わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉薬とガラス 17(染料と顔料4)

2011-11-04 21:35:29 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤

4) 酸化金属による、着色剤

 ⑥ 酸化ニッケルについて

   釉にはニッケル化合物の内で主に、緑灰又は緑黒色の一酸化ニッケルが使われます。

   但し、単体で混入しても余り見栄えのしない、緑灰色系の色が出るだけです。

   それ故、他の酸化金属と組み合わせて、その色を少し変更したりする場合に使います。

   例えば、酸化鉄〔弁柄)と組み合わせて、褐色や灰色の釉を作る事が出来ます。

 ⑦ 真赤な顔料について

   赤色には銅を使った辰砂釉などがありますが、本焼きで発色する、綺麗な赤はありませんでした

   近年1300℃程度まで、安定した赤を発色させる顔料が発明されています。

   少し前までは、赤と言えば上絵付けの赤、所謂(いわゆる)酸化鉄を基にした柿右衛門の赤で、

   800℃程度の低温で焼き付ける方法のみでした。

  ) ドイツの「デグッサ社」が「カドミウム」と「セレニウム」による赤い顔料の開発に成功し、

    現在、一般に市販されていて、下絵付けの絵の具や、釉に添加して赤い釉を作れる様に成り

       ました。

  ) 「デグッサ社」の特許は、明るいオレンジ色、明るい赤色、濃い赤色の三種類です。

    いずれも、1300℃程度まで安定的に発色し、酸化焼成でも還元焼成でも使用可能です。

    これらの顔料は、他の原料と一緒に、高温で焼き固められた「固熔体」の為、高い温度でも

    安定的に発色し、しかも有毒な「カドミウム」等が、熔け出す危険もありません。 

 ⑧ その他の顔料(黒色、ピンク、黄色)について

   一種類の酸化金属だけでは、十分満足のいかない場合には、数種類の材料を使います。

   )黒色は、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅などを混合して作ります。

     単に、生の状態で混ぜ合わせても、十分使えます。

   )クロムピンクは、酸化クロムと酸化錫を混合して作りますが、高い温度では、不安定な

     状態になり易く、更に揮発したりもします。釉を安定化させる為には、着色原料と珪石や

     アルミナ等と伴に焼き固め、化学的に安定した形にしてから使います。

   ) 黄色は、酸化チタン、酸化ウラン、酸化アンチモン等の他、黄土や土灰などでも作る事が

     出来ます。黄土や土灰を使うと、黄伊羅保(イラボ)釉や黄飴釉になります。


最後に、通常調合した生の釉の色と、焼成後の色が異なるのが多いです。

そして、釉同士を混ぜて使用する事は、なるべく避けるべきです。

中間色が出る事は稀で、思わぬ冴えない(汚い)色に成る事が多いです。

但し、市販されている顔料は、絵の具の様に混ぜ合わせ、中間色を出す事が出来ます。


以上にて、「釉薬とガラス」の話を終わりますが、今後、釉薬についてお話する事もあると思います。

次回より別のテーマでお話する予定です。
       

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釉薬とガラス 16(染料と顔料3)

2011-11-03 21:39:02 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 酸化金属による、着色剤

 ③ 一酸化コバルトについて

   コバルトの化合物には、一酸化物、二酸化物、三酸化物、四酸化物と炭酸コバルトがあります。

   一般には、黒色の四酸化コバルトが使われます。これは800~900℃で分解され、一酸化コバルトに

   成ります。尚、三酸化コバルトは灰色で、895℃で一酸化コバルト(酸化コバルト)になり、

   赤紫色の粉末の炭酸コバルトは、800℃程度から分解を始め、酸化コバルトに成ります。

   即ち、全てのコバルト化合物は、最終的には一酸化コバルトに成ります。

 ) 一酸化コバルトの特徴

  a) 黒灰色をしており、全ての温度範囲で安定した色を呈します。

    焼成温度は勿論、釉の組成、窯の雰囲気などに左右される事は無く、安定した色に成ります。

  b) 媒熔剤としては、ほとんど効果はありません。(添加量が少ない為かも知れません。)
    
