わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶芸に於ける有害物質 1

2010-10-31 21:30:38 | 陶芸の困り事
健康診断の問診書の中に、職業としての、陶芸暦の有無を問う、項目があります。

 即ち、陶芸に長く携わっていると、健康に影響を与える事が、あるからです。

1) 有害物質は、主に釉や、絵付け用の、絵の具に含まれて居ます。

   その他に、撥水剤や、防水剤などの薬品や、窯から出る、排気ガスなど、色々な物質が、関係して

   います。勿論、粘土や磁器土は、自然物であり、有害物質は、ほとんど、入っていませんが、

   掃除などで、舞い上がった粉塵等を、多量に吸い込むと、健康に影響します。

2) 陶芸材料店で購入できる、原材料や釉には、直接有害な物質は、少ないはずです。

  ・ 但し、市販の釉が、どんな材料で、どのくらいの量を、含んでいるかは、我々消費者には、判りま

   せんし、メーカーによっても、その組成に違いがあります。

  ・ 粉末状の、釉薬を水に溶く際などは、その粉塵を、吸い込まない様に、注意する必要があります。

   又、御自分で、釉を調合される場合でも、原材料の有害性を、理解していて不都合は、有りません。

3) 以下各物質について、述べていきますが、同じ物質の化合物でも、特に有毒な物や、やや有害な物、

   更には、全く無害な物まで、各種多様です。

4) 有害物質も、急性の物と、長期の吸入や接触により、発症する、慢性的症状があります。

   又、人に対しての、発がん性の有無も、重要な要素に成ります。

  ・ 人に有害かどうかは、摂取量と、期間、及び個人の体質に、大きく依存します。

    それ故、後の各論で述べる事項が、直ぐに、有害物質であるとは、必ずしも言えない事を、予め、

    御了承下さい。

5) 陶芸で使われる、金属化合物は、主に釉や、絵の具に含まれ、着色剤として、使われています。

   以下の様な、物物が有ります。

    紫: 酸化マンガン、銅、マンガン+銅、酸化コバルト、金

    青: 酸化コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、銅

    緑: 酸化クロム、酸化銅、炭酸銅、酸化鉄

    黄: 酸化チタン、ニッケル、酸化クロム、クローム酸鉛、重クローム酸カリ、カドミウム、

    茶: 酸化鉄、鉄+硫黄、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化クローム、酸化ニッケル

    黄赤: セレン+カドミウム

    赤: 酸化銅、酸化クローム、酸化ウラン、塩化金、コバルト、セレン+カドミウム

    赤紫: ネオジウム、マンガン

    黒: 鉄、その他の着色剤を混ぜる。(銅、クロム、ニッケル、マンガン、コバルトなど)

    白: 酸化錫、酸化亜鉛、骨灰、酸化蒼鉛、弗化カルシウム、弗化ソーダ、燐酸カルシュウム、

   但し、上記物質(材料)が、全て有害と言う訳では、ありません。  

 ① 釉の成分は、長石や珪石と溶媒、即ちアルカリ類からなり、それ自体は、粘土と同じ様な、材料と

    なっており、着色剤として、上記で述べた、各種金属類が、混入されています。

    この金属類の一部が、健康に影響を与える、有害物質に成ります。

6) 各々の、有害物質について、

  ① 鉛: 鉛は、釉の一部や、身近な金属として、ハンダや蓄電池などに、利用されています。

以下次回に続きます。

 陶芸の有害物質
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窯の種類と歴史 14 (トンネル窯2)

2010-10-30 21:48:43 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
トンネル窯の話を、続けます。

