おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

逃亡者

2021-07-01 06:43:58 | 映画
「逃亡者」 1993年 アメリカ


監督 アンドリュー・デイヴィス
出演 ハリソン・フォード
   トミー・リー・ジョーンズ
   ジュリアン・ムーア
   ジェローン・クラッペ
   ジョー・パントリアーノ
   アンドレアス・カツラス

ストーリー
シカゴの著名な外科医リチャード・キンブル博士(ハリソン・フォード)は、富と名声に恵まれた順風満帆の人生を送っていた。
ある夜緊急手術を終えて帰宅してみると、家から見知らぬ片腕の男が飛び出して行き、中では妻ヘレン(セーラ・ウォード)が瀕死の状態で倒れていた。
そして間もなく彼女は息を引き取り、キンブルはその容疑者として逮捕されてしまう。
片腕の男(アンドレアス・カツラス)を見たというキンブルの主張も空しく、次々と不利な状況証拠を突きつけられたこともあって死刑判決が下った。
州立刑務所へ身柄を移送される途中護送車が列車と衝突する事故が起き、かろうじて助かったキンブルはその場から脱出した。
こうして身の潔白を証明するために片腕の男を探し求めるキンブルの逃走の旅が始まった。
一方キンブルの逃走を察知した官憲は、ジェラード連邦保安官補(トミー・リー・ジョーンズ)を捜査の最前線に配置して、キンブルを追跡する。
やがて、キンブルはシカゴに戻り、元同僚のアン・イーストマン医師(ジュリアン・ムーア)の協力で、病院の中にある義手を持つ人のリストを調べあげ、遂に片腕の男の居所をつきとめたのだが…。


寸評
僕が中学生だった頃だから1960年代前半に吹き替えでテレビ放送されて人気を博していた番組の一つに「逃亡者」があって、リチャード・キンブルはデビッド・ジャンセンが演じていた。
ジェラード警部のバリー・モースは数回に1度程度の登場だったが、視聴者には人気のキャラクターだった。
テレビではキンブルが逃亡を繰り返す先々で引き起こす周囲の人とのトラブルや、医師としてのヒューマン行為を描くことがメインだったような気がする。
毎回どうなるのかというミステリー感もあって、翌日登校した時にはクラスで話題となるほどの人気番組だった。

映画ではクレジット・タイトルと共に事件の概要が描かれる。
キンブルは妻殺しの犯人として死刑の判決を受けるが、観客の誰もが彼を犯人だとは思っていない。
追跡者側としてトミー・リー・ジョーンズが切れ者ながら仲間に対しても非情で、逃亡犯を追う職務を楽しんでいるようなジェラード連邦保安官をかっこよく演じていて、主演はハリソン・フォードではなくトミー・リー・ジョーンズではないかと思わせる存在感だ。
(トミー・リー・ジョーンズは第66回アカデミー賞で、本作により助演男優賞を受賞している)
先ずシカゴ市警と連邦保安官側の縄張り争いが描かれるが、連邦保安官側は市警側の主張をあっさりと覆してしまい、護送車に乗車していた警官の証言の嘘も見抜き、僕たちにはジェラードはやり手の保安官なのだということも知らされる。
ジェラード連邦保安官の指示は的確でテキパキとしており、追跡劇はなかなかテンポが良い。

「何処へ行こうと勝手だが俺についてくるな」と言って逃げた男はどうなったのかと思っていたら、思わぬ形で再登場し、ここでジェラードの非情さが描かれているのだが、ダーティ・ハリーのように浮いた存在ではなさそうだ。
ジェラードには一見理不尽な命令であっても上司を信頼し行動を共にするコズモのような部下がいるし、プールという優秀そうなな黒人女性の部下もいる。
彼等のきびきびした動きは緊迫感を上手い具合に生み出している。
前述のもう一人の逃亡犯のエピソードとか、キンブルが潜んでいるアパートに警官隊が押し寄せてくるエピソードとかを入れ、観客を楽しませる工夫もされている。

後半では逃亡劇に加えて真犯人の男を探し出すサスペンスが描かれるようになる。
その為にキンブルは身分を詐称したりして施設に潜り込む。
病院では医者として瀕死の少年にを的確な処置を指示し助けるのだが、クック郡病院に勤務する若き女医さんとの描き方は少々淡白だ。
この場面に限らず、終盤の描き方は結末を急いでいるような感じがして、最後に肩透かしを食らったような気分が湧いてきてしまうのは、ここまで引っ張ってきたのだから残念な気がする。
キンブルが犯人とされる原因となった、奥さんが電話口で”リチャード”と夫の名前をつぶやいた理由をもう少し丁寧に描くなど工夫は出来たのではないか。
真犯人が判明するプロセスも、もう少し劇的に描けたはずだ。
多少の不満は残るが、追跡劇としては及第点の出来栄えとなっている作品だと思う。