 ) 酸化コバルトの添加量
   
  a) 0.1%で青く、3%で瑠璃(ルリ)色、5%で濃いマリンブルーの釉を作ります。

  b) 10~15%と多量に添加すると、釉に熔け込めず、赤紫色の珪酸コバルトの結晶を析出し、

    この結晶釉は表面をも埋め尽くし、赤紫色のマット釉を作ります。

 ) 炭酸コバルトについて

    最終的には、酸化コバルトに成るのですが、炭酸コバルトの方が粒子が細かい為、釉に均一に

    拡散し、均一の色調に成ります。更に、ごく微量に添加したい場合には、炭酸コバルトの方が

    適します。それは酸化コバルトより、効き目が弱い為です。

    酸化コバルト100g = 炭酸コバルト158.7g に相当します。

 ④ 酸化クロムについて

   2~5%の酸化クロムを、基礎釉に添加すると、緑色に発色します。

   但し、亜鉛やマグネシウムが入ると、オリーブ色や茶色に成ります。

   又、酸化錫(スズ)と組み合わせるて、酸化焼成すると、ピンク色や、ワインレットになる場合が

   あります。しかし酸化亜鉛(亜鉛華)が入ると、ピンクは破壊され、色が出ません。

   更に、1200℃程度から揮発し始めますので、周囲の作品にピンク色が移る恐れもあります。

   酸化クロムは化学的に不活発(熔けない)な為、大量に添加すると、熔け不足や艶消し釉に成ります。

 ⑤ 二酸化マンガンについて

   黒色の粉末の金属で、釉に添加する事により、一般に茶色系の色を発色します。

  ) 石灰長石系の釉に1~8%マンガンを添加すると、ベージュや枯れ草色に成ります。

  ) マンガン単体より、他の金属類と組み合わせて使う方が、安定した色になります。

   a) アルミナと組み合わせると、耐火度(1300℃まで)のあるピンクの顔料が作られます。

   b) アルカリ成分が多く、アルミナが少ない釉に1~3%のマンガンを添加すると、ライラック紫色に

     アルカリ成分が多くなるに従い赤が濃くなり、マンガン量を減らし、酸化錫を加えると

     紫色が強くなります。更に、硼酸が入る釉では、紫掛かった茶色に成ります。

   c) 非常に純度の高い酸化マンガンを、15~20%を素地に混入すると、黒っぽいメタリック

     調の化粧土に成ります。

   d) 一酸化マンガンは緑色の粉末で、1150℃位から強い媒熔剤に成ります。

 ⑥ 酸化ニッケルについて
     
以下次回に続きます。   
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釉薬とガラス 15(染料と顔料2)

2011-11-02 22:18:55 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 酸化金属による、着色剤について

 一般に使われてる着色剤は、酸化鉄、酸化銅、酸化コバルト、二酸化マンガン、酸化クロム、

 酸化ニッケル等の酸化金属類が多いです。

 これらの金属類を、基礎釉である透明釉などに、1%~十数%(重量比)添加して発色させます。

 ① 酸化鉄類について

   鉄化合物には、弁柄(酸化第二鉄)、珪酸鉄、砂鉄(黒浜)など色々ありますが、弁柄を

   使う事が多いです。それ故、生の状態の鉄系の釉は、ほとんど赤茶色系の色をしています。

  ) 弁柄は、1200℃程度で少しずつ分解し始め、酸化第二鉄(FeO2)は第一鉄(FeO)に

    変化します。第一鉄は一酸化物ですので、媒熔剤として働き釉の粘性を下げ、釉を流れ易くします。

  ) 多量(12%以上)に鉄分が添加されると、冷却中に結晶として析出します。

    これらは、鉄砂釉、鉄赤釉、金彩釉などの鉄結晶釉に成ります。

  ) 2.5%程度以上になると、焦茶色から茶色、灰色、黒色等の多様な色を発色します。

    10%程度で黒天目に成ります。(尚、天目釉にはアルミナを少なくし、珪石とマグネシウムを

    多くすると、良い結果が出ます。)

