体器より若干大きな径にし、蓋の端を両手で持ち上げる様にします。摘みがある

   場合は、削り出しか、後付方法になります。当然削り出すには、摘みの高さに合わ

   せて、底の肉厚を厚くとる必要があります。底の肉厚を厚くした場合、例え拳固で

   叩いても、土が絞まり不足に成る可能性も有ります。後付けの場合は、肉厚を薄く

   する事が出来ますが、摘みの接着時に問題が発生する恐れがあります。

  ⅱ) 亀板に接する部分の面積も、ヒビ割れに関係し重要です。

   蓋の形状に応じて上記面積は変化します。即ち深皿状態であれば、面積は狭くなり

   ますが浅皿状態であれば、面積を広く取る必要があります。面積を狭く取ると、

   縁が落ちてしまいます。当然広く取れば削り量も多くなり、乾燥も遅く、ヒビ割れ

   の危険性も増します。

  ⅲ) 底の周囲と亀板が接する部分は、竹ヘラで大きく面取りします。

   この作業を怠ると、乾燥と共に放射状のヒビが発生します。即ち底の周辺の肉薄い

   部分から収縮が始まり底の中心に伸びて行きます。竹へらでこの肉薄部分を剥ぎ取り、

   周辺からの乾燥を防ぎます。この作業は蓋の形状が完成する前に行うとやり易いです

   後からだと竹へらの入れるスペースが狭くなり、やり難くなります。

   轆轤作業終了時には、底の内側の水分はスポンジ等で吸い取ります。これを怠ると

   底割れが起こります。底中央部に縦に入りますので、容易に確認できます。

  ⅳ) 作品はできるだけ速く、糸を入れて亀板から切り離す事が大切です。

   質問では、亀板から取り上げるタイミングに付いては記されていますが、切り離す

   タイミングに付いての記述がありません。糸を入れても作品の形が崩れない程度に

   乾燥したら、糸を入れて亀板から切り離します。但し、亀板から取り上げるのは、

   もっと後にします。亀板上に長く放置すると、底の部分の乾燥に斑(むら)が出来

   ヒビ割れの原因になります。

   更に、乾燥が進むと切り離し自体が困難になります。糸を早めに入れる事で少し

   でも空気に触れさせる事が出来ます。

 ② 乾燥過程

  亀板上で3~4日そのまま乾燥させる(上部にはラップしています)と記載されてい

  ますが、長くても1日以内で乾燥を終了すべきと考えます。ヒビ割れの予防の処置と

  思われますが、逆にヒビ割れの原因に成っている可能性もあります。作品の肉厚にも

  よりますが、一般には一晩室内で放置すれば、削れる程度乾燥します。

  上部にはラップを掛ける事も好ましくありません。長時間素地に水分が留まり、

  素地そのものが「フヤケル」事になり、素地の強度が落ちます。夏場など乾燥が速く

  進む場合には、強く絞った布や乾いた布を被せて作品上部(蓋の場合は下側)の乾燥

  を若干遅くします。濡れた新聞紙でも良い。

  石膏に移す意味がいまいち不明です。乾燥を早めるのが狙いと思いますが、石膏上

  では乾燥が速過ぎ、「ヒビ割れ」が逆に発生し易くなると思われます。あくまでも

  自然乾燥が理想です。

  亀板から剥がすには、作品の縁周辺が、別の板を置いても変形しない程度の時に行い

  ます。別の板を置き、亀板とサンドイッチ状にして、天地を逆にして別の板に移し変

  えます。この状態で底を乾かします。口周辺の乾燥が進んでいる時には、乾いた布で

  鉢巻にします。乾燥は直射日光や風等を当てない様にします。

 ③ 削り作業

  素地に半磁器土を使っているのは、磁器風に仕上げたいからですか? 即ち、薄く軽く

  作るのが目標に成っているか、綺麗な絵付けをしたい為ですか?