 トンネル窯は、燃料を節約する為に、考案された窯です。

 それ故、通常の単独窯に対して、40~50%程度の、熱量で済みます。

 連続焼成の為、一定の焼成曲線で、製品が焼かれ、品質の「バラツキ」も、少ない様です。

 温度管理も容易で、同一生産量に対して、工場床面積が少なくて、済みます。

 欠点として

 1) 建設費が高い。大規模な、設備が必要で、コストが掛かります。

 2) 製品の種類が、限定的である。同じ製品を、作り続ける分には、申し分ありませんが、違った

    種類の製品を、作るとなると、大きな改造が、必要に成る事が、多いです。

 3) 燃料も特定な物(最初に決めた物)しか使えません。変更には、多大な費用が、発生します。

 4) 長期間連続運転の為、各種整備が重要に成ります。一部でも、不都合な部分が、発生すると、

    全体の流れが、ストップする可能性も有りますので、常に点検整備が、欠かせません。

⑦ ローラーハースキルン: 台車を使わない、絵付け用のトンネル窯で、窯の全域に渡って、水平に

  設けた、モーター駆動のローラーの上に、製品を載せ、窯内を移動させて、焼成する連続窯です。

  ローラーも最初は、鋼鉄製でしたが、後に、セラミックスに代わっていきます。

  台車を暖める必要も無く、窯詰めも簡単で、時間的節約が可能です。窯体の余熱も、利用できるため、

  効率的な窯です。

⑧ マイクロ波焼成窯: 電磁波の一種である、マイクロ波を利用して、焼成する窯で、電子レンジの

   仕組みを応用して、開発された窯です。

   従来の焼成方法が、製品表面からの、外部加熱であるのに対し、製品自体が、マイクロ波を

   吸収して発熱する為、製品を均一に、加熱する事が、可能となります。

  ・ 現代の窯は、コンピュータ制御ができ、焼成の精密な制御が可能です。

⑨ マイクロ波併用窯

   ガスや電気を主な熱源とし、マイクロ波のエネルギーを併用して、素早く、必要な高温に出来ます。

   従来の方式よりも、安価に陶磁器が製造されます。

⑩ シャットル窯 :窯自体は、従来の灯油や、ガス、電気による、焼成ですが、窯の外で、台車上に

   窯詰めして、台車を窯内に入れて焼成し、冷却の後、台車を外に取り出す窯です。

   熱効率の改善には、寄与しませんが、広い空間で、作業する為、窯詰め作業が容易で、全方向から

   見える利点が有ります。

   比較的大きな窯に、適します。 窯出も、容易に行えますので、かなり普及しつつ有る窯です。

   (当然、価格は高く成りますが・・)

以上にて、「窯の種類と歴史」の話を、終わります。

次回から、「陶芸に於ける有害物質」について、お話する予定です。
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窯の種類と歴史 13 (トンネル窯1)

2010-10-29 22:42:44 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
今までお話して来た窯は、不連続窯と言う分類の物です。

即ち、熱したり、冷やしたりを、繰り返して焼成し、エネルギー(熱量)的には、損失の大きい方法です。

 窯の中の、熱量の消費の割合は、以下の如くです。

 (参考:図解 工藝用陶磁器、素木洋一著、技法堂出版)

