世界をやりなおしても生命は生まれるか

2011-07-06 15:07:54 | 日記
長沼 毅著   朝日出版社刊

本書を読了して印象に残った点をふたつ。本書は、全体講演と(第1章)とゼミ方式(だと思う。第2~4章)で構成されているのだが、この講演とゼミに参加したのは広島大学附属福山高校の生徒達で、これはそのセッションの再録である。感心したのはこの生徒達のレベルの高さだった。
著者も言っているが、「知識と思考力はうちの大学生に負けていなく、知的好奇心は大学生以上」のレベルだったことだ。ちなみに、著者は広島大学大学院生物圏科学研究科准教授。話の内容から生物学、生化学はおろか、地学、物理学、天文学、数学に及ぶのだが、生徒達はしっかりその話について行っているのだ。私には到底理解できない数式も理解しているらしい。
第2点は、私には初耳だった「2045年問題」。生命を考える上で、どうしても避けて通れないのが人工知能なのだが、それには当然ながらコンピュータが関わる。2045問題はこれに関するもので、「ムーアの法則」によれば「コンピュータのIC(集積回路)の集積度やCPUの演算速度、メモリの容量などは18~24ヵ月ごとに倍増する」そうだ。端的に言えば、2045年頃にはコンピュータは人間の知能を超えるということ。下手をすると、人間はコンピュータの支配下にいるかもしれないのだ。私としては、その前提にコンピュータ自身がエネルギー(電力でもなんでもいいか゛)を調達できることが必要で、それはちょっと難しいと思うのだが(なにしろ電源を切れば、コンピュータは死ぬのだから)。
さて、本書の命題「生命は生まれるか」についてだが、これから読む人に失礼なので結論は書かない。問題は「生命」をどう定義するかによるのだが……。
読みでのある本。しかも、高校生を対称に書かれた本なのに……。