「トラ・トラ・トラ!」 1970年 アメリカ / 日本
監督 リチャード・フライシャー
舛田利雄 深作欣二
出演 マーティン・バルサム 山村聡
ジェイソン・ロバーズ
ジョセフ・コットン
三橋達也 東野英治朗 田村高廣
ジェームズ・ホイットモア
E・G・マーシャル
ストーリー
1939年9月1日、山本五十六中将の連合艦隊司令長官の就任式が、瀬戸内海に停泊中の「長門」艦上でおこなわれたが、それから1週間とたたないうちに、時の首相近衛公爵が閣議を開き、アメリカの日本に対する経済封鎖を討議したところ陸相東条英機はアメリカへの攻撃を進言。
41年1月24日、ワシントンの海軍情報部は日本の暗号無電を解読し、事態の容易ならないことを察知した。
そして、ルーズベルト大統領は新たにキンメル提督を太平洋艦隊司令長官に任命し、日本の動勢に備えた。
そのころ真珠湾では、航空隊のベリンジャー中将が、キンメルに日本の真珠湾攻撃の可能性を説いていた。
41年4月24日、野村駐米大使はハル国務長官と、緊迫した両国の関係を打開しようとしたが、ハルゼイ中将等、海軍側の強硬意見にあい、実を結ばなかった。
41年10月、東条英機が陸相兼首相となり、軍部の権力は頂点に達した。
一方、アメリカ側の情報部は、真珠湾攻撃の決行日を想定し、スチムソン陸軍長官は大統領にそれを伝えることを約し、またマーシャル大将もハワイのショート将軍やキンメル提督に警告を発していた。
12月2日、ハワイへ向け進航中の、南雲司令官の第一航空艦隊は、山本長官から「ニイタカヤマノボレ」という暗号を電受し、いよいよ真珠湾攻撃の時が来た。
12月8日未明、遂に南雲中将の率いる機動部隊は、オアフ島北方から真珠湾に迫り、午前7時57分、淵田少佐を先頭とする戦隊が、空から敵地へ突っこんで行った。
真珠湾攻撃は見事な成功をおさめ、「赤城」からは、作戦成功を伝える暗号が打電されていた。
「トラ・トラ・トラ!」
寸評
日本軍による真珠湾攻撃の全容を、日米合作で映画化した大作だ。
当初、日本側監督には黒澤明が予定されていたが途中降板した。
どうやら黒澤は山本五十六を描きたかったらしい。
幻の“フライシャー=黒澤”作品に思いを馳せたくなる。
全体を通して真珠湾攻撃にいたる日米両国の動きとその立場を公平に描こうという意識は感じられる。
真珠湾奇襲を防ぐことができなかった原因をワシントンの政府上層部の責任として描いていて、大統領をも情報共有から除外したワシントンの隠蔽体質を描いている。
開戦前の米国側の危機管理の甘さも強調されている。
米国側のこのような描かれ方が、日本人からすれば公平だと映るのかもしれない。
ただし全体的な緊迫感には欠けるきらいが有り、長尺である割にアクションシーンが最後だけであるため退屈でもある。
善悪が単純に描かれていて、山本五十六の善に対して、東条英機は悪であり、源田実は優秀で、南雲忠一はダメと言った具合。
ちょっと単純すぎないか?
日米双方を断片的に描くので前半は間延びしている印象を受けるが、後半の戦闘シーンになるとテンションは一気に上がる。
巨費を投じて再現した真珠湾攻撃の模様は、まさにハリウッドの力を見せつけ圧巻。
実際に多くの偽装ゼロ戦を編隊飛行させ、低空から雷撃させることで、標的になった側からゼロ戦がどのように見えていたのかが分かるアングルがこの上なくリアルだ。
離陸途中に撃墜される戦闘機を始め、多くの航空機を爆発・炎上させていて、その業火から逃げる米兵役者の恐れもリアルに伝わって来る。
開戦当時は世界一と言われていた日本の海軍航空隊の操縦技術の高さを、合作とは言えアメリカ側が自国パイロットを使って再現したことは驚きで、今だとCG処理ですませるところだ。
攻撃機が未明に空母から飛び立っていくシーンは絵画的でたまらなく美しい。
朝焼けの中をシルエット敵の飛び立つ戦闘機が次々映し出され、やがて徐々に白んできた中を飛び立つ爆撃機が描かれる。
時間経過もあらわし、この映画一番のシーンに感じた。
渥美清と松山英太郎演じる炊事兵のやりとりは「男はつらいよ」シリーズにおける寅さんを髣髴させる作品中唯一の滑稽シーンで記憶に残る。
オープニング・タイトルの映像も美しく、観客を一気に作品に引きこむ役割を十分にこなしていた。
ラストは最後通牒の遅れによりアメリカ国民を怒らせてしまったとの述懐で終わるが、戦争責任は誰にあったのかは不明のままである。
でもまあ告発映画ではないのだし、真珠湾爆撃シーンとしては一番の地位を有する作品だとは思う。
