わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 電動ろくろ29(トラブル7、底割れ)

2019-11-22 17:21:57 | 続 電動ろくろに付いて

底の広い作品では、底割れの現象が起こり易いです。

尚、底割れに関しては、以前にも取り上げましたので、記事が重複するかも知れませんが

ご了承下さい。

轆轤挽した直後には現れませんが、乾燥と共に底の中央部分に「S」字状に現れる事が多いです

「S」は轆轤の回転に合わせて、土が回転している事を表します。

割れの長さは1~3cm程度が多く、単に底の内側のみに現れる場合と、完全に底を貫通し、

向こう側が見える状態になる場合もあります。

底割れは、土の収縮に応じて発生しますので、収縮率の大きい素地では発生が多く成り易い

です。尚、土の収縮は轆轤挽した直後、素焼き前まで、素焼き後、本焼き後等に起きます。

底割れを起こした作品は、水を入れたり、水分のある料理等を盛ると、水漏れします。

1) 底割れの原因

 収縮は、空気に触れている部分が大きい所から始まります。特に器の場合、口縁周辺が

 最も早く乾燥し、徐々に底周辺に移動します。収縮とはお互い隣り合わせの土を引っ張り

 合いながら体積を小さくする現象ですので、水分を多く含む部分は引っ張られて股裂き

 状態になり、亀裂が入り易くなります。

 ① 轆轤挽直後に器の底にある水を取り除かなかった。

   轆轤は水を使って作る方法です。それ故作品の底に水が残るのが普通です。

   轆轤挽の最後の段階で底に残った水をスポンジ等で吸い取ります。

   特に袋物と呼ばれる、壺や徳利など口径の小さな作品は、細い棒にスポンジを巻き付

   けて吸い出します。引き上げた棒の先のスポンジを手で絞り、水分が出なく成るまで

   続ける必要が有ります。

 ② 土の締めが弱い為。

   皿類等底の面積の大きい作品は、底に成る部分の土を十分に締めて置かないと例え

   底の水分を取り除いても底割れを起こします。土を締めるとは、土の密度を上げる事

   で、拳骨で叩く場合と、叩き棒又は板を使う方法が有ります。

   一般的には拳骨で叩きます。4本の指側を使う方法と、小指側を使う方法が有ります

   即ち土の中心部を叩きながら回転させ底全体を叩きます。

   但し轆轤は通電せず叩きながら自然と回転する様にします。

   注意点は極端に底の肉厚を薄くしない事です。

 ③ 底も肉厚を極端に厚くすると、割れが発生します。

   肉厚の底は、土の乾燥が遅れます。特に肉厚な土の中央部分は中々乾燥せず、しかも

   肉厚が厚い為収縮力は大きい為、底割れが発生し易くなります。

2) 底割れの修正方法。

  乾燥して土が白くなった状態の底割れは、修正不可能なので、砕いて土に戻します。

  この段階で柔らかい土を割れ目に詰め込んでも、その土が乾燥するに従い、割れ目は

  再度出現します。陶芸用の接着剤(ボンド)等も市販されていますが、完全には割れを

  直す事はできません。尚、素焼きをすると割れは更に拡大まし、本焼きでは一層拡大し

  ます。どうしても「没」に出来ない作品の場合、本焼き後に補修します。

 ① 本焼き後では、それ以上割れは拡大しません。

  そこで、割れ目に土を埋め込みます。再度本焼きします。

  その際土にシャモット(焼き粉)を混ぜれば収縮は小さくなります。

 ② 割れた部分を金継ぎの方法しまで修理する。

  市販されている、陶芸用の接着剤で接着する方法もあります。但し接着材が飴色にはみ

  出して見苦しい事もありますので、表面のはみ出した接着材は綺麗に拭き取ります。

以下次回に続きます。  

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続 電動ろくろ28(トラブル6、切り取った作品が歪む)

