底の広い作品では、底割れの現象が起こり易いです。
尚、底割れに関しては、以前にも取り上げましたので、記事が重複するかも知れませんが
ご了承下さい。
轆轤挽した直後には現れませんが、乾燥と共に底の中央部分に「S」字状に現れる事が多いです
「S」は轆轤の回転に合わせて、土が回転している事を表します。
割れの長さは1~3cm程度が多く、単に底の内側のみに現れる場合と、完全に底を貫通し、
向こう側が見える状態になる場合もあります。
底割れは、土の収縮に応じて発生しますので、収縮率の大きい素地では発生が多く成り易い
です。尚、土の収縮は轆轤挽した直後、素焼き前まで、素焼き後、本焼き後等に起きます。
底割れを起こした作品は、水を入れたり、水分のある料理等を盛ると、水漏れします。
1) 底割れの原因
収縮は、空気に触れている部分が大きい所から始まります。特に器の場合、口縁周辺が
最も早く乾燥し、徐々に底周辺に移動します。収縮とはお互い隣り合わせの土を引っ張り
合いながら体積を小さくする現象ですので、水分を多く含む部分は引っ張られて股裂き
状態になり、亀裂が入り易くなります。
① 轆轤挽直後に器の底にある水を取り除かなかった。
轆轤は水を使って作る方法です。それ故作品の底に水が残るのが普通です。
轆轤挽の最後の段階で底に残った水をスポンジ等で吸い取ります。
特に袋物と呼ばれる、壺や徳利など口径の小さな作品は、細い棒にスポンジを巻き付
けて吸い出します。引き上げた棒の先のスポンジを手で絞り、水分が出なく成るまで
続ける必要が有ります。
② 土の締めが弱い為。
皿類等底の面積の大きい作品は、底に成る部分の土を十分に締めて置かないと例え
底の水分を取り除いても底割れを起こします。土を締めるとは、土の密度を上げる事
で、拳骨で叩く場合と、叩き棒又は板を使う方法が有ります。
一般的には拳骨で叩きます。4本の指側を使う方法と、小指側を使う方法が有ります
即ち土の中心部を叩きながら回転させ底全体を叩きます。
但し轆轤は通電せず叩きながら自然と回転する様にします。
注意点は極端に底の肉厚を薄くしない事です。
③ 底も肉厚を極端に厚くすると、割れが発生します。
肉厚の底は、土の乾燥が遅れます。特に肉厚な土の中央部分は中々乾燥せず、しかも
肉厚が厚い為収縮力は大きい為、底割れが発生し易くなります。
2) 底割れの修正方法。
乾燥して土が白くなった状態の底割れは、修正不可能なので、砕いて土に戻します。
この段階で柔らかい土を割れ目に詰め込んでも、その土が乾燥するに従い、割れ目は
再度出現します。陶芸用の接着剤(ボンド)等も市販されていますが、完全には割れを
直す事はできません。尚、素焼きをすると割れは更に拡大まし、本焼きでは一層拡大し
ます。どうしても「没」に出来ない作品の場合、本焼き後に補修します。
① 本焼き後では、それ以上割れは拡大しません。
そこで、割れ目に土を埋め込みます。再度本焼きします。
その際土にシャモット(焼き粉)を混ぜれば収縮は小さくなります。
② 割れた部分を金継ぎの方法しまで修理する。
市販されている、陶芸用の接着剤で接着する方法もあります。但し接着材が飴色にはみ
出して見苦しい事もありますので、表面のはみ出した接着材は綺麗に拭き取ります。
以下次回に続きます。