わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問37 釉の毒性に付いて

2019-03-21 20:01:35 | 質問、問い合わせ、相談事
ぷくぷく様より以下の質問を頂戴しましたので、当方なりのお答えを致します。

 (追加の質問も掲載します)


陶芸初心者です。

少しお聞きしたいのですが、釉薬をかけるときに素手ですると、皮膚を通して毒を吸収するこ

とがあるようですが、週に一度の教室でも、やはり手袋をする方がいいのでしょうか?

みなさん素手でされているので、手袋をさせてくださいとは言いにくいですね(^_^;)

私は金属アレルギーがあるので、それも気になります。


明窓窯より

結論を先に述べると、手袋の必要性はありません。

但し、手や指に傷が有ったり、皮膚に吹き出物の様な物がある場合は、手袋を着用する事も

あります。小さな傷ならば、絆創膏で十分です。

以下の理由による為でっす。

1) 陶芸教室に通っているとの事ですので、教室では市販の釉を使用していると思われます

 市販の釉では、鉛などの毒性のある材料を用いている事はほとんどありません。

 それ故、毒が皮膚から吸収するとは考え難いです。

 但し、市販品では無く、教室の方が独自に釉を調合している場合、どの様な有毒物が混入し

 ているかは不明です。(この場合でも、有毒物を混入させている可能性はかなり低いです)

2) 釉を塗る(施釉する)時間は数秒の事が多いからです。

 それ故、例え毒性が有っても短時間であり、数個の作品を施釉するにしても、釉に触れてい

 る時間は短く、更に施釉後は直ぐに綺麗な水で手を洗う事が通例です。

3) 釉に比較的長く触れる場合は、長らく使用していない沈殿している釉を手でかき混ぜる

 時です。即ち、素焼き直後で最初にその釉を使う方が一番長く釉に触れる事になります。

 二番目以降の方では、沈殿は少なく成っていますので、釉に触れる時間も短くなります。

 尚、釉をかき混ぜる電動工具等を利用している場合には、釉に触れる時間は短くなります

4) 釉の毒性を気にするのであれば、施釉時よりも、むしろ釉剥がしの場合の方が重要です

 皮膚からよりも、鼻や口から釉の粉塵(金属や金属以外の物質)を吸い込む方が危険は

 大きいです。釉剥がしは、高台脇や底(畳付き)等に付いた不要な釉を剥がす作業です。

 この作業を怠ると、本焼きの際棚板に釉が「こびり付き」取れなくなってしまいます。

 釉の粉塵が飛び散るのは、スプレー(霧吹き)で施釉する場合にも起こります。

 霧状に成った釉を吸い込まない事が重要です。

 粉末や粉塵を吸い込むと、珪肺(けいはい)と言う病気を引き起こす場合があります。

 珪肺は石工や炭鉱労働者に多く見られる職業病です。

 但し、10年単位で作業をした場合ですので、週一程度では、ほとんど問題ありません。

5) 金属アレルギーを心配されていますが、釉に含まれる金属の割合は、数%の場合が多く

 多くても20%以下です(金属の種類と色の濃淡によって異なる)。

 それ故金属の濃度は低く、触れていても短時間でもあり、アレルギーの為、「かぶれ」等

 の発生はほとんどないと思われます。


 ◎ 結論 以上の事から手袋の着用は不要と思われます。

  不明な点がありましたら再度お問い合わせください。 以上


ぷくぷく様より、以下の追加の質問が届きましたのでお答え致します。


 もうひとつ質問させていただいてよろしいですか?

 釉薬を削ったりスプレーしたりするときは少し気を付けた方がいいみたいですが、普通の

 花粉用のマスクで大丈夫でしょうか?