2019-11-10 15:42:18 | 続 電動ろくろに付いて

轆轤上や亀板上から、切り取った作品は、手板や桟板に移動するか、亀板の上にある程度

乾燥する迄そのままにして置きます。手板や桟板に移動する際や移動後に作品が歪む事も

多いです。

1) 湯呑やご飯茶碗程度の大きさの作品は、人差し指と中指で作った「チョキ」を上向きに

  して、高台脇を左右から挟んで取り上げます。取る時は若干手前側に倒す様にします。

  この取り上げる際に作品は歪み易いです。特に口縁が大きい程、高さが低い程、楕円形

  に成る事が多いです。即ち、指と直角方向が長径に成ります。但し綺麗な楕円形に成る

  訳ではありません。尚、取り上げる際には、手が滑らない様に、両手の「チョキ」の

  内側の水分や泥は拭き取って置かなければなりません。この楕円を作らない方法として

  一部の地域では、底を二重に切り、取り上げる際の影響が器に伝わらない様にする方法

  を採っているそうです。 又下部の部分を挟めば、指痕は上部の底付近に付かないと

  言う利点もあります。

2) 歪む原因は素地が柔らかい事と、肉厚が薄い事による物ですが、「チョキ」の指の

  開き具合や、差し込む深さや指先の力の入れ方にも影響します。

  当然ですが、底が斜めに切られた作品は、板に載せると更に歪みます。

  板は、作品一個を載せる手板と、数個の作品を載せる細長い桟板があります。

  いずれも狂いが少なくて軽く、洗っても乾燥の速い杉板が良いです。

  尚、桟板は裏面に下駄桟をつけますが、下駄桟の無い物も使わいます。  

3) 作品の移動はなるべく近距離で行います。即ち、手板は轆轤の直ぐ傍に置く事です。

  桟板は幅は狭く(一例長さ90cm,幅20~30cm)、数個の作品が横一列に載る長手の

  一枚板を使う事が多いです。手板は水平にして使います。水平でまいと作品は歪みます

  取り上げた作品は、そのまま座ったままで手板や桟板に移動できる事が大切です。

  手にもって「ウロウロ」するのは厳禁です。

  作品間は適度に離し、作品同士が触れない様にします。

4) 口縁が楕円に成った作品は、作品の腰で直します。

  直接、口縁を直接いじってはいけません。必ず失敗します。

  楕円の長径方向の腰の部分を、両手の「チョキ」で若干上に上げる様にします。

  一度で修正出来ない場合には場所を変えて直します。但し、何回も行うと、余計に形が

  崩れる場合が多いから出来るだけ回数は少な目にします。

5) 口径に対し、底の面積が広い場合には、平らな板に置いた時、口縁が歪み易いです。

  特に、大皿や大鉢に多い現象で、底径が大きいと、口縁に掛かる力が部分的に異なり

  変形が起こり易いと思われます。その為、高台径は出来るだけ小さめにします。

  但し、大皿の場合、底径が小さ過ぎると、口縁が「ヘタリ」ます。

6) 作品は削り作業に適する迄、手を触れない事です。何かの拍子で手や物がぶつかると

  作品は変形す。尚あえて作品を変形させるのであれば、乾燥具合に応じて変形します。

  乾燥が甘い程柔らかい曲線あり、乾燥が進む程硬い線になります。

以下次回に続きます。

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続 電動ろくろ27(トラブル5,糸切り)

