ヤノマミ

2011-07-08 16:20:40 | 日記
国分 拓著   NHK出版刊

「ヤノマミ」と聞いてすぐ分かる人は、そう多くはないはずだ。ブラジルとベネズエラにまたがる奥アマゾンで、一万年にわたり独自の文化と風習を守って生きている未開民族の人達を指す。とは言っても、今も「未開」で居られる筈もなく、最低の文明との接触はある。事実、一部のヤノマミの人達はブラジルの都市に出て、それなりに順応しているそうだ。著者が150日間に及ぶ長期共同生活をおくった人達はそうではなく、かなり原始的な昔からの生活、生き方を維持している人達だった。
しかし、共同生活とは言っても生易しいものではなかったらしい。なにしろ、生活原理がまるで違うのだ。誕生、生、死。そのひとつひとつが、現代人には理解できないものだったらしい。著者は帰国してからしばらくは、かなりのカルチャーショックに罹ったことでもわかるだろう。
人はどう生きたら幸せなのだろうか。いや、そもそも幸せとか不幸がどれほどの意味を持っているのだろうか。まして、人はこう生きるべきだ、と押し付けていいものなのだろうか。しかし、最低の接触とは言っても文明との関わりを持ってしまった(決して彼等が望んことではないが)以上、今のままで生きていくことは叶わないだろう。それが、正しいと思ったらただの思い上がりだ。
わずか300ページの本だが、一行一行がとても重かった。しばらくは、文化、文明に関係する本は読めないかも……。

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