  ) 青磁釉は鉄を1~2%程度添加し、還元で焼成すると酸化第一鉄が、多量に生成され、

    青緑色の青磁に成ります。

 ② 酸化銅について

   一般に使用する銅化合物は、黒色の酸化銅と、緑色の炭酸銅が多いです。

   炭酸銅は500℃で分解し、酸化銅に成ります。

  ) 銅成分は釉の組成と、窯の雰囲気に敏感に反応します。
   
    酸化焼成では、1~5%程度で明るい緑~濃い緑色を呈します。

  ) 還元焼成では、黒色酸化銅が酸化第二銅に変わります。第二銅がコロイド状態に成ると、

    辰砂釉や銅赤釉に成ります。

   a) 釉にアルミナとカルシウムが多いと、鮮明な赤は出ません。錫(スズ)やバリウムが入ると

    安定した赤い色調に成ります。特に酸化錫(5%以下が良い)は、揮発する銅を吸着し、還元の

    効果を助けます。バリウムを入れると紫色に、珪酸が多くなるとピンク色になる傾向があります。

   b) 不純物の酸化鉄が入ると、青紫色の辰砂に成ります。それ故、青紫色を出す場合には、

    石灰釉で0.5%程度の酸化鉄(弁柄)を入れます。

   c) 辰砂にするには、結晶を成長させる為、700℃近辺で一定時間温度を保つ必要があります。

     更に、結晶を促進させる為には、釉の粘性を低くした方が、良い発色に成ります。

  ) 中性炎(酸化でも還元でもない中途半端な状態)では、目立たない黄色っぽい色に成ります。

  ) 高火度用の長石釉と、低火度用の鉛釉では、緑色を呈しますが、中火度用のアルカリ釉

   (ナトリウムとリチウムを含む釉)では、トルコブルー色に成ります。

  ) 銅は焼成中に、揮発し易いです。揮発量を考慮して2~3倍の量を入れる事に成ります。

    例えば、銅赤(辰砂)に必要な酸化銅は0.5%程度ですが、1.5%程度の量を入れる必要があります。

    又、揮発する事で同じ窯の中にある、他の作品を汚す場合も有りますが、ある程度距離を

    保てば、それほど心配する事はありません。

 ③ 酸化コバルトについて

以下次回に続きます。

   
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釉薬とガラス 14(染料と顔料1)

2011-11-01 22:09:04 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
3) 釉の着色剤(染料ま顔料)について。

