おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

流浪の月

2023-05-29 07:38:46 | 映画
「る」と「れ」を続けます。
前回は「る」が2020/7/22の「ルーム」のみでした。
「れ」は2020/7/23の「レイジング・ブル」から「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」「レインマン」「レオン」「レスラー」「レ・ミゼラブル」と、
2022/1/6の「レッド・オクトーバーを追え!」から「レナードの朝」「恋愛小説家」でした。

「流浪の月」 2022年 日本


監督 李相日
出演 広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 白鳥玉季 多部未華子 趣里
   三浦貴大 増田光桜 内田也哉子 柄本明

ストーリー
10歳の少女・更紗は、引き取られた伯母の家に帰ることを躊躇い、雨の公園で孤独に時間を持て余していた。
そこに現れた孤独な大学生の文は、少女の事情を察して彼女を自宅に招き入れる。
更紗は文の家でようやく心安らかな時を過ごし、初めて自分の居場所を手にした喜びを実感する。
しかし2ヵ月後、文は誘拐犯として逮捕され、2人の束の間の幸せは終わりをつげる。
15年後、恋人の亮と同棲生活を送っていた更紗は、カフェを営む文を偶然見かける。
事件のせいで辛い日々を送ってきたであろう文のことが、どうしても気になってしまう更紗だったが…。


寸評
マイノリティはなかなか理解してもらえない存在だと思うし、偏見や差別に苦しんでいるのだろうなと想像する。
そう思うこともマジョリティの偏見なのかもしれない。
一度押された烙印はなかなか消すことができない。
ましてや文の場合は間違った烙印なのだ。
LGBTを扱った作品が撮られるようになってきたが、本作はロリコンを取り上げている。
マイノリティである文は大人の女性を愛せないだけで、少女に悪戯をするような男ではない。
なんとか大人の女性を愛せるようにと、あゆみと付き合っているが性交渉はない。
あゆみが文の事実を知り問い詰める場面は辛いものがある。
文は「大人の女性を愛せるか試したかった、ゴメン」と告げるが、あゆみは「そのために私としなかったのね」と確認する。
そうだと答える文の元を去るあゆみは痛い気だ。
更紗が大人の女性と幸せになれてよかったと喜んで去っていった姿と対照的である。

週刊誌は今の二人をセンセーショナルに取り上げる。
ネットでは誹謗中傷する書き込みが行われる。
事実を告げようとする姿勢など微塵もない。
事件当時に更紗は可哀そうな少女として報じられたのだろう。
しかし実際の更紗は幸せな時間を過ごしていて、私は可哀そうではないと更紗は言う。
更紗の恋人である亮は逃げ場のない女性を選んで付き合っている男である。
幼児体験がある更紗は我慢して亮の求めに応じている。
亮から暴力を受けて更紗は彼と別れるが、そうでなくても我慢しての生活など長続きするはずがない。

文の母親は自分の子供をハズレと思っていて、文の存在を恥じているようだ。
文は寡黙で表情も暗い。
しかし、預かった梨花と戯れた時に唯一の笑顔を見せる。
この時の笑顔、少女だった更紗の唇に触れた時の親指、文の心の動きが感じ取れるシーンだ。
更紗は性行為をしたくない女性で、文は性行為が出来ない男性である。
二人は好奇の目がない土地へ二人して流れていくのだろう。
それもまた愛し合う男女の姿である。