おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ドライヴ

2021-07-26 07:10:20 | 映画
「ドライヴ」 2011年 アメリカ


監督 ニコラス・ウィンディング・レフン
出演 ライアン・ゴズリング
   キャリー・マリガン
   ブライアン・クランストン
   クリスティナ・ヘンドリックス
   ロン・パールマン
   オスカー・アイザック

ストーリー
天才的なドライビングテクニックを持つ寡黙な“ドライバー”(ライアン・ゴズリング)は、昼は映画のカースタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手というふたつの顔を持っていた。
家族も友人もいない孤独なドライバーは、ある晩、同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と偶然エレベーターで乗り合わせ、一目で恋に落ちる。
不器用ながらも次第に距離を縮めていくふたりだったが、ある日、アイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が服役を終え戻ってくる。
その後、本心から更生を誓う夫を見たアイリーンは、ドライバーに心を残しながらも家族を守る選択をするのだった。
しかし、服役中の用心棒代として多額の借金を負ったスタンダードは、妻子の命を盾に強盗を強要されていた。
そんな中、絶体絶命のスタンダードに助けを求められたドライバーは、無償で彼のアシストを引き受ける。
計画当日、質屋から首尾よく金を奪還したスタンダードだったが、逃走寸前で撃ち殺され、ドライバーも九死に一生を得る。
何者かによって自分たちが嵌められたことを知ったドライバーは、手元に残された100万ドルを手に黒幕解明に動き出す。
だが、ドライバーを消し去ろうとする魔の手は、すでに彼の周囲の人間にも伸びていた……。


寸評
アメリカ映画の犯罪映画といえば、どうしても派手なアクション映画になりがちだが、この映画はフレンチノワールかと思わせる、クールでスタイリッシュな作品となっている。
映画のオープニングはいきなりの強盗シーンなのだが、犯行そのものは映さず犯人たちの逃走をサポートする主人公に焦点を当てて彼の姿を抑制的に描写する。
彼は「5分間はどんなことがあっても待つが、それ以上は待たない]と伝えている。
オープニングでのやりとりや、事件後の逃走劇でスゴ腕であることが分かるが、同時に超がつくプロというわけでもなく、どこか庶民的なものを持った主人公だ。
カーチェイスなどもあるけれど派手さはないので、よくあるギャング映画と一線を画していた。
さらに、主人公の背景などの説明は一切なく、彼のセリフを必要最小限に止め、当初は表情もあまり変化しない主人公を見せることでこの映画の雰囲気を決定づけていた。
爪楊枝をくわえた寡黙な主人公は時代劇の木枯し紋次郎のようでもある。
ボーン・シリーズやミッション・インポシブルシリーズもいいけれど、僕はどちらかというとこの様な雰囲気の映画の方が好きだ。

修理工でもある主人公がアイリーンの車の故障で親しくなるプロセスも、余計な会話を省きながら進展させている。車をぶっ飛ばして小川で初めてデートした時は、眠った子供をベッドに運び込むまで会話はない。
親しくなっていく自然な流れに青春映画の雰囲気があり思わずニッコリと微笑んでしまう。
そういう前提があるので、追い詰められた物静かな男が豹変する場面はドキリとする。
質屋強盗をやった後で首謀者達に襲われた場面は初めてのバイオレンスシーンで、それまでの静けさが一変する。そして、愛する女性を守る為とは言え、"容疑者X"の如き献身的な愛を捧げる男が彼女の前で見せる凶暴さに、アイリーンが愕然とするシーンが秀逸だった。
青春映画の様なアイリーンとのデートシーンなどによる純愛路線から一挙にサスペンスに持ち込む区切りとしていて、出会ったのもエレベーターなら別れもエレベーターと設定を作り出していたと思う。
最後の相手を殺すシーンはそれまでの派手なシーンとは違って、コンクリートに写る影でもって描いていて、直接の殺人シーンはない。静かに物事が終わったと言っているようだ。

奪った金の処理は良かったと思うのだが、敵対する相手がとてつもない巨大な組織と思えず、主犯をあっさりやっつけてしまえば終わりじゃないのかと感じたのは天の邪鬼なのだろうか?
悪人づらはしているのだが、ドライバーが立ち向かって行っても、とてもかなわない相手には見えなかった。
その辺がこの作品のもうちょっとという部分かな?

寡黙なドライバーを演じた主人公のライアン・ゴズリングもよかったが、人妻役のキャリー・マリガンの哀愁を感じさせる演技が作品を引き立てていたと思う。
ショッキングピンクのクレジットタイトルと、語学に堪能でない私は歌詞の内容はわからなかったけれど、聞こえてくる歌声は良かった。