  釉に色彩を与える着色物質を、「染料」又は「顔料」と言います。

  染料は釉の中で、完全にガラスに熔け込んだ状態になる物質で、顔料は熔け込まずに、固体のまま

  釉に浮遊している状態になる物質です。

 ① 染料になる物質

   多くは酸素を一個持つ酸化コバルトの様な一酸化物ですが、二酸化物であっても高温で分解され

   一酸化物に成るものもあります。酸化第二鉄(弁柄)や酸化マンガン、更には酸化クロムなどが

   代表的な物質です。 この着色剤の特徴は、少ない量で安定的な色が出る事と、結晶などが存在

   しない為、透明感のある釉に成る事です。

 ② 顔料になる物質

   色の付いた何らかの物質が、釉の中のガラスに熔け込まず、無数の微細粒子が独立して存在した

   状態に成っています。その為、光がこの粒子群に反射し、濁った不透明感のある色釉に成ります。

   尚、釉に溶け込まない微粒子の状態には、「結晶による物」、「顔料その物」、「コロイドによる物」

   の三通りの状態が有ります。

 ) 結晶による物

    前に「結晶」について述べた様に、過剰に添加した金属化合物が冷却と伴に、微結晶として

    析出した結果、結晶の色を発色します、析出した物質は、最初に添加した物質と同じ物です。

    結晶が表面まで埋め尽くす場合は「マット」となり、結晶に色が無い場合には「白マット」に

    発色します。

 ) 顔料微粒子の色

   市販されている顔料は、本焼焼成でも変化しない様に、調整されています。

   各種の工程を得て製作されているとの事で、御自分で調整するには、かなり難しい事と言われて

   いますので、購入した方が安全で確実な色が出ます。

   一般には、光沢の有る不透明釉に成ります。

 ) コロイドによる発色

  コロイドとは、 物質が0.1~0.001μメートル程度の微粒となって液体、 固体や気体の中に分散

  している状態で、コロイド粒子により光線が散乱され、光の通路が普通の結晶や分子よりも、

  強く輝いて見えるます。これを「チンダル現象」と呼びます。 

 a) コロイドに成り易い物質

   金、銀、銅は比較的簡単にコロイド状態に成りますが、酸化鉄などはコロイドに成り難い金属です。

   一般に、釉に使う酸化金属は、十分に擂り潰し使用しても、コロイドまで小さくなりません。

   ・ 金のコロイドについて、釉が十分熔けている状態では、無色ですが、冷却と伴にコロイドが

     析出して来ます。小さなコロイドが少しずつ成長し、大きめのコロイドに変化して行くに従い

     赤、紫、青と色が変化します。

   ・ 銅のコロイドについて、還元焼成で酸化銅は還元され、酸化第二銅に成ります。

     酸化第二銅がコロイドの大きさに成って、初めて辰砂と呼ばれる赤い色に発色します。

     コロイドの状態で無い場合には、赤色は出ません。銅の粒子がやや大きめのコロイドの場合には、

     青を含む赤色になり、小さ目の時には、黄色を含む赤に成ると言われています。

     それ故、安定した辰砂の色を出すのは、難しい事と言われています。

  b) コロイドによる呈色は、光の通過を妨げる物質が存在する為、やや失透ぎみの光沢の有る

    釉となり、表面も滑らかです。

以下次回に続きます。
 
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釉薬とガラス 13(透明と不透明釉4)

2011-10-31 21:58:08 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

 ④  乳濁釉について。

   失透釉には、「マット釉」と「乳濁釉」の二種類があります。

   「マット釉」は「艶消し釉」とも言い、今までお話した様に、釉の中や表面に微細な結晶(固体)が

    一様に存在し、釉面も光が乱反射して、光沢の無い釉となります。

   しかし、「乳濁釉」は、異なる現象によって引き起こされます。

   即ち、一つの釉の中に、二種類の違うガラス質が分離生成され、その境界面で反射角度が変わり、

   乱反射を起こします。この二種類のガラス質を作る現象を「分相」と言います。

  ) 光沢のある不透明釉です。

    釉面は平滑で光沢があります。代表的な釉として「白萩釉」や「卯のふ釉」「乳白釉」などが

    あります。釉の中には乱反射する物質が存在し、釉の表面には乱反射する物質は、存在して

    いない状態に成っています。

  ) 分相とは、釉の中に「結晶性の固体物質」や「異なる液体物質」が存在する場合、「気体物質」が

     存在する結果、釉の中で二種類以上に、ガラス質が分離した状態を言います。  

  ) 固体物質(微結晶)

    前回お話した失透剤と言われる物質の、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどは、

    「マット釉」としても、「乳濁釉」としても使われます。これらは微結晶を析出しますが、

     釉の中に留まっている限りは「乳濁釉」で、表面まで浮か上がって来ると「マット釉」に

     なります。即ち、表面は微結晶を含まないガラス質で、その下に微結晶を含むガラス質の

     二種類の違うガラスが存在すと「乳濁釉」に成ります。

  ) 液体物質(アモルファス)

    釉の原料に珪酸と燐化合物を同時に使うと、透明性のある「珪酸系のガラス」と水滴状の

    微物質を含む「燐酸系のガラス」に分離します。

    又、珪酸を多量になると、「珪酸ガラス」と「高珪酸ガラス」に分離し、異なるガラス質の

    分相を起こします。

  ) 気体物質(細かい泡)

   a) 「白萩釉」や「卯のふ釉」「藁白」「糠白」などの乳濁釉は、稲等の禾本科の植物から採った、

     藁灰(わら)や籾殻(もみがら)灰、糠(ぬか)灰などの珪酸成分の多く含む原料を

     使っています。 これらの材料を、アルカリの媒熔剤と伴に高温にすると、細かい泡(ガス)が

     大量に発生します。 この大量の泡が、表面より抜け出ない状態で、釉中に留まった結果、

     透明性が失われ乳濁します。

   b) 乳白釉の白さ加減は、釉に含まれる粒子(分散相と言う)や泡の細かい程、更に屈折率が高く、

     反射面が大きい程、白く仕上がります。又、蛍石や骨灰も白さを助けます。

3) 釉の着色剤(顔料)について。
   

以下次回に続きます。
  
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釉薬とガラス 12(透明と不透明釉3)

