おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ライク・サムワン・イン・ラブ

2023-05-20 08:31:12 | 映画
「ら」は
2020/6/28の「ライトスタッフ」から「ライフ・イズ・ビューティフル」「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」「ライムライト」「羅生門」「ラストエンペラー」「ラスト・オブ・モヒカン」「ラスト、コーション」「ラスト・ショー」「ラヂオの時間」「ラブホテル」「Love Letter」「ラ・ラ・ランド」「乱」と続きました。
2回目は2021/12/29の「ラウンド・ミッドナイト」から「楽園」「ラストレター」の3作品だけでした。


「ライク・サムワン・イン・ラブ」 2012年 日本 / フランス


監督 アッバス・キアロスタミ        
出演 奥野匡 高梨臨 加瀬亮 でんでん    森レイ子
   大堀こういち 辰巳智秋 岸博之 春日井静奈 窪田かね子

ストーリー
大学で社会学の教授をしていたタカシは、現役を引退し、80歳を超えた今では孤独の中に生きていた。
ひとときでも家庭のぬくもりを味わいたいと考え、デートクラブを通して亡き妻にも似た女子大生の明子を家に呼ぶ。
タカシは食卓に桜エビのスープとシャンパングラスをしつらえるが、タカシが用意した食事に見向きもしない明子は彼女に会いに田舎から出てきた祖母と会わずに駅に置き去りにしてきたことが心に引っかかっていた。
翌日、タカシが明子を大学まで車で送ると、そこに明子の婚約者だというノリアキが現れる。
タカシを明子の祖父だと勘違いするノリアキ。
明子とノリアキが、タカシを激しく動揺させることになる…。


寸評
イランのアッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に日本人キャストとスタッフで撮った映画とあって何ともいえない独特の世界を持った映画だ。
映画は大した出来事も起きず、ちょっとした出来事を淡々と描いているだけなのに、自然と画面に吸い込まれていて、いつの間にか映画が終わったというような不思議な映画だ。

前半は老人のタカシとデリヘル嬢の明子との会話が中心で、後半部分はタカシと明子の婚約者だというノリアキの会話が中心となる。
その会話の中身はアジテーション的なものではなく、ごく普通の世代間のかみあわない会話で深く何かを追及しているわけではない。
その間に都会の情景が写し込まれ、明子の祖母の留守電の声が流れたりする。
祖母の話し方とか、タカシの隣人の話し方とかも相まって、どこかドキュメンタリー風でもある。
もしかすると、これはアッバス・キアロスタミが見た今の日本に対する社会、風俗を含めた印象の縮図なのかもしれない。

老人は優しさを持っているが、淋しさを金で買うという他人に迷惑をかけるわけではないがある種の身勝手さを持っている。
明子はバイト感覚なのだろうが、何をやっているんだこの娘(こ)はと思わせる。
その婚約者を自称するノリアキはストーカー的でありながら、案外といい奴じゃないかと思わせる。
反面、切れるところがあって大暴走を引き起こす。
断片の数々は都会の孤独、老人の寂しさ、恋愛における挫折、人と人とのつながりなどを考えさせるが、そのことを描こうとしているとは思えない。
それだけに最後のエピソードがインパクトを持った。
現実社会でもよくある話の様な気がしたし、予測不可能が人生だと言っているようでもあった。
CGを駆使したドンパチ作品も映画なら、こんな作品も映画なのだと思わせた一遍だった。