わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問44-2 亜鉛結晶釉と撥水剤に付いて

2020-08-26 15:19:46 | 質問、問い合わせ、相談事

田中豊治様より追加のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。

 

撥水の事ですが言葉足らずでした、使用したのはCP-F3(油性超強力タイプ 色

はブルーで前CP-E2と同じ)で以前の分より強力と言う事で購入しました

が・・・結果はあまり変わりませんでした、但し浸した時は結構弾きます、自

身思うのはコンプレッサーで吹くと徐々に釉が付着して弾いてくれないのか

なと・・・? 沢山釉があれば浸けちゃうのですが量が少ないもんで吹いて

おります、仕方なく今は陶画糊でやりますが後の処理が結構大変で撥水が出来

ればよいのですが、吹き付けの方が弾かないと言うご経験ありませんか。

 

明窓窯より

昔より施釉の厚みは郵便はがき一枚分が理想的と言われています。

市販の郵便はがきの紙厚は、0.24mm(即ち240μ=ミクロン)です。

陶芸ではないのですが、近年では少なく成りましたが、家の外壁塗装もガン吹きで行うい

ます。即ち同じスプレー掛けです。

その際に塗膜の厚みは上塗り(仕上げ塗り)で0.100mm(100μ)程度との事です。

(ネット調べです。)

1) 釉を弾かない原因は、釉の厚みが薄い為と思われます。

 施釉を漬け掛けすると弾く事から、漬ける事で釉の厚みが増す結果と思われます。

 田中様のは、どの程度の釉厚なのかは不明ですが、昔から簡易な方法で釉の厚みを

 見る方法に、指の爪で引っ掻いてその痕で判定するやる方が有ります。

 引っ掻いた痕はシッカリ残る事が大切です。又断面から釉の厚みを見る事もできなす。

 漬け掛けした時と吹き掛けの厚みを見比べて下さい。違いがあるはずです。

 釉が薄い為、素地に吸収されてしまうのではないでしょうか?

2) 釉を節約する為に、漬け掛けは出来ないとの事ですが、流し掛けにすれば、

  漬け掛けと同じ効果が得られ、釉の量も多く蓄える必要はありませんので、

  一度挑戦して下さい。

結論、吹き掛けで釉が弾かれない理由は、釉の厚み不足と思われます。

  拭き掛ける回数を増やす、又は釉の濃度を増す等の方法で釉を厚く掛けて下さい。

  新に違う事を行うと何かと問題が発生するものですが、乗り越えて下さい。

尚、当方ではスプレー掛けの経験はありますが、撥水剤使用の上での経験はありません

ので、適格にお答えできません。悪しからず。

以上

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質問45 釉にぶつぶつ(泡状)が出た時の対策

2020-08-25 10:53:33 | 質問、問い合わせ、相談事

(ぷくぷく)様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。


 今回、教えていただきたいことがあり、メールさせていただきました。

 マグカップを焼いたところ、透明釉が溶けずに白濁していたため、もう一度焼きました。

 すると、今度は全体的に白っぽい泡泡になってしまいました。

 気に入っていたマグなので、何とかならないかと思うのですが、例えば、ごく細かい

 サンドペーパーなどで擦ると、どうなるでしょうか?

 マグには、像篏と模様の貼り付けをしています。

 