2011-10-30 21:41:30 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

   粘土や釉の原料に成る物質は、温度上昇に伴い、何らかの理由で、必ずガス(水蒸気等)を

   発生させます。 粘土ならば、結晶水や有機物質、硫黄成分などからガスが発生します。

   100℃で水蒸気が、窒素や塩素成分は200℃、結晶水は500℃、炭酸ガスは700℃、硫黄成分は900℃

   程度の温度で、ガスが放出されます。

   長石もガスに成る成分を含んでいますし、炭酸バリウムも1200℃位で 炭酸ガスを発生させます。

   又、釉薬などには、揮発する物質も多く入っています。 例えば、酸化ジルコニウムは950℃で、

   酸化銅は1000℃位からで、酸化クロムは1050℃、酸化ホウ素は1150℃程度から、揮発し始めます。

   それ故、釉の粘性を少なくする等で、上手にガスを逃がさないと、失透になって仕舞い勝ちです。   

 ② 結晶釉について。

   微細な結晶が釉面全体に出現する釉では、マット状に成りますが、透明感のある釉の中に、

   際立った大きさの、星型や扇型、不定型等の結晶が見られる時は、「結晶釉」と言います。

  ) 「マット」と「結晶」とは、見た目には違って見えますが、基本的には同じ現象です。

     違いは、結晶の大きさの違いです。又、「マット」が釉の全体に析出するのに対し、「結晶」は

     一部の場所に集中して析出します。

  ) 結晶を大きく成長させるには、以下のような事が必要です。
   
   a) 冷却はゆっくりさせる事: 1150~1100℃の範囲では、時間を掛けて窯を冷やします。

     その為には、壁の厚い窯か、容積の大きな窯、即ち、冷え難い窯を使うか、或いは途中で

     再点火して、窯を暖めながら冷やします。

   b) 釉の粘性を少なくする事: 結晶すべき物質が、釉の中で自由に移動出来、一箇所に集まり

     大きな結晶を作る為には、粘性が少ない方が有利です。

     その為には、釉のアルミナ成分を少なくする事です。但し、流れ易い釉に成りますので注意。

   c) 同じ釉であっても、冷却スピードが速いと「マット状」になり、遅いと「結晶」が発達します。

     更に、急激に冷却スピードが速いと同じ釉でも、結晶が生成できる間も無く、透明釉に

     成ってしまう事もあります。

  ③ もう一種類のマット釉。

   a) 前記までに述べた、「マット」になる原因は、高温で釉の中に原料が完全に熔け込み冷却時に、

     微細な結晶が析出する結果ですが、他の種類の「マット」は、高温時でも釉に熔け込まず、

     化学的にも不活発(反応しない)な物質を含む場合の「マット」です。

   b) その様な物質には、二酸化ジルコニウム、三酸化アンチモンや失透剤と呼ばれる物があります。

     失透剤としては、酸化錫(すず)や酸化チタン(ルチル)、骨灰などの燐酸化合物があります。

   c) これらの失透剤を使う場合、ムラ(斑)の無い均等な失透を作るには、アルカリ成分を

     少なくする事です。アルカリ成分は原料を熔かす働きがあり、失透剤を熔かすか可能性もある

     為です。

   d) 釉の着色剤の顔料も、釉と反応しないと言う点では、失透の役割を果たします。

     尚、着色剤については、後日お話する予定です。

 ④  乳濁釉について。

以下次回に続きます。
  
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釉薬とガラス 11(透明と不透明釉2)