  肉厚が極端に薄い場合や厚い場合にヒビや割れは発生し易いです。又局部的に厚みに

  差がある(偏肉)場合にも発生しや易いです。薄い場合にはその部分が急激に収縮し、

  厚い場合には、その部分の乾燥が遅く、周囲から引っ張られ股裂き状態になります。

  特に摘みの周辺は、削り出しでも後付けでも、偏肉になり易いです。当然摘みの形状に

  よって偏肉の度合いが違います。今回は大きな蓋で重量もありますので、かなり大きな

  摘みが必要になります。土鍋の蓋の様な撥高台風か、茶道の水指の蓋の様に握る部分が

  太くなるかも知れません。どの様な摘みであっても、削り出し方式は得策ではありま

  せん。出来れば後付け方式が好ましい結果を生むと思われます。当然蓋本体と摘み部分

  は別に作り、両方同じ程度に乾燥させ接着します。余談ですが、近頃あまり見掛けなく

  なりましたが、昔より蓋の付いた大きな甕(かめ)が作られていました。その蓋の摘み

  の形状は、弓なりにした紐状の土を、蓋の頂上に後付けで接着しています。

  この方法であれば、偏肉に成る事は防げます。

 ④ 削り後に「蓋をした状態で更に乾燥させる」とありますが、この方法もお勧めでき

  ません。完全に乾燥する前に蓋をしてしまうと、内部の湿り気は取れません。

  更に内部と外側の乾燥度合いも大きく異なる為、作品全体にストレスが掛、割れなど

  の原因になります。別々に乾燥させる事です。乾燥の狂いが心配でこの様な仕方を

  する物と思われますが、普通に乾燥させればそれ程の狂いは生じません。

 ⑤ 素焼きの仕方

  素焼き前にヒビや割れが無い場合には、素焼きしても失敗する事は少ないです。

  但し、本体(器)に蓋をした状態で素焼きをしてはいけません。必ず別々にして素焼き

  します。その際、蓋は別の作品に寄り掛かる様にし、水平にして焼かない事です。

  水平にした方がヒビや割れが入り易くなります。立て掛けたからといって、十分乾燥

  させた作品では、形状が狂う事はほとんどありません。

 ⑥ 結論。

  「割れやヒビ」の発生する原因は多肢に渡ります。特に轆轤挽きした作品の場合、

  ヒビや割れの状態及び発生した場所によって、その原因が判る場合があります。

  ⅰ) 底割れの場合。器の底中央に一文字又は、弱い「S字]状に入ります。内外に

   貫通する時と内側のみの場合があります。これは土の締めが甘い場合と、轆轤

   挽き終了時に、器の底の水分をしっかり取り除かった為です。

  ⅱ) 高台(今回は摘み部分)の内外と本体が接する部分に、円弧状のヒビ等が

   入るのは、削り過ぎで肉が薄過ぎる為で、乾燥が部分的に早く進む事と、高台

   が上部の重みを支え切れないのが原因です。更に、摘み部分が巨大であれば、

   重量も増し下部で支えられない場合も起こりえます。

   摘み部分の形状と重み等も検討して下さい。

  ⅲ) 底周辺から中央に放射状にヒビ等が入るのは、底周辺が肉薄になり、中央部

   より早く乾燥し収縮するからです。底周辺に竹へらを入れ、肉薄部分を剥ぎ取り

   ます。

  ⅳ) 口縁周辺より底に向かって縦方向に割れが入る場合は、肉が薄過ぎる良きや、

   仕上げ後のなめし皮で撫でる際、十分拭ききれず土の締めが甘い為です。

  ⅳ) 比較的少ない事例ですが、背の高い作品や、胴体が太い作品では、本体中央

   部に縦又は真横方向に割れが発生する場合があります。これは作品の上部の重量

   を下部が支え切れない場合に起こり易いです。

   下部を極端に肉薄くせず、算盤玉の様に極端な「くの字」状にしない事です。

  ⅴ) 長々と述べて来ましたが、基本的な事は、乾燥の際部分的に早い処と遅い処

   を出さない事です。その為には、出来るだけ偏肉を無くす、均一に乾燥させる。

   乾燥に時間を掛け過ぎたり、短過ぎない様にする。その他、土は良く叩き締める。

   作品の傷は早めに補修する事です。一度付けた傷は、乾燥と共に広がります。

   乾燥が進んでからの補修は巧くいきません。

 ⑥ 別々に完全に乾燥させてから削った方がいいのでしょうか?