   ) 品物(作品)、さや鉢、棚板などの熱量   10~20%

   ) 窯自体が吸収する熱量            30~40%

   ) 窯の壁や、床下から逃げる熱量       20~30%

   ) 廃ガスとして、消失する熱量         20~30%

 不連続窯では、この様に、無駄な熱量が多く使われ、作品が使う熱量は、1割程度と、熱効率が、

 極端に、悪い状態です。

 ・ これを改良した窯が、連続窯です。窯の各部で、予熱、焼成、冷却を連続的に、同時に行い、

   熱を有効利用する、仕組みに成っています。焼成品が持っている余熱や、排ガスを、製品の乾燥や

   予熱、窯道具類の予熱に、利用する事により、エネルギーを、無駄にしない方法です。

 ・ 今日、陶磁器を大量生産している工場では、ほとんどが、トンネル窯を使っています。

 ⑥ トンネル窯 : 連続窯の一種で、トンネル状の、長い窯の入り口から、製品を積載した、台車を、

   順次炉内へ、進行させながら、焼成する窯です。窯の全体は、ドーナツ状に成っています。

   燃料には石炭ガス、重油、灯油、軽油、LPG、電気等が使用できます。

  ) トンネル窯は、かなり古い時代から、試みられた様で、1751年頃に、フランスで、上絵付け用に

     作られていたとの事ですが、確証はありません。
 
     現在の様式は、1900年頃、フランスで確立されます。

  ) 我が国には、1920年、ドイツ式のトンネル窯が、東洋陶器株式会社(現在の、TOTO)に

     導入されます。

  ) その後、我が国では、爆発的に増えていきます。

  ) 構造は、窯の設計者により、色々な種類が有りますが、基本的には、以下の様に成っています。

    a) 作品を焼く焼成帯を、窯の中央に設け、窯の両側面に、多数の焚口が取り付けられています。

    b) 生素地の作品は、台車上に並べられ、トンネル内に、送り込まれます。

    c) 予熱帯では、焼成帯からの廃ガスが、作品を暖め、水分を蒸発させ、有機物を燃やして、

      除去します。廃ガスは、徐々に入り口に、移動し排風機によって、煙突に送られます。

    d) この部分では、台車を温めるのに、多くの熱量が奪われます。

      この部分の構造には、色々あり、苦心されて居る所だそうです。

    e) 燃焼帯で、焼成された製品は、出口方向の、冷却帯に移動して、徐々に冷やされます。

      出口付近では、一部の熱が、途中からトンネル外に、取り込まれ、乾燥室などで、利用され

      ます。

    f) 台車(窯車)は、鋼鉄製で車輪が付き、車体の上部は、耐火レンガが張られています。

      台車と窯の間に出来る隙間は、「サンドシール」と言う鉄板を下げて、入り込む冷気を、

      遮断します。

    g)  尚、トンネルの出入り口には、扉が無く、エアーカーテンなどで、熱気が外に逃げない構造

      に成っています。

    h) トンネル窯の長さは、一般に70~100m程で、小型の窯で、20~30m程です。

      横幅は、大きい物で、2m前後、有ります。

以下次回に続きます。

 トンネル窯
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窯の種類と歴史 12 (電気窯)

2010-10-28 21:29:40 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
電気を使った窯は、意外と古く、大正時代に京都で、上絵付け用の窯として、使用されていました。

 ・ 当時は、ニクロム線(ニッケルとクロムの合金)による発熱で、最高温度も、1000℃程度が、

   限界でした。

 ・ 現在では、1300℃位までは、カンタル線を、1300~1400℃位までは、炭化珪素発熱体

  (商品名、エレマ、シリコニット、グローバーなど)が使われ、1400℃以上では、白金や、白金と

  ロジウムの合金が、使われます。(但し、炭化珪素発熱体は、金属ではなく、柔軟性に欠けます。)

  陶磁器を焼く場合には、問題なく使われています。耐久性にも優れ、100回程度の焼成を、

  繰り返しても、電線が切れる事は、少ないそうです。

 ・ 又、柔軟性に富み、ある程度の屈折にも耐え、窯の内側に、止め具(絶縁ノップ)で、自由に配線も

  出来ます。 昭和40年代になって素焼、本焼などにも一般的に、使用される様に成ります。

 ⑤ 電気窯

  電気の窯の特徴は、

  ) 燃料ではなく、電気ですので、配線すれば、エネルギーを、供給する手間はありませ。

  ) 空気を必要としませんから、煙突も不要で、室内に設置できます。

     匂いも、ほとんど出ずに、環境にも優しく、都会のビルの中でも、設置が可能と成ります。

     (小型な窯が多く、アマチュア陶芸家向きの、窯とも言えます。)

  ) 基本的には、酸化焼成で、他の窯より、酸化がしっかり出ます。

  ) 操作が簡単である事。これが一番の特徴です。

     自動燃焼が可能で、コンピュータにより、プログラムに沿って、焼成できます。

     それ故、常に人が見張って、温度の管理や、大きな地震などの対応も、する必要は、無くなり

     大幅な、省力に成ります。 

   ) 比較的小さい窯に、適しますので、窯を焚く回数の、多い方には、小回りが利き、便利ですし、

      少ないアンペア数(基本料金に関係)で、基本料金も、燃料費も安くなります。

  電気窯の欠点

  ) 窯の大きさにもよりますが、家庭用の単相100Vでは、電力不足です。

     (湯飲み茶碗が、数個入る程度の窯でしたら、100Vでも使用可能です。)

