おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

モンゴル

2023-05-02 07:28:08 | 映画
「モンゴル」 2007年 ドイツ / カザフスタン / ロシア / モンゴル


監督 セルゲイ・ボドロフ
出演 浅野忠信 スン・ホンレイ アマデュ・ママダコフ
   クーラン・チュラン

ストーリー
12世紀のモンゴル。一部族の頭領イェスゲイの息子テムジンが誕生する。
テムジンは9歳のとき、敵対するメルキト部族から花嫁を選び友好関係を結ぶため父イェスゲイと旅に出る。
しかし途中立ち寄った村で、テムジンは少女ボルテを許婚として選ぶ。
帰路、イェスゲイは敵対するタタール部族に毒殺される。
父を失ったテムジンは、頭領の座を狙うタルグタイの裏切りにより、家財を奪われ命を狙われる。
テムジンは凍てつく池に落ちるが、たくましい少年ジャムカに救われ、2人は兄弟の契りを交わす。
タルグタイの手を逃れ成長したテムジンは、許婚ボルテを迎えに行くがメルキト部族騎馬軍団の奇襲に遭い、弓矢に貫かれたテムジンを守るため、ボルテは自らメルキト部族に身を投じる。
翌年テムジンは、多くの戦士を抱えるジャムカと共にメルキト部族に攻め入る。
ボルテはメルキト部族の子供を宿していたが、テムジンは我が子として慈しむ。
テムジンの寛大な精神はジャムカの戦士たちを惹きつけ、テムジンに付いていく者が出始めた。
ジャムカはテムジンを討つ覚悟を決め、タルグタイも彼に合流する。
テムジンは家族を逃がし、数で劣勢な戦いに挑むが捕らえられてしまう。
テムジンは部下たちと共に奴隷として売られ、中国西北部タングート族の地で投獄される。
数年後、ボルテの身を挺した尽力によってテムジンは生還。
ジャムカの大軍との決戦を控えた彼のもとには、最強の戦士たちが集まるのであった。


寸評
チンギス・ハーンは歴史上における英雄の一人であることは間違いないと思うが、この映画ではまだテムジンと名乗っていた時代を描いている。
テムジン少年が父を殺され、妻を奪われ、親友との戦いに敗れ、奴隷として売り飛ばされるという情けない時代を描いており、単なる英雄潭にはなっていなくて、監禁されながらも、どうやって脱出して英雄チンギス・ハーンに成り上がったのかを描いている。

歴史上の英雄を描いた作品においては、僕たちはその人の活躍をほとんどの場合少なからず知っている。
映画の中においては史実に付け加えるように、おそらくこのようなことをしたであろうとか、このようなことを言ったのではないかとの想像の下に、時には架空の人物を登場させたりして主人公を際立たせていくことが多い。
チンギス・ハーンにちょっとでも詳しい人なら、幼名をテムジンと言い、イェスゲイの子供でボルテを妻にしたことを知っている。
ボルテは略奪されるがテムジンが救い出し、友人のジャムカと雌雄を決したことも知っているかもしれない。
そのようなことを押さえながら、テムジンが投獄されたり、テムジンとボルテをつなぐ僧侶が登場したり、テムジンに好意的な敵側の人物がいたりと自由な解釈を加えて、詳しくわかっていない時代の話を展開している。
それがモンゴルの美しい自然の中で描かれ、山や岩肌、川や湖、杉林や雪原など、美し過ぎると言っても過言でない映像が提供される。

僕は見ていて英雄チンギス・ハーン誕生前の物語というよりも、モンゴル人とはこのような人種なのだと訴えているモンゴル賛歌の映画のような気がした。
モンゴル人は女・子供は殺さない。
敵に襲われて勝ち目がない時には、家族を捨てて逃げても非難されることはない。
妻と言えども負ければ相手の言いなりとなり、他部族の子供を産んだとしてもまた元通りになれる。
ハーンを裏切ることをしないが、自分のハーンは自分で選ぶことが出来るなどである。
テムジンはある時にはモンゴルの掟に忠実であるが、時には他のモンゴル人とは違った行動をとる。
兵に対しては平等だし、ボルテ一人をどこまでも愛しているし、家族を見捨てるようなことはしないのだ。
そのような人物だったから、彼のもとに多くのモンゴル部族が結集しモンゴル帝国と言う強大な帝国を築き上げることができたのだろう。
もっとも彼一人の魅力だけであれだけの広範囲にわたる帝国が成立したわけではなく、遊牧民族の為に騎馬兵の機動力は優れており、当時の最新鋭の武器をもっていた事が大きかったらしい。

テムジンを日本人俳優の浅野忠信が演じていたので最後まで見ることができたが、これが知らない俳優だったら途中で投げ出していたかもしれない。
映画としてはドラマ的な盛り上がりに欠ける演出だし、描かれている場面と次の場面が飛び過ぎているところがあり、その演出方法が決まっているとは言い難いのが難点だったように思うし、いささか観念的なところもあって、それが上手くはまり込んでいるようには感じなかった。
しかし、澤井信一郎監督、反町隆史主演で撮った「蒼き狼 〜地果て海尽きるまで〜」よりは断然いい。