2019-11-05 11:41:28 | 続 電動ろくろに付いて

轆轤上で作品を制作した時には、次に作品を作る為に、轆轤から作品を取り除く必要があり

糸切りが必要です。

数挽の際には、下の土と切り離す為に行い、一本挽の場合には作品の最下部に糸を入れ切り

離します。前者の場合には、轆轤を回転した状態で行う事が多く、後者の場合には轆轤を止め

て行う事が多いです。轆轤を回転したまま糸を入れる際には、色々問題が発生します。

1) 糸を入れる場所を特定する。

 糸を入れる場所によって、底の肉厚も変化します。厚めに土を残すと、作品は重くなり、

 且つ底割れを起こす恐れもあります。逆に薄過ぎる場合には、高台が十分に付けられず、

 最悪、底に孔が開く恐れがあります。

 尚、切り糸は「シッピキ」とも呼ばれています。昔は稲の穂先を細かくほぐして、柔ら

 かい紐状にしましたが、現在では木綿糸(タコ糸等)や化繊糸を使う事もあります。

 長さは約20cm程度で、一端には握り部分として、木片や布切れ等の持ち手が付いて

 います。

 ① 切る位置に目印を付ける。

 「竹へら」や「鉄へら」、慣れた方では、ご自分の親指の爪を使って切る位置に楔状の

  筋を付けます。その際、切るべき位置が周辺の土より高くなければなりません。

  周囲の土が高いとその位置に切り糸が入り、必要な高さより高い位置で切る事になり

  ます。「竹へら」で切り口に浅く楔(くさび)状に切れ込みを入れ、「竹へら」の側面

  で周囲の土を下に押し込みます。

 ② 切り口に糸を巻き付け、一気に切り離します。

  切り口に巻き付ける方法には、手前から入れる方法と、向こう側から入れる方法が

  あります。やり方の違いによって、糸の持ち手を右にする方法と左になる方法がが

  あります。やり方は地方の窯場や、個人によって異なります。

  ⅰ)手前から入れる方法。

   右手に糸の持ち手を持ち、左手で糸の穂先を持ち、切り口に水平に当てます。

   回転している轆轤と共に左手で巻き付け、3/4回転の位置まで糸を誘導します。

   即ち、右回転の轆轤の場合は、作品の真右に来ると所で糸の穂先から手を離します。

   糸は切り口に沿って巻き付きます。糸が一回転半した所で、持ち手を水平方向に

   一気に真右に引き抜きます。尚、轆轤の回転速度は、ある程度早めにします。

  ⅱ) 向こう側から入れる方法。

   左手に糸の持ち手を、右手で糸の穂先を持ち、切り口に水平に当てます。

   穂先を切り口に巻き付け、真左の位置で穂先を離します。穂先が目の前に来れば

   糸は一回転半巻き付く事になります。糸の持ち手の左手を水平方に一気に真左に

   引き抜きす。

  ⅲ) 注意点は一気に糸を引く抜く事です。

   ゆっくり行うと、糸と共に作品が移動し、最悪轆轤上から作品が落下します。

   即ち、「達磨落とし」の要領で、スピードが大切です。

   更に、糸を水平に引き抜かないと、底が水平ならず、作品が傾きます。

  ⅳ) 糸尻は渦巻状の切り痕が残ります。

   抹茶茶碗場合は、この渦巻状の事を糸尻とを呼び、見所の一つ挙げる事もあります。

   当然、高台内は削りません。更に、糸尻の痕を見れば、轆轤の回転方向も判明します

 ③ 大きな作品や、一本挽いた作品は、轆轤を止めて切り糸で切り離します。

  糸の長さは、作品の大きさに比例して、長くする必要が有ります。

  作品の底と轆轤又は亀板に接している部分に、「金へら」等で楔状に溝を付け、この溝

  に切り糸を巻き付け、糸が浮かない様にして切り離します。但し、轆轤(又は亀板)上

  には、必ず土が残ります、残る量は糸が細い程少なくなります。例えば釣り糸

  (テグス)等が向いています。

  糸の両端を持ち、巻き付ける方法には、最初から完全に一周させる方法と一部に巻き

  付け方法ります。より丁寧に切るには、前者の方法で切ります。

  両手を均等な力で引く場合、一方の糸のみを引く法があります。

  底の大きな作品は、糸の両端を持ち糸を交差して、下側糸を引くと良いでしょう。

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