2011-10-29 21:34:58 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

  釉が熔けガラス質に成った後、冷却するに従い釉の原料が化学変化を起こし、ガラス質の中に、

  生成物が発生します。この生成物がどの様な形のものかによって、透明度の質が変わります。

  大きく分けて、「マット釉(艶消し釉)」と「乳濁釉」に分かれます。

 ① マット釉(艶消し釉)について

   釉の熔け不足により、釉面が「ザラザラ」し、一見マット風に成る事がありますが、これを「マット釉」

   によるものとは、言いません。

   マット釉とは、ガラス質の中に、何らかの「固体物質」が均等に拡散し、更に釉面に細かい凹凸を

   作り、乱反射する事により、光沢をなくし透明性も無くしたものです。

   尚、何らかの「固体物質」とは、何らかの「結晶」又は、「化学的反応に不活発な物質」

   即ち、化学変化をしない物質が存在しているかの、二つの場合があります。

  ) ガラス質の冷却中に、何らかの「結晶」が発生する場合。 

    「結晶」が発生する原因は、過剰に添加された原料の仕業です。

     高温であれば、釉の中に完全に熔け込んでいる原料も、冷却と伴に過飽和状態になり、結晶の

     形で析出してきます。結晶化する原料には、以下の物質があります。

    a) アルカリ類が過剰な場合

      媒溶剤であるアルカリ類の、カルシウム、マグネシオウム、バリウム、亜鉛華等が過剰に

      成ると、結晶化が起こります。これらを総称して「アルカリ性失透」と言います。

      特に、カルシウムは「石灰質マット釉」として広く使われています。

    b) 二酸化珪酸とアルミナ成分が過剰の場合

      この両者が同時に過剰な場合にも、「ムライト」や「クリストバライト」と呼ばれる、

      微細結晶が生成され、失透します。

      両者を含むカオリンを使う事が多く、この釉を「カオリン質マット」と呼びます。

    c) 失透剤を添加して結晶化させる。

      失透剤には、二酸化チタン、二酸化錫(スズ)、二酸化ジルコニウム等が代表的な物質です。

      一般に5~10%程度加えます。これらの物質は高温時には、完全に釉に熔け込みますが、

      冷却と伴に微細な結晶として、析出し失透を起こします。

    d) 金属化合物を添加すると、結晶化が起こる場合。

      酸化コバルト等を、多量に添加した時は、容易に結晶が起き易いです。その結晶が、

      釉の全面に起きれば、失透する事に成ります。

  以上の方法は、過剰に添加した物質が、冷却と伴に結晶を発生する結果、失透に成ったもので、

  釉の表面に結晶が浮き出て、細かい凹凸の為、平滑でない釉面と成り、透明度が失われます。
 
 ② 結晶釉について。

以下次回に続きます。
  
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釉薬とガラス 10(透明と不透明釉1)

2011-10-28 21:43:16 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
今までも何度か透明釉や不透明釉について、述べて来ましたが、見方を変えてお話したいと思います。

 (但し、以前お話した事と、重複する記述まありますが、ご了承下さい。)

尚、不透明釉(失透釉)とは、具体的には一般に、マット釉、艶消し釉、乳濁釉、結晶釉の事です。

1) 透明釉について

   透明とは、下絵付けした場合、釉で邪魔されず、そのまま描いた状態が、表面から見える事です。

   どの様な状態の時に、透明に成るかは、以下に述べます。

  ① 表面(釉面)が平滑で、反射光が規則的で、乱反射がない状態に成っている必要があります。

  ② 釉に光沢がある事です。①のままでは、透明とは限りません。

  ③ 釉の中に、光を乱反射する物質が、存在しない事です。(反射光が規則正しく屈折する事です。)

  実際には、ガラス(釉)の中に、気泡が完全に無いと言う事は稀で、必ず幾分かの気泡を含みますので

  厳密には、この気泡も光を乱反射を起こしますが、見た目の透明度に多きな影響を与えません。

  ④ 釉を透明にする為には、以下の事に注意します。例え、透明釉として、調合したり市販されたり

    していても、その使用の仕方や、窯焚きの状況によっては、透明度が下がる事があります。

   ) 釉の厚みに注意: 釉を厚く掛けると、熔けたガラズ質が厚くなり、釉中のガス(気泡)が

     抜け難く成ります。その結果、透明度が下がる場合も多いです。(白く濁り易い)その為、

     透明釉は若干薄めに掛けます。

   ) 釉の原料はなるべく細かくする: 熔け易くする事と、他の原料と良く反応する為にも、

      原料を細かくする事です。施釉する際にも沈殿物を良く掻き回し、「だま」が出来ない様に

      してから、施釉する事です。

   ) 透明釉は粘度を小さくする: 釉中の気泡が抜け易い様にする事や、他の元素の結晶を

     防ぐ為には、粘性を少なくする事ですが、極端に粘性を少なくすると、釉が流れ落ちますので

     注意が必要です。粘性が少ないと、結晶化を促す働きも出てきますので、注意が必要です。

   ) ねらし時間を長くする: 焼成の最後の段階の「ねらし」(一定温度で、一定時間焼成する事)