     少なくても、単相200Vが必要で、できれば三相200Vを、新たに、導入する必要が有ります。

  ) 基本的には、焔が出ない窯ですので、焼き上がりに、窯変などの、面白味が出ません。
 
     窯変は、還元焼成で出易く、電気の窯に、燃焼物(炭など)を置いたり、ガスを注入する必要が

     有ります。(ガスが注入できる窯も、市販されています。)

    ・ 但し、燃焼物を、使う事は、確実に電熱線を、傷める事に成ります。

  ) 窯の中では、空気の対流が起き難く、大きな窯では、均一の温度に成りません。

     それ故、対流を起し、温度を均一にする、装置が付いた、窯も有ります。 

  ) 電気窯自体の価格は、同じ熱量のガス窯と比べると、格段に高くなります。

  ) 燃料費については 、電気とガスでは、 月に何回、窯を焚くかによって、燃料費は変化します。

     即ち、電気には使用しなくても、基本料金が掛かります。又アンペア数によっても、

     基本料金は違います。

   ・ 同じ位の小型の窯で、同じ程度の使用頻度では、電気を使用した方が、「若干高め」の様です。

 ⑥ その他の窯

以下次回に続きます。

 電気窯
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窯の種類と歴史 11(ガス窯)

2010-10-27 23:06:51 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
窯の構造は、燃料の変化や、窯の材料によっても、変化してきました。

自然界の粘土や、岩石を材料にして、窯を築きましたが、より高温に耐える様に、耐火度の有る粘土や、

岩石(花崗岩など)を、使う様になり、石炭窯の頃からは、耐火レンガが使われています。

昨今では、断熱性が高く、加工し易い、軽量の耐火レンガが使用され、自分で窯を築く事も、

さほど困難では、無くなりました。

 ③ ガス窯(都市、プロパン)

  ガス窯は、薪による焼成に、かなり、近い焼き上がりに成ると、言われています。

  又、還元焼成に向いた窯とも、言われています。

  都市ガスが、通っていない場所では、ボンベに入った、プロパンガスを使います。

  ) 自然燃焼と、強制燃焼

   ガスの燃焼には、大量の空気が必要です。その空気をガスと伴に、強制的に窯に送り込む方法と、

   自然に空気を取り込む、方法が有ります。

   a)  強制燃焼: ガスの炎を、送風機を使って、空気と伴に、窯内に送り込みます。

     勢いのある炎で、高い温度に成る為、燃料の効率がよく、短時間の焼成となり、燃料と時間が

     少なくて済みます。

    但し、送風機の騒音が出るのが欠点です。バーナーは特殊な形の物で、1~2本が普通です。

   b) 自然燃焼: 液化ガスが、気化しその圧を利用して、炎を送り込みます。その為、長めの煙突が、

    必要になります。火力が弱く、優しい炎です。多くのバーナーが必要で、その分ガスボンベも、

    多めの本数を、用意しなければなりません。

    焼き上がりは、自然燃焼の方が、「マイルド」な仕上がりになります。

   ・ 大抵、中、大型のガス窯は、中圧仕様のガスを、使います。当然、専門の業者(ガス屋)に

     依頼する事になります。小型の場合には、家庭用と同じ、低圧を使う事が、多いです。

  ) ガス窯は、今までの窯に比べ、密閉度が低いです。

     即ち、空気吸引式の、「ベンチュリー型」の、ガスバーナーを使います。

    ・ バーナーの一番手前に、レギレーターと呼ばれる、調整部分があり、ここから空気が、取り

      込まれます。この空気を、一次空気と言います。

    ・ バーナーヘットを、窯の下部から、挿入しますが、窯とヘットの間からも、空気を取り

      入れます。この空気を、二次空気と言います。

     即ち、窯の両側に、複数個のバーナーを、取り付けますので、多くの穴が開く事に、成ります。

  ) 還元焼成が、容易な窯です。(むしろ酸化焼成が、難しいとも言えます。)