監督 リチャード・フライシャー
舛田利雄 深作欣二
出演 マーティン・バルサム 山村聡
ジェイソン・ロバーズ
ジョセフ・コットン
三橋達也 東野英治朗 田村高廣
ジェームズ・ホイットモア
E・G・マーシャル
ストーリー
1939年9月1日、山本五十六中将の連合艦隊司令長官の就任式が、瀬戸内海に停泊中の「長門」艦上でおこなわれたが、それから1週間とたたないうちに、時の首相近衛公爵が閣議を開き、アメリカの日本に対する経済封鎖を討議したところ陸相東条英機はアメリカへの攻撃を進言。
41年1月24日、ワシントンの海軍情報部は日本の暗号無電を解読し、事態の容易ならないことを察知した。
そして、ルーズベルト大統領は新たにキンメル提督を太平洋艦隊司令長官に任命し、日本の動勢に備えた。
そのころ真珠湾では、航空隊のベリンジャー中将が、キンメルに日本の真珠湾攻撃の可能性を説いていた。
41年4月24日、野村駐米大使はハル国務長官と、緊迫した両国の関係を打開しようとしたが、ハルゼイ中将等、海軍側の強硬意見にあい、実を結ばなかった。
41年10月、東条英機が陸相兼首相となり、軍部の権力は頂点に達した。
一方、アメリカ側の情報部は、真珠湾攻撃の決行日を想定し、スチムソン陸軍長官は大統領にそれを伝えることを約し、またマーシャル大将もハワイのショート将軍やキンメル提督に警告を発していた。
12月2日、ハワイへ向け進航中の、南雲司令官の第一航空艦隊は、山本長官から「ニイタカヤマノボレ」という暗号を電受し、いよいよ真珠湾攻撃の時が来た。
12月8日未明、遂に南雲中将の率いる機動部隊は、オアフ島北方から真珠湾に迫り、午前7時57分、淵田少佐を先頭とする戦隊が、空から敵地へ突っこんで行った。
真珠湾攻撃は見事な成功をおさめ、「赤城」からは、作戦成功を伝える暗号が打電されていた。
「トラ・トラ・トラ!」
寸評
日本軍による真珠湾攻撃の全容を、日米合作で映画化した大作だ。
当初、日本側監督には黒澤明が予定されていたが途中降板した。
どうやら黒澤は山本五十六を描きたかったらしい。
幻の“フライシャー=黒澤”作品に思いを馳せたくなる。
全体を通して真珠湾攻撃にいたる日米両国の動きとその立場を公平に描こうという意識は感じられる。
真珠湾奇襲を防ぐことができなかった原因をワシントンの政府上層部の責任として描いていて、大統領をも情報共有から除外したワシントンの隠蔽体質を描いている。
開戦前の米国側の危機管理の甘さも強調されている。
米国側のこのような描かれ方が、日本人からすれば公平だと映るのかもしれない。
ただし全体的な緊迫感には欠けるきらいが有り、長尺である割にアクションシーンが最後だけであるため退屈でもある。
善悪が単純に描かれていて、山本五十六の善に対して、東条英機は悪であり、源田実は優秀で、南雲忠一はダメと言った具合。
ちょっと単純すぎないか?
日米双方を断片的に描くので前半は間延びしている印象を受けるが、後半の戦闘シーンになるとテンションは一気に上がる。
巨費を投じて再現した真珠湾攻撃の模様は、まさにハリウッドの力を見せつけ圧巻。
実際に多くの偽装ゼロ戦を編隊飛行させ、低空から雷撃させることで、標的になった側からゼロ戦がどのように見えていたのかが分かるアングルがこの上なくリアルだ。
離陸途中に撃墜される戦闘機を始め、多くの航空機を爆発・炎上させていて、その業火から逃げる米兵役者の恐れもリアルに伝わって来る。
開戦当時は世界一と言われていた日本の海軍航空隊の操縦技術の高さを、合作とは言えアメリカ側が自国パイロットを使って再現したことは驚きで、今だとCG処理ですませるところだ。
攻撃機が未明に空母から飛び立っていくシーンは絵画的でたまらなく美しい。
朝焼けの中をシルエット敵の飛び立つ戦闘機が次々映し出され、やがて徐々に白んできた中を飛び立つ爆撃機が描かれる。
時間経過もあらわし、この映画一番のシーンに感じた。
渥美清と松山英太郎演じる炊事兵のやりとりは「男はつらいよ」シリーズにおける寅さんを髣髴させる作品中唯一の滑稽シーンで記憶に残る。
オープニング・タイトルの映像も美しく、観客を一気に作品に引きこむ役割を十分にこなしていた。
ラストは最後通牒の遅れによりアメリカ国民を怒らせてしまったとの述懐で終わるが、戦争責任は誰にあったのかは不明のままである。
でもまあ告発映画ではないのだし、真珠湾爆撃シーンとしては一番の地位を有する作品だとは思う。