おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

雨の訪問者

2023-07-25 07:16:18 | 映画
「雨の訪問者」 1970年


監督 ルネ・クレマン
出演 チャールズ・ブロンソン マルレーヌ・ジョベール
   ジル・アイアランド コリンヌ・マルシャン
   ガブリエル・ティンティ ジャン・ガヴァン アニー・コルディ

ストーリー
マルセイユにほど近い海岸の町、バスからグレイのコートに赤いバッグをさげた男が降り立った。
この町を訪れる人が余りなかったから、メリーはいぶかしそうにその男を見た。
町の洋服屋で、メリーはその男を見かけたのだが、メリーをつけているような不気味さがあった。
そしてその夜、飛行機のパイロットである夫トニー不在の家でメリーはその男に襲われた。
メリーは、ショット・ガンで地下室にいる男を殺し、証拠を焼き捨て死体は海へ棄てた。
翌日、友人の結婚式で、メリーはドブスというアメリカ人と知り合った。
がっしりして、口ヒゲをたくわえた男は、「なぜあの男を殺した」といきなり聞いてきた。
だが、メリーはドブスに、自分は殺しなどやらない、と言い張った。
ドブスの目当ては殺された男のもっていた赤いバッグだった。
ドブスはアメリカの陸軍大佐で、その赤いバッグには大金がかくされていたのだ。
だが、メリーが駅でみつけた赤いバッグには金などなく、夫のトニーの写真が入っていた。
写真の裏には自分たちの住居が書かれてある。
ドブスは、金のありかをメリーに問いただすが、メリーは全く知らなかった。
トニーは、どうやらパイロットという職業をいいことにして、方々で女をつくっていたらしい。
やがて、殺された男の情婦が犯人としてあげられ、メリーは自分の車の中に金の入ったバッグを見つけた。
だが、ドブスはしつようにメリーにつきまとう。
被害者の情婦の住んでいたパリを訪れたメリーは、うさんくさい男たちに拷問されたが、かけつけたドブスに救われた。


寸評
ブロンソンが絶好調時の映画で彼の魅力がよく出ているが、どうも平板な感じがする作品だ。
出だしの雰囲気はいいんだが、その後がどうもいただけない。
メリーはレイプ犯を射殺し、警察に連絡するのを思いとどまり死体を海に捨てる。
彼女が警察への連絡をしなかったのは、世間の目を考え暴行の事実を隠したかったのか、夫との生活を守りたかったのか、彼女の動揺が伝わってこず理由がよく分からない行動に感じられる。
夫は副操縦士で稼ぎは良さそうだが、裏でヤバイことをやっていそうな雰囲気を出しながらそれは全く描かれず、夫の悪事はメリーの親友との浮気ぐらいというのもサスペンスとしては弱い。

ドブスが追っているのは殺された男と、その男が持っていた大金だと分かるが、それが判明する盛り上がりはなく、ましてやその金が一体どういった金なのかも分からないこともあって、途中からサスペンスとしては物足りなさを感じてくる。 
ドブスはメリーの口を割らせようとするが、その手段が酒を大量に飲ませるというものだから、なんだかホンワカしたムードが漂ってしまう。
サスペンス映画としてのハラハラ感がもっとあってもよかったと思うし、あきらかに説明不足という感じだし、伏線もなさ過ぎに思える。
伏線と言えるのはドブスがクルミを窓ガラスにぶつけて割れると誰かに恋しているとメリーに言うことぐらいで、最後に今迄ドブスが投げたクルミで割れなかった窓ガラスが割れることにつなげている。

観客を欺くような仕掛けは、メリーが殺した男の死体が発見され、犯人として男の情婦が誤認逮捕されることによってもたらされる。
メリーは無実の情婦を救うためにパリに飛ぶのだが、この経緯が全く説明不足で何が何やらわからない。
ドブスが救出に駆けつける事が出来たのもよく分からない。
僕の理解不足なのかと思ってしまう。
メリーがドブスの正体を知る経緯も間の抜けたもので、ドブスがドアに鍵もかけておらずメリーが簡単に入室できてしまうなんてありえない話だ。
メリーは幼い頃に母親の浮気を目撃したことがトラウマになっているようなのだが、その為に自分だけは夫婦関係を維持しようと殺人をひた隠しにしたのかもしれない。
それ以外にメリーのトラウマが描かれた理由を僕は見いだせない。
思わせぶりなコインを拾えないシーンがあるのだが、子供のころの経験が重要なエピソードになっていないのは脚本が悪いのか。
最後に母親がメリーにメランコリーと父がつけた名前を呼ぶことにつなげるためだったとしたら、ちょっと寂しい演出ではないかと思う。
ブロンソンは男性ファンが多かったから、男性ファンの為にマルレーヌ・ジョベールの艶めかしいシーンを用意してサービスしているが、どうもメリーというキャラクターが描き切れていたとはいいがたい。
ルネ・クレマンとしては成功した演出と言えないと思うが、ブロンソンの雰囲気だけは描き出していた。
フランシス・レイの音楽はいい。