     燃料を徐々に増やして、窯の温度を上げていきます。レギレーターの調整や、窯の基にある穴

     (ドラフト)を、開閉して、煙突の引き加減を、調整します。

     但し、やたらに圧を上げても、温度は上昇しません。煙突の引きの調整が、大切な事になります。

     ・ 煙突の引きが、強過ぎると、窯の温度は、不均一に成り易いです。

   ) ガス窯は、灯油窯や、電気窯に対して、大きな窯に出来ます。

      灯油窯は、複数のバーナーを、調節しながら、温度を上げる事は、難しく、電気窯では、

      輻射熱で作品を暖めますが、この熱は作品に拠って遮られ、遠くまで届きません。

   ) ガスの種類

     都市ガス: 主成分は、水素メタン、カロリー数 4500 KCal/立方m、

     プロパン: 主成分は、プロパン、        24000

     天然ガス:       メタン、          11000

    ・ プロパンガスの熱量は、他のガスより、「ダントツ」に大きいです。

 ④ 電気窯

以下次回に続きます。 

 ガス窯 
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窯の種類と歴史 10 (重油、灯油窯)

2010-10-26 21:30:18 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
7) 固体燃料より、他の燃料へ

 ① 液体燃料(重油、灯油)

  ・ 従来の、薪や石炭の様な、固体の燃料は、絶え間なく、人手によって、窯に供給される必要が

    有ります。 液体燃料では、蓄えられた燃料を、パイプによって導き、供給する事に成ります。

    更に、供給量も、簡単に、増減させる事も出来、固体燃料に比べ、大幅に労力を、省けます。

  ・ 液体燃料を、コンプレサーで霧状にし、圧の掛かった空気と伴に、バーナーによって、窯の中に、

    送り込み、燃焼させます。

    欠点は、窯焚きの音(騒音)が、大きい事と、還元焼成をすると、黒い煙を出し易い事です。

  ・ 燃料を増やせば、温度は上がります。空気は、送風機(ブロアー)によって、その量が調整で

    きます。但し、闇雲に燃料を増やしても、不完全燃焼を起こすと、温度は上がりません。

    空気の量との、兼ね合いとなります。  尚、重油は、石炭より高カロリー(発熱量)です。

  ) 重油を燃料とする窯は、主に石炭窯の、角窯を改良して、使用されました。

     石炭や重油の窯は、後で述べる、ガスや電気の窯よりも、頑丈に出来ていて、耐火レンガも

     厚く積まれています。その為、昇温に時間も掛かり、冷却も、徐冷と成ります。    

  ) これらの窯は、熱効率が良く、温度管理も厳密に、行える様になり、その目的、規模に

     応じて色々な、窯が使用されています。

  ) 温度の調整も容易で、酸化焔、還元焔の調節が、簡単である事や、煤煙による、製品の汚が

     無い等の、利点があります。

  ) 焔に、圧が掛かっている為、窯内の温度分布に、差が出る場合も有ります。

     即ち、単独窯に成ると、比較的小型となり、バーナーの火口から、火盾の間が、短くなり、

     温度が均一に、なり難いです。火袋をやや大きめにして、炎の圧を均一にします。

  ) 火盾も重要な、役目をします。火盾は強い流れの焔を、分流して、その力を和らげます。

 ② 更に、重油から灯油に、代わってきます。

   灯油の方が、取り扱いが容易な事と、燃料の質が、良い為で、匂いや、送風機の騒音など、環境にも

   十分配慮した為です。

  ) 現在では、本職の陶芸家では無く、個人で陶芸を楽しむ人が、増えています。

     趣味的な陶芸を楽しむ人は、大きな窯ではなく、小さな物で十分です。

  ) 一時期、陶芸の窯と言えば、灯油窯が普通でしたが、灯油の値段が、高くなった事と、環境問題

     などで、現在では、ガス窯や、電気窯が多く成っています。

 ③ ガス窯(都市、プロパン)

以下次回に続きます。

 重油窯 灯油窯
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窯の種類と歴史 9 (石炭窯)

2010-10-25 21:37:49 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)

