オリガ・モリソヴナの反語法  読み返した本・1

2011-01-13 14:55:10 | 日記
米原万理著 集英社文庫
3度目である。おそらく近代ロシア・ソ連を舞台にこれだけダイナミックに書かれた小説はないのではなかろうか。著者は1950年生まれ、惜しくも2006年に亡くなってしまったが、この人がもう少し長生きしてくれていたら、もう一冊傑作を読むことが出来のではないかと思うと残念でならない。
著者はロシア語通訳者であり、ロシア語通訳協会の会長も勤めた人だが、59年から64年までチェコのプラハ・ソビエト学校で本格的なロシア語で教育を受けた人でもある。
三度読んだのには理由がある。背景を確かめるために関係資料漁っていたからだ。それにしてもソ連の社会主義、その後のロシアというものの複雑さには驚かされる。それを歴史的記述ではなく、そこに生きた個人を主人公に小説にしたところに凄さがある。
最近、ストーリーを追うあまり説明や講釈、データを並べ立てる小説が多く、描写力のないものが目立つが、本書にはその心配がない。
ところで、タイトルにある「反語法」であるが、実に歯切れのいい日本語で書かれているのだが、これは読み手の役得というものなのでここではあえて書かない。
 

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