児玉清の「あの作家に会いたい」  人と作品をめぐる25の対話

2011-07-01 15:10:36 | 日記
PHP研究所刊

児玉清が読書家だとは仄聞していたが、彼の本を読んだのはこれが初めて。ただし、「対話」というにはあまりにダイジェストされすぎているので、些かオーバーなタイトル。インタビューのポイントは「何時、どんな動機で小説家になろうとしたのか」「小説を書く時どんなこと気を付けているか」という二つの点だった。
驚かされるのは、彼の読書量である。もちろん、インタビューアーとして対談相手の著作を読んでいるのは当然だが、作家が次々にあげる作家の著作を殆ど読んでいて、インタビューに淀みがないことだ。俳優業の傍ら、これだけの本を読破したのは、それだけで驚異だが、著者の略歴を読んで納得した。
彼は昭和九年れである。敗戦の時11歳である。この世代が、どんなに活字に飢えていたか、今の人には解るまい。「本を買う」と言えば親はどんなに生活が苦しくても、やり繰りしてお金を用立ててくれた時代である。それも儘ならない子供は本屋で立ち読みした。そして、書店の親父も黙って見逃してくれた時代に青春時代を送った人である。
それが、インタビューの端はしに表出されている。そういう背景を持ったインタビュアーが居て、成り立った対談集。できれば、ダイジェストせずに出版して欲しかった。