     の時間をやや長くし、気泡の抜けた後の「あばた状」の表面を平滑にします。

     但し、「ねらし」時間が長過ぎると、釉の分解が進み過ぎて、大量のガスを発生させる場合も

     有りますので、注意が必要です。

   ) 急速に窯を冷却する事: ゆっくり冷却すると、結晶化が進み易いです。出来れば8~700℃程度

      まで早めに冷却すれば、透明度の高い作品に成ります。

    ・ 急速な冷却は、窯の大きさ(容量)や、窯の壁の厚さ等によって左右されます。

      一般には、色々な窯を用意する事は困難ですし、同時に他の釉の作品を焼く事も多い

      はずです。その場合、窯詰めの仕方で調整するのが一般的です。即ち、窯は下部の方から

      冷えてきます。 暖かい空気は上に昇り、やや冷えた空気が下に溜まる為です。

      それ故、早く冷却したい釉は窯の下部に置き、結晶釉の様な釉の掛かった作品は上部に窯詰め

      します。透明釉以外に、冷却が早い方が綺麗に仕上がる釉には、黒天目や織部釉等が

      あります。この様な、作品をまとめて、窯の下部に窯詰めすれば、現在使用している窯でも、

      十分対応が出来ます。

2) 不透明釉(失透釉)について

以下次回に続きます。    

  
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釉薬とガラス 9(釉の三要素)

2011-10-27 22:20:05 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ④ 三酸化物(中性元素、アルミナ、Al2O3)

   釉に使われる三酸化物は、アルミナのみと言って良いでしょう。ほとんどの釉に含まれています。

   アルミナは水酸化アルミニウムを、300℃で焼いて作り、非常に純度の高い物です。

   水酸化アルミニウムは、微細な為沈殿防止剤としても、使用されます。釉にも使用され、素地との

   密着を良くする働きがあります。又、アルミナ成分は、長石にも含まれています。

  a) アルミナを入れると、熔ける温度が上昇します。又、熔ける温度範囲を広げます。

  b) 量が増えるに従い、粘性が増します。その結果他の元素の結晶化を防ぎ、透明の釉に成ります。

  c) 量が増え過ぎると、逆に微細な結晶が発生し、マット状に成ってしまいます。

    この方法で、マット釉を作る方法が一般的です。

    Al2O3 : SiO2 = 1:3~6(モル比)の割合のときマット釉に成ります。

  d) 結晶釉を作る際、意図的にアルミナ成分を少なくし、釉に流動性を持たせますが、量が少な過ぎると

    釉が流れ易くなり、素地から滑り落ちてしまう場合もあります。

  e) アルミナは、固いガラス質を作りますので、機械的強度や化学的強度を増します。

  f) 釉の表面張力を増す、強力な物質ですので「ちぢれ」を起こし易いですので、適量使う様にします。

  g) 二酸化マンガンと組み合わせて、ピンク釉を作る事が出来ます。

    この釉は非常に耐火度が高く、還元炎で高火度釉として使われます。

 ⑤ 植物の灰

   東洋では古くから、植物を燃焼した後に残る灰を、多く用いていましたし、現在でも陶芸家を中心に

   盛んに使われています。と言うよりもむしろ、釉は灰から出発したとも言われています。

   灰ならどんな種類の植物であって、良いのですが、灰の種類によって各々特徴が有りますので、

   使い分ける事も多いです。種類としては、稲の藁や、籾殻(もみがら)や糠(ぬか)などの

   珪酸を多く含む物や、他に松、椿、栗(栗皮)等が代表的な樹木ですが、その他ススキなどの

   草などの灰も利用しています。 又、色々な雑木や草や葉などを燃やした、土灰(どばい)も

   多く利用します。アルカリ元素である、カリウム、ナトリウム、カルシウム等の他、マンガン、鉄、

   燐(りん)など微量な不純物が入っています。   

  a) 灰を釉として使う場合には、灰単体でも使えますが、媒熔剤として使う事が多いです。

    (灰その物はかなりの高温でないと、熔けませんが素地中の、アルミナやシリカと反応して

     灰単体でも熔ける訳です。)

