「アビエイター」 2004年 アメリカ
監督 マーティン・スコセッシ
出演 レオナルド・ディカプリオ ケイト・ブランシェット
ケイト・ベッキンセイル ジュード・ロウ
アレック・ボールドウィン ジョン・C・ライリー
アラン・アルダ イアン・ホルム ダニー・ヒューストン
ストーリー
1927年、21歳の青年ハワード・ヒューズは、ハリウッドへ単身飛び込み、父の遺産をすべて注ぎ込んで航空アクション映画「地獄の天使」の製作に着手。
30年にそれが完成すると、彼は一躍ハリウッド・セレブリティの仲間入りを果たす。
まもなくハワードは、人気女優のキャサリン・ヘップバーンと恋に落ちる。
一方で、たくさんの話題の映画を世に送り出し、また飛行機会社を設立して、自ら操縦桿を握ってスピード記録を次々と更新。
人生の絶頂期を謳歌するかに見えたハワードだったが、夢にのめり込み過ぎた結果、やがてキャサリンと破局。
ハワードは次なる恋の相手に15歳の新人女優フェイス・ドマーグを選んだが、ハリウッド一の美女と讃えられるエヴァ・ガードナーとの仲に彼女が嫉妬し、ゴシップ誌の餌食となる。
そして自らデザインした偵察機のテスト飛行を行なったハワードは、墜落して炎上する大事故を起こす。
奇跡的に一命を取り止めたものの、米空軍との契約を打ち切られた開発中の巨大飛行艇、ハーキュリーズについてFBIの強制捜査が入り、精神に異常を来していく。
それでも裁判を乗り切った彼は、ハーキュリーズの完成に向けて力を注ぐ。
そして47年、いよいよハーキュリーズのテスト飛行。
結局これ一回限りとなる飛行を敢行し、ハワードは幼い日の自分のことを思い出すのだった。
寸評
アカデミー賞がすべてだとは思わないが、この作品は数多くにノミネートされながら結局、助演女優賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞の5部門受賞に終った。
作品賞を逃し(受賞はミリオン・ダラー・ベイビー)、ディカプリオの主演男優賞も話題になっていたが受賞を逃した。やむを得ないかなと言うのが正直な感想で、アカデミー賞会員の評価に納得した。僕はどうもディカプリオという俳優に魅力を感じない。彼のベビーフェイスに戸惑いを感じるのか、彼が熱演すればするほど距離をおいてしまう。こうなってはもう好き嫌いの世界だ。
それもあって、僕にはディカプリオ演じる所のハワード・ヒューズにリアリティを感じなかった。違う役者さんで撮っていたらどうなっていたのかなと思った。もっとリアリティが出せたんじゃないかと想像した。
ヒューズ社による航空会社TWAの買収や、パンナムの政治家を使った独占戦略なども、もう少し色濃く描いて欲しかったけど、そうすればハワードがボケてしまったのかな。
ハワードの描き方としては、恋に生きるハワードの姿より、強迫性障害で苦しむ彼の姿の方が迫るものがあった。
汚れが気になって、何度も手を洗う極度の潔癖症もその一つだろうし、不快な考えが頭に何度も浮かぶため、その不安を振り払おうと、同じ行動を何度もくり返してしまう彼の苦悩と、周りのものの取り繕いを興味深く見ることが出来た。彼の飛行機や映画にかける情熱、あるいは彼の恋愛遍歴を描いた伝記映画ではなくて、強迫性障害に苦しむ一人の人間を描いた映画だったのかもしれない。
ハワード・ヒューズの父親は、彼が18歳の時に死亡。そして父親が設立したヒューズ・ツール社(油井掘削機メーカー)と莫大な財産を相続。つまり、18歳で億万長者になったのだが、そのことは無視して映画は始まる。
20歳の若造が金を無駄使いして、飛行機の映画を作っているといころから映画は始まるのだが、その金の使い方と言い、やり方と言い、まさに時代の寵児で、ハリウッド全盛を感じさせるに充分な導入部で、僕はこの入り方は良かったと思う。
映画では、パンナムの傀儡議員がTWAのヒューズに公聴会で言い負けるのがかなりの時間をかけて描かれている。
その結果としてTWAは大西洋を横断する定期便を始めて就航させた筈なんだが、そのTWAもパンナムに買収され、そのパンナムも1991年に倒産している。
それぐらいの予備知識をもって映画館に足を運んだし、映画を通じてハワード・ヒューズの名前は知っていたし、登場するメイヤー氏がMGMの創設者の一人だということもわかったけれど、それでもどうもアメリカ人ほど背景が解っていないのが、僕がもうひとつ乗り切れなかった真の原因かもしれない。
これでキャサリン・ヘップバーンやエヴァ・ガードナーやジーン・ハーロウを知らなかったら、もっと入り込めなかったかもしれない。
映画ファンでよかった・・・。