萩藩主の毛利輝元(1553 - 1625年)は当時の大茶人であり、代々の藩主も茶の湯に造詣が深く
その影響で萩焼は、茶陶(茶碗、水指など)のみを生産する窯場となっています。
江戸時代に、萩では藩の御用窯として「坂窯」、「三輪窯」が設けられ、藩主専用の器物を作ったり、
藩の産業保護の目的で設けられました。
3) 萩の茶碗を造る。
① 萩で使う土は大道土(だいどうつち)と呼ばれる、砂礫の多い白色の土です。
防府市(ほうふし)の大道(おおど)付近で採掘され、鉄分を多く含み、「パサツキ」感があり
ながら、可塑性に富み、柔らかさのある土です。
防府市は萩より遠い場所(60km離れた場所)ですが、良い土を求めて見出した土です。
この土は、花崗岩が風化した土で、粘りは少なく、耐火度が高く、1,600℃以上にならない
と完全には焼き締まらないという事です。萩焼では、その大道土を1,200度程度の低温で焼き
ますので、素地の収縮が少ない為、半焼け状態になります。
・ その他に鉄分の多い見島土や、耐火度を高める金峯土(みたけつち)(阿武郡福栄村金峯山
産)などの土に、それぞれの窯元の近くで採れる、地土を混ぜて使っています。
注: 見島(みしま)は萩市の沖合45キロメートル、日本海に浮かぶ島です。
② 萩の茶碗は高麗茶碗を写した(模倣した)形や色の物も多く、「井戸茶碗」の中にも、萩が
多く化けて紛れ込んでいるとの事で、貫入とは別の意味で、「萩の七化け」とも言われています
③ 萩焼には、古典的な古萩(こはぎ)、淡い紅色に仕上がる紅萩(べにはぎ)、胎土に小石や
小砂混ぜて荒々しく仕上げた、鬼萩(おにはぎ)などがあります。
) 古萩は、高麗茶碗(井戸茶碗など)をモデルとした茶碗で、江戸前期に人気を博した焼き物
です。
) 紅萩は、大道土が使われる以前から使われていた、鉄分の多い小畑土(萩の小畑で採れる
土)を使い、白い釉を掛ける事により、 紅色を出しています。
土の調合と、焼成のバランスによって微妙に変化します。
) 鬼萩は、見島土に荒ら砂や小石を混ぜ、成形後に白化粧掛けを行い、素焼き後に藁灰釉
(わらばいゆ)を掛けて、酸化焼成した作品です。
砂や小石を入れる割合によって、荒々しさの度合いが変わります。
・ 人間国宝の三輪寿雪(11代三輪休雪、1910~2012年)氏によって、新たに作りだされた
萩茶碗です。
④ 伝統的な茶碗と、切り高台(削り高台)、十字高台、割高台
萩焼の茶碗には三島手・粉引手・刷毛目・伊羅保などの朝鮮半島の陶器の風合いを持つ
高麗茶碗の強い影響があり、切り高台や割り高台などの特徴を持っています。
・ 十字高台は、高台の輪の一部を切り取った割高台と異なり、平たく丸く削り出した高台に
十文字の溝を切り、四分割した高台です。
以下次回に続きます。