世の中ついでに生きていたい

2011-12-23 15:07:38 | 日記
古今亭志ん朝  河出文庫

彼が亡くなって十年経った。この対談集は、志ん朝の父・志ん生が亡くなった直後から、彼自身が亡くなった年の対談が収録されている。そこには真打時代から重鎮と言われた、二十八年間の月日が経っている。対談の相手は、山藤章二・金原亭馬生(実兄)・池波正太郎・池田弥三郎・結城昌治・中村勘九郎(現・勘三郎)・荻野アンナ・江国滋・中村江里子・林家こぶ平(現・正蔵)の十人。
志ん朝が落語をどう考えていたか、その軌跡が辿れる内容になっている(上手い構成だ)。その語り口が堪らない。正に東京っ子そのもの。あの端正な口座が懐かしい。
それで思い出すのが、今年鬼籍に入った談志だ。確かに落語をよく知っていたし、噺家の評価を語らせたならば一流だった。しかし、如何せん実際の口座は崩しすぎ、乱暴だし、聞き苦しいことがしばしばだった(そこが良いという人も居るのは承知の上で)。端正と言うには程遠っかった。
そして、志ん朝が語る父親の志ん生は破天荒な人と言われているが、存外律儀な人だったらしい(身内の者だから分かるのだろう)。談志は志ん生が好きだったそうだが、形ばかり真似たのであり、その本質は学ばなかったのではないか。
真っ当な噺家が居なくなって、久しい。