探検家、36歳の憂鬱

2012-08-03 15:11:53 | 日記

角幡唯介著  文藝春秋刊

著者の本はこれまで二冊読んだ。それは紛れもなく探検というジャンルの本だった。そして、今度はエッセイ。
著者の言うように、探検家とライターという内的対立は難しいというのはよく分かる。書き手としては、どこかにクライマックスを創りたいものだろう。そして、それを意識した途端、探険家はライターに変身してしまう。旅行記で「ここに感激した」という文章を読んで、後から追体験した人が「そんなこと全然なかった」とがっかりするのに似ている。つまり、ノンフィクションがノンフィクションでなくなってしまう。そこを克服する書き方は、著者自身が工夫するより仕方がないのだろう。
もうひとつ。これ、エッセイだろうか? どう読んでも著者の体験がアウフヘーベンしたものとは読めない。自分の周辺を私小説的にマトメタ日記風随筆という域を出ていない。もう少し人生経験を重ねたほうがいいような気がする。少なくとも名刺の肩書きに「エッセイスト」と刷り込むのはまだ早い。まだ、著者は自分の経験を充分にエッセンス化していないように思う。それが出来た時、著者のエッセイは読み応えのあるものになるのではないか。


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