6) 石炭窯

    明治時代になると、ヨーロッパの倒焔式(とうえんしき)円筒窯を、モデルとして、

   石炭窯が開発されます。

   火力の強い燃料(石炭)が、手に入る様になると、傾斜地に窯を、築く必要も

   無くなり、 平坦地に築かれ、連房式の登窯から、焼成室が1個の窯に戻ります。

 ① 石炭窯が、登窯に取って代わった、最大の理由は、燃料の安さです。

   我が国でも、石炭は容易に採掘され、薪に対して、格段に安価です。

   (薪を割る手間も、ありません)更に、熱量の違いも、大きいです。

 ② この石炭窯により、完全な倒焔式の窯に成ります。

   (尚、登窯は、不完全な、倒焔式の窯です。)

 ③ 薪による焼成と比べ、釉調(色相)に、違いが見られるそうです。

   即ち、薪より「ねっとり」感があり、天目釉に適しているとの事です。

 ④ 磁器を焼く場合には、問題があるようです。

  a) 京都で、一時期石炭窯が、使用されていましたが、石炭に含まれる、

   硫黄や炭素によって、釉が 変化したり、 素地が、汚れる事もあり、直ぐに、

   廃(すた)れていきました。

  b) 瀬戸、多治見、有田などの、磁器を大量生産される、窯場では、石炭窯が

   盛んになります。

    京都系の透明釉が、石灰釉や、柞(いす)灰釉であるのに対して、他の窯では、

   タルク(滑石)を加えた、石灰タルク釉や、滑石釉を使う為です。

    タルクは、硫黄や炭素を、吸着し難い性質を、持っていますので、釉に「悪さ」を

    しないのです。

  ⑤ 石炭窯の種類

   a) 角窯 (かくがま): ドイツから、技術が伝わり、明治時代以降に、

    普及した新しい構造の、焼成窯です。平面が四角く、窯の両側に設けられた

    沢山の焚口から、炎が壁と焼成室との隙間から、噴き上がり、天井にぶつかり

    床下の通炎孔を通り、煙突へ抜ける、割合簡単な構造です。

     均一で高温度の焼成が、可能な様に、工夫されています。

    ⅰ) 大正から、昭和の前半にかけて、瀬戸の主力窯として、活躍しました。

     瀬戸では、方形の石炭窯が、明治時代の終わり頃から、築かれ初め、

     大正・昭和にかけて普及しました。

    ⅱ) 釉薬を掛けた物が多く、 食塩釉も出現し、土管、焼酎瓶、建築陶器

     (煉瓦、タイル)、 衛生陶器も、作られる様になりました。

  b) 丸窯(円筒窯、円窯 )

    耐火煉瓦を用いた、直立円筒形の、焼成室を持つ窯です。

    円筒形の窯の周りに、放射状に、複数の焚口があります。

   ⅰ) 角窯と比較して、温度分布が均一に成り易く、燃料消費も、少なくて済む、

    利点があります。

   ⅱ) 角窯より耐用年数が長く、熱効率がよい反面、窯を築く為の費用がかかり、

    窯詰め、窯出し等作業の能率が、悪いと言われ、角窯ほど普及しませんでした。

  石炭燃料は、粉塵や煤煙(ばいえん)等の、環境問題と、多くの労力を、

  必要とする為、次第に、他の燃料に、置き換わっていきます。

7) 固形燃料より、他の燃料(重油、灯油、ガス、電気)へ

 以下次回に続きます。

  石炭窯 角窯 丸窯


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窯の種類と歴史 8 (登窯3)

2010-10-24 21:31:19 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
現在では、窯の内部の温度は、熱電対温度計や、ゼーゲル錐で、知る事が出来ます。