  磁器土の場合には、乾燥後に削り作業を行う事も多いのですが、半磁器の場合

  少ない様です。何より削り難くなるからです。又素地は乾燥するに従い、粘りが

  無くなり脆く(もろく)くなります。その為、新たな危険性も発生します。

  出来れば、今の状態で行う事を薦めます。


以上、今回の問い合わせでは、実際の割れ状態を確認できていませんので、当て推量で

述べています。それ故、的を射た答えに成っていない可能性も大きいですが、参考にし

て頂ければ有り難いです。

   
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質問33 海の砂の使用法について

2018-05-10 13:38:29 | 質問、問い合わせ、相談事
hanayama様より以下の質問をお受けしましたので、当方なりの回答を致します。

 海の砂の使用法についての質問です

 初めてコメントします。

 陶芸超初心者です。玉作りや紐作りなどで作った器の表面に砂を摺りこんでみたいのですが、

 「擦り込む」というやりかたがわかりません。押し付けるようにすることなのでしょうか?

 わかりやすく教えていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。


◎ 明窓窯より

 今は亡くなりましたが、小生の古い友人が、九十九里焼きと言う焼き物を作っていました。

 それは、千葉の九十九里浜の海砂を、作品の一部に「擦り付ける」のが特徴な技法です。

 電動轆轤(ろくろ)を使い、生乾きさせてから、その表面に砂を擦り付けていました。

 即ち、轆轤を回転させながら、手に持った砂を、作品に押し付ける様にして擦り付けます。

 ① hanayama様との違いは、轆轤作りと手捻りの違いです。この違いは、単に形が違うだけでなく、

  素地の軟らかさ(水の含有量)に大きな違いがあります。素地が軟らかい程、砂は作品の中に

  容易に食い込みます。それ故、必ずしも強い力は必要ありません。更に、素地の乾燥と共に、

  砂を強く締め付けますので、砂が素地から離れ難くなります。

 ② 一方手捻りの場合、何らかの作品の削り作業が必要です。その後に砂を擦り付ける事になり

  ます。その為、轆轤成形よりも乾燥が進んでいます。即ち砂の食い込みが弱く成り勝ちです。

  又、作品によっては表面が凸凹しているかも知れませんので、手回し轆轤も使えないかも知れま

  せんので、均等に付ける事は難しくなります。

 ③ 結論

  作品が乾燥していると砂を強い力で押し込む事になりますし、作品の乾燥収縮と共に砂が剝がれ

  落ち易くなり、多めに付ける必要があります。

  出来れば、削り作業後に作品の表面を、変形しない程度に水で軟らかくして置く事です。

  湿った布を被せるのも一つの方法です。そうする事で弱い力で「擦り付ける」事が出来ます。

  又、押し付ける方法を取る場合、団子状の粘土を布で包み、輪ゴム等でしっかり包み込み、砂の

  表面を押す方法をとります。作品の裏側に手やコテなどが入る場合には、手やコテで支えると

  より強く押し付ける事ができます。ある程度柔らか粘土であれば、作品の形に変形しますので、

  効率よく押す事が可能です。

  乾燥した素地に、強い力で押し付ける事は、変形の他「ヒビ割れ」を起こし易くなり砂も十分に

  食い込まず、剥がれ落ち易くもなりますので、若干表面を軟らかくする事が肝要です。

 ④ 海砂を使用する時の注意点は、砂には粒子の異なる物や貝殻の破片などが混入しています。

  出来れば、目の細かい篩(ふるい)等で粒子の細かさ揃えたり、不純物を取り除く事です。

  海砂ですので、塩分を含んでいるはずです。塩分は塩釉として利用する事がありますので、

  必ずしも水洗いする必要はありませんが、水洗いしてから使用する事もあります。その差は

  洗わない方に若干色が付く程度です。

  尚、砂は本焼き程度の高い温度で焼成しても、熔ける事は有りません。縮む事も膨張する事も

  ありません。それ故、表面から砂が飛び出していると、例え透明釉を掛けても、手触りも悪く

  なり、最悪怪我の原因になりますので、表面は滑らかにして置いた方が無難です。

 ⑤ 余談ですが、市販されているハゼ石と言う長石(石英)粒を、部分的又は全面擦り付ける方法

  があります。主に信楽原土などに含まれている物質です。これは、高い温度で熔け膨張し白い

  半透明の粒子となり、表面に飛び出てきます。作品に武骨で力強さを与る効果があります。

  ハゼ石の場合には、砂よりも粒子が大きいですので、生乾きの素地に、力を入れて押し込む様に

  します。又、縄文土器などには、海の貝殻を押し付けた跡のある物があります。興味が有ったら

  試してみて下さい。

以上、色々試行錯誤して実行する事です。参考にして頂ければ幸いです。

 
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