おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

アフリカの女王

2023-07-23 07:37:08 | 映画
「アフリカの女王」 1951年 イギリス / アメリカ


監督 ジョン・ヒューストン
出演 ハンフリー・ボガート キャサリン・ヘプバーン
   ロバート・モーレイ ピーター・ブル
   セオドア・バイケル ウォルター・ゴテル

ストーリー
1914年、欧州で戦乱が起った頃、アフリカのドイツ領コンゴではドイツ軍が村の掠奪を行い、宣教師はそのショックで死んでしまい、彼の妹ローズ・セイヤアは天涯孤独の身となった処を、カナダ生れの飲んだくれ男チャリイ・オルナットに引き取られた。
チャリイは村々に食糧や郵便をくばる川蒸気船「アフリカの女王」号を操っていたが戦争の終るまでに仕事をやめて引こもろうと決心したが、ローズは川を下って下流の湖に碇泊しているドイツ砲艦「ルイザ」に近づき、船もろとも魚雷をぶつけて撃沈しようと言い張った。
やっとみこしをあげたチャリィは、彼女と共に川を下りはじめたが、雨が降っても彼女の居る被いの中には入れて貰えず、秘蔵のジンは川に捨てられてしまう始末だった。
やがて船はドイツ砲台の前を通過、エンジンをこわされ、やっと逃れると激流にはまって矢のように岩の間を滑り出した。
エンジンが直った時二人は思わずキスし、以後、曲ったスクリュウを一週間もかかって叩き直したり、マラリアにおかされたチャリイをローズが必死に看護したりする苦労を重ねて、ようやく湖にすべりこんだ。
二人はひそかに船に魚雷をとりつけ、夜と共に「ルイザ」に向け突進したが、波が高く寸前で転覆してしまい、沈没してしまった。
二人は「ルイザ」に捕われ、スパイとして絞首刑を宣告されたが、チャリイは執行前にローズとの結婚式をあげさせてくれと頼み、許されて二人の式が行われている時、突如「ルイザ」は大爆発を起した。


寸評
ハンフリー・ボガードとキャサリン・ヘプバーンという名優による二人芝居映画である。
「アフリカの女王」というタイトルから、キャサリン・ヘプバーンを主演にした作品かと思いきや、アフリカの女王とはハンフリー・ボガードが運転している小さな船の名前である。
しかしヘプバーンが女王様のような態度を見せるので、タイトルは両方に掛けているのかもしれない。

アフリカのコンゴを支配するドイツ軍がローズの兄が布教活動をしている村を焼き払い、兵士として村人たちを強制連行してしまう。
ショックを受けた兄は廃人のようになって死んでしまい、妹のローズはイギリス軍の進行を助けるために障害となっているドイツの軍艦を撃沈しようと決心するのだが、このお嬢さんの短絡的な発想が物語の発端となっている。
蒸気船「アフリカの女王」号を操っているオルナットは渋々付き合わされることになるのだが、命が保証されない危険極まりない行動に同調するには、オルナットが普段からローズに秘かな思いを寄せているなどの、さらなる動機づけが必要だったように思う。
荒くれ男のオルナットと淑女のローズによる川下りが始まるが、油のにおいがしてきそうな二人の薄汚れた衣装がこの運航の大変さを物語っていて、二人の演技と相まって作品全体の雰囲気を上手く表現できている。

異国のアフリカに取り残され、しかも二人きりの危険な船旅ともなれば、二人の行く末は見え透いたものだが、オルナットがローズに遠慮しながら接する様子が、武骨な割には純情な男の滑稽な態度として笑わせる。
ハンフリー・ボガードはこの作品で念願のアカデミー賞の主演男優賞を受賞したが、髭ぼうぼうのむさくるしい男を一生懸命演じている。
僕はむしろキャサリン・ヘプバーンの体を張った流石の演技に感心し、彼女あっての「アフリカの女王」だと思う。

川下りのエピソードは現地ロケのこともあって楽しめるものとなっている。
スペクタクルシーンは合成などもあるけれど、お決まりの激流を乗り切る悪戦苦闘や、滝つぼに吸い込まれるシーンなども盛り込まれてていて飽きさせない。
川に入って船を引っ張るところでは、これもお決まりともいえるヒルに襲われるというシーンもある。
現地ロケならではの群がっているワニが川に飛び込むシーンや、カバが水浴びしているシーン、猿が群れているシーンなどが挿入されてアフリカの雰囲気を引き出している。

彼らは入り組んだ川で水草の生い茂った場所に迷い込んでしまうが、二人がくたびれ果てたところでカメラが上空にパンすると湖が拡がっているシーンは感動的で、僕はこの作品中で一番感激した。
やがて目の前にドイツ軍艦「ルイザ」が現れるが、この「ルイザ」がどれくらいスゴイ軍艦なのかがわからない。
オルナットの船に比べれば巨大だということは分かるが、装備も不明なので英国軍の侵攻をこの一隻で食い止めるだけのものとは思えない。
この作品の雰囲気でもあるのだが、艦長たちもどこかのんびりしていて喜劇的だ。
オルナットは魚雷まで作ってしまう何でも屋のスーパーマンだが、「カサブランカ」とは違うボギーを見せてくれて楽しませてくれた。