この様な物が、無かった時代には、第一に火の色を見て、判断しました。窯の各所に設けられている、

覗き穴から、火の色を見て、温度を測りました。

煙突から出る、煙の状態と色や、窯の中の、焔の状態から、酸化や還元の程度を、判別します。

当然、経験が必要に成る作業です。

5) 登窯

  ⑦ 登窯の種類

    登窯も、用途や形によって、幾つかに分類出来ます。

    即ち、本業窯、古窯(こがま)、丸窯、京窯、益子窯などです。

   ) 本業窯: 陶器専用の焼成窯です。

      丸窯より、勾配が急で、焔の引きが強く、焼成時間が、短く成ります。

   ) 古窯: 磁器を焼く窯です。磁器を焼く本業窯を、古窯と呼びます。

      構造的には、本業窯と同じで、2~4室の窯です。

     ・ 磁器を焼成する為に、各房の天井に、小さな火噴き孔を、数カ所設けたり、各房の窯床の

       傾斜を、奥になるほど、緩くするなどの、改良がなされています。

     ・ 磁器の素地を純白にし、呉須(染付)を、鮮やかに発色させる為に、還元焼成をします。

      戦後まで一部で、使用されていました。磁器などは、「さや鉢」に入れて、焼かれています。

   ) 丸窯: 4~11室の長大な、焼成室を持ち、大型磁器を焼く為の、非常に規模の大きな、

      登窯です。天井の形が、丸くドーム形で、焼成室が、半円球の窯である為、この名があります。

    a) 勾配が緩く、室が大きい為、焔の引きも、さほど強くなく、温度がゆっくりと、上昇します。

    b) それ故、焼成時に、製品の歪みや、破損が少なく、大型製品を焼くのに適した窯です。

    c) 江戸時代後期から、明治時代中期まで、大量に焼く瀬戸、有田などで、使用され、焼成室も

      大きく、室数の多い、この丸窯を、使用していました。

   ) 京窯: 窯の形が、馬蹄形をしている、小型の窯です。

      多品種少量用で、小物が多い京都、常滑、万古焼き等で、陶器、磁器の両方が、

      焼かれています。

   ) 益子窯: 特に天井の低い、京窯と同様に、小型の窯です。

      勾配は、比較的急で、温度の上昇は、速いです。

      北関東の、益子、笠間、相馬や、東北の窯場で、使われていました。

  ⑧ 現存する最古の登窯として、兵庫県の上立杭の登窯が、重要民俗資料に、指定されています。

    明治28年に築造された、長さ47m、室数9の窯で、良く古様を保って、使用されている、代表的な

     登り窯といえます。

  ⑨ 大型の登窯は、共同窯として、使用されて来ましたが、昭和40年代に入る頃から、個人窯が、

    普及し始め、製品の小物化と伴に、窯の規模も、2~4室と小型化して行きます。

6) 石炭窯

以下次回に続来ます。

 登窯 本業窯 古窯 丸窯 京窯 益子窯
 
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窯の種類と歴史 7 (登窯2)

2010-10-23 22:02:59 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
前回に引き続き、登窯の話を、続けます。