明窓窯より

 花粉用のマスクで十分です。

 前回言い忘れた事もありますので、一言付け加えたいと思います。

 当方では、素焼き後(施釉する前)に紙やすりを掛けて、作品の表面に付いた削りカスや

 小さな傷を取り除いています。削りカス等をそのままにして置くと、本焼きでこびり付き

 簡単には取れなくなるのを防ぐ為です。

(尚、ほこりを払うだけで、やすり掛けしない所もあります。)

 その際、やすりの削りカスが舞い上がる事もあります。この削りカスを吸い込むと健康に良

 くありません。もし気になるならばやはりマスクを着用する事です。

 但し、多くの場合ほとんど問題にならない事が多いです。

 尚、当然ですが、やすり掛けした後の作品は洗い(表面の粉を落とすのが目的ですから、

 素早く水を掛ける程度で良い)するか、きつく絞ったスポンジで表面を撫ぜる様に拭いて

 おく必要があります。やすり掛けしたままだと、釉剥げの原因になります。

 又、強く拭くとカスを本体になすり付ける事になります。

以上、参考にして頂ければ有難いです。

 
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電気窯、ガス窯、薪窯 3

2019-03-09 17:34:08 | 色と陶芸
前回からの続きです。

5 薪窯

 ① 薪窯とは、燃料が薪(まき)で主に赤松を使っています。但し、松脂を多く含む赤松は

  高価ですので、窯が高温に成ってから使用し、低温の場合には、他の薪(樹木は問わず)

  を使います。

 ② 陶芸の世界では、多くの人が薪窯の作品に魅せられています。電気やガス窯では決して

  出来ない色艶のある色合いになるからです。勿論、電気やガス窯で工夫すれば薪窯の作品

  に類する作品に焼き上がる事も可能です。

  但し、近年薪で焼成する事は、かなり困難になっています。それは、環境の問題だけでな

  く、費用(薪代)と労力(焼成時間が長くなる=数日を要する)がガスや電気に対し、桁

  違いに大きいからです。一般に薪窯は現地で制作します。経験のある人であれば、耐火

  レンガを積み上げて制作する事が出来ますが、窯を築く職人に依頼して築く事が多いです

  勿論築く場所も環境も含めて慎重に選ぶ必要があります。当然都市部では消防法で許可さ

  れません。

 ③ 窯も他の窯より大型になります。登り窯(連房式)が著名ですが、単房の物もあります

  ガスや灯油、電気の無い頃の窯は、全て薪窯になりますので、古い時代の作品は全て薪で

  焼成しています。薪窯を個人で持つ事は難しく、多くは共同窯が多いです。

 ④ 薪窯で焼成したい方は、窯の持ち主に依頼して、窯に入れて貰うか、窯を借りる事にな

  ります。窯を貸してくれる所(勿論有料で)も探せば見つかると思います。

  場合によって薪の調達から窯の炊き方も指導してもらえる所もあり、初心者のグループで

  も薪窯で作品を焼く事も出来ます。

 ⑤ 薪窯の窯詰めには、さや(匣鉢)に収めて焼く方法と、裸で窯詰めする方法があります

  即ち、薪(赤松)の灰が作品に降り掛かる方法と、灰が被らなくする方法です。

  現在では後者の場合では、薪窯よりも電気窯の方が向いています。但し藁による火襷

  (たすき)では匣鉢に収める事が多いです。

  又、作品に釉を掛ける場合と、掛けない方法があります。特に後者を「焼き締め」と言い

  ます。釉を掛けない場合には、必ずしも素焼きを行う必要はありません。

  焼き締め陶器の魅力は何といっても、灰被りの状態によってその表情が大きく変化し、

  一つとして同じ物が存在し無い事です。但し、自然の降灰のみに頼るだけでなく、予め

  作品の一部に灰を振り掛ける方法をとる方もいます。

 ⑥ 薪窯は必ずしも成功裡に終わるとは限りません。むしろ焼き不足や焼斑(むら)等不

  完全な焼成も多く見られます。

  一番の問題は、十分温度が上昇しない事です。燃料(薪)を闇雲に投入しても温度は上昇

  しません。むしろ不完全燃焼を起こし、温度が下がる事さえ起こりえます。炎の色具合や

  空気量をこまめな調整(煙突の引きの具合)によって、温度上昇に持って行く必要があり

  ます。その他、窯詰めの方法や、窯を炊く季節や薪の乾燥具合など多くの要素も関係して

  きますので、薪窯に挑戦される方は十分な準備が必要になります。当然他の窯よりも費用

  と労力が多く掛かる事になります。

以下色に付いての話は、次回に続きます。
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