◎ 明窓窯より

 熔け不足や希望と違う色に焼き上がった作品を再度焼成する事は一般に行われて

 いますが、再焼成しても必ずしも希望通りに行くわけではありません。

 今回ご質問の「泡泡=ぶつぶつ」の状態に成る事も起こり易い現象です。

 特に最初に焼成してから時間が経った場合に起こる傾向にあります。

1) 釉の内部に気泡が存在する場合が多いです。

  ぶつぶつの正体は気泡です。空気の事もありますし、水蒸気であったり、釉中から

  発生した「ガス」の場合もあります。これは貫入から入り込んだ水分や空気による

  物と考えられています。

  ⅰ)気泡があると、表面が不透明になり、作品表面の図柄が不鮮明となり、場合に

   よっては、全く見えなく成る事もあります。

  ⅱ)作品全体に起こる場合と、局所的(特に作品の下部又は器の外側)に発生する

   事もあります。施釉が厚く掛かった部分のみに見られ事もあります。

  ⅲ)気泡の大小にもよりますが、指の爪で押すと気泡が破れ醜い痕に成ります。

   これは、気泡を薄いガラス質の釉が覆っている状態で、破れる事で先端が鋭利な

   ギザギザの突起が出来、手に持つ事すら危険になります。当然実用に耐えません。

2) 表面を目の細かい紙ヤスリで削っても、気泡が中にある限り取り除く事は出来ません。

 むしろ薄いガラス質に穴を開けるだけです。

 ⅰ)対策は出来るだけ、気泡を潰してから、再度釉を掛けて焼成する事です。

  気泡を潰すには、先の尖った鋭利な金属棒や、広い範囲の場合には、ハンマー

  (木製又はゴム製)で軽く叩き、泡を潰します。

  強く叩くと器を傷つけますので注意が必要です。

  又、表面が凸凹している事と焼成を繰り返す事で釉が表面に載り難です。

  焼成後でも完全に泡が取れるとは限りません。

  それ故、焼成しても不出来でしたら、廃棄処分が妥当です。

 ⅱ) 再度最初から作り直す方が確実ですし、時間的にも早い場合が多いです。

  失敗した作品を補修するのは、意外と大変ですし、満足できる作品にするのはいくら

  努力しても、報われる結果が出るわけではありませんので、ある程度補修しても

  希望通りに成らない場合には、最初から作り直す事を勧めます。

当方でも何度か同じ状態に成った事がありますが、確実な方法を見出す事が出来ません

でしたので、適格な情報をお伝え出来ません。申し訳ありません。

以上 

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質問44 亜鉛結晶釉と撥水剤に付いて

2020-08-13 10:16:02 | 質問、問い合わせ、相談事

田中豊治様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりに回答します。

自身で小さい電気窯を購入しました新米です。

いま市販の亜鉛結晶釉でなんとか結晶ができるようになりました が 釉を自作して

みたいと思いいろいろ拝見しこの記事を見つけました、石灰三号透明釉:酸化亜鉛(亜鉛華) 

= 100:20~25(外割) この調合だけで亜鉛結晶釉が出来るのですか?


何か補足すると言うのは無いのですね。


試行錯誤はあると思いますが・・・。

これとは別件で撥水剤を筆で塗り模様を抜く作業でコンプレッサーでスプレー掛けすると

釉を殆ど弾きません、やり方が悪いのか誰でもそうなるのかお聞きしたいです。


因みに浸すと弾きました。

 

◎ 明窓窯より

1)基本的には上記の割合になります。

 他の成分を添加する人もいる様ですが、それはその人の研究の結果ですので、

 必ずしも、必須事項ではありません。

 尚、その人なりの研究とは、より確実に結晶を作りたい。温度範囲を広げたい、

 より綺麗で大きな結晶を造たい等の要求による物で、特にご自分の窯に適する割合

 を模索した結果であり、万民向けと言う訳でありません。

2) 上記配合では白色の針状結晶か扇状結晶になります。

 結晶状態は焼成温度と保持時間に左右されます。

 着色剤として他の金属類を添加する事で、色の着いた結晶を作る事が出来ます。

 例えば、酸化ニッケルで青色、酸化コバルトでは紺、鉄で薄茶色酸化銅を添

 加すれば緑色になります。

3) 任意の場所に結晶をより確実に出現させる為、酸化亜鉛粉末を糊状の物(CMC)等

 で練り、筆置きするやり方もあります。これは結晶の核を作りここを拠点として

 結晶を成長させようとする方法です。施釉する前に行うか施釉後に行う方法があります。

4)結晶釉が流動性のある事と、結晶成長温度に長時間保持する事が大切です。

 特に、保持温度を保つ為には、ご自分の窯の性格をつかむ事が肝要です。

 失敗する事も多々あります。「めげずに」努力して下さい。

5)撥水剤を筆塗り後、釉をスプレー掛けすると、釉を弾かない件。

 あなた様が使用している撥水剤の種類がどの様な物かが判りませんので、的確な答えは

 出来ません。

 市販されている陶芸用の撥水剤には、油性の物、水性の物、臭いの強い物、弱い物、

 赤又は青色の色の着いた物、無色の物、生素地に適応する物、素焼きにも適応する、

 更には釉に混入させて使う物、施釉後使用し後掛け釉を弾く物、更には焼き上がり表面に

  使用し水漏れ防止用(食器用、花瓶等用)など種類が多いです。

  速乾性の有る物、乾きが遅い物など千差万別です。

  水性用は油性用より撥水性が弱い様です。又素地が粗い場合には撥水効果が弱い

  と言われています。値段と容量にも変化があります。

  詳しくは、ネットで調べる事が出来ます。

  ご自分の希望する撥水剤を見つけて下さい。  

以上ご検討下さい。

 

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陶芸と金属類の関係2

2020-08-10 14:06:23 | 陶芸と金属類

2) 金属の種類は多いが、焼き物に関係する物質は有る程度限定されます。

 地球上で安定して存在する元素は、原子番号1番の水素(H)から92番のウラン(U)まで

 ですが、43番のテクネチウム(Tc)は半減期が短い為、地球上から既に蒸発し存在

 しませんので、元素は91種類に成ります。尚、93番以降の元素は、原子炉の中で

 人工的に作られた元素で、超ウラン元素と言います。

 この中で金属元素は、70種類程度です。

 ① 地球上の金属は酸化物が多いです。

  地球上では空気中の酸素と結合し、酸化物として産出されます。それ故元素のまま

  産出される事は稀です。

 ⅰ) 同じ元素と結合する物質は色々あります。

  例えば単に酸素(O2)のみに結合する物質や、水酸化物(OH)や炭酸化物(CO3)

