河原ノ者・非人・秀吉

2012-07-04 15:16:49 | 日記

服部英雄著  山川出版社刊

タイトルの「河原ノ者・」までは、私の好きな隆慶一郎の世界の学問的考証編として読んだ。かなり専門的だが、それなりに歴史的実態を知るという意味では面白かった。本書に流れる通底音は、被差別民の活動と役割を見直すという視点である。
その第六章に「サンカ考」がある。私の子供の頃「サンカ」という言葉は現実にあった。東京・大森にある山王神社の下の窪地に「サンカ」と言っていた集落があった。親からは「絶対行ってはいけない」と言われていたけれど、当時の子供たちの遊び場と言えば原っぱしかなかったから、子供達は違和感なく遊んでいた。親達には差別感があったのだろうが、我々にはそういう意識はなかった。確か、母親は彼らから笊や籠を買っていて「あすこのは丈夫だから」と言っていた記憶がある。多分、サンカを知っていた最後の世代かも知れない。
タイトルの後半「秀吉」だが、本書の流れに沿って秀吉の出自がであったことを証明しようとしたものである。新資料はない。前半の流れに基づいて主に地名・秀吉を囲む人たちの出身地から論を進める。
しかし、読了した限りでは、充分に証明されたとは思えない。引用されている資料や文献についても、様々な解釈があり、著者の解釈が正しいと諒解できる根拠には決定打がないような気がする。まっ、戦国時代の武士で出自がハッキリしている者の方がそもそも少数派なのだが……。
但し、秀吉=と正面きって学問的に主張したのは、本書が初めてかもしれない。