私の戦後追想

2012-07-20 08:17:48 | 日記

澁澤龍彦著  河出文庫

澁澤龍彦のエッセイを初めて読んだ。というのも、私にとっては澁澤龍彦は『マルキ・ド・サド選集』に始まり、<サド裁判>で完結していたからだ。だから、前回紹介した澁澤夫人の『澁澤龍彦との旅』を読んで彼の素顔の一端を初めて知ったような訳で、その流れの中で本書を読んだ次第。
それにしても、昭和3年生まれというのは微妙な歳のようだ。旧制中学に入学したのが昭和16年、太平洋戦争が勃発。旧制浦和高等学校を入学した年に敗戦。つまり12歳から17歳という多感な時期がずっと戦中だったことになる。当然、兵役には就いていない。しかし、著者によれば当時の彼等は日本が負けることは想定内であったという(ただし、今の高校生と当時の旧制の高等学校生とはレベルが全く違う)。
著者は、戦後の民主主義やマルクス主義に溺れる事はなかったと回想している。つまり、醒めていた? どうも、根本にあるこの思想が、どこか他人事のような観察者の文節に表れているように思われる。


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