  硫化物(SO4)、塩化物(Cl2)等と結合したりし、その結合物によって化学的に異なる

  反応(作用)が起こります。大きく変わる物も有ればほとんど同じ効果の物もあります。

  後者であれば代用が利き、手に入り易く単価の安い方の物質を使うと経済的です。

 ⅱ)粘土中に入っている金属類とは。

  a) 一番多い物質は酸化鉄です。主に赤土として産出されます。

   鉄分の含有量によって黄色から薄茶、茶色、濃茶色、黒色を呈します。

   市販されている赤土も産地によって特徴があり、焼き上がりの発色も異なります。

  b) 一般に赤土は焼成温度を下げます。

   即ち耐火度が弱く成ります。但し、収縮率を上げますので、焼き締り易く成ります。

  c) 関東地方に白い土が少ない理由。

   使用する粘土には、各々好みの物が存在するか、好みに合わない土も他の土と

   混合させて好みの土を作る事が可能に成った現在、又は他所から産出する土を容易に

   入手可能な現代では、当地で産出する土を使用する必要は有りませんが、

   出来れば当地から産出する土を何等かの方法で利用するのも、宜しいと思われます。

   関東ローム層は主に富士山や箱根山、浅間山、赤城山、妙義山、男体山等の噴火で

   一万年~数十万年前の間に降り積もった火山灰が風化し、粘土化した物と言われて

   います。火山灰には粘土質の成分が多く含まれています。

   即ちシリカ(SiO2)やアルミナ(AI2O3)成分で、その他に鉄分(FeO2)やMnO、MgO、

   K2O等の鉱物が細かなガラス質成分と共に存在します。

   その為、多くは赤褐色した鉄分を多く含む土です。各火山の違いにより、又は

   年代により、噴出物の性質に違いがあり、風化の仕方にも違いが出て、同じ関東地方

   でも産地によって土の色の濃さや、肌ざわり等に違いがあります。

   それ故、関東地方には白い土は少ないです。

   尚、関東地方の著名な窯場は、益子焼き(栃木県)、笠間焼(茨木県)です。 

以下次回に続きます。 

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陶芸と金属類の関係1

2020-08-04 11:30:19 | 陶芸と金属類

陶芸と各種金属類との間には密接な関係が有ります。

例えば、素地に混入して素地の性質を変えてしまう事も有ります。

又、主に釉に混ぜて、色々な色又は好みの色に発色する事が行われいます。

その他、絵付けとしての絵具に利用されたり、金や銀の様に装飾する為にも使われます。

金属にはその金属特有の物理的(結晶、強度等)、化学的性質(酸化還元等)を有しますので、

それらを理解する事は有意義な事と感じます。

今回より「陶芸と金属類の関係を」順次述べたいと思います。

1) 各地の粘土の差とは。

 磁土にも産地によってある程度の差が生じますが、粘土程の差が出ないのが普通です。

 粘土はその産地によってその性質も大きく異なります。その為その性質に有った作り方や

 焼成の仕方が異なり、出来上がり作品もその土地ならではの焼き物に成ります。

 ① 各地の粘土の違いは、その中にどの様な鉱物が含まれているかに拠ります。

  a) 粘土の基本的な鉱物は、シリカ(珪酸、SiO2)とアルミナ(Al2O3)です。

   これは、岩石の成分と同じで、特に陶土なり易い火成岩(花崗岩等)が雨風熱等により

   風化、微細粉砕化され、更には雨や川によって流失移動し堆積し粘土に成った為です

  b) この風化による微細化と流動堆積化の途中で、その土地に存在する各種鉱物と

   混在します。特に鉄やマグネシウム、カルシュウム、石英の他、アルカリ金属、アルカリ

   土金属等の希土類も含まれる場合も有ります。これらの含有物や含有量によって

   粘土の性質が決定されます。

  c) 焼き物に適する土は選別されます。

   上記の土全てが焼き物に適するものではありません。当然人為的に取捨選択しさらには、

   陶土として精製して使用する事に成ります。一般的には水簸(すいひ)の技法を取ります

   上記粘土に含まれる植物片や「ごみ」「有害な物質(水溶性のアルカリ類)」を取り

   除きます。

  d) 焼き物に適する土

   ⅰ) 可塑性(かそせい)が有る事。

    一度力を加え、変形させ、その力を取り除いてもその変形を保持する性質を可塑性と

    言います。その為には、「延び」が良い事と、「腰の強さ」が要求されます。

   ⅱ) 乾燥に強い事。

    素地を乾燥させると縮ます。その際「ひびが入らない」ことが肝要です。

    この「ひび」はほとんど修正不可能です。

   ⅲ) 良く焼きし締まる事。

    作品を高い温度で焼成する事で、素地は焼き締り、物理的強度が増し、使用に

    耐える物になります。当然高い温度に耐える必要があり、その温度範囲も広い事も

    大切です。焼き過ぎや焼き不足になる危険性が少なく成る為です。

   ⅳ) 焼き上がりが美しい事。

    施釉陶器でも、焼き締め陶器(無釉)であっても、美しく焼き上がる事がその作品の

    価値を高める事に成ります。

    特に施釉陶器では釉が良く熔け、素地に密着する事が大切です。

以下次回に続きます。   

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