  b) 同じ種類の灰であっても、採り入れる時期や場所によって、大きく違いが出ます。

     その為、釉として一定にならず、工業的(量産的)には、自然の灰ではなく、合成の灰が

     使われます。逆に、陶芸家などはその変化を期待して、使うとも言われています。

  c) 灰は大量の水で、水溶性の不純物を取り除きます。又、燃え残りの炭(残滓=ざんし)も除きます。

    水を何度も取り替え、繰り返す必要があります。

以上で「釉の三要素」の話を終わります。

次回から、透明釉と不透明釉(マット、艶消し、乳濁結晶など)について、お話します。
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釉薬とガラス 8(釉の三要素)

2011-10-26 21:11:35 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ② アルカリ土類(金属)の種類と効果

  ) ホウ素(三酸化ホウ素、B2O3): ホウ素もアルカリ元素ではありませんが、同様な働きを

    します。 他のアルカリ元素類が、酸素が1個なのに対して、3個入っています。

    ホウ酸を含む物質には、酸化ホウ酸やホウ砂(熔融ホウ砂)、メタホウ酸ナトリウム、コレモナイト、

    ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛などがあります。

    ほとんどの物質は、水溶性の為、「ホウ酸系フリット」にして使います。

    (コレモナイトは、わずかに水に溶けますが、ほとんど不溶性とみて差し支えありませんので、

     生の状態で、使用できます。)

    a) 低火度では、粘性のある安定したガラスを作ります。

    b) 高火度では、釉の熔ける温度を下げますが、粘性も下げる働きをします。

    c) 他の元素の結晶化を防ぎ、釉の透明度を増し、光沢を与えます。

    d) 釉の表面張力を弱めます。更に、機械的強度を増します。

    e) ホウ素は、問題がある釉の改善に役立てる事も多いです。

 ③ 二酸化物(酸性元素): 酸素を2個持っている物質

   ) 二酸化珪酸(シリカ、SiO2)

     二酸化珪酸は以下の物質に含まれています。

    ・ 珪石 : 一般的に使われる原料です。純度99%の物もあります。

    ・ 珪藻土(けいそうど): 水生植物の化石が軟らかい岩石に成った、白色又は灰色の粉末状の

      物で、非水溶性ですが、大量の水を吸収します。 シリカの含有量はさほど多くはありません。

    ・ 長石 : 二酸化珪酸以外に、アルカリ成分等を含んでいます。

        カリ長石(正長石、福島長石など)、ソーダ長石(釜戸長石、対州長石など)があります。

    ・ カオリン、粘土類 : カオリンの主成分は、カオリナイトで、アルミナ、珪酸(約46%)と

      結晶水(約14%)から出来ています。釉の調合には、結晶水を除いて計算します。

      カオリンは、可塑性がある為、釉が素地に付着するのを助けます。又釉の沈殿を有る程度

      押さえてくれます。粘土類もカオリン同様に使いますが、他の金属類を含んでいますので、

      色が付かない様に注意が必要です。

    ・ タルク : 二酸化珪素の他に、酸化マグネシウムが入っています。

   二酸化珪素の性質は以下の通りです。
   
    a) ガラスの本体(ボディー)を作る材料です。

    b) 釉の熔ける温度を上げる。(媒熔剤が多量にあれば、温度は下がります。)

      又、熔ける温度範囲を広げます。

    c) 機械的、化学的強度を強くします。

    d) 膨張係数(率)を小さくしますので、貫入の発生を抑えます。

  ) 三酸化ホウ素 : 本日のブログの頭書にも記述しましたが、ここでは、ガラスの生成に関与

     しますので、お話します。 この物質は使う量や他の元素との組み合わせで、ガラスの生成に

     寄与したり、逆に壊す(媒熔剤として)働きがあります。

     二酸化珪素と組み合わせ、「フリット」したホウ酸を添加すると、かなり低温から安定した

     ガラスを作ると言われています。

以下次回に続きます。


 参考資料 : 「焼き物実践ガイド」 (誠文堂新光社 樋口わかな著)
 
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