森 毅の置き土産  傑作選集

2011-07-20 14:45:07 | 日記
森 毅著  池内 紀編   青土社刊

森毅は好きな数学者のひとりだった。同時に対談者、エッセイストとしても忘れがたい人だった。京大教授というと、私が知っている人たちはどの人たちも型破りの人達が多いという印象がある。一般教科の先生達は良く知らないが。
森氏の根幹にあるのは大阪商人というか、京都人というか、町人という視点だったと思う。例えば、「分からない」ものは「分からない」。そこのどこが悪いか、分かったとしてそれが「なんぼになる」という視点。むしろ「分からない」という疑問をずっと抱え込むことが大事だという視点。急いで分かる必要があるのか、まして、若い時はいろいろなことに気を取られるのが当たり前。それでいいという視点。
あの独特の風貌と関西弁で話す姿に二度とお目にかかれないのが残念だ。大切なのは、その切り口の奥に潜む「人間への洞察」と「哲学」である。近頃骨のある辛口の大人が次々と冥界へ旅立って行く。残された我々は、つまらない凡人の御託を聞く羽目になりそうだ。
どうして、こうも人間が小粒になって来たのかなぁ。政治家も、企業家も、教育者も……。