5) 登窯

  ⑥ 登窯の構造

   ) 最前部に、焚口を造り、胴木間(どうぎま)、灰間(はいま)、第一焼成室(房)、第二焼成室と

      次々に続きます。大きい窯では、十数室の房を連ね、最上部に煙突があります。

   ) 窯の側面に、階段を設け、各室(房)の左右に、薪を入れる、差木(さしき)口を付け、

      第一房から、次々に、焼成する仕組みに、成っています。

      各房の天井には、小さな火噴き孔が、数カ所、設けたりしています。

   ) 各房は、「さま(狭間)で」仕切られ、独立した窯に成っています。

       「さま」の下部には、複数個の「さま穴」が、開けられ、上の房に連なっています。

       この「さま穴」の大きさや、取り付け方によって、燃焼に微妙な変化が、起こります。

   ) 「さま」には、「横さま」「縦さま」「斜めさま」が有りますが、窯床に段差が有る、登窯では、

       横と縦の「さま」に成ります。

     ・ 時間を掛けて、「じゅっくり」焼く場合には、「横さま」が適し、火勢を強くし、短時間で、

       焼成する場合は、「縦さま」が、適していると、言われています。

     ・ この穴の大きさ(面積)によって、窯の引きが、変化しますので、引きの悪い場合には、

       穴を広げます。又、窯の中の温度が、一定になる様な位置に、取り付けます。

    ) 窯中の雰囲気は、最上部に設けられた、煙突の元に有る、「ダンパー」(調整板)の開閉具合

       に拠って、コントロールし、酸化、還元焼成を、決定します。

    ) 煙突の高さ、断面積や、焚き口の大きさなどは、ある程度、計算式で出るそうです。

     a) 煙突の高さは、窯の内側の高さの、約3倍程度。

     b)  水平な煙道の長さは、煙突の高さの、1/4に相当します。

        煙道の断面積は、煙突の断面積よりも、大きく採ります。

        但し、煙道の長さは、短い方が良いです。

     c) 煙突の内径は、煙突の高さの、約1/25とする。

     d) 焚き口の内容積は、窯の内容積の、1/10程度にする。

     e) 燃料を燃やすには、空気が必要で、燃やす部分の下に、火格子(火網)を、取り付けます。

       火格子は、3cm角の鉄材を、1.5cm位の間隔で、並べます。

     f) 「さま穴」の全面積は、火格子の全面積の、1/10位で、「さま穴」1個の大きさは、
   
       7~10cm角、程度が多いです。

  ⑦ 登窯の種類

    窯には、用途や形によって、幾つかに分類出来ます。

    即ち、本業窯、古窯、丸窯、京窯、益子窯などです。

以下次回に続きます。
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窯の種類と歴史 6 (登窯1)

2010-10-22 22:07:31 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
5) 登窯 (のぼりかま)

  登窯では、薪を使用する為、自然の炎による、釉の変化が現れ、予想外に、すばらしい焼き物が、

  出来ますので、今でも使用している、窯元もあります。

  ①  登り窯は、斜面に数個の焼成室を、連続させて築いた窯で、手前から胴木間(どうぎま)と言う

    「焚口」、「第1、第2、第3・・・燃焼室(燃成室)」と続きます。燃焼室は、小型の窯で3~4室、

     大型の窯では、12~13室程度有りました。最上段の室には、煙突が付けられています。

   ・ 燃成室(房)の多い窯は、共同窯として、使用されていました。

  ② 最前部の燃焼室で、炙(あぶり)焚きをして、順に上にある燃成室に、炎と熱が伝わりますので、

    廃熱を上手に、再利用した、熱効率の良い窯です。 

  ③ 連房式の窯は、焼成室(房)を、隔壁(狭間=さま)で仕切り、連続させた長大な窯で、窖窯

    より経済的で、熱効率も良く、大量生産が、可能に成ります。

  ④  登窯の特徴

   ) 登窯の特徴は、同時に、多品種の製品が、焼ける事で、下の間は磁器を、上の間は陶器や、
 
     「器」を焼く事も、可能です。 又、室ごとに、酸化、還元が設定できる事です。

   ) 廃熱を、有効に使用する事

     窯焚きは、最下段の窯から、行いますが、倒焔窯である為、第一室の焔は、天井に上った後、

     壁に沿って下降し、隔壁(狭間=さま)を通り、次の室に流れます、この廃熱は、次の室の製品を、
 
     暖める、所謂、焙り(あぶり)を行う事に、成ります。
    
  ) 短所

   a) 窯の中の温度差が、大きい

     天井の部分(天と言う)と、窯底の部分(根という)では、約50℃程度の開きが、有る事も、

     珍しく有りません。勿論窯の傾斜角度によって、差は変化します。

   b) 窯の両横方向から、薪を投げ入れるので、側炎と成ります。「差木(さしき)口」と言う。

     その為、焼成は、不均一に成り易いです。 温度を均一にする為、さま(狭間)穴の大きさを

     変えたり、穴の数や、位置を変えて、調節していた様です。

   c) 燃料は薪ですので、上手に空気を、送り込まないと、不完全燃焼と成り、温度が上がりません。

      又、燃えた後に、灰やおき(燃えカス)が残り、取り除く等の、作業が必要に成ります。

      即ち、窯焚きは、難しい作業で、窯焚き専門の、職人が居ました。

   d) 一度窯に点火すると、昼夜を問わず、焼き続ける事に成ります。大きな窯では、一週間以上

      掛かる事に成ります。それ故、窯を焚く人数も、多数必要に成ります。
 
  ⑤ 登窯の構造

以下次